シドは激怒した。
必ず、かの猪突猛進な脳筋を叱らなければならぬと決意した。
シドには脳筋が分からぬ。
シドはもっぱらの理論派であり、あらゆる事はしっかりと考えてから行う側である。
シドには分からぬ。
壁を破壊して前に進んだであろうデルタの心情が全く分からぬ。
ベータに案内されてやってきた遺跡はそれはもう酷い有様だった。
その有様はどこぞの有名な文学作品のオマージュが僕の頭の中をよぎったほど。
まさかここまで酷い有様だとは思っていなかった。
「…………なにこれ?」
「も、申し訳ございません」
僕の目の前にあったのはデルタが何も考えずに突っ込んだ故に生まれた悲惨な惨状だ。
行き止まりがあればそのまま真っ直ぐ壁を壊して進み、罠があればその動体視力と反射神経を駆使して避けるか、無視してそのまま切り抜けている。
うん、罠を無視するのはいいんだよ。
でも壁を壊していくのはどうかと思う。
そのおかげで遺跡はあちこち崩落しているし、遺跡全体が悲鳴をあげているのが手に取るように分かる。
これもうそのうち遺跡全体が崩壊するんじゃないかな?
……これは一刻も早くデルタのもとに向かう必要があるな。
このままだと貴重な遺跡があっという間に崩れ去ってしまう事は間違いないだろう。
というかそんな事になったらいくらデルタだとしても生き埋めになって死にかねない。
それに、恐らくこの遺跡はただの遺跡ではなく、古代魔族達の作った『迷宮』だ。
迷宮と単なる遺跡との間には天と地程の差が存在する。
遺跡には歴史的価値のある美術品や、貴重な資料なんかが存在するけど正直言ってかなり売りにくい。
一応、それなりの財宝や魔道具が出てくる事もあるけど僕に作れない魔道具なんて殆ど無いし、その財宝だって僕の部屋に飾っておくくらいしか使い道がない。
だが、迷宮は違う。
遺跡とは比べ物にならない程の魔物の巣や、多数の罠があるというまさにゲームに出てくるようなダンジョン。
その迷宮の一番奥には魔力結晶、マジックアイテム、そしてそれらを守る強力な守護者が居る。
魔力結晶は非常に手っ取り早く売れるし、出処を問われる事もまず無い。
それにまずまずの値段で売れるのでどの迷宮だろうが、通常の遺跡とは比べ物にならない程の大量の大量な資金を得ることができる。
当然、陰の実力者をする為にはかなりの資金が必要になるので、お金というのは本当にいくらあっても足りない。
だけど、やっぱり多くの人が迷宮に潜る一番の目的はやっぱりマジックアイテムだろう。
迷宮に眠っているマジックアイテムの中にはかなりヤバい性能のものから、本当に役に立たないものまで存在する。
言わば異世界版のガチャみたいなものだ。
あと遺跡とは違って迷宮の守護者なんてものがいるけど、これはAランク以上の魔物が守護者となっている場合が多い。
Aランクの魔物くらいならデルタも普通に倒せる事だろうし、Sランクやさらにその上の化け物がいるならば逃げ……。
……どうだろうか?
あのデルタだから突っ込んでる可能性も高いんだよね。
「……迷宮全体が崩落する危険性があるな。
とりあえず急ぐぞ」
「はい!」
魔力を全開にして魔物を避けながら、壊されている壁の方へと走っていく。
この壊された壁が目印代わりになっていて、簡単に奥へと進む事ができる。
デルタのおかげでショートカットし放題だな。
……ドゴォンッ!
そんな風に迷宮の奥へと進んでいくと、何かが叩きつけられる音が迷宮内を響き渡った。
「シャドウ様、今のって」
「ああ、デルタだな」
さっきの衝撃で崩れている部分もあるし、
このままだと本格的に迷宮が崩落しそうだな。
いくらなんでもそれはヤバい。
たとえ僕でも迷宮全体を支えようとすれば魔力が足らないし、もう迷宮の崩落は前提として動いた方がいいだろう。
……うん、いっその事もうぶち抜こうか。
少し危険はあるし、デルタの真似みたいで癪だがそれが1番早いというのは確定的に明らかだ。
それに迷宮の探索であれば、また今度時間のある時にでもゆっくりやればいい。
「ベータ、捕まれ。
少し無茶をするぞ」
「え、ええ!?
その、よろしいのですか?」
「うん? いいからほら早く」
ベータが腕に捕まったのを確認すると、土魔術を使って迷宮を少し補強する。
比較的安全に穴を開けるつもりだけど、一応こうして補強しておかなければあっさりと崩落する可能性がある。
「行くぞ!」
僕が使うのは火魔術。
だけどよくある火魔術とは違って、爆発なんかを起こすわけじゃないし、そもそも炎を出すわけじゃない。
使うのはただの熱、
だが、その熱は一点に込める事で驚異的な破壊力を発揮する。
「アトミックレーザー!」
火帝級魔術、アトミックレーザー。
僕が放った魔術はあっという間に迷宮の最下層まで穴を開けた。
魔力をほぼ完全な効率で熱に変えるだけの魔術。
この魔術は使う者が使えばかなりの威力を発揮し、見ての通り込めた魔力次第では帝級クラスの一撃も放つ事ができる。
それに、衝撃をほぼ発生させないという地形にやさしい魔術の一つでもある。
戦闘用にも使えなくはないが、斬った方が早いので最近はもっぱら装備の加工に使う魔術と化している。
どんな金属だろうが綺麗に加工できるので加工系最強の魔術なんだよねこれ。
「よっと」
最下層までは数えたところ11階層。
それにしてもデルタはよく短時間でこんな所まで進めたな。
地面に穴を開けたりするならまだしも、壁を壊して進むだけなら僕でもかなり厳しいだろう。
「シャドウ様、あちらを」
「ん? あいつボス部屋の扉まで壊したのか……」
最下層に降り立ち、辺りを探索しているとベータが壊された扉を見つけた。
恐らく、何らかの仕掛けで開くようになっていたのだろうが、デルタはそれが分からずに壊して進んだって感じか?
うん、ありそうな話だ。
その奥を見ると、デルタが嬉しそうに尻尾を振っているのが見える。
が、その姿は見てわかるようにボロボロだった。
服はかなり破けていてエロ同人みたいになってるし、僕が作った剣もかなり刃こぼれが起きており、少し欠けている。
それに、肉体のダメージもかなりあるようでパッと見た限りではいつ倒れてもおかしくないような瀕死の重体に見える。
うん、なんで平気そうにしてるのか理解に苦しむ光景だな。
「あ、ボス! デルタは竜を狩ったのです!!」
デルタもこちらに気が付いたのか、尻尾を振りながら嬉しそうに僕に飛びつこうとした所をベータに羽交い締めにされた。
普通ならば一瞬で振り払われるのだが、さすがにこの怪我では厳しいらしく最終的に地面に押さえつけられた。
「キャンッ! ベータ痛い! 辞めて!!」
「勝手に独りで迷宮に潜ったお仕置です」
「でも、デルタは頑張った!
竜狩った! ボスなんとかして!」
「竜?」
竜と聞いて、どんな魔物が守護者をしていたのかとボス部屋に足を踏み入れると、そこには御伽噺に出てくるようなかなり大きな竜がいた。
黄色い竜、中央大陸最強の魔物と名高い王竜。
そんな王竜が真っ二つに斬られていた。
王竜は最強の魔物と言う言葉の通りにかなり強い魔物で、デルタがこうして生きているのはもはや奇跡に近い。
勝てそうにない相手がいれば逃げろと口を酸っぱくして何度も言っているのにこれだ。
「……とりあえずデルタは暫くの間反省だな」
「ボス!?」
「デルタ、シャドウ様もこう言ってます。
観念しなさい!」
「うぅ〜〜ッ!」
そのままベータは縄でデルタを括り始めた。
もがいてその縄から逃れようとするが、ベータが使った縄は僕が拘束ように作ったもの。
たとえデルタが万全の状態だったとしても、もうこうなってしまえば逃れる事など不可能に近い。
「ベータ、一応手当しておいてくれるか?
僕は一通りアイテムを回収してくるよ」
「はい、デルタの事はお任せ下さい」
……アイテム回収とは言ったものの、王竜の素材はどうしようか?
できることなら全部持って帰りたいのだが、さすがにそれは無理だろう。
とりあえず牙と魔石だけ持って帰ればいいだろう。
もし崩れてなければシャドウガーデンを全員連れて、残りを回収するって事で問題なさそうだ。
……それよりもマジックアイテムの効果を確認しておくか。
見た感じだと全部を持って帰るのは無理そうだし、優先度としては優秀なマジックアイテム、高価な王竜の素材、あとは魔力結晶を持てる限りでいいだろう。
よし、できるだけ頑張るか。
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