陰の実力者になるために!   作:琴吹天音

4 / 32
大きくなった組織でできること

 

 

 シャドウガーデンを設立したあの日から3年くらいの時間が経った。

 あれからというもの盗賊や野盗を狩る度に「やはりコイツは人神(ヒトガミ)の使徒だったか」とか言ってみたり、アルファ達とそれっぽい石碑を読み解いた振りをして設定をどんどん付け足して言ったりと僕はかなり充実した日々を過ごしている。

 

 

 あ、そうそう、僕が勝手に作った人神の設定はかなり紛らわしいので、どこぞの偽者が本物の人神に成り代わったという設定になった。

 本物の太古の七神の方をジンシン。

 で、僕達が敵にしている方がヒトガミ。

 これならば人神や、他の太古の七神を崇めている人達がいても迷惑をかける事はないだろう。

 

 

 それと、かつて盗賊団が拠点にしていたこの廃村も、今では僕達シャドウガーデンの拠点としてかなりの魔改造を施した結果、まさに陰の実力者にふさわしいものになっている。

 一番苦労したのはこの拠点の防御に使用している結界魔術だろうか? 

 

 

 僕が住んでいる村近くの森にあった遺跡に掛けられている魔術を参考にして、専用の腕輪を持っていない人間には認識する事も立ち入る事もできないという強固な結界を魔道具によって展開してある。

 そもそも魔道具というものは誰かが魔力を注いだり、魔力結晶を使ったりして初めて機能するもので、周囲の魔力を自動で使用して機能しているあの遺跡の解析は困難を極めた。

 

 

 我ながらよくここまで頑張ったなぁ……。

 なんて思い出しながら椅子に座って足を組み、カッコ良くコーヒーを飲んでいると、ドアがコンコンとノックされた。

 

 

「シャドウ様、少しお時間よろしいでしょうか?」

「ベータか、入れ」

「報告させていただきます。

 先日倒した冒険者パーティー、フレイムシャークはシャドウ様の仰っていた通り、ヒトガミが我々に差し向けた刺客だったようです」

 

 

 ベータ、アルファが拾ってきた猫みたいな青い瞳に、泣きぼくろの銀髪のエルフで、僕とアルファに続く3人目のシャドウガーデンメンバーだ。

 ほどほどにって言ったのに、アルファが捨てネコ拾うみたいに連れてくるから仲間はどんどん増え、シャドウガーデンメンバーにはもうそこそこの人数が存在する。

 

 

「ふむ、やはりな」

 

 

 フレイムシャークというのは最近僕が住んでいる町に訪れたそこそこ強いSランクの冒険者パーティーだ。

 本来ならばこんな田舎にいる奴らでは無い、ならば奴らはヒトガミの手先に違いないという僕のでっち上げで、勝手にヒトガミの使徒にされた挙句、アルファ達のスパーリング相手を務めることになった。

 うん実戦、それも同格以上の強者と戦うのはとても大事な事だから仕方ないね。

 

 

 これまで通りに野盗や盗賊を討伐したり、魔物を狩ったりと戦う機会はいくらでもあるのだけど、自分も死ぬ可能性があるような殺し合いとなればそんな機会はなかなかない。

 だけど、いざと言う時にこれを経験しているのとしていないのでは非常に大きな差がある。

 だからフレイムシャークの人達には悪いと思っているけど、後悔はしていない。

 

 

「新たな情報は聞き出せたか?」

「いえ、彼らは何も知らせれずに操られていただけのようです」

「そうか……。

 やっぱりヒトガミの事は遺跡頼みになりそうだね」

 

 

 そりゃあ僕が考えた設定だからね。

 もしこれで新しい情報が出てきたりしたら僕はかなり驚く事になるだろう。

 というかこれで情報が出てくるなら、新しい遺跡を探索するっていう僕の大義名分が消えるからやめて欲しい。

 ダンジョン化している遺跡だと、マジックアイテムとか金貨とかがゴロゴロ出てきてかなり美味しいんだよね。

 

 

 マジックアイテムというのは魔力付与品、ようは長期に渡って強い魔力を帯びた事で特殊な力を得たアイテムの事だ。

 強力なものは一日に数度しか使えないけど、魔道具とは違って魔力を消費することも無いし、時間経過で魔力が回復するので、そのうちまた使えるようになる。

 

 

 僕がこれまで見つけた中で一際強い物と言えば、どんな魔術だろうが一日に一度だけかき消す事のできる腕輪だろうか? 

 僕がファントム・イレイザーと名付けたこの腕輪は帝級の魔術だろうが、神級の魔術だろうがなんだろうがそれがどんなものであっても一日に一度だけかき消す事ができるというかなりヤバい代物だ。

 

 

 うん、そりゃあ強いんだけど使い所はかなり限られるんだよねこれ。

 敵が持っていたらかなり厄介なのは間違いないと思うんだけど、自分が持っていてもそこまで使えないというのはファンタジーあるあるだ。

 

 

「シャドウ様、その……、

 遺跡の件なのですがデルタが新しい遺跡を発見しました」

「え……、デルタ? 

 アルファとか、ガンマじゃなく?」

「はい、あのデルタです」

 

 

 鉄砲玉デルタ、もしくは特攻兵器デルタ。

 簡単に言えば戦闘極振りのアホ。

 僕にはどう考えてもそんなデルタが遺跡を発見したようには思えない。

 

 

「あの無鉄砲、脳筋の突撃兵器デルタが?」

「…………はい」

 

 

 聞き間違えかと思って一応確認してみると、どうやら本当にあのデルタが遺跡を発見したようだ。

 

 

「で、そのデルタはどこにいるの?」

「……そ、それが勝手に遺跡の奥へ走っていきまして」

「…………」

 

 

 いや、普通ならデルタを心配した方がいいんだろうけども僕としては遺跡の方が心配だ。

 行き止まりがあれば回り道をするのではなく壁を壊して進むような、デルタはそんな究極のアホだ。

 

 

 それに、スペックだけならばデルタは僕に次ぐ第二位。

 普通の冒険者なら即死するようなトラップがあっても、あのデルタなら正面から突破するだろうし、Sランク以上の魔物でもいなければ一方的な蹂躙になる事間違いなしだ。

 

 

「はぁ……」

 

 

 椅子に深く腰をかけ、大きくため息を吐いた。

 僕の頭の中に辺り一面を破壊し尽くして瓦礫の山を築き上げてその上に立ち、嬉しそうに尻尾を振っている光景が浮かんでくる。

 早く行かなければ取り返しのつかない事になりそうだ。

 

 

「仕方ない、僕が行こう」

「その、申し訳ございません」

 

 

 別にベータは何一つ悪くないのだが、デルタの代わりに僕に頭を下げた。

 うん、今度からデルタはアルファと行動させる事が必須だな。

 さすがにアルファなら止めれるだろうし、何とかできると思いたい。

 

 

 あいつ戦力としては一級品なんだけど、こういう事があるから使いにくいんだよな。

 ま、良いけどさ。

 

 

「血が滾るな……」

 

 

 僕は掌に圧縮した魔力を瞬間的に解放し、大気を震わせる。

 特に意味はないが、こういう演出大好き。

 ベータも驚いて『さすが……』とか呟いてくれるし。

 

 

 最近はアルファとかベータとかデルタとかもいて練習相手に不足はなかったけど、偶には新鮮さも欲しいし、こういうのもいい経験だ。

 

 

「……久しぶりに本気を出すか」

 

 

 こうやって陰の実力者っぽい空気感を出すのにも慣れてきた。

 遺跡と言うだけあって、そこそこ強い魔物が出る可能性もあるし、久しぶりにいい運動ができそうだ。

 

 

 さすがのデルタも自分が敵わないような相手には手を出さないだろうし。

 …………なぜか急に心配になってきたな。

 

 

「よし、急ぐぞベータ。

 その遺跡まで案内してくれ」

「はい!」

 

 

 僕は掛けてあった黒色のコートをはためかせながらカッコ良く羽織ると、ベータと共に遺跡へと急いだ。

 

 






ギリギリセーフ!
(急げば急ぐだけ作品が雑になる模様)

好きなのは?

  • 陰の実力者になりたくて!
  • 無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
  • どちらも好きではない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。