「よく来たね、シャドウ」
「うむ、これから一週間よろしく頼む。
が、その前に……、出てきたらどうだ?」
この気配は間違いなくゼータ。
どうやら物陰からチラチラとこちらの様子を伺っているようだ。
七陰なのにも関わらず、レイダに助けて貰ったので気まずいのだろう。
僕も仮に陰の実力者、シャドウとして誰かに負けたらシャドウガーデンのみんなには合わせる顔がないだろう。
恥ずかしいゼータの気持ちはよく分かる。
「しゃ、シャドウ様…………」
綺麗な白髪をした炭鉱族、ドワーフの少女だ。
相変わらず表情筋が死んでいるが、その青い眼には微かに涙が溜まっている。
「安心しろ、別にゼータを責めるつもりは無い」
「…………でも」
「ゼータよ、よく聞け。
間違いや失敗は悪いことでは無い。
人は失敗するから成長し、間違えるからなるべく間違えないように努力するのだ」
「……」
「大切なのはその間違いから何を学び、何を次に生かし、どう成長するのかだ。
成長の伴わない失敗などには意味はない」
僕もこれまで幾度とない失敗を重ねてきた。
今も失敗をし続けているのかもしれない。
でもそれでいいと思う。
なにせ、失敗しないという事は成長しないという事でもあるからだ。
そんなのは無意味だ。
たとえ僕が理想の陰の実力者になれたとしても、必ずどこかで失敗はするだろう。
そういうものだ。
だけどこれだけは言っておこうか。
「シャドウとして言う事はたった一つだ。
七陰として相応しいように、学べ。
分かったか?」
「…………理解した」
「うむ、ならば構わぬ。
さっそく水神へと贈る魔剣の作成に入るがいい」
「了解、明日までに完成させる」
ゼータはそう言うとアルファ達にも軽く一言掛け、そのまま水神流の道場を飛び出した。
なんとか気持ちの整理を付ける事ができたみたいだ。
「シャドウ、良かったの?」
「ゼータなら大丈夫だ。
心は強いからね」
「そう、信頼してるのね」
「もちろん」
それにしても一体どんな魔剣を作るつもりなんだろうか?
僕が作れる魔術由来の単純に折れない剣でも、魔剣と呼ぶことはできると思うけど、ゼータが本気で作った魔剣はまだ見たことがないんだよね。
作る機会もなかったし。
最近達人は剣を選ばずと言うことわざを知り、僕もその場で剣を作って戦う変則的なスタイルを使っているので、本格的に魔剣を必要としなくなってるんだよね。
あ、今の僕のスタイルはあの
ま、あの弓兵よりずっと強いけど。
無駄に魔力を消費する事になるからそこまでメリットはないけど、本当にあんな感じで剣を使い捨てながら戦うような真似もできる。
すぐに折れるようなすかすかのハリボテ剣とか、爆発する剣に、シンプルな真剣を混ぜることで相手に無駄な行動を取らせる事ができる。
まあ戦闘がカッコよくなるってだけなので、強さとしては普通に戦った時とそこまで変わらないんだけどね。
カッコイイから使っているって感じの、僕だけのオリジナル戦闘術だ。
「それじゃあたしに付いてきな。
道場の中を案内するさね」
「うむ」
レイダの後に付いていくと、そこそこの広さを持った部屋に出た。
そこには三人の人が居た。
パッと見だけでそこそこの強さを持っていると分かるような一流の剣士だ。
彼らがレイダの言っていた水帝だろう。
これで水帝が三人に水神が一人、水神流のトップが勢揃いだ。
「さて、一応紹介しておこうかい。
そこの仮面の男がシャドウ、あたしの知ってる中で二番目に強い剣士だよ。
後ろのはその弟子みたいなもんさね」
「まだ子供じゃないですか……、
本当にあの剣神よりも強いのですか?」
「相変わらずフォーラは疑い深いねぇ。
このあたしが保証するんだから信じときな」
そう言って僕が紹介されるが、一つ引っかかることがあった。
僕だけじゃなくて、アルファ達も少し雰囲気がピリピリしている。
「……ニ番目? その一番は何者だ?」
「あの龍神、オルステッドさね。
あんたもかなり強いが、あいつ程じゃあない」
「ならば今日の内に訂正して貰うとしようか。
真の最強が誰か、その眼で見極めるといい」
龍神オルステッド。
七大列強の第二位、剣神流、水神流、北神流の三流派全てでその長を上回る技量を持っているとか何とか。
その凄さは大陸を割って海を作ったという神話を持つ、あの闘神を超える化け物だと言えば理解できるだろうか?
もはや意味不明な強さだが僕は陰の実力者として、その龍神やさらに上の技神をも超える必要がある。
陰の実力者はラスボスや裏ボスを超えて最強だからこそ、陰の実力者なのだ。
この世界の頂点を知る水神なら、僕がどこに位置するかを見極める事ができるだろう。
上か、下か。
それが分かるだけでも十分だ。
正直言って、多分まだまだ僕も格下なんだろうなとは思っている。
なぜなら僕は龍神が使える水神流を実戦レベルで使えないからだ。
だけど、こうして面と向かってお前は一番じゃないと言われるのは少しイラッとする。
さて、どうしようか?
……うん、なら今日中に水神の代名詞とも言える剥奪剣界、奪ってみせようか。
「流石だねぇ。
それなら見させてもらうとするさね。
おっと、紹介の続きだったね。
こっちにいるのは左からフォーラ、ウェイル、バラン、水神流の水帝達だよ」
そうだな。
一番強いのはフォーラ、二番目がバラン、ウェイルが三番目って所か?
デルタとフォーラが互角、いやカウンター型の事を考えると向こうが少しだけ上だな。
「フォーラです。
よろしくお願いします」
「あー、ウェイル・ロォークだ。
その……なんだ、よろしく頼む」
「バランと申します。
以後お見知り置きを」
レイダが彼らの紹介を行うと、その三人が挨拶をしてきた。
それにしてもこの世界って本当に天井が高いな。
うちの七陰もかなり鍛えてあるんだけど、少し探せばすぐに上が出てくる。
「ではこちらも紹介をしようか。
左からアルファ、ベータ、デルタだ。
言うならばそうだな……影神流の影帝、とでも言おうか?」
ベータの剣技はギリギリ帝級に届いてないよな気がするけど、流派の名前も今決めたくらいだし、特にこれといった帝級の基準はないので好きに名乗っていいだろう。
まあ戦力のいい目安になるし、何かそういう基準を作っておいても良いかもな。
「じゃあ始めようかね」
「割り当てはこちらで決めていいか?」
「あたしは構わないよ」
「感謝しよう」
アルファ達も軽く自己紹介を返すと、さっそく修行に入るための割り当てをする。
一人に対して水帝一人。
かなり豪華な使い方ができるな。
「アルファとバラン、
ベータとウェイル、
デルタとフォーラだ。
異論はあるか?」
「さすがの良いチョイスだね。
デルタってのと、フォーラの組み合わせは非の打ち所がないほど完璧さね」
本人はやる気だが、流石にデルタに水神流は無理だと判断して、模擬戦を連打し続けれるようにあえて一番強いフォーラへと当てた。
あとは残りを実力差がそんなに無いようになるよう並べただけだが、水神には好評らしい。
「さて、水神レイダ・リィアよ。
我々はもう少し広い所で試し合わないか?」
「ここだと巻き込まれる奴らもいるだろうしね。
なら少し歩くけど森にでも行くかい?」
「そうするか、こちらも全力を出すのなら人目の無い方が好ましい。
ではアルファ、後は任せたぞ」
「分かったわ。
私達の好きにしてもいいのよね?」
「単純に教え合うなり模擬戦をするなりは自由だが、あまり道場には迷惑をかけるなよ?」
「当然よ、そのくらいは弁えてるわ」
僕はアルファに後を任せて道場を後にし、レイダと共に森へと向かった。
この作品のいい所は?
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描写が良い
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読みやすい
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表現が良い
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更新が早い
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全体的に良い