あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ?   作:うろ底のトースター

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難産でした。
あといろいろあったりなかったりなかったりなかったりで遅れました。
ヒーホー。




残忍で凄く強いらしい狼さんと戯れる実験

今日も今日とてクロステスト。前回が安全な・・・安全かな・・・ともかく安全な娘が相手だったので、今度もそうだといいななんて思いながら、お相手の資料を読んでいく。

 

けど、なんだこれ。ところどころ赤で書かれてる。一文まるっと赤色というわけでもなく、単語でさえところによっては途中まで赤色、なんて部分がある。

 

なんか意味があるんだろうか。

 

ま、いいか。

 

さて、今回のお相手は

 

SCPー488ーJP

 

人の字が赤いのは仕様です。オブジェクトクラスは、Euclid?いや、横線入ってるしKeterかな。

 

さて、記事の内容はというと、いやーとんでもなく怖いね。もしかしたら今日で死ぬかもなぁ、あはは。笑えないっすね。

 

なんでも残忍で、現実改変能力を持ち、しかも驚異的な身体能力を誇る、人に変異した14体のタイリクオオカミらしい。彼女たちの獲物は、自身に関する情報を作成した者。文書に関わらず、画像や動画、音もアウトなんだとか。

 

食事は、生きた人間の子供。本当に残酷だ。できるなら、交渉して別な食事を摂ってもらうことにしよう。

 

それにしても、今回の記事、どうも違和感がある。一部が赤いのはもちろんのこと、書き方が遠回しというか、修飾が過剰というか、とにかく素人目で見ても無駄が多い。

 

この記事、何か仕掛けがあるのか?

 

()()、読んだかな』

 

「あ、はい」

 

『それでは、そろそろ始めようか』

 

気になることが多く、後ろ髪引かれる思いはあるが、時間となれば仕方がない。生きて帰れるように祈りながら、俺は収容室へと足を進めた。

 

そういえば、読んでるときにメッセージが来たけど、誰のだったんだろう。アイかな。

 

 

 


 

 

 

「えっと・・・その、こんにちは?」

 

「く、来るな!!」

 

状況を説明しよう。収容室へ入った俺を出迎えたのは、14体の獰猛な人狼、ではなく、見るからにか弱そうな14人の小柄な人狼だった。

 

俺を見るやいなや、最も体の大きな1人が他の人狼達を庇うように立ち、睨みつけてきた。多分怯えからくる警戒態勢。なのだが、その。

 

彼女、すごく尻尾揺れてる。それはもう嬉しそうに揺れてる。後ろで守られている他の子達も、彼女の目を盗んでは手を振ってきたりしてる。可愛い。

 

じゃなくて、これはどういうことなんだろう。記事の内容とあまりにもかけ離れている。彼女達は、お世辞にも獰猛とも、屈強とも言えない。

 

呆気にとられるというか、拍子抜けというか。気分的には、ライオンの檻に飛び込んだらチワワがいたみたいな。

 

「何の用だ!は、繁殖、活動・・・なら、間に合ってるぞ!」

 

繁殖活動って妨害してたんじゃないの?むしろ補助してたの?

 

「あー、えっと、今日はちょっと、お喋りをしに来たんだ」

 

「ホント!?あいや、それも!それも間に合ってるぞ!」

 

今めっちゃ嬉しそうな顔してたじゃないですか。なんなら尻尾ぶんぶんじゃないですか。あ、後ろの子がバレないように手振ってきてる、可愛い。

 

「お前の評判知っているぞ、神谷朱里。女の敵め」

 

おっと心当たりが10や20ほど。とにかく、このままじゃまともに会話ができないので、少し踏み込んでいこうか。

 

「ど、どど、どーしてもというなら?私が相手してやらんこともないぞ?この子達に手を出されても困るからな?」

 

少し踏み込まれたが?

 

「な!お姉ちゃんずるい!」

 

「そういうのひきょうものって言うんだよ!」

 

「お兄ちゃん私と遊ぼ!ね?」

 

途端に後ろの子達がブーイング。なんならその背をすり抜けてとことこと近付いてくる始末。

 

「な!戻りなさいお前達!この男は危険なんだ!」

 

そう言うと余計気になるのが子どもってもんでさ。案の定逆効果ということで、わちゃわちゃと俺の周りで楽しそうにしている。

 

わ、私だって・・・

 

「えっとー、おいで?」

 

「!」

 

尻尾がピーンッてなちゃったや。

 

「わ、私はお前の姑息な罠には絶対に引っかかったりしないからな!というか、私の妹達を誑かすのはやめろ!」

 

口だけなら完全拒絶。でも身体は正直なようで・・・なんか怪しい言い方になったな。ともかく、俺はこうやって腕を広げて受け入れ態勢を取り続けるだけでいい。

 

飛び込むか決めるのは、彼女だからね。

 

「う〜〜、う〜〜〜〜〜!」

 

「お姉ちゃんすなおじゃなーい」

 

「なーい」

 

こらこら煽らないの。

 

「うがーーー!」

 

っと、とうとう限界に達したようで、勢いよく飛びついてくる。いや軽いな。人を食べてるってのも嘘らしい。

 

「お日様の匂いがするぅ・・・」

 

「猫じゃないんだから」

 

反応が猫吸いしてる限界社会人みたいだ。いや、実際気苦労とかはあったのだろうけど。きっと何度も今みたいに妹達を守ってきたんだろう。

 

なら今は、少しくらい甘やかしたっていいじゃないか。

 

ちょうど胸元辺りにある頭を撫でながら、彼女が落ち着くまで待つことにした。

 

 

 

 

「───落ち着いた?」

 

こくんと、小さく頷いた。どうにも今さっきまで甘やかされていたのが恥ずかしいらしく、一向に目を合わせてくれなくなってしまった。

 

離れてすぐは口もきいてくれなかったし、なんかまずいことしたかなぁと思ったけど、周りの子が顔が赤いと茶化しだしたことで判明した。イタズラ好きのいい子達だ。

 

「報告書、読んだよ」

 

そろそろ聞いてもいい頃合いだろうと思った。

 

「どう、だった?」

 

「とてつもなく強くて、残忍。そんな感じだったけど、実際は違ったね」

 

報告書との差異。恐らくは、赤字が何かの仕掛けなのだろうとは思う。

 

「情報改変、それが私達の能力だ」

 

「君達は、自身を恐ろしい存在だという様に情報を書き換え、身を守ろうとしていたんだね」

 

納得した。あれだけ、過剰に恐ろしく描写されていたのは、情報改変のせい。そして報告書の赤字や遠回しな書き方は、彼女達の本来の異常性を示すための細工って感じかな。

 

「結局、収容されてしまったがな」

 

「外が恋しい?」

 

「・・・ここは、いいところだ。外敵はいないし、食料も勝手に手に入る。ときどき、その、繁殖活動・・・の心配をされるのだけは迷惑だが」

 

そう言うと、彼女は辺りを見渡した。

 

鬼ごっこをする子や、日向で身体を丸めて昼寝する子、そして俺の手をコネコネといじくり続ける子、いろんな子がいた。

 

「この子達の成長に、こんなに都合いい場所はない。私達は、ここでいい」

 

「立派だね」

 

「私はお姉ちゃんだからな」

 

「・・・そっか」

 

少し、会話が途切れた。子供達の喧騒が遠く聞こえて、穏やかな空間が広がる。

 

「神谷朱里」

 

やがて、彼女が口を開いた。

 

「私は───」

 

何かを言おうとして、けれど言えずに目を伏せる。そしてまた、言葉を紡いだ。

 

「私に、名前をくれないか」

 

きっと、彼女にとっての初めての我儘だろう。

 

「少しの抜け駆けくらい、許してくれるさ」

 

「それでいいの?」

 

「これがいい。これ以上は、あの子達が大きくなったら求めるよ」

 

「そっか」

 

さて、久々の名付けだなぁ。最近は強請られなかったり元からあったりだったから。

 

人狼か、ウェアウルフ。───エア?いやいやそんなCパルス変異波形じゃないんだら。

 

うん。

 

「アウル、っていうのはどう?」

 

ウェ()()()フのアウル。相変わらず安直な名前だけど、ご愛嬌ということで。

 

「アウル、アウルか。気に入った」

 

「良かった」

 

喜んでもらえたらしい。

 

・・・・・・?

 

いやいや、まさかね。そんな、ね?言霊ってあるからね、わざわざ口には出しませんけどね。そんな、あるわけないですから。

 

「そろそろ、だな」

 

「え?ああ、そうだね。帰らないと」

 

寂しそうに耳を伏せているアウルの頭を撫でる。

 

「また来るよ」

 

「・・・うん!」

 

出口へ向かう俺を、今日一番の笑顔と元気な声達が見送ってくれた。

 

 

 

 

 

『朱里やばいぜェ』

 

嫌な予感がした。できれば見たくない。

 

『さっきまでお前とイチャついてた奴らの記事見てみろよォ』

 

「見たくない」

 

『見ろ』

 

「あ、はい」

 

さて、先程俺は彼女に名を付けたわけだけど。いや、ね?妹達には名付けてないし、大丈夫だと思ったんですよ。

 

「見るぞ、見るぞ、見るからな。っふ!」

 

サイトを開く。

 

‌ ‌神谷アウル

 

『えっと、えっと、かみやさん!けっこんおめでとうございます!』

 

信じられない光景と2000ーJPのズレた反応に、ついに俺は膝から崩れ落ちた。

 

「アウトォ!」

 

『バカァ!想定しとけこんくらいィ!』

 

「分かるわけないじゃんかぁ!」

 

こんな予想の斜め上の改変されるとかさぁ!想定外もいいとこだよ!

 

「・・・君って割と唐変木なんだね」

 

メアリーさん?

 

「あのね?繁殖活動を助けなきゃ絶滅しちゃうくらい弱くて、情報改変で身を守ってきた警戒心の強いあの子達が、君を受け入れたんだよ?オスの君をね?分かるでしょ」

 

そんなぁ。

 

『ご主人のバカ』

 

()()のジト目が突き刺さるなぁ。

 

「私は妻私は奥さん私はお嫁さん───よし、おちつききききました。結婚しましょう今すぐ」

 

落ち着けてないよ。

 

「僕もこれから神谷を名乗っていいよね?だって僕は君のお姉ちゃんなんだから」

 

手をわきわきしながら近付かないで。情報どころか認識が書き換えられちゃう。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

無言の笑顔が怖い。せめてなんか言ってほしい。

 

『男の子がいい?それとも女の子?』

 

シないからね?

 

「胃が、胃がキリキリする・・・」

 

これも自業自得かなぁ、なんて思ったり。ともかく次からは、余裕があったら身の振り方を考えよう、今更ながらそう誓うのだった。




神谷朱里

おバカさん。自分のせいで定期的に世界終わりかけてるってことを自覚しながら生きてるけど甘ちゃんすぎて対策がガバガバ。



神谷アウル

吹っ切れたら最強の恋愛強者。情報改変は無意識に行ってしまった。豊かな感情表現と純粋な好意でぶん殴ってくる。
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