ロア、フィットア領最大のこの町は日が沈み夜になってもそこそこに活気がある。
この町に来て初めて目にするのは間違いなくこの町をぐるりと囲む、大きな外壁。
その高さは8メートルもあり、この外壁はこの町がラプラス戦役時に最終防衛ラインとして機能していた時の名残りらしい。
確かにこの外壁があれば並の攻撃ではビクともしないだろう。
町中はもう日が暮れているのにも関わらず露天商がものを売っていたり、多くの人が道を行き交っている。
「この町に来るのも久しぶりだな」
「そうね、中々来る機会なんてないもの」
前に来た時は両親と一緒だったので、こうしてアルファとこの町に来たのは初めてだ。
他の七陰やシャドウガーデンのメンバーは買い出しだったり、シャドウガーデンの任務だったりで来ているみたいだけど、僕もアルファも基本的には拠点かあの村にいるからな。
うん、ガチで来る機会がなかったな。
まともに観光するなんて本当に初めての事だ。
「とりあえず早めに宿取ろうか。
アルファはどこか良い場所知ってる?」
「あそこの宿とかどうかしら?」
「ん?」
アルファ指を指した先にあったのは至って平均的な冒険者向けの宿。
一泊銅貨8枚と値段もまずまずといったところだ。
そしてどうやらパーティーを組んでいる冒険者が同じ部屋に泊まると朝晩と食事が無料で頼めるらしい。
だが、残念な事に僕もアルファもまだ冒険者登録はしてない。
つまりその恩恵は得ることはできないわけだ。
だけど今の僕はお金に困っている訳では無い。
というかむしろ盗賊を狩り続けたり、ちまちまと魔晶石を売ったりしているお陰でプチ富豪と言ってもいいだろう。
「ま、アルファが良いなら良いか」
「ええ、行きましょう」
竜門亭、という名前のいかにもな宿屋のドアを開けるとそこにはまさに冒険者の宿という雰囲気があった。
入口は酒場になっており、まさに冒険者といった軽武装の剣士や魔術師達で賑わっている。
席数も意外と多く、ちょっとした宴会やパーティーにも使えそうな感じがする。
テーブル席とカウンター席があり、どうやらここがロビーも兼ねているらしい。
ざっと店内を見回して、武装や魔力、肉付きから中にいる冒険者の質を確認する。
S級が1人、A級が2人、B級2人、C級11人……、
うん、例え何かあったとしても僕なら一瞬で全員倒せる。
一人だけローブのフードを深く被ったSランクの魔術師がいるけど、これくらいならアルファも片手間で対処できる筈だ。
「へい、らっしゃい!
あんた達冒険者だろ?
なら一人あたり一泊銅貨8枚で食事付きだぜ」
僕とアルファがカウンターまで行くと、光り輝く頭を持ったちょび髭の男がやってきた。
一瞬どこかの魔族かな?
と勘違いしたけど、どうやら普通に反射して光って見えるだけのようだ。
「いや、僕も彼女も冒険者じゃないよ。
とりあえず2泊お願いできる?」
「おん? 俺の勘は中々外れた事はないんだが違ったか……。
部屋は二人一緒で良いのか?」
「b」「同じ部屋で」
「あいよ」
一応、別の部屋を頼もうとしたんだけどその瞬間にアルファに割り込まれ、同じ部屋という事になった。
一瞬、なんで同じ部屋にしたのか疑問を思ったけど、こう見えてアルファもまだ13歳だ。
きっと、僕と離れ離れになるのが寂しかったのだろう。
「で、食事はどうする?
うちで食べてくか?」
「朝晩と食事付けたら銅貨2枚だったよね?
ならお願いします」
そう言って僕は店主に大銅貨を4枚支払う。
この国、というかこの中央大陸で使われている通貨はアスラ王国が発行したもので下から鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、金貨と上がっていく。
貨幣の価値は、金貨1枚=銀貨10枚=大銅貨100枚=銅貨千枚=鉄貨一万枚。
この世界にはこの世界の物価があるので中々換算し辛いけど、だいたい鉄貨一枚の価値が50円程だ。
「まいど!
部屋は二階の一番右奥、飯が食いたい時にはこの札を渡してくれ」
僕が大銅貨を渡すと、店主は部屋の鍵と食事券と書かれた金属の板を四枚こちらに差し出した。
「おっと、晩飯は今から食うって事でいいか?」
「どうする?」
「私もお腹は減ってるし、今からでいいんじゃないかしら?」
「なら、今から二人前頼める?」
「あいよ、適当に座って待っててくれ」
僕が受け取ったばかりの食事券を二枚渡すと、店主はそのまま厨房へと消えていき、すぐに厨房からはジューっという何かを炒める音が聞こえてくる。
どうやら今から料理を作っているようで、出てくるまでにはそれなりに時間がかかりそうだ。
他のテーブルに出されているものと同じものが出てくるとしたら結構期待できるかな?
この世界には地球にあったような料理サイトなんて無いし、本そのものの値段が高いので料理の本なんてかなりの値段がする。
この世界には印刷機とか、印刷の魔道具なんて殆どないから、その全てが手書きになって一冊書き上げるのにかなりの時間がかかる。
さらに識字率も低いのでそれも相まって本の値段が上がっているという訳だ。
それにしても印刷の魔道具か……。
作れば儲かること間違いなしだな。
今度イータにでも相談してみるか。
「空いてるテーブルに行かない?」
「ええ、そうしましょうか」
僕とアルファが座ったのは一番奥にある二人用の席、ローブ姿をしたあの魔術師が座っている席の隣だ。
一応ぺこりとお辞儀をすると、その魔術師がなぜか化け物を見るような目でこちらを見てきた。
「_______ッ!?」
銀髪の女性で左眼と右眼とで色が違う。
いわゆるオッドアイというやつだ。
地球なら虹彩異色症という非常に珍しい病気なんだけど、この世界のオッドアイは大抵魔眼だと言っていいだろう。
「ん? 魔眼か……」
「……ほ、本当に、人間か?」
「失礼ね。
彼が人間以外の何かに見えるの?」
僕は魔術によって戦闘時以外は魔力が一切外に漏れないようにコーティングしてあるので通常の魔力眼という訳ではなさそうだ。
普通の魔力眼なら一万人に一人くらいはいるんだけど、それよりも高位の魔眼となると非常に数が限られる。
そして、どうやら彼女はその希少な高位の魔眼を持っているらしい。
魔眼にせよ、邪眼にせよ、こう言ったものはかなりカッコいいので、僕も何とか魔眼を再現しようとはしているんだけど未だに成功には至っていない。
人に魔眼を与えられる存在なんて、あの魔界大帝の固有能力くらいだし、他に人工的に魔眼を作ったなんて話は聞いたことがない。
だから、人工的に作れなかったらそのうち魔界大帝に会いに行く予定だ。
でもやばいな。
僕がただのモブじゃないって事がバレた。
こうなると消すか仲間にするかだけど、さすがに消すにしてもこんな所で始末するなんて事はできない。
チラっと、アルファの方を見ると彼女も同じ事を考えているようでこくりと静かに頷いた。
幸いな事に他の客はまだこっちに気が付いて居ないようだし、ギリギリ何とかなる範囲だ。
誰にも気が付かれないようにこっそりと僕は防音の結界を展開する。
僕の陰の実力者生活がこんな所で終わってたまるか。
「…………私の目には、少なくともそこらの竜よりはよっぽど強く見える」
「ふむ、いい眼をしているな。
どうだ? 僕の下で働く気はないか?」
そう言って彼女の方へと手を差し伸べた。
そのタイミングでアルファがニコッと微笑んだ。
ああ、うん。
これは断れば殺すぞって意味だな。
「わ、分かった。
と言っても私は君達が何者で、何をしようとしているのかよく分からない。
そこから教えて貰っても、構わないか?」
「明日の朝8時にここに来なさい。
それまでは決してこの事は話さない事ね」
そう言ってアルファは鞄から取り出した紙にサラサラっと何かをメモすると、それを彼女のポケットに入れた。
さすがはアルファ、グッジョブだ。
こういう時のために記憶を消せる都合のいい魔術でもあればいいんだけど、残念ながらそういう魔術は存在しない。
それにしてもバレたのは初めてだな。
何気なく使っているこの魔力隠蔽も万能じゃないって事か……、いい勉強になったな。
他にも僕が常時展開している魔術は大量にあるんだけど、一応全部見直した方がいいな。
はぁ……、まだまだ陰の実力者は遠いなぁ。
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第一話改稿しましたm(*_ _)m
感想にあったように第一話を削除するべきか?
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即刻削除する。
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このまま削除しない。
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即刻改稿するべき。
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そのうち改稿する。
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そんな暇あったら毎秒更新しろ。