あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ? 作:うろ底のトースター
リアルでいろいろありました、主に留年。
投稿頻度取り戻したいなぁ。
今日は、日本最後のクロステスト。本部の要請により、来週からはまたアメリカだ。
「むむむ」
最後なら一層気合いを入れよう、と思ったはいいものの、記事とにらめっこしながら小さく呻いてしまう。
『そうなる気持ちも分からんでもないがね、彼女の願いだ。帰る前に会ってくれないかい?』
とは、こっちの博士の言葉だ。察しの通り、クロステストと言うものの、実際はもっとカジュアルなものだ。切羽詰まるようなことでなく、会ってもらえたらいいな、程度のもの。
とはいえ折角の女の子からのお誘い、しかも年齢的には年下と来たものだ。断るのは大人気ない。
「分かりました」
『良かった、では調整しておくから、よろしく頼むよ』
通信終了。
小さくため息を吐き出し、手元の記事に目を向ける。
SCPー014ーJPーJ
奈落の悪鬼、漆黒の翼のアイスヴァイン。
オブジェクトクラスはEuclid。
精神鑑定では異常は見られなかったにも関わらず、二重人格を自称する少女。曰く剣の天才だったり、冷気を操ったりetc・・・、とにかく前世かつ現在の第二人格である堕天使さんを宿したオブジェクト。
という設定の単なる厨二病だ。
Euclidなのは、飽くまでこの設定が本当だったらという小数点以下の確率しかないだろう可能性を考慮したのだろう。
幸い俺は通らなかった道だ。
今回の場合、この非厨二病罹患という経歴がどう影響するのか。失敗しても世界の危機、なんてことにならないので、気楽に行こうと思う。
ドアノブに手を掛け、一度息を整えてから、ゆっくりと押し開いた。
「お邪魔しまーす」
笑顔だ、ものすごくイイ笑顔をしている。ちょっと眉を鋭く曲げているあたりどうにも怒りを表現したいようだが、喜びが隠しきれてない。
「遅いですよ!」
「え、あ、ごめんね?」
「許しますっ!あ、違います許してあげません!」
一瞬可愛らしい笑顔を見せてくれるも、すぐにまた可愛らしい膨れ顔に変わってしまう。
「いいですか!?私は前世、あなたの主人だったのですよ!それなのに後回しに後回し・・・なんて薄情な浮気者なんでしょう!」
「初対面なんですが・・・」
「そ、そんな、あなたともあろう人が、前世の記憶がない!?」
ガーンなんて擬音が聞こえてきそうなほど、ショックを受ける少女。表情豊かで可愛いな。ってそうじゃなくて、まさかと思うけどこれ、設定に俺も組み込まれてるのか?
「こんなったら仕方ありません・・・!」
「いや、あの」
「今日一日、真剣に私に奉仕なさい!」
「・・・はい」
「うう、嘘つき〜。はいって言ったじゃないですか〜」
「いやいや、宿題をやってないのはさすがにダメでしょ」
あの後、何をしようと考える少女を尻目に、少々散らかっていたプリント類の整理をしていたところ、宿題を発見。
またムスッとしてしまったこの娘を宥めつつ、こうして宿題に取り組んでもらっているわけである。
「わ、私はあなたの主人ですよ!主人を助けるのが従者ではないのですか!」
「でも、宿題代わりにやったらご主人様のためにならないでしょう?」
「でも、でも!」
「でもじゃないですよ」
オブジェクトとされているものの、この子は正しく子ども。よく遊びよく学び、よく寝るのがお仕事だ。
なので、まずはよく学んでもらいます。
「〜〜♪」
やいのやいのと言ってた割には、随分と楽しそうに宿題をこなしている。どうしたのだろうか。
「宿題、嫌だったんじゃないの?」
「嫌です、すっごく!」
わあ、いいお返事。
「でも、今日は一人でやるわけじゃないですから」
「・・・そっか」
「それよりも!もうすぐテストがあるんです!」
「それなのに、宿題放置してたの?」
「うぐっ」
「うぐっじゃないよ君」
「だってぇ」
「だってでもないです」
瞳をうるうるとさせる彼女に罪悪感を覚えないこともないが、ここは心を鬼にするべきである。
「それで、テストがどうかしたの?」
「なんとですね、次のテストで満点を取れば、なんでも1つお願いを叶えてもらえるんです!」
「へえ」
可能な限りで、という制限はありそうだけれど。それでも、年頃の子供のやる気を引き出すには、十分すぎる報酬だ。
「美味しいご飯も食べたいなぁ」
「いいね」
「お化粧なんかもしてみたいです!」
「それは、頼めば教えてくれるんじゃないかな」
「そうだ、外に出たい!」
「うーーーーーん」
一応はオブジェクトなので、外出許可が降りるかどうか。そこは、担当者の判断次第だろう。
「嬉しそうだね」
「だって、こんなこと今まで一度もなかったんですもん!」
「そっか」
「あなたは、こういうことなかったのですか?」
「それは──」
ない。というか、今の俺はオブジェクト兼財団職員、といった感じなので、収容されることとクロステストを行うことに給料が発生する。
なんでもお願いごとが叶えられる、ということはないものの、給金の許す限り自由にさせてもらっている。通販も融通を効かせてもらえてるし。
「うん、あるよいっぱい」
「いっぱい!?ずるいです!」
「ハハハ、そうかな」
「そうですよ!主人を差し置いてあなたばっかり!」
「それが大人だからねぇ」
「むーーーー!」
「ほらここ、計算間違えてるよ」
「あ!」
ころころと変わる表情にほっこりする。こうして、終始穏やかな気持ちで進むクロステストも久しぶりだ。
「ねえ、ご主人様」
「はい、なんですか?」
少し、気が緩んだ。
「俺からもご褒美、あげようか?例えば、一つだけなんでも言うことを聞いてあげる、とか」
もう少し、嬉しそうな顔が見たいから。つい、そんなことを言ってしまった。
「なんて、冗談だよ」
「な⋯え?いや⋯なん、でも⋯?⋯???」
「おーい、大丈夫?」
「???」
ダメだ何も反応がない。
「おーーーい」
「???⋯⋯⋯⋯!〜〜〜〜〜!!??」
あ、起動した。
「そ、そんなこと、ほかの人にもやってるんですかこの女たらし!」
「え!?急になに!?」
「なにじゃないですよ!こんな⋯こんな⋯!私の初恋が歪んだらどうするつもりですか!?」
「いや、え!?」
「無意識!?無意識なんですか!?今のが!?」
「いや、その、笑ってるところが見たくてつい冗談を〜」
「〜〜〜〜!!!だから、そういうところです!!」
「ちょっと、待ってよ!」
「待ちません!もう出ていってくださ〜〜い!!」
「え、ええ〜!?」
「なんであんなことに⋯」
『ご主人、愚か』
「愚かって、酷いなぁ」
「言われても仕方ないよ、君。思春期の女の子相手にあれは劇毒」
「劇毒って、そこまでかな」
「もーいっかい、もーいっかい」
「メアリー、茶化さないでよ」
「相手が子供だったから許してあげたけど、次はないよ」
「怖いよ」
「愚かなあなたに説明不足のナターシャの代わりに説明してあげます」
「言葉に一層の棘を感じますよゼロ先生」
「いいですか、彼女はオブジェクトとしてここにいる。普通なら学校に通い、友達をつくり、容姿端麗な異性に惚れるような年頃です。けれど、収容されている以上学校に通えず、友達も作れず、異性は年の離れた大人ばかり。それも事務的な対応がほとんどのはず。そこへ、歳の近いあなたが現れれば、それだけで彼女にとっては一大イベント。まして、容姿端麗で面倒見がいいとくれば、それは惚れても仕方がないでしょう。加えて、最後のあなたの言葉。首を傾げて頬杖をつき、微笑みながら、ご褒美をあげる、なんでも言うことを聞いてあげるなんて。さながら少女漫画のワンシーンです。これが無意識に、他者にも行っている可能性があるとしたら、彼女の怒りも真っ当に思えませんか?長々と語ってしまいましたが、ええ、要するにですね」
「⋯要するに?」
「あの子が羨まけしから可哀想」
「分かる」
「ね」
「その言葉の羅列に可哀想が並ぶことあるんだ。しかも共感されるんだ」
「とにかく、今後はあのようなことは、どれだけ安全な相手でもどれだけ恋愛対象として見れない相手でも絶対に確実に間違いなくやめてくださいいいですね」
「⋯はい、肝に銘じます」
神谷朱里
愚か者。初恋泥棒。そのくせ高校では「朱里くんいいよね、優しいし気配りできるし、かっこいいし。え、彼氏?いやぁ彼氏って感じじゃないでしょ、ねぇ」って言われてるタイプ。
奈落の悪鬼、漆黒の翼のアイスヴァイン
豚の塩漬けちゃん。突っつき過ぎると泣いちゃう。年上性癖を開発され、初恋を盗まれる。実は独占欲とかあったりする。
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