王竜、キングドラゴンという竜を知っているだろうか?
中央大陸に存在する魔物の中でもトップクラスの力を持つ竜、王竜はその中でも最高位の強さを誇る。
黄色い鱗を見に纏い、重力魔術を自由自在に操る竜だ。
他の竜と比べても圧倒的な巨体を持ち、外皮はまるで甲羅のようで、骨肉は重く硬い。
竜の骨や肉は武具の素材として最上級の物であり、王竜の皮は磨けば黄金色に光ることもあって芸術品としての価値も非常に高い。
そんな王竜を仮に一頭でも狩ることができれば、しばらくの間は遊んで暮らせるという程だ。
群れの強さという面では赤竜には及ばないものの、単体の強さとしてはこちらが遥に上回る。
その強さはまさに最強の魔物に相応しく、並の冒険者ではその足元に立つことさえも許されない。
年齢を重ねれば重ねるほどに強くなるというのは竜に限らず魔物ではよくある事で、もし百年、二百年という百年単位の長きに渡って生きてきた竜がいればその強さは計り知れない。
だが、デルタの目の前に現れたのはそんな竜だ。
「グガァァァァァァァッ!!!」
「……竜、狩る! ボスが喜ぶのです!」
そんな竜を目にしても、デルタは一切怯むことは無かった。
これまでと同じように力を込めて剣を振るう。
彼女にできるのはたったそれだけで、これまではそれ以外の戦法なんて必要なかった。
「ッ!?」
ボスが教えてくれて、
ボスが褒めてくれた彼女の剣。
その一閃は『ガキンッ!』というまるで金属でも戦いたかのような凄まじい音と、激しい火花を散らしただけで不発に終わった。
真っ直ぐ行って、斬る。
確かに速さは足りていたかもしれない。
だが、デルタにはパワーが全く足りていなかった。
それも当然の話で、王竜が重力魔術によって自らの皮をこれでもかと言うほどに強化しているからだ。
このクラスの王竜ともなればその硬さは計り知れない。
その防御力は全魔物中最高位の防御力を誇り、剣神流の奥義である光の太刀をもってようやく最低限の切傷となるほどだ。
もし仮に正面から有効なダメージを期待したいのであればそれよりも強い、王級、帝級といったより高度な剣技が必要になってくるだろう。
「硬い!」
そして、その強さは防御力だけでは無い。
「ガルルグォォァァッ!!」
大きな咆哮と共に繰り出された前足がデルタに向かって振り下ろされる。
咄嗟に身体を捻って、その一撃をなんとかやり過ごすものの、その攻撃は二撃目、三撃目と連発できるものでしかない。
防御する技術を殆ど持たないデルタにとって、王竜が放った攻撃はたとえ牽制目的の攻撃だとしても非常に脅威となりえる。
その肉体に搭載された圧倒的な筋肉による一撃は、もし一掠りでもすれば致命傷になる可能性があるからだ。
幸い、速さは大したスピードでは無い。
しかし、その攻撃力と防御力の差はそのスピードの差を埋めてもなお余りある。
「(……強い!?)」
もう一度放たれた王竜の攻撃を曲芸のようにバク転で回避したデルタは、そのまま空中で剣を振るい、またもやその防御力に阻まれる。
デルタが斬った場所には小さな傷はできているが、たったそれだけ。
そしてそんな傷は王竜からしてみればほんの些細なダメージでしかない。
護る手段は無い。
攻める手段も無い。
でも、逃げる事もできない。
背中を向けて逃げるような隙を見せてしまえば確実に目の前の王竜は自分を仕留める事ができるだろう。
戦おうとしている相手と、逃げようとしている相手、この場の王竜にとってどちらの方が仕留めやすいかなんて一目瞭然だ。
逃げる場所が限られているのだから、そこに向かってブレスでも放てばいい。
それでこの勝負は王竜の勝ちだ。
だが、もちろんそんな事は関係なしにデルタは王竜と戦う道を選んだだろう。
そもそも、デルタは相手をどうやって倒すかしか考えていない。
究極の脳筋に後退の二文字はないのだ。
「ゴルルルァァァッ!」
「今ッ!」
そんな彼女が咄嗟に思い付いたのが剣による迎撃だ。
力が向こうの方が上と言うのならば、相手の力を利用すればいい。
そう判断してタイミング良く剣を振るう。
吹き飛ばされないようにピタリと地面に張り付き、下から上へと斬りあげるようにして全力で剣を振るった。
本来ならば剣とは体重を乗せて斬った方が遥に威力が高くなるし、消費するエネルギーも全く変わってくる。
だが、この場で彼女が取った選択は最良の判断と言えた。
けたたましい音と共に、王竜の前足に大きな傷が走り、血が飛び散った。
確かなダメージの感覚と手応え、それはこの方法ならば勝てると確信するのに十分なものだった。
「やったので____あぐッ!」
そう確信して喜びの声をあげようとしたデルタを、王竜の尻尾が吹き飛ばした。
___油断した。
そう判断した時にはもう遅い。
バキバキ、という骨の折れる鈍い音と共にデルタは大きく吹き飛ばされた。
王竜の武器は当然前足だけでは無い。
牙、ブレス、尻尾、重力魔術などなど、他にも様々な攻撃手段が存在する。
今来ている攻撃だけが全てだとはもちろん限らない。
そして何より、王竜はこのくらいの傷では怯まない。
腐っても王竜はSランクの魔物。
舐めてかかっていい相手ではない。
「がぁ、う、うぅ〜」
咄嗟に横に飛ぶことで衝撃を吸収したとは言え、その一撃は凄まじく、彼女の肋骨の何本かは間違いなく骨折しているだろう。
だが、折れたのは腕でもなければ足でもない。
「まだ、やれるのです!」
腕が折れていないのだから剣は握れるし、足が折れていないのだからまだ立てる。
痛いし、頭はクラクラするし、今すぐにでも横になってしまいたいが戦えるのだから止まる理由はない。
まだやれる。
自分なら勝てる。
そう気合いを込めてデルタは再び剣を握り直す。
「やああああッ!」
剣を振るう。
王竜の攻撃に一つ一つ、丁寧に剣を合わせていく。
剣を振るった反動で空中に浮いてしまわないように、地面に身体を縫いつけるかのように張り付き、下から確実に王竜の肉体に切り傷を積み上げていく。
__________楽しい。
剣を振るう。
精密に、精密に。
一度斬った鱗に覆われていない場所をもう一度斬る。
激しい戦闘の中で、もう一度全く同じ場所を斬り続けるという常軌を逸した絶技。
_______楽しい!
「あははは!」
「ガァァァッ!」
斬って、
斬って、斬って、
斬って斬って斬って斬る!
デルタは笑っていた。
どこまでも良い笑顔で、
まるで戦いこそが自分の人生だと言わんばかりの満面の笑顔。
見ず知らずの人が見れば、笑いながら王竜と互角に斬り合うその姿は正しく剣鬼にしか見えないだろう。
しかも、戦いの中でデルタはなおも成長を続けている。
剣はより速く、より重く、より鋭く。
戦い方はより少ないエネルギーで、より大きなダメージを与えられるように。
そこには当然、逃亡の二文字はどこにも無い。
一太刀浴びせる毎に返り血を浴び、
降り注ぐ血を愛おしそうに受け止める。
「シッ!」
「ガァァ!?」
冷静に、冷淡に、冷酷に、
ただ戦闘を行う殺戮機。
その姿は正しく特攻兵器、アタック極振りのデルタ。
「ボスは言ったのです。
攻めてればそのうち勝てる!」
シドはそんな事は一言も言っていないが、デルタの中では言った事になっているのだろう。
その教えに従うかのように、忠実に相手を攻撃し続ける。
デルタは守らない。
ただ、攻める。
もう防御も回避も要らない。
痛い攻撃をすれば向こうから攻撃を止めてくれるし、捨て身でカウンターを合わせ続ければそのうち相手が諦めるから。
彼女の剣は、ここに一段階、また一段と昇華した。
聖級の座から、王級、そして、さらにその先にさえも手を伸ばさんとする剣。
それはもはやデルタが編み出した、デルタだけの剣だと言っていいだろう。
「ガァァァッ!」
「やああああッ!」
お互いの命を振り絞って戦った戦い。
その決着をつけるべく、両者は共に全力の一撃を繰り出した。
王竜がその土壇場で選んだのは、これまで一度も見せていない
王竜の口に光が灯った。
禍々しい紅、ありとあらゆるものを焼き尽くす灼熱の業火を放つ火炎ブレス。
だが、王竜のその選択は遅かった。
切り札、必殺技。
これらの最も有効的な使い方は初見殺し。
王竜はそう、デルタが部屋に入ってきた瞬間からブレスを放つべきだったのだ。
油断、慢心。
それこそが王竜の敗因だ。
そう咎めるように完成されたデルタの剣はその吐き出されたブレスごと、王竜を真っ二つに斬り捨てた。
大きな身体を持つ魔物の頭から尻尾まで一直線に切断する、ファンタジーならではの不思議な剣。
そんな闘気をふんだんに活用した彼女オリジナルの剣技は、確かに王竜の命を絶った。
「やった! 勝った!!」
そう勝利の喜びを口にするも、彼女の全身はもうボロボロだった。
着ている服は破れ、骨もかなり折れているし、シドが彼女の為に土魔術を駆使して作った剣も刃こぼれが起きている。
だが、勝利は勝利。
早く帰ってボスに自慢しよう。
そう思って帰ろうとしたデルタは、先程の王竜を遥に上回る凄まじい気配を感じて足を止めた。
王竜?
そんなものは比較にもならない。
そんな圧倒的な強者のオーラ。
______漆黒のコートを見に纏った、
冥想塵製様、たかしの野望様、高評価ありがとうございますm(*_ _)m
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