あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ?   作:うろ底のトースター

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先に三つほどお話をば。

まずは、ひどく遅れていたことについて。他小説や受験、ゲームに時間を取られていてなかなか書けず、書いても進まずということが続いていました。すみませんでした。

次に、リクエストされていた『機械仕掛けの神』について。こちらは、単純に行き詰まっております。今暫くお待ちいただけると幸いです。すみません。

最後に、本部以外のリクエストについて。こちらは作品の進行の都合上後回しにさせていただいております。ご了承ください。


無垢の少女と戯れる実験

今日も今日とてクロステストな日常です。

 

SCPー811 沼女

 

それが今回のお相手だ。オブジェクトクラスはEuclid。

 

身長およそ171cmで体重が常に47kg未満の腹部が少し膨らんだ女性。緑色のまだら模様の肌をしていて、彼女の汗は刺激性を持つ。手足から半緑色の透明な粘液を分泌していて、触れた有機物を黒色の液体に溶かしてしまうらしい。それが彼女のご飯になる。

 

沼地を模した小さな区画で収容されていて、24時間ごとに食料を提供している。また、1週間ごとに浴槽の掃除、一日ごとに頭の洗浄、と。

 

今回はクロステストがてら頭を洗ってあげなさいとのことなので、シャンプーを持参。何故か頭髪がシャンプーに耐性があるらしいのでかなり強めのシャンプーを持ってきている。人が使えば次の日にはフッサフサがつるっつるになってしまうのだとか。

 

シャンプー耐性だとか強いシャンプーだとかの謎単語にツッコミを入れるのは無駄なのでしない。防護服越しでちゃんと洗えるのか不安だけどまぁ気にしない。

 

『君のことだから杞憂だとは思うが、万が一もある。いつも通り注意したまえよ』

 

「分かりました」

 

気遣う博士に言葉を返し、俺は機械の門をくぐって行った。

 

 


 

 

少女の名前は、『アエ』という。本人が決めたものの読み書きができないため、綴りはなく発音記号で表されている。

 

「アエちゃん」

 

名前を呼ぶと、彼女は沼から顔を出した。

 

「おにいさんだあれ?」

 

できるだけ目線の高さを合わせるために屈む。上から見下ろして喋ると、威圧感を与えてしまう可能性があるから。

 

保育士志望のための本、意外と役に立つ。

 

「お兄さんの名前は神谷朱里。今日一日、アエちゃんのお世話を任されているんだ」

 

「あかりさんなの?ほんとにあかりさん?」

 

「あれ、知ってるの?」

 

「せんせーがはなしてたの!」

 

彼女がせんせーと慕っているのは、財団研究員の一人であるトレビュシェット博士だ。博士がオブジェクトに情報漏らしていいのかなぁ。今更感はあるけど。

 

「ちなみになんて言ってたの?」

 

「おんなたらし!」

 

「もう俺泣いていいかな」

 

自覚があるだけに余計辛いです。

 

閑話休題。

 

「とりあえずシャンプーしていこうか」

 

「やったー!」

 

うーん無邪気。肉体が十分に成熟してるから、そんなに子供らしく跳ね回られると男としてちょっとクるものがある。努めてたわわに実った2つの果実から目を逸らし、シャンプーを泡立てていく。

 

「痒いところがあったら教えてね」

 

「はーい!」

 

うーん、誰かの頭を洗うなんて初めてだな。しかも女の子。髪を傷つけないように丁寧に、ってのも大変だ。

 

でもま、本人は気持ちよさそうだからいいのだろう。

 

「あかりさんやさしいね」

 

「え?」

 

「いつもはもっとらんぼうなの」

 

それはー、うん。乱暴というか、恐怖から来る強ばりだとか震えだとかが原因だと思うのですけど。つまり俺が異常なのです。

 

「はい、流すよーお目目閉じてねー」

 

シャワーからお湯を出し、白い泡で埋め尽くされた頭を流しながら、ついでに手櫛で髪を梳かす。これでよし。

 

「どう、きれい、きれい?」

 

「うん、綺麗になった」

 

「わーい!」

 

うっ、急によっかかってこないで。重くはないけど柔らかそうな双丘が上から見えちゃう。

 

「あー、そうだ」

 

「?」

 

ここで、秘密兵器を投入する。博士に無理言って持たせてもらったもの。

 

アエちゃんは、髪の毛が長い。深緑色の髪は腰まで届き、前髪も胸元まで伸びている。そのせいで顔の大半は隠れて見えない。

 

と、いうわけで、純無機物の髪留めを持ってきました。これを前髪をまとめてカチッと留めると──。

 

「わぁ、いっぱいみえる!」

 

本人大喜び。目を覆う髪を邪魔そうにしてたし、さぞかし視界が良くなっただろう。

 

それに。

 

「うん、やっぱり」

 

「?」

 

「アエちゃん、かわいいね」

 

子供と大人の中間、とでも言えばいいか。あどけない可愛さと大人の色気を総取りしたかのような顔立ちは、見てもらわないときっと損だ。水辺の岩場に座っていれば、それはそれは絵になっただろうな。

 

と、アエちゃんが顔を伏せているのが見えた。心なしプルプルと震えている気がする。

 

「どうしたの?」

 

もしや地雷でも踏み抜いただろうか。

 

「えい!」

 

なんて心配はどこえやら、急に抱きついてきた。さすがに抱きつかれるのには慣れたし、防護服があるので胸を生タッチなんてこともない。つまり理性が削られることはなかった。

 

とはいえ理由は気になるわけで。

 

「あのねあのね!」

 

「うん」

 

「わたしかわいいっていわれたのはじめて!」

 

・・・そっか、初めてか。

 

「とってもかわいいよ、アエちゃんは」

 

「えへへー!」

 

走ったり、跳ねたり、踊ったり。余程嬉しかったのか、長い髪を靡かせながらはしゃぎ回っている姿は、まるで子供のようで。

 

悲しくなった。

 

・・・ダメだ。せめて顔に出さないようにしよう。せっかく喜んでるのに辛気臭い。

 

「おにいさん!」

 

なんて考えていると、名前を呼ばれる。さっきまで遊んでいたアエちゃんが、俺の顔を覗いていた。

 

「なぁに?」

 

「あのね、わたしね!」

 

彼女は、花の咲いたような笑顔で言った。

 

「おにいさん、だいすき!!」

 

一生忘れられない笑顔が、また増えてしまった。

 

 


 

 

防護服を脱ぎ捨てて、すぐに俺は座り込んだ。

 

「お疲れ様、よく耐えたね」

 

全部知ってる(あか)が、労いの言葉をくれる。

 

「大丈夫だよな、顔に出てなかったよな?」

 

「うん、銀幕俳優顔負けの演技だったよ。ちゃんと最後まで、ね」

 

「そりゃ結構」

 

あークソ、会う前に一度吐いてもう胃の中身がないはずなのに、また吐き気がこみ上がってくる。原因は、アエちゃんの記事。その補遺中のインタビューログだ。

 

あの子は、おそらく()()()。人体実験に巻き込まれた哀れな少女。それがどれだけ非道なことなのかを知らないから、憎むということを知らないから、ああやって笑えるんだ。

 

純粋無垢、故に残酷。思わず握りこんだ拳が、酷く痛かった。

 

「だめ」

 

短い一言。それだけで、心に生まれた黒い熱が冷めていく。

 

「そんなの誰も望んでない。人の死を望むのは、私達だけで十分だよ」

 

「・・・そっか」

 

そうか、そうか。

 

「ようし、切り替えだ切り替え!」

 

大切なのは昔じゃなくて今。今あの子が幸せならそれでいい。

 

「もう大丈夫?」

 

「それは分かんないけど」

 

多分、これからもこういうことがある度に俺は人間を憎んでしまうと思う。

 

「けど、今は大丈夫だから」

 

そのときは、皆に止めてもらおうか。

 

「信じてるよ」

 

「しょうがない人」

 

(あか)は、そう言って笑った。




アエちゃん

かわいそうなオブジェクト枠の一人。インタビューの限りでは、主犯はアンブレラ社レベルで真っ黒な模様。朱里くんがキレそうになるのも仕方がない。ところであの身長で精神は子供ってつまり無知無知ってこ(殴)

(あか)

朱里くんのストッパー。精神安定剤。いい人風だけど実はこのまま依存すればいいと思ってる。



h2o+co2さん
えりのるさん
誤字報告ありがとうございました



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