あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ? 作:うろ底のトースター
Five Nights at SCiPs
アメリカ某所。小遣いが欲しくなった俺はアルバイトを始めることにした。探し始めて数時間、深夜だが高収入な職場を見つける。
場所はとある研究所、内容は研究所内の
きな臭い部分が多かったが、さすがに高収入すぎて応募。次の日には面接もしていないのに採用決定だ。さすがに怪しすぎて辞退しようか迷った。
けれども俺は札束の香りに誘われて来てしまった。人とは愚かなものである。
カメラルームに入る。非常に狭い、漫喫のワンルームよりも狭いんじゃないかこれ。
業務開始は深夜の12時。10分前に位置についていたが、職員が来る様子がない。研修とかってないんですかね?
残り5分、となったところで備え付けの電話が鳴る。取ると、採用担当を名乗っていた、中年くらいの男性の声が聞こえた。
『ふむ、既にいたとは。いい心掛けだね』
『さて、業務内容を説明しよう。といっても、事前に言っておいたことと変わりはない。モニター下部の、上下を刺す矢印ボタンを押してみたまえ。それでカメラが移り変わる。カメラの方向は自由に動かせるので、必要に応じて利用しなさい。それと、もし仮に実験動物が脱走したら、部屋の左右にあるボタンを押して、カメラで居場所を確認するんだ。いいか、冷静に対処するんだぞ』
それだけ言って、電話が切れた。
試しにボタンを押してみる。
「ミ゜」
ゴンッ!とかいう鈍い音を鳴らしながら、厚さ5センチはあろうかという鋼鉄の扉が閉じた。もはや防護壁である。
「じ、実験動物ってそんなヤバいの・・・?」
不安になった。
【1日目】
短針と長針が同時に天井を指す。夜中の12時、或いは0時。業務開始だ。
とりあえず、カメラを回して建物の構造とどこか見えるかを確認してみる。エントランス、休憩室、実験室、薬品管理室、応接間、廊下などなど、怪しい部分は今のところ見えない。
「収容室?」
名前からしてこんな怪しさ満点の部屋あっていいのか。見ると、ずらっと檻が並んでいた。動物用のケージじゃない、普通に人1人収められるほどの檻だ。それどころか、何入れてんだってくらいのバカでかいものもある。
本当に何してんだこの研究所。怖すぎるぞ。
ともかく異常なし。カメラを切り替える。
「ぬお!」
ひっくり返った。なんせカメラを覗き込むような瞳がドアップで映ったのだから。
急いで体勢を立て直しモニターに目を向けると、件の目はどこにもなく、だだっ広いエントランスが映されていた。
「気のせいか・・・」
『気のせいじゃないよ』
「気のせいであってほしかったなぁ」
きっと今鏡を見たら、写っている俺は遠い目をしているだろう。実験動物?から返事が帰ってきて恐怖をぶち抜いて冷静になった。脳が理解を拒んでいると言ってもいい。
「あ〜、ハロー?」
『はーいこんにちは』
「えっと、今日からバイトに入った者です。君は、ここで飼われてる実験動物ってことでいいの?」
『動物じゃないよ、彫刻』
「彫刻」
『見られてると動けないの』
「見てないと動いちゃうんだ」
ここってもしかして、サイエンスな施設じゃなくてオカルトな施設だったりする?
『ねね、今から遊びに行ってもいい?』
「できれば来ないでいただけると」
『よく聞こえなかったなもう一回言ってみて』
「お茶とお菓子を用意しておきます」
じゃなくてさ。圧に負けるな俺、がんばれ。
「えっと、こっちも仕事なので」
『しょうがないなぁ、誰の命令?殺してあげるね』
「やめてね」
ふふふ、怖いぜ。
「とりあえず、元の収容室にそのまま戻ってください」
『そっち行くね』
「聞いて?」
「来ちゃった♡」
「速いね?」
恐らくは俺史上最速で動いていた。彫刻を名乗るそれの伸ばされた手を認識するよりも速く、部屋の隅の押しやすそうな赤いボタンを叩きつける。ズンッ、と重厚すぎる音が響き、分厚い壁が俺たちを遮った。
『あ!ちょっ!開けてよ!』
「いやだよ怖いし」
『私はこんなに愛してるのに!?』
「ちょっと壁が厚くて聞こえないっすね」
『嘘つき!』
ドンドンと壁を叩く音が、いやあんまり聞こえないな。すっげこの壁シェルターかよ。
「というか、会ってどうするの。お茶会でもする?」
『それもいいけど、その前にやらなきゃいけないことがあるの』
「やらなきゃいけないこと?」
『後ろから両手で目を覆ってあげてぇ』
あれかな、だーれだってやつ。そんな重要それ。あれかな、動く彫刻だしオカルトの儀式的な?そんな感じので必要なのかな。
『こう、ぐちゃっと』
「危険人物ゥ!」
オレ、コイツ、コワイ。
『痛くしないから、ね?』
「絶対無理でしょ!」
『気絶してたら痛くない』
「理屈が脳筋!?」
扉閉じるのあと数瞬遅かったら、俺気絶させられて起きたら目が見えなくなってたのか。ナイスちょっと前の俺。
「とにかく!収容室まで戻ってください!」
『えーー』
「駄々をこねてもだめです!」
『はーーい』
とぼとぼ、て感じに扉から離れていく気配。少しあとに、収容室のカメラからガチャンという音が聞こえた。どうやら本当に帰ってくれたらしい。
その日は、それ以上は何もなかった。
【2日目】
「なんでまた出勤してんだ俺」
どうも、金の誘惑に負けた朱里です。口座見たら200ドルとか入金されてて目ん玉飛び出しちゃったね。そら二日目も出社です。
『二日目も時間前出勤か。まじめだな、こちらもありがたい。さて、昨日はずいぶんとあれに気に入られたものだな。危ないが都合はいい。なにせ君の前任は、気に障って首を折られたからな』
やっぱ出勤しなきゃよかったかな。
ともあれ来たものはしょうがない。朝日が拝めるように命大事にでやっていこう。とりあえず、このカメラルームには絶対なにも入れない方針で───
「お菓子おいしい?」
「おいしい!」
「そっか〜、良かったね」
良くないが?なんで幼女がこんなところにいるんだよ。怪しいだろ。絶対昨日の自称彫刻ちゃんと同類のやばいのだって。なんで部屋入れちゃってんのさ俺。
いや聞いてくれよ(人格分裂)
こんな危ない場所に幼女一人ほっつき歩いてたらさ、細かいこと考える前に保護しないとってなるじゃん?つまりはそういうことだよ。
ならしゃーないか。
しゃーなくないが?
「そろそろホットミルクも冷めたかな」
「うん!」
念の為に用意したお茶会セットが役に立ってる。本当なら眠気覚ましのコーヒーだけの予定だったけど、紅茶やらミルクやらも持ってきて本当に良かった。
さて、そろそろ本題に切り込んでいこう。
「君はここに住んでるの?」
「うん、そうだよ」
やっぱりか。てことは、この子も普通じゃないんだろうな。実はアンドロイドだったり超能力幼女だったりするんかな。
「私はね、私と目が合った人が暴れちゃうの」
危ないっちゃ危ないけど、昨日の衝撃が強すぎてなんだかマシに思えるな。
「それで、もし私を叩こうとしたらね、その人死んじゃうんだ」
前言撤回この子もやばい。何がやばいって人の生き死にに頓着がなさそうなのがやばい。
「お兄ちゃんは大丈夫なの?」
「大丈夫みたいだね」
大丈夫じゃないが。昨日からずっとSAN値がピンチ。這いよる混沌、ここが産地。
『あ!もしかして今日も来てくれたの!?今行くね!』
「だから頼むよピンチヒッター!?」
右か!?左か!?どっちから来る!?あいつだけは絶対に入れてはならない!じゃないと朝日を拝めなくなる!
「今日は左から来てみました!」
「せい!」
『あ!また閉じた!』
ナイス俺の反射神経ィ!危なかったぜ!
『その子はいいのになんで私はダメなの!?』
「まだ光を見ていたいからです!諦めて帰ってください!」
『その子が帰るまで私も帰らないから』
こ、こいつぅ〜〜!
「お兄ちゃん、私、帰ったほうがいいの・・・?」
「いや、その、それは、うーん」
業務的にもSAN値的にも帰ってもらうべきなのは分かってるんだけど、でもそんな泣きそうな顔されたらなぁ。
「・・・お菓子残ってるし、とりあえず食べちゃおっか」
「うん!」
『じゃあ私もここにいるね〜』
「ぐぬぬ・・・」
結局、業務終了ギリギリまで居座られることとなった。
【3日目】
「お菓子おいしいね!」
「おいしいね!」
「そうだねぇ」
幼女、増えた。
俺の受難はまだまだ続くらしい。自業自得って?知らない言葉ですね。
神谷朱里(FNaS)
本編朱里くんの警戒心と臆病さを倍くらいにした朱里くん。この世界では財団は存在しなく、なんか変なもん収容してる研究所が代わりにある。朱里くんはそこの深夜警備担当。一部のオブジェクトに部屋に入られたら世界が終わる。
幼女ちゃん
幼女。
彫刻ちゃん
173ちゃん。
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