復活した解放王ネメシスとの戦いを終え、宴を楽しむベレト達。
宴を抜け出したベレトの前に、クロードが現れ話をする。

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最終決戦後にベレトとクロードで会話する話

(少しハメを外しすぎたな……)

 

 ガルグ=マクの食堂の外で、薄緑色の髪を持つ一人の青年が空を眺めていた。

 彼の名はベレト、セイロス騎士団とレスター諸侯同盟の混成軍の先頭に立ちアドラステア帝国や彼らの裏で動いてた闇に蠢く者達「アガルタ」、そして蘇った英雄王ネメシスとの激闘を戦い抜いた男だ。

 ネメシスとの戦いに勝利した記念に大規模な宴会を行っていたが少々飲みすぎたため、箸休めとして会場を抜け出していたのである。

 

(……父さんが生きていたらとんでもないツケが出来ただろうな)

 

 今はいない父のことを思い浮かべ、ベレトは遠い目をしながら口元を緩める。

 彼の父ジェラルト=アイスナーは、彼がガルグ=マクで教師をしていた時にアガルタの刺客に暗殺された。

 ジェラルトが死亡して5年以上経ち元凶を打倒した今でも、彼が死んだ時の光景をベレトは忘れることはなかった。

 そしてベレトは懐から小さな小箱を取り出し、その中身を眺める。

 箱の中には小さな指輪が入っていた。

 

『いつかお前にも大切な人が出来たら、この指輪を贈ってやるといい』

 

 今際の際にジェラルトがそう言ってベレトに渡してきたこの指輪は、彼の母親シトリーの形見でありベレトはそれを渡したいと思った相手に女神の塔に来て欲しいと伝えている。

 後はどのようにこの指輪を渡すかベレトは少々思い悩んでいた。

 

「こんなとこにいたのか、きょうだい」

 

 背後から声をかけられて、ベレトは振り向く。そこには褐色の肌を持つ青年……彼の仲間でありレスター諸侯同盟の盟主であるクロード=フォン=リーガンが立っていた。

 

「クロードか。少々飲みすぎてな」

「みんなあんたのとこに行って酌をしてたからな。仕方ないさ」

 

 ベレトの言葉にクロードは笑いながらそう答えた。

 そしてベレトの手元にある指輪を見ながら問いかける。

 

「その指輪、誰に渡すかはもう決めたのか?」

「ああ、お前がもらってくれるか?……なんてな」

「ははっ、あんたがそんな冗談を言うようになるとはな。初めて出会った頃とは大違いだ」

 

 クロードはそう言って初めてベレトと出会った頃を思い出していた。

 野外での実習に出て盗賊に襲われいたところを、ベレトと出会って窮地を脱しその後に彼がヒルシュクラッセ担任になって長い付き合いが始まった。

 担任になった当初は無表情で何を考えているのかよくわからなかったが、今では「きょうだい」と呼ぶほどに信頼を寄せている。

 

「そうだな。俺が変わったとするならそれはクロードやクラッセの皆と出会えたからだろう。皆には感謝してるよ」

「面と向かってそう言われると少しむず痒くなるな。――で、結局誰に指輪を渡すんだ? きょうだい」

「――だ」

「本当かよ?」

 

 ベレトから指輪を渡す相手を聞いて、クロードは驚いていた。

 

「俺はてっきり――だと思ってたんだけどな。読み違えたか」

「『卓上の鬼神』の推測を躱せたなら、俺も戦いの中で成長できたということだろうな」

「言ってくれるねぇ」

 

 そしてベレトとクロードは共にこれまでの戦いを振り返っていった。

 かつての3つのクラスの同窓生達による争いが発生したグロンダーズの戦い、アドラステア帝国……そして皇帝エーデルガルトとの決着をつけたアンヴァル攻略戦。

 ヒューベルトの手紙から存在が明らかになった闇に蠢くもの『アガルタ』とのシャンバラでの決戦、最後に蘇った英雄王ネメシスと配下の十傑との決戦を。

 

「エーデルガルト、ディミトリ、ヒューベルト……、戦いの中で同じ学び舎にいた仲間との戦いも随分あった。彼らの死に報いるためにも、フォドラに安寧を取り戻していくのがこれからの戦いだな」

「そうだなきょうだい。……それで、俺から一つ聞いてほしいことがあるんだがいいか?」

「ああ、構わない」

 

 そしてクロードはベレトに言った。

 

「俺は故郷に帰らなきゃならない。統一王国の王様は、あんたに任せる」

「……! 俺が王位に?」

 

 驚いた様子を見せるベレトにクロードは語る。

 自らの流れるフォドラの血は利用できるだけ利用した。だからもう半分の血を使いもう一つの故郷を変える……見たい景色をみるために。

 ベレトはセイロス教の教徒レアに指名された後継者で、フォドラを救った英雄でもある。だから神にすがる人達の心の拠り所として、戦乱に荒んだ大地に喘ぐ指導者として、

 そして「異物」を排除しない新しい価値観を持つ人間として新たなフォドラの王になってほしいと。

 

「そうか、そこまでお前に評価されていたんだな俺は」

「ああ、あんただからこそここまで動いてきたんだよ色々とな。……それで、答えはどうなんだ?」

「そうだな……正直自分にそこまで大きなことが出来るとは、俺は思っていない」

「そんなことは――」

 

 クロードが口を挟もうとすると、ベレトは手でそれを制する。

 

「だけど死んでいった人達やレア様、それに仲間達に報いるためにお前の話引き受けよう。それに――」

 

 ベレトは力強い目でクロードを見据えていった。

 

「生徒であり戦友(とも)であるお前の期待を俺が裏切るなんてできないさ。そうだろう、『きょうだい』」

「ははは、やっぱりあんたは俺が見込んだ通りの男だったよ」

 

 そして2人は固く手を結んだ。

 

「次に会う時は互いに王として会うことになるだろう」

「……! 俺の素性に気づいてたのか」

「薄々だがな」

 

 クロードにはレスター諸侯同名の盟主の他にもう一つの顔があった。

 それはフォドラの隣りにある大国『パルミラ』の王子という顔だ。

 彼はパルミラに戻り、パルミラにも『異物』を排除しない新しい価値観を根付かせる新たな戦いをする決意を固めていた。

 

「お前の野望が叶うのを俺も願っている。頑張れよ、クロード」

「ああ、フォドラは任せたぜきょうだい。……それともう1つの戦いも応援してるぜ」

 

 クロードがベレトの持つ指輪を見ながらそう言うと、ベレトは「ああ」と頷いた。

 

「……それでクロード、お前の方は誰と故郷に帰るつもりでいるんだ?」

「そうだな、俺も言っとかないと不公平か。……――だよ」

「何? お前達そんな関係だったのか……これは気づかなかったな」

「ははっ、これで1勝1敗で互角ってわけだな」

「違いない」

 

 こうしてベレトはクロードと別れた。

 場所は違えど志を同じくする2人は、ベレトの言葉通り数年後に王として再会することになる。

 そしてフォドラとパルミラ、対立を繰り返した両者も新たな王の誕生により新しい関係を築く。

 共に生きるために壁を乗り越え手を取って心で触れ合う……固い絆で結ばれた新たな両者の関係。

 後世の歴史家は達はクロードがネメシスとの戦いで予期したとおりに両者の関係をこう記した……"フォドラの夜明け"と。


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