陰の実力者になるために!   作:琴吹天音

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宝物庫

 

 

 

 

「お! あったあった。

 意外に残ってるもんなんだな……」

「ほう? 凄まじい量の魔力付与品(マジックアイテム)だな」

「一応僕の拠点だからね」

 

 

 オルステッドの話を聞き、もしかしたら残ってるんじゃないかと拠点のあったあたりを探してみると、転移したのはやっぱり拠点の地上部分だけだったようで、地下倉庫部分はそのまま残っていた。

 ここには迷宮で掻き集めたマジックアイテムが一通り保管されている。

 

 

 シャドウガーデンで集めたマジックアイテム達は今のところ自衛手段のないナナホシを手っ取り早く強化することができる。

 

 

 その殆どは光を灯すだけだったり、水を出すだけだったりとマジックアイテムとしては下級の部類だが、中にはもちろん有用なものもある。

 

 

「えーと……」

 

 

 物理障壁を展開する指輪。

 中級以下の魔術を無効化するローブ。

 履いてる人に闘気を纏わせる縞パン。

 

 

 ……何だこのパンツ。

 

 

 一度だけ致命傷を肩代わりするペンダント。

 って、なんでこんなのが残ってるんだ。

 これは僕が使うか。

 

 

「中々に有用なものもあるよう……ん?」

「ああ、それは確か装着者の魔力回復量が3倍になる首輪だった筈」

 

 

 珍しいアイテムだから覚えてるんだよね。

 オルステッドが手に取った赤色の首輪の詳細を伝えると、彼は目を見開いて声を上げた。

 

 

「何だと!?」

『きゃっ』

 

 

 その声に驚いたのか、ナナホシが手に持っていた炎が出る短剣を地面に落とす。

 割れ物もあるから驚かすのは辞めて欲しい。

 

 

 でもなんか凄い食い付きだな。

 魔力量じゃなくて、魔力回復量が上がってもそこまでメリットはないと思うんだけど……。

 でも気になるし、少し出し渋ってみるか。

 

 

「残念だが、タダであげる訳にはいかない。

 その類の物はそれしかないからね」

「ああ、これ程の物は俺も見た事がない」

 

 

 やっぱり希少なのかこれ。

 

 

「欲しいのか?」

「当たり前だ。

 お前が良ければでいいが、俺の持つ魔力付与品(マジックアイテム)の何かと取引しないか?」

「……」

 

 

 え、龍神の秘宝とトレードできる物なのか? 

 僕も相当な量のマジックアイテムを持っているが、まだまだ欲しいものは沢山ある。

 そして相手は龍神、そのどれかを持っていてもおかしくは無い。

 

 

 ついでに言うと、この首輪は僕から見ればただ珍しいだけのマジックアイテム。

 交換に出しても全く惜しくない。

 それを龍神の秘宝と交換できるならこちらとしては万々歳だ。

 

 

 欲しいマジックアイテムか……。

 それなりにあるが、1番はこれかな? 

 

 

「アイテムボックス、内部の空間が拡張された袋や箱のようなマジックアイテムはある?」

 

 

 よくファンタジーで見かけるアイテムボックスと言うのは何気に凄い代物だ。

 某青だぬきの持ってる秘密道具で一番使われてるのもこれだしね。

 前から欲しいと思って探し回っているのだが、未だに空間型のマジックアイテムは一つも見つけられてないんだよな。

 

 

 これさえあれば王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の真似事もできるようになるし、持ち運べる魔道具やマジックアイテムも一気に増えて自由度が段違いになる。

 あと、今までは迷宮を攻略しても一度で全てを持ち帰るなんて真似は出来なかったけど、これがあればそれだけで話は変わる。

 

 

「ああ、魔力付与品(マジックアイテム)ではないが、似たような袋は存在する。

 古代龍族の作り出した秘宝だ」

「それとなら交換に応じよう」

「……まあいいか。

 くれてやろう」

 

 

 オルステッドは懐から小さな巾着袋のようなものを取りだしてこちらに差し出した。

 本当にアイテムボックスなのか確認する為に中に手を突っ込むと、僕の腕が丸々すっぽりと中に入る。

 魔力を放って広さを確認すると、中は半径6キロメートル程の球状に空間が広がっていた。

 

 

 入口が狭く、大きい物は中に入らないというのが難点だが、それを補ってなお余りある性能だと言っていい。

 さすが龍神の秘宝だ。

 

 

「それは最後に死んだ龍、冥龍王マスクウェルが作り出した古代龍族の秘宝。

 名を次元龍の懐袋(グラトニー・ストマック)

 世界に四つ、いや今となってはこの世界に2つしか残っていない代物だ。

 売るなとは言わんが、大切にしろ」

「あ、ああ……」

 

 

 ……世界に2つしかないようなものをポンと交換に出せるようなものなのかその首輪。

 確かにレアだけども。

 

 

『ねぇ、私の装備は揃ったの?』

『とりあえずこのくらいかな? 

 全部でアスラ王国金貨12万枚くらいにはなるから絶対に無くさないでね?』

『具体的にはどのくらいの価値なの?』

『1万枚あれば余裕で城が立つよ』

『なんで易々と人に預けられるのよ……』

 

 

 イータが金貨1万枚からで城を建てていた筈なので、彼女に頼むと城が十二城も建つ。

 そして彼女に渡したマジックアイテムの中で、一番値段高いのはあの闘気を纏えるようになる水色と白の縞パン。

 何だこのパンツ。

 

 

『とりあえず今付けられる物は一通り身に付けといてほしい。

 別にパンツはいいけど』

『な、なんでそんなものがあるのよ!』

『ちなみにそれだけで城がいくつも建つ』

『…………』

 

 

 鍛えれば誰でも闘気を纏えるようになるとはいえ、当然時間は掛かるし才能による部分もかなり大きい。

 その修行に費やす時間を短縮できる上、闘気が纏えるということはそれだけで聖級並の実力になれるという事。

 そんなもの高くて当然だ。

 

 

 魔力のない彼女でもこれさえあれば闘気が纏えるし、後は軽く剣を教えるだけでよっぽどの事がなければ即死するという事は無い筈。

 

 

『どう?』

『意外と悪くないわね』

 

 

 少し大きめの黒いローブを着て、腰に剣をぶら下げ、白い仮面をつけたナナホシ。

 その姿はどこからどう見ても暗殺者。

 見る人が見れば全身マジックアイテムだらけだと言う事に気付く筈なので、何処と無く超一流の暗殺者に見えなくもない。

 

 

「ナナホシはこれでいいか。

 オルステッドは何か欲しいものはあるか?」

「いや、この首輪だけで十分だ」

 

 

 一応そう確認してみるも、他に欲しい物は何もないらしい。

 仕舞える物は一通り次元龍の懐袋(グラトニー・ストマック)に収納して、僕達はこの基地を後にした。

 鎧とか、盾とかの大きい物はさすがに入らないので、盗まれないように土魔術を使って埋め立てる。

 

 

「お前達はこれからどうするつもりだ?」

「とりあえずは王都アルスまで行くかな」

「む? お前の仲間はいいのか?」

「確かにそれが最優先だけど、僕の仲間はすぐに死んだりする事はないからね。

 ナナホシの宿を用意してから、僕の仲間を見つけに動くつもりだ」

「なるほど、宛はある……、

 いや、聞く必要は無いか」

 

 

 ナナホシには悪いが、こっちが優先だ。

 とりあえず魔界大帝を捕まえて七陰全員の場所を聞き出し、アルファに連絡を入れる。

 その後一番心配なガンマの救出、何かとてつもない事をやらかしそうなデルタの確保だ。 

 

 

 命の危険はアルファの次に低いデルタだけども、転移した場所によってはデルタが一番面倒臭い事になるだろう。

 七大列強の誰かとか、魔王とかに喧嘩売ってなければいいんだけど。

 

 

 ああ、単身で魔王に喧嘩を売りに行くデルタの姿が目に浮かぶ。

 …………さすがにそれは無いか。

 

 

 これからどうするのかの話を終えると、彼は僕に背を向けた。

 

 

「それでは俺は行こう。

 さらばだ、シャドウ」

「またね、オルステッド」

『あの、ありがとうございました!』

 

 

 龍神、オルステッドはコートを翻しカッコよくその場から立ち去った。

 さすが龍神、挙動一つ一つにそこはかとないカッコよさが含まれている。

 

 

『さてと、僕達はこれから王都を目指す。

 何か異論はあるかな?』

『その王都では何をするの?』

『僕が仲間を探しに行く間、一人で野宿するのはもちろん嫌だろう?』

『え、確か世界中に転移してるのよね?』

『早急に探さないといけないのが二人いてね』

『……どのくらい掛かるの?』

 

 

 ナナホシがそう心配そうに聞いてくるが、そんなに長い間放置するわけじゃない。

 

 

『掛かって七日かな。

 最短で三日くらいだと思う』

『もしかしてこの世界って狭いの?』

『世界の広さか……』

 

 

 そう言えばこの世界って一周するとどのくらいの距離があるのだろうか? 

 今度正確な距離を測ってみるか。

 

 

『まあ、世界一周で4万キロだな』

『……地球とほぼ変わらないじゃない。

 あ、そう言えばあなたはかなり速いものね』

 

 

 その1メートルは北極から赤道までの1千万分の1だから、この世界の1メートルと地球の1メートルが同じかどうかなんて分からないんだけどさ。

 ナナホシが納得したならそれでいいか。

 

 

『それじゃあ、僕達も行こうか』

『王都までは歩いて行くの?』

『いや、こうする』

『あ、ちょっ!

 きゃああああああああ!?』

 

 

 気合を入れて結界魔術を掛けると、僕は彼女を抱えて王都に向かって走り出した。

 

 

 







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