あれから時間はあっという間に流れ、あっという間に王都で過す最終日がやって来た。
奥義の習得は引水習得に少々苦戦したくらいで、他はあっさりと習得する事ができた。
「むぅ……、3人ともずるい。
……私はそんな権利、貰ってない」
「あはは! 私もですよぉ。
ですがベータもデルタも勝てなかったようですしぃ、流石のアルファ様でも無理なのでは?」
「うぅ〜! でもレイダは強いのです」
「そうですね。
私も手も足も出ずに負けちゃいましたし」
「私もやりたかったですね。
距離があれば水神だろうと勝てますので!」
「間違いなくイプシロンでは無理でしょう。
そもそも今回は魔術戦を想定していません」
上からゼータ、イータ、デルタ、ベータ、イプシロン、ガンマだ。
そんな予定まるでなかったのに、気が付いたらシャドウガーデンの七陰全員が揃っていた。
イータは僕が呼んだからいいとして、イプシロンとガンマはどこから聞きつけたのだろうか?
それにしても七陰全員が揃うのは、2ヶ月ぶりくらいだろうか?
イータとゼータが何してるのかは聞いてるけど、ガンマお前何してるんだよ……。
ま、そっちから言わないならプライベートに踏み込む気は無いし、僕も聞く気はないけどさ。
「主さまはどっちが勝つと思います?」
「流石にレイダの勝率が高いかな?
でもいい線までは行くと思うよ」
「で、デルタはアルファが勝つと思うのです」
「……言わされてる?」
「えと、アルファ様は地獄耳なのです。
嘘でも応援しなきゃダメ」
こいつ……、アホだ。
アルファが聞いてるって分かってるならそれ言っちゃダメだろ。
本人もそのミスに気がついたようで、あわあわしている。
「あ、こっち見ましたね」
「あははっ、さすがはデルタです。
応援してるので強く生きてくださいね!」
「うぅ〜っ! ゼータが悪いのです!」
「…………よしよし」
七陰全員そろうとやっぱり賑やかだなぁ。
やっぱりシャドウガーデンはこんな感じで賑やかなのがいいな。
最近、本部から人が居なくなって活気が消えてから、初めて僕もこういう賑やかなのが好きなんだなぁと気がついた。
ま、シャドウガーデンは僕以外女子というある意味ハーレム状態だから、あんまり多いとあれなんだけど。
「シャドウ、悪いけど始まりの合図をお願いできるかしら?」
「ああ、レイダもそれで構わないか?」
「あたしはいつでも構わないさね。
好きに来ていいよ」
「ふむ……」
アルファとレイダが僕の目の前で向かい合い、静かに剣を構えた。
そろそろ戦いが始まるという事で、他の七陰のメンバーも話を止め、僕の合図を待つ。
シリアスな雰囲気が漂う。
……アルファの目がガチだ。
いつもの模擬戦とは気迫が全く違う。
今回ばかりは勝つ。
刺し違えても勝つ。
そんなオーラを放っている。
……ほ、ほんと何をお願いされるんだ?
「始め!」
僕の合図で動いたのはアルファ。
対するレイダは剥奪剣界で……、
ん? 展開していない。
確かに水域は展開しているが、これは剥奪剣の構えじゃない。
こ、これは……、
「剣神流奥義『光の太刀』!」
アルファが放つのは城跡のような一手。
剣神流の奥義にして、最強の技。
光の太刀。
「剣神流『光返し』」
「ッ!!?」
レイダの使った技は剣神流の技。
光返し。
最高速度に達していない位置に最高速度で追いつき、両断するという剣神流らしい強引な技。
まさか水神が剣神流の技を使うなんて。
それはこの場にいた全員が思った事だろう。
中でも実際に身に受けたアルファはたまったものじゃない筈だ。
想定外の行動は思考を鈍らせる。
その上で、手首なんて切り落とされたなら尚更判断力が落ちる。
一手飛ぶ、それは戦闘に置いては致命傷。
光返しから剥奪剣へと繋げば返す太刀はアルファが次の思考をするよりも早い。
_______終わったな。
僕はそう判断して、治癒魔術の準備を整える。
ま、デルタやベータも瞬殺だったし、アルファも瞬殺に終わってもおかしい事じゃない。
それに初見殺しが合わされば尚更だ。
レイダに光返しなんて他流派の技を使われたら僕でもビビるのだから。
「はあぁぁあぁあああぁッ!」
しかし、アルファは諦めなかった。
全く諦めていなかった。
相手が動作する前に動けば勝つ。
レイダはもう剣を振り切っている。
だから返さないといけない。
その前に一発入れれば勝てる。
そう判断したのだろう。
「き、切られた方の手で!?」
アルファがとったのはそのまま殴ること。
止まらずに殴れるなら確かにこれが一番手っ取り早いが、なかなか取れる手段じゃない。
その全身全霊の一撃は胴体に綺麗に吸い込まれ、レイダを後ろに吹っ飛ばした。
「うぐっ! や、やるねぇ。
あたしもそんな事されたのは初めてだよ」
「流石の私も、あの水神が剣神流の技を使うとは思わなかったわね。
でもごめんなさい、負ける訳にはいかないの」
「そうかい。
でもこのあたしも水神流の長として、そう易々と負ける訳にはいかないのさ」
そして距離を取るように後ろに下がりながら、残った左手で右手を取り、治癒魔術で完全に再生させた。
一瞬の攻防を制したのはアルファだった。
だが、制したのはその一瞬だけ。
治癒を終えたアルファはそのまま流れるように突っ込むが、もうレイダは体制を整えていた。
そして、いつもの構えを取り終える。
『剥奪剣界』
これでアルファが動けば、即座に切り捨てられるという状態が出来上がった。
レイダとアルファの間には大きな技量の差があるので、僕のように切り返すことは不可能。
当然光の太刀より剥奪剣の方が技の立ち上がりが早いため、今度は何もできずにただ斬られる。
それに、剥奪剣よりも早い防御手段なんてアルファはなにも身に付けていない筈だ。
しかし、当然アルファは諦めていない。
「残念だけど終わりさね」
流石にレイダには水神流の技は効かない。
だからそれ以外の技を使って、剥奪剣を攻略する必要がある。
一体どんな技で攻略するのかと思ったが、別に剣技に頼る必要は無いということを思い出した。
もちろん迎撃しても流されて、そのままカウンターが来るだけ、こうなればもう手は無い
だから放つのは自分自身も含めた一撃。
「いいえ……、まだよ」
剥奪剣よりも早く、爆風で自分を吹き飛ばす事で何とか剥奪剣界の間合いから抜け出す事に成功した。
攻防一体となった完璧な選択。
だが、レイダは無傷。
相当な威力の爆風だったが、当然のように水神流の技で受け流したのだ。
「このあたしを相手によく粘るね。
かなり無茶するじゃないか」
「……さすがは水神ってところね。
少しはダメージが入ると思ったんだけどっ!」
アルファが間髪を入れずに再び斬りかかり、
それをレイダが受け流す。
水神流によくあるぬるり、ぬるりとした滑らかな立ち回りを前に、突如としてアルファが手も足も出なくなる。
攻撃の度にカウンターを合わせられ、治癒魔術を使わされる羽目になり、アルファは魔力をどんどん消費していく。
対して、レイダは全くと言っていいほど消耗しておらず、ダメージも本当に最初の一撃だけ。
「アルファに慣れたか……」
「みたいですね」
その全ての攻撃は攻撃を始めた瞬間には既に見切られている。
そんな状態でどれだけ攻撃を続けたとしても、傷一つ付けられず、やがてレイダに手番が渡る。
「うぐッ!」
「まだやるかい?」
そう言って、ついに崩れたアルファへとレイダは剣を突きつけた。
「……まけ、ました」
勝敗を分けた理由は単純、
技量の差だ。
最初の一瞬は本当にアルファが勝つんじゃないかともビビったけど、終わってみれば本当にあっけないものだ。
「そこまで!
勝者、水神レイダ・リィア!」
アルファの敗北宣言の後。
勝者の宣言をして、ボロボロだったアルファに回復魔術を掛けた。
でもよく頑張ったよ、ほんと。
そう言って彼女の頭を撫でると、逃げるように他の七陰の後ろに隠れた。
……あれ?
もしかして何かやらかした?
ま、いっか。
「ふぅ……、それにしてもあんたんとこの奴はどいつもこいつも物凄い気迫だねぇ。
お陰で久しぶりにいい経験になったよ」
「それはこちらもだろう。
アルファ達も、神級の達人との戦闘はとてもいい経験になった筈だ。
それに水神流も修めさせて貰ったしな」
「本当に全ての奥義をたったの一週間で全部極めちまうとはねぇ」
レイダはそう言って遠い目をするが、僕としてはまだ極めたとは言えないレベルだと思う。
と言ってもあとは
特に水域は70メートルしかない。
目標の2キロにはまだまだ程遠いんだよね。
それと水神流を学べなかった七陰に水神流を教える必要があるから、またほんの少しだけ忙しくなりそうだ。
健康茶様、
もしもしコルト様、
SoBoYoShi様、
高評価ありがとうございます!
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速報、一章がそろそろ終わります。
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