「……魔眼、か」
アルファが、シャドウガーデンのメンバーに魔術師を引渡し、何かを話している後ろで僕は一人呟いた。
魔眼、魔力を持った目。
それは僕の持っていない、未知なる力の一つだ。
魔術の他にもこの世界には元の世界にはなかった様々な未知の力が存在する。
よくある魔力眼のように、ただ魔力を視覚として見る事ができる目を初め、神子、呪子と言った生まれながらにして超能力のようなものを持っている人もいる。
他にもその種族にしか使えない特殊な能力があったりする事もあるんだけど、僕が思うにそれらは全て同じものだ。
魔力を感じ取るくらいなら僕にもできるし、その他にも魔術で代用できる能力である事も多い。
というか大抵のものは魔術で再現する事ができる。
だけど、その中にはもちろん魔術では到底再現する事ができないようなものも含まれている。
相手の記憶を読んだり、他者に無条件で好かれたり、未来を垣間見たり、あの魔術師の魔眼のように相手の実力を看破したり。
他にも触れただけであらゆる魔術や異能を打ち消す……いや、これは無かったな。
とにかく、そう言った力には一つの共通点がある。
『魔力』だ。
この世界に存在するどんな異能にも魔力が関わっている事は間違いない。
僕はこの異能というのは変質した魔力が原因だと仮説を立てている。
要は魔眼もマジックアイテム、魔力付与品と同じなんじゃないだろうかと。
それは神子の持っている力や、呪子の持っている力の場合も同じだ。
魔眼の場合は偶然その眼に変質した魔力が集まっているというだけで、呪子や神子の場合には他の場所に変質した魔力が影響を与えているという事。
何が言いたいかと言うと、僕はこの変質した魔力を人工的に作りたい。
確かに僕は魔眼に憧れていたけれど、そんなことよりも今はもっと重要な能力が欲しい。
不死身の魔王と呼ばれる最強の魔王の一人が持っているとされる能力で、ありとあらゆる魔眼の力を完全に無効化する事ができるらしい。
うん、こういう力こそ陰の実力者に相応しいと思う。
確かにあれば欲しいんだけど、別に僕は強い魔眼がどうしても欲しいわけじゃない。
欲しいのはあくまでも陰の実力者に見合った力と能力だ。
魔眼で僕の実力がバレてしまう可能性があると分かった以上は何よりもその対策が一番だ。
実力のバレている陰の実力者なんて、陰の実力者(笑)もいい所だろう。
僕の陰の実力者への夢は決して妥協が許されるようなものでは無いのだ!
ならば、今は何を捨ててでも魔眼殺しの異能を手に入れるべきだろう。
異能は無理かもしれないが、最低でも魔術で魔眼を防ぐ事は必須だな。
「…………」
一応、案は3つだけ思い付いた。
まず触れた魔力を片っ端から完全に吸収する『ブラックホール方式』。
次に、僕に触れた変質した魔力を完全に跳ね返す『リフレクト方式』。
そして最後が変質した魔力を完全に透過する『ゴースト方式』だ。
ブラックホール方式なら今でも何とか再現できると思うけど、僕の展開してる結界とかも全部まとめて剥がされるのであんまりやりたくない。
それに、色々なものを常時無防備で受け止める事になるので例え僕でも何か撃ち込まれたりすると普通に死ぬ。
やるならゴースト方式かな?
ようは前から来た魔力をそのまま後ろに流すようにする光学迷彩のようなものを作ればいい。
ま、本当にすり抜けるようになるのが一番いいんだけど、魔力を迂回させる魔術を常時身に纏えばいいんだから何とか再現できなくはない。
一応もう似たようなものは作った事がある。
僕が拠点に設置しているあの結界だ。
空間そのものを彎曲させるあの魔術を応用すれば、綺麗に魔力だけを迂回させるなんて事も不可能ではない気がする。
「終わったわよ。
……何か考え事?」
僕が壁に少しもたれかかって、意味深そうに腕を組んでいるとアルファが戻ってきた。
あの魔術師のせいか、今日のアルファはどことなく不機嫌だ。
……流石に押し付けるのは不味かったかな?
僕の実力不足が原因なんだし、本来ならば最後まで僕が対応するべき案件。
それなのに自分から色々と買って出てくれたアルファには本当に感謝しなきゃな。
「……ああ。
どうやらやるべき事がまた一つ増えたようだ」
「あなたが何か抱えてるのは分かってるけど、たまには私達を頼りなさいよ?」
「もちろん、頼りにしているよ」
陰の実力者は地球にいた時よりはかなり近付いたと思うんだけど、やっぱりまだまだ遠い夢だ。
僕に付き合って貰って悪いんだけど、アルファ達シャドウガーデンのみんなには僕の為にこれからも協力してもらう必要があるだろう。
「それで、これからどうするのかしら?」
「おつかいの薬品と調味料を買う事以外には特にこれと言った予定もないし、適当に見回らない?」
「そうね、行きましょう」
僕はアルファに手を引かれ、街中へと歩いていった。
それにしても、こうやって手を繋いで歩いているとまるでデートだな。
デートなんていつぶりだろうか?
…………あれ?
そもそも僕にそんな相手がいた事ってあったっけ?
日本にいた頃から僕は完全無欠なモブを意識して生きてきた。
クラスの中に完全に溶け込み、誰ともでも同じように接してきた。
そんな僕に当然彼女なんてできた事は無いし、こうして誰かと遊びに行く暇があれば当然陰の実力者になるために修行をしていた。
…………何気に人生初デートじゃないかこれ?
「へい! そこの熱々カップルのおふたりさん!
うちの串焼き、食べてかないか?」
「あ、食べてかない?」
僕達二人に声を掛けたのは赤竜の尻尾と言う、名前だけでは何がなんだか分からないような屋台の男。
これで本当に赤竜の肉を売ってるなら面白いんだけど、どうやら売っているのは普通の鳥肉だ。
ま、竜の肉なんてのはものすごく硬いので、もし仮に売っていたとしても全く売れないと思うけど。
つい最近デルタがはぐれ赤竜を狩って塩焼きにして食べていたから僕も貰ってみたんだけど、食感はまるで硬いゴム製のタイヤだった。
味は至って普通の爬虫類、鶏肉とかに近い味がしたのでそこまで悪くは無い。
だけど、かなり硬いのでそんなの普通の人はまず食べれないと思う。
結局あれ食べてたのデルタだけだし……。
「そうね、頂こうかしら?」
「じゃあ串焼き2つ」
「あいよ! 二つで鉄貨6枚だ」
お金を払って串焼きを二本受け取ると、一本をアルファの方へと差し出した。
「ありがとシド」
「お礼を言われる程のものでもないけどね」
串焼きを食べてみると、比較的さっぱりとした味付けで歯応えもそこそこ。
少なくとも本物の赤竜の串焼きよりは普通に美味いと思う。
「お? 頼まれてたものはあの店で揃いそうだな」
「あの塗り薬とメルケーの葉だったかしら?」
「そうそう」
串焼きを食べつつ、適当にお店を見ているとちょうど頼まれているものが揃っていそうな店があった。
店内に入って少し探すと、お目当てのものはあっさりと見つかった。
「定員さん、これとこれ2つずつ貰える?」
「はい、合わせて大銅貨1枚と銅貨2枚です」
「これでいいかな?」
「ありがとうございました」
よし、これで頼まれてたおつかいはクリア。
あとはこの街を観光するくらいだな。
「よし、行こっか。
アルファは何か欲しいものとかある?」
「そういうシドこそ何か欲しいものはないの?」
欲しいもの、欲しいものか……。
アルファに言われて考えてみるも、特に欲しいものとかがあるわけじゃないんだよね。
強いていえば思い出くらいだろうか?
「ふふっ、思い出って。
あなたもそんな事を言えるのね」
「そりゃ僕も人間だからね」
そんな事をアルファと話しながら人が行き交う街中を歩いていると、僕を超えるようなまさに魔力の塊みたいなやつがすぐ横を通り抜けた。
ドルディア族の女剣士と赤髪の少女の二人を連れた、子供の姿の茶髪の魔術師。
「って、エリスが欲しいだけじゃないですか!」
「あはは、バレた?」
「ダメですよ、無駄遣いしたら。
ほら、ギレーヌも何か言ってください」
「何事も経験だ。
試してみるのもいいんじゃないか?」
「ちょっ、ギレーヌ!?」
その魔術師の魔力は、僕の倍以上の量だった。
ああ、うん……。
僕の陰の実力者への道はまだまだ遠いみたいだ。
テッテレー!
慢心フラグが折れました!
魔眼攻略フラグが立ちました!
やっぱり自分がそんな対したことないんじゃないかなぁと思うシャドウ様の回。
北の森様、テヌテト様、ロット子爵様、スティンジー様、レクエア様。
高評価ありがとうございます!
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