流石シャドウ様である。
ある日の朝、僕はアルファと二人でシャドウガーデンの訓練場にいた。
今日は観客も無し。
僕とアルファの二人っきりだ。
燦々と輝く太陽の下、僕はただ立っていた。
ただ堂々と。
どこまでも自然体に。
「さぁ、来い。
我が力の片鱗を見せてやろう!」
そのタイミングでぶわっとコートをはためかせ、僕はゆったりとアルファの方へと歩き始めた。
「本当にいいの?
遠慮せずに行くわよ?」
「無論、構わない。
遠慮なく掛かってくるがいい」
これは単なる組手や試合などではなく、僕が作り出した奥義の最終試験を兼ねている。
アルファのような強者が本気で殺しに掛かってくるくらいでなければ意味が無いのだ。
え? デルタ?
確かに戦力としては一級品なんだけど、僕がミスった時でさえも止まりそうにないので今回はおかえり頂いた。
「じゃあ遠慮なく
そう言ってアルファは剣を抜く。
訓練用の刃が潰されたものではなく真剣、
僕とゼータとの共同で作り上げられた魔剣だ。
たとえ訓練と言えども、本来ならばそんなものを仲間に向ける機会は訪れない。
だけど魔剣でもなければ話にすらならない。
一歩目で最高速に到ったアルファは、
一瞬で僕との間合いを詰めると、その剣を僕の首目掛けて一気に振り抜いた。
魔剣、それも最強クラスの魔剣。
それに使い手もその魔剣に見合っただけの実力がある、シャドウガーデン最強の一人、アルファだ。
当然、無防備のままそんなものを首に受ければどんな魔物であっても一撃で死んでもおかしくない。
だが、僕は違った。
「ふむ、やはり無傷か」
「……さすがね。
こうもあっさりと全力の剣が受け止められると少し悔しい気もするけど」
そのアルファの剣を喰らって付いたのは微かな赤い線くらいで、それは無傷と言っていいだろうダメージでしかない。
無ダメージ、完全なる完封。
まさに僕が思い描く陰の実力者に相応しい防御力だと言っていいだろう。
さらにこの防御にはまだもう一段階の発展系がある。
さっきから常時展開を行っているこのシャドウアーマーを、攻撃を受ける一点に集める事でさらに数十倍以上の防御力を発揮する事ができるのだ。
この手動で行う防御は相手の攻撃を完全に見切る必要があるのでなかなか大変だが、もし仮に使いこなせればこれ以上に強力な防御方法は存在しないと言っていい。
シャドウアーマーというのは僕が最近ずっと開発を続けていたこの奥義の事だ。
それは闘気に反発するように練り上げられた特殊な魔力を、闘気と闘気でサンドイッチのように挟み込むことで展開する防御法。
扱いはこの僕にもかなり難しいけど、使えないほどじゃ無い。
この技は、反発する魔力を使えば相手の繰り出した攻撃の威力を綺麗に吸収できるんじゃないか? という考えの下で作った技だ。
だが、実際にできたものはそれ以上の効力を発揮する究極のバリアだった。
研究をどんどんと続けるうちに、僕はどんな魔力だろうと闘気として身に纏う事ができる事に気が付いた事が全ての始まりと言ってもいい。
きっかけは肉体の強化として使っている闘気と、防御力を上げるために使っている闘気は全く別だという事を発見した事だ。
防御に特化するように変質した魔力か、肉体の強化に特化するように変質した魔力。
どうやら僕達が闘気を身に纏っている時には、無意識の内に魔力を変質させているらしい。
闘気の正体もやはり変質した魔力というものが原因だったのだ。
ならばこの反発する魔力を別な闘気として活用できないはずがなく、この反発する魔力も一つのバリア、防御用の闘気の一種として展開することに成功した。
反発する魔力のクッションに加え、闘気による三重の防御結界。
確かに使いにくいという欠点は抱えているが、まさに最強の防御と言っていいだろう。
「よし、次は魔術をお願いできる?」
「何か希望はあるかしら?」
「どんな魔術でもいいよ、全力で来て」
「分かったわ」
アルファがチョイスしたのは僕も良く使う土魔術。
魔力を込めれば込めただけ威力を発揮できる、ストーンキャノンだ。
と言っても岩石砲と言うよりは岩石銃、ストーンバレットとでも呼ぶのが適切だろう。
高い威力を捨てて、貫通力のみをはね上げた改変魔術の一つだ。
より小さな弾丸をより高速で打ち出せば僕の防御を貫通できると踏んだのだろう。
さすがアルファ、良いチョイスだ。
本来ならばそれに対抗して僕もバリアをピンポイントで展開するべきだろう。
だけど、今回知りたいのはこの技を使った時の素の防御力。
だから僕は何もせず堂々とその一撃を待ち受ける。
「あ、胴体でお願い。
頭は無しね?」
「さすがに分かってるわよ。
じゃあ、行くわよ?」
バシュンッッッ!!
という凄まじい音と共に、僕の腹部に小さな穴が開く。
うん、痛い。
さすがにこれは貫通するか。
っと思ったけど、僕の背中には傷一つとしてできていなかった。
どうやら体内で弾丸が止まったみたいだ。
「うーん。
まだあと少しって感じかな?」
体内の弾丸を魔術で取り出して、僕はそういった。
この様子だとゼロ距離から放たれたハンドガンやマシンガンくらいなら余裕で防げそうだけど、多分その程度の防御力だ。
当然核クラスの一撃を防ぐには全くと言っていいほど足らないだろう。
最終目標は、常時核を喰らっても原型が残る程度の防御力を発揮する事かな?
「……もう既に十分だと思うけれど?」
「いや、まだまだだ」
アルファはそう言うけど残念ながら僕には全く十分には思えない。
この世界には大陸を引き裂くとかいう、核をも上回る力があるらしいからな。
「僕が目指しているのは誰にも負けない強さ。
アルファなら理由は分かるだろう?」
「ええ、よく分かってるわ」
「それにこの技はまだまだ進化できるからね」
進化というのも非常に簡単な話で、このバリアは同じものをどんどん重ねていく事ができるのだ。
まだ完成したばかりで慣れておらず、1つしか展開できていないがそのうち2桁は展開できるようにする予定だ。
外部に何かする訳ではないので、一切魔力も体力も消費しないしこれからは何をする時もこの鍛錬を続けて行けばいいだろう。
魔力の操作がそうだったように、どんなことでも続けていればやがて呼吸するかの如くこなせる様になるはずだ。
「魔眼の無効化ももうすぐ終わるし、これでようやく次のステップに進めるかな?」
「っ!? い、いつの間に魔眼の研究を終わらせていたの?」
「昨日? この技ができた時にね」
変質した魔力を自由自在に生み出せるようになったというのは非常に大きな進歩だ。
まだ物への付与や魔眼の再現なんかの研究はしていないけど、完全に変質した魔力を認識できるようになった今ならただすり抜けるくらいなら簡単に作れると思う。
変質した魔力を全てすり抜けるなんて言うのは無謀だけど、魔眼の魔力に限ればなんとかなると思う。
前例も既にいるわけだし、誰かができるのならば僕にできないなんて言う理由は何処にもない。
完成するのが本当に楽しみだ。
「次のステップというのは何なのかしら?
もしかして魔眼の再現?」
「ああ、違う違う。
そろそろ水神流も極めに行こうかと思って」
実は僕がまともに使えると言える剣は今のところ剣神流だけなのだ。
実は他の流派の技は本当にある程度しか使えないと言っていいレベル。
北神流については全く興味ないし、僕の剣の方が明らかに上位互換だからどうでもいいんだけど、水神流は違う。
その受け流しとカウンターの技術は最後の保険として非常に大きな役割を持つ。
できる限り間合いを管理して、避け。
それでも避けきれないかもしれないからこうしてシャドウアーマーを作ったのだ。
そこに保険としてここに水神流の技術を取り入れれば、僕はさらに圧倒的な防御力を手に入れる事ができる。
そもそも当たらない。
当たる攻撃は流され、カウンターが来る。
当たっても対してダメージが入らない。
うん、なんともそれらしいじゃないか!
せっかく同じアスラ王国を拠点としているのだから、その本拠地に行かない理由は何処にもない。
「シャドウガーデンから何人か連れて行こうかなとも思ってるんだけど、アルファも来る?」
「そうね、行かせてもらおうかしら?
他には誰が来る予定なの?」
「とりあえず、アルファとベータだけかな。
さすがにデルタは連れて行けないし」
あの脳筋にカウンター主体の水神流は似合ってないなんて話ではない。
うん、考えるまでもなく明らかに無理だ。
ガンマとかイプシロンも水神流を習っておけば強くなる事ができると思うけどね。
だけどここ最近、最近のシャドウガーデンのみんなは何かと忙しそうにしている。
この拠点に残っている七陰もアルファ、ベータ、デルタという三人で、中でもガンマとか滅多に帰って来ないんだよね。
かなり広い拠点を自由に使えるのは気楽ではあるんだけど、少し寂しいんだよね。
あ、ベータも連れていくとあのデルタが1人になるのか。
……せっかくだしみんなで行くか。
シャドウ様は転移
-
をレジストする。
-
によって単身転移する。
-
で七陰の誰かと転移する。
-
で七陰全員と転移する。
-
する前にアルマンフィと出会う。