あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ? 作:うろ底のトースター
膝枕。健全な日本男児ならば、誰しも夢見たことがあるだろう、イチャラブのテンプレートだ。
可愛い女の子の柔らかな膝を枕にして寝たい。あるいはそのまま耳かきをされたい。そういう欲が、往々にして男の心のなかには存在している。それこそ、そういうシュチュエーションの音声作品が多数生まれるほど。
さて、何を隠そう俺もその健全な日本男児の一人ではあるのだが、本日、その夢が叶った。
そう、叶ったのだ、寝てる間に。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
考えてみてほしい。目が覚めたら顔のいい褐色お姉さんが慈愛に満ちた表情で俺の顔を覗き込んでいるのだ。色んな意味でハートがドッキドキである。
ちなみに鍵をかけたはずのドアは、綺麗に真っ二つにされていた。
「あの、どうしてここに?」
「君がなかなか逢いに来てくれないから、お姉さん拗ねちゃった」
朝から顔面偏差値とあざとさの暴力。俺の理性に大ダメージ。が、俺の中の住人が姦しいので何とか踏みとどまれる。
「私も夢の中で膝枕を・・・」
「へぇ〜、
「ご主人、
後々が怖すぎた。
あとさっきから携帯の通知が鳴り止まない。これアイの仕業だろ。
とりあえず、どうにかアベルを帰らせないと。
「あの、朝ごはん食べたいんですが」
「やだ、朝ごはんってお姉さんのこと?」
「そっちの
ダメだこの人、なんでもナニに繋げてくる。久しぶりに会ったからかはっちゃけ方の次元が違う。てかそろそろルイかノアが来そうじゃないか?
あ〜(絶望)
お腹空いてきた(現実逃避)
あの後、案の定収容違反してきたルイとノアと一悶着起こしながら、どうにかこうにか約束を取り付けて全員帰らせることに成功。ようやっと朝ごはんを食べることができた。
あの、シェフさん、朝から精のつくもの出さないで?何そのサムズアップは。別にそういうことするわけじゃないからね?
朝からレバニラか、重っ。
閑話休題。
さて、約束の話をしようか。まぁ、何となく察しはつくとは思うが、約束とは、膝枕をしてもらうというもの。あ、もちろん俺がしてもらう側ね。まさか膝枕させてくださいなんて言われる日が来るとは思わなかったよね。
で、だ。ここでひとつ問題が、いや問題児の介入があったわけで。そう、例の首輪である。どこで聞いたのか、俺が膝枕をされたがっているという噂を流しやがった。
今現在、それの対応策を上で話し合っているらしい。毎度こんなことで会議に駆り出される上層部の方々には頭が上がらない。
と、噂をすれば。
「はい、朱里です。はい、はい。あー、やっぱりですか。はい。それじゃあしばらくはそちらの対応に当たりますね。はい。その、お疲れ様です。本当に。ゆっくり休んでください。失礼します」
・・・後で、博士に胃薬でも持っていこう。声だけでも分かるくらいやつれてたよ。
で、だ。対応策なんだが、うん。そういうことだ。俺はこれから、膝枕をされに回ることになる。意味分かんないよね、俺もだよ。
ご馳走様でした、と。
さて、これから忙しくなるぞ。
【ルイの場合】
ルイはこういった知識には疎いようで、膝枕がなんなのかを知らなかったらしい。教えろせがまれたのでかくかくしかじかと説明してみたところ・・・。
『へ、へぇ、そうなんだな』
顔真っ赤にしてて可愛かったです!!
「た、確か、膝を折って座って、その上に頭を乗せて、だったよな」
そうそう合ってる合ってる。
・・・あっ。
えっとね、ルイは普段服を着ないんですよ。基本酸の中に浸かってるから。で、俺と会う時だけ外に出て服を着ることが(脅して)許されてるわけですけど。
その、彼女の持ってる服って全部俺のダルダルのお下がりで、しかもズボンとかは絶対履かないのよ。
つまり今、ちょっと間違えば見えちゃうんですよ。
「ど、どうした?もしかしてなんか間違えてたか?」
あーいや、大丈夫だよ。ただちょっと世界一危険なチラリズムがね?
それじゃあ失礼して。
「んっ」
ゆっくりと膝に頭を起き、ルイの顔を見上げる。あー、いいなこのアングル。普段彼女から見下ろされることがないから新鮮だし、何より恥ずかしがってる顔がよく見える。
かわいいですはい。
全裸で抱きついてくるような娘が、こういうことで顔を赤らめちゃうっていうギャップがもう最高ですよね。
「どう、だ?俺、ちゃんとできてるか?」
うん、すごく心地いいよ。わざわざ硬い鱗を変質させてくれてるしね。ありがとう。
「そっか、良かった」
あ〜、膝枕の感触と可愛いお顔で二重に癒される〜。
おっと、欠伸が漏れた。
「眠くなってきたか?」
そうかも。おかしいな、ちゃんと寝たはずなんだけど。これも膝枕の魔力か。
「・・・少しくらい、寝ていけよ」
あーら耳まで真っ赤だよもう。それじゃあお言葉に甘えて、少し寝るとしましょうか。
おやすみ、ルイ。
「ああ、おやすみ」
【ノアの場合】
「さぁ朱里さん、早く、早く。私、もう待ちきれません」
せっかちだなぁ全く。シャイな君はどこに行ったんだい、割とマジで。
まぁ、カメラに背を向けて座っているから、俺以外には誰にも見られないということで無敵なんだろう、多分。心做しかご尊顔が艶やかだし。
ノアは、膝枕が夫婦もしくは恋仲、あるいはそれに近い関係で行われる営みだと知っていたらしい。そのためか、あの光景を見て真っ先に怒りを顕にしたのはノアだった。
「朱里さんのために私、頑張ったんですよ?こ、この格好、すごく恥ずかしいんですから・・・」
普段は、露出を極端に抑えた服装を好むノアにしては珍しい、ホットパンツ。病的に白い肌とは裏腹に、その御御足は健康的な太さを保ってある。
おっと、これ以上眺めてたらノアが茹でダコになっちゃうな。
それじゃあ失礼して。
はぁ〜、柔らかぁ。それに温度がちょうどいい〜。やっぱり人肌の温度って安心する〜。
というか、アベルもそうだけど、どうしてこの柔らかさであんな速く動けんの?
「ふふ、気持ちよさそうですね、安心しました。ところで今他の女のこと考えました?」
いやいや、そんなわけないじゃないか。今は君に夢中だよ。
「私に夢中・・・えへへ〜」
悲しいことに私の取り柄は口八丁です。
「その言葉に免じて許してあげますね」
誤魔化せてはいないと。悲報、取り柄が消える。
でも、夢中っていうのはあながち嘘じゃない。ノアが俺の顔を覗き込んでいるおかげで、その綺麗な白髪が流れるように垂れて可愛らしいお顔が・・・お?
「ノア、誰かからお化粧教わった?」
「分かっちゃうんですね、やっぱり」
雰囲気ちょっと変わったかなぁ程度の、本当にうっすらとしたナチュラルメイク。さすがに初めてでそんなことできるとは思えない。
「えっと、化粧品は朱里さんのファンを名乗る方から贈られまして、やり方はアイリスさんに言伝で教わりました」
そっか、良かったね。
「・・・朱里さん」
どうしたの?
「私、もっと綺麗になります」
うん。
「朱里さんに相応しい女の子になります」
今でも、俺にはもったいないくらいだよ。
「・・・やっぱり、優しいですね」
そうかな。
「そうですよ。そんなあなただから、私はいっぱい頑張るんです」
「それで、あなたの隣を歩く自信が持てたら」
「その時は、本当に私に夢中にしてみせますね」
・・・そんな可憐に微笑んじゃって。もう十分見惚れそうだよ。
【ペスト医師の場合】
「君か、入りたまえ」
あの、まだ声掛けてないどころかノックもしてないんですが。
「君の足音は覚えている」
なんでさ。
「好いている異性のデータを全て記憶し記録するのは至極普通のことではないかね」
せやろか。
「さて、早速寝たまえ。時間が勿体ない」
寝たまえって、なんか忙しそうですよ。
ペスト医師──先生は今、資料の散乱した机に向かって、タブレットを操りながら何らかの仕事をしていた。内容は難しすぎて分からなかったけど。
「何を言う。膝枕に必要なのは私の膝と君の身体だ。作業する私の手と脳は関係ない」
でも、その、やりずらくないですか?
「それはありえない。私が君を愛しているからだ」
何故そこで愛。
「愛とはときに限界を超える原動力、エネルギーになる。人間はそういった物語が好きだろう?」
確かにそうですけど。
「つまり、そのエネルギーを常に供給できれば私の作業効率は跳ね上がるわけだ。事実見たまえ。君と会話をするだけで平常時のおよそ120%の作業速度を確保している」
愛ってすげぇなぁ(遠い目)
ってことは、俺は作業効率のために呼ばれたということですか?
「いや、違うが?」
違うんだ。
「君を呼んだのは私へのご褒美だ」
ご褒美。
「そうだ。私は頑張っている。ならばモチベーションを高めるために少しばかり贅沢は許されると思わないかね」
これが贅沢というのならいつでも来ますけど・・・。
「いや、それでは特別性がない。無論君の膝枕というだけで十分以上の効力は発揮してくれるだろうがそうすると逆にモチベーションの低下に繋がりかねない。努力なしに君から褒美があると覚えてしまうからな。勿論私はその程度で研究に支障をきたすような愚者ではないが。ともかく褒美としてこの膝枕を受け取る以上特別性が大事なんだ。理解してくれたかね?」
あ、はい。
「では、早速頭を預けてくれたまえ」
はい。では失礼して。
あれ、コート越しなのに肌触りがいい。
「こういうことを見越して準備をしておくのが研究者というものだ」
そうなんかな。すげぇや研究者。
「しかし、ふむ、これは・・・興味深いな」
どうかしたんですか?
「心が温かい。全能感に満たされる。思わず頬が緩んでしまう。そうか、これが幸せか」
頬が緩むって、なら顔見せてくださいよ。
「その唇に接吻をしてもいいなら許可しよう」
比喩抜きで世界が滅ぶんですが。
「君が生き延びるなら他はどうでもいい」
僕が良くないっすね。
「冗談だとも。君の背負っているものは理解しているつもりだ・・・子供ながらによく頑張っているよ、君は」
・・・そっすか。
あの、なんで頭撫でてくるんです?
「分からない。どうしてか、手を止めてまで君を撫でたくなった。これでは本末転倒だ。・・・だが?」
だが?
「悪くない気分だ。興味深い」
・・・そうですか。
それからしばらく、俺は大人しく頭を撫でられていた。彼女に名前を付けるのは、もう少し後になりそうである。
半年経ってたってのにめっちゃびっくりしてる。
この話、実は先生に膝枕されるだけの話だったのに、いつの間にかこうして拡がっていきまして。はい、私にしては珍しく4000文字を超えました。息抜きとは。
今後はもう少し頻度を上げていけるように頑張りますね。でもマデューラから帰ってくるのは相当あとになりそうです。
お疲れ様でした(玄人感)