「んっ……?」
パチパチと言う焚き火の音で僕は目を覚ました。
周りを見回すと僕と戦ったあの銀髪の男と女子高生が座っていた。
……一体どういう状況だこれは?
それに僕はどうして生きているんだ?
魔力は7割は回復している。
あの時は負けたが、これなら剣を抜かれたとしてもそこそこいい勝負には持ち込めるだろう。
ま、僕が封印魔術でガチガチに固められてなければだけどもさ。
神級の封印魔術か何かで完全に拘束されており、魔力が全くと言っていいほど動かない。
さすがの僕もこんな状況で暴れられるような馬鹿じゃない。
まずは落ち着け。
冷静に現状を分析しろ。
「目を覚ましたか」
「……なんで僕は生きてる?」
「俺は情報源を殺すような馬鹿な真似はしない。
それにお前も俺と同じく、あのヒトガミを怨んでいるのだろう?
言わば仲間のようなもの、殺す意味は無い」
「(・д・)え?」
「俺はヒトガミの使徒などではない」
……やらかした。
ただの勘違いじゃないか!
一つ弁明するならばあの時の僕は軽くパニックを起こしており、何一つとして冷静じゃなかった。
いつもなら戦いを楽しむ場面なのに、真っ向からぐーで殴り倒すような戦い。
あれは完全に対話の無い戦い。
僕が一番嫌っている戦い方の筈だ。
アルファ達を失って我を忘れていた。
はぁ……。
僕も精神面はまだまだ未熟ってことか。
「まずは自己紹介をしよう。
俺の名はオルステッド。
龍神、と言えばわかるか?」
「ん? 龍神?
あの第二位の?」
「ああ、その龍神で間違いない」
……ああ、なるほど。
そりゃ強くて当たり前だね。
と言うか僕が負けたのも納得できる。
ん?
この男が世界二位なのか?
という事はあの時僕がロアで見た魔力の化け物は魔神の生まれ変わりか何かなのだろうか?
いや、単に魔力だけ凄いって線もあるのか?
だけど、あの戦いで頂点が見えた。
世界の頂きを知ることができた。
よし、そのうち追い越すか。
「こちらも聞きたいことは色々とあるが、
まずは分かった事を説明しておこう。
この大規模魔力災害についてだ」
「何か分かったのか?」
「まず最初に言っておくが術者は居ない。
人為的なものではないだろう」
ああ、そうか。
そりゃあもちろん嘘かもしれないけど、何となく違う気がする。
嘘を吐くメリットも無いしね。
「何らかの現象が重なった事で魔力が一点に集まり、この世界は一瞬だけ異世界と繋がった。
その結果が彼女の召喚、そして彼女が召喚された反動によって地上にあった全てのものが世界の各地へと転移した」
「転移?」
「ああ、範囲はフィットア領のほぼ全土。
転移したのは凡そ海抜10メートル以上、地形に沿って転移しているようだ。
恐らくだが、地下深くや谷になっている場所は転移していないだろう」
「少し待ってくれ!
もしかしてこの魔力災害で消えた人は全員生きているのか!?」
「ああ、転移直後は生きているのではないか?」
それを聞いて、僕は安心した。
シャドウガーデンのみんなは生きている。
何処にいるかは分からないけど、生きている。
今はこれだけで十分だ。
絶対に、世界のどこにいても見つけ出す。
まず最初に頼るべきは魔界大帝だ。
魔界大帝キシリカ・キシリスの持つ魔眼の中には『万里眼』と言うこの世界の全てを見通せる魔眼がある。
彼女ならば世界のどこにいても見つけ出してくれるだろう。
魔大陸、完全に世界の裏側だけど僕が全力を出せば一日で着ける事は確認済み。
あとは僕の頼みを聞いてくれるかどうかは分からないけど、最悪拷問でもすればいい。
それでも無理ならどうにかして彼女の持つ魔眼を作る異能か、魔眼を奪う。
「……助かった、ありがとう」
「構わん。
俺が勝手にやった事だ」
「代わりと言ってはなんだけど、何か願いでもあればなんでも協力するよ。
まあ、僕に頼むことがあるならだけども」
「……ほう? 願いか。
一先ず彼女との意思疎通を計りたい。
何か手段はあるか?」
どうやらオルステッドはこの女子高生とコミュニケーションが取りたいらしい。
僕が転生者だとバレるかもしれないけど、まあ仕方がないか。
『通じるか?』
『え!? あなた日本語喋れるの!?』
『最初に謝らせて欲しい。
いきなり襲いかかってごめん』
『え、ええと……。
理由を聞いてもいいかしら?』
『……この魔力災害で少し、
いや、かなり混乱していた』
『魔力災害?』
『間違いなく君がこの世界に来た反動でこの辺り一帯が跡形もなく消し飛んだ』
『うそ!?』
オルステッドが言うには少し違うらしいが、こんな感じの説明でいいだろう。
詳細はこの世界の言葉を学んでからでいいから、彼に聞いてほしい。
「なんと言っている?」
「いや、まだ今の現状を伝えただけだ。
何か伝えたい事はある?」
「そうだな……」
そう言ってオルステッドは腕を組んで空を見上げ、何かを考える素振りをする。
「まずは俺の事と、お前の事を伝えてくれ。
それと、彼女にこれからどうしたいかを聞いて欲しい」
「分かった」
自己紹介か。
龍神……、なんと言えばいいんだ?
ま、そのまま直訳しようか。
『まずは自己紹介をしようか。
僕はシャドウ、君は?』
『な、七星静香よ。
それよりも先に聞かせて。
この辺りが吹き飛んだってどういう事?』
『君が転移してくるまで、ここにはロアと言うそれなりに大きい町があった。
ま、今じゃこの通りだけどね』
『それは本当なの?』
『異世界とこの世界が繋がるためにはそれはもう莫大な魔力がいるんだ。
その一端、ほんの一部が零れ落ちた結果、この辺りにあったものは世界の各地に転移することになったらしい』
地面に絵を描きながら、なるべく分かりやすいように説明をする。
『転移? 私みたいに?』
『ま、そういう事だね。
彼が言うには体がバラバラに転移したりはしてないらしいね。
つまり転移した瞬間に死ぬって事はない。
迷宮の奥深くとか、空の上とかに転移してなければの話だけど』
そういうのを考えればかなりの人が死んでいるんじゃないだろうか?
そういうのを除いても、魔大陸とかベガリット大陸に転移したら普通その日のうちに死ぬ。
七陰のみんなはどうだろうか?
たまたま全員本部にいたせいで間違いなくこの災害に巻き込まれたはず。
……心配なのはガンマだな。
彼女は七陰で唯一1人だけ、聖級以下の戦力しか持っていない。
場合によっては中級の剣士にすら負ける程。
上空に転移すれば即死。
迷宮に転移しても十中八九は死ぬ。
魔大陸やベガリットでも同じだ。
一応保険があるので大丈夫だとは思うけど、ガンマはああ見えて意外と鈍臭いから、ちゃんと発動したかどうかは怪しい。
生きていればいいんだが……。
『……何人、死んだの?』
『軽く百万は死ぬ。
二次的なものも含めればもっと。
でもま、君のせいじゃないから気にしなくてもいいんじゃないか?』
『そう……、そうね。
私を殺したくて当然よね。
あなたがどうして私を殺したかったのか、あなたの説明でよく分かったわ』
『ま、もう良いんだけどね』
『あら、そうなの?』
ガンマがどうかは知らないが、彼女は僕が作った腕輪を持っている。
魔力を込めるだけで結界を展開できるので一週間は無事に生きられる筈だ。
赤竜山脈とかに転移してたら、もう運がなかったとでも思ってもらおう。
『僕の仲間はたかが転移なんかで死ぬようには鍛えてないからね。
ま、一人を除いてだけど』
『凄まじい戦いだったものね。
軽く音速は超えてたんじゃないかしら?』
『……奥義を撃つために一瞬立ち止まったとはいえ、よく割込めたな』
あの戦闘に普通の人間が割り込むのはもう自殺とかいうレベルじゃない。
あの時はよく考えてなかったけど、この少女の精神は鋼のメンタルとかいうレベルじゃない。
オリハルコン並のメンタルだ。
……異世界から召喚される。
圧倒的なまでの勇気を持った人間。
良く考えれば彼女は正に『勇者』では?
異世界から召喚されただけのなんちゃって勇者よりもずっと勇者に近い。
…………育ててもいいかもしれない。
勇者を育てる陰の実力者。
これも十二分にありだ。
『あの時はその、我武者羅だったもの。
助けてくれた彼が殺されると思ったら、体が勝手に動いてて。
あ、そう!
彼はなんて言うの?』
『この男は龍神、名前はオルステッドだ』
『龍神? まさか神様か何か?』
『うん、君の思ってるその神様だね』
『…………あの神様?
その、本物の?』
『そう思ってていいんじゃない?
少なくともこの世界で上から二番目に強いのは間違いないよ』
『……そんな神様と互角に戦ってたあなたは一体なんなの?』
烈風連山様、
ふれんち様、
高評価ありがとうございます!
https://twitter.com/Kotobuki_Amane?s=09
↑
作者Twitter
どうやらこの作者。
1RT毎に1000文字書く企画中のようです。
キャラ崩壊タグ付け足しました。
これで彼女を勇者にしても問題……
大幅なキャラ崩壊(意図的なもの)は有り?
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大歓迎。
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構わない。
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どちらでもいい。
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ダメ。
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虫唾が走る。