提督を募集している日本海軍だが腐っても軍隊だ。いくら霊力が高い人物が提督を志望してもそれ以外が駄目なら提督になるどころか入隊も出来ない。
提督になるためにはまず海軍が毎年行っている試験に合格し育成学校に入学、2年から3年の時を提督として必要な事を叩きこまれ各地に存在する鎮守府に見習いとして配属される。そして一年から二年程見習いを行ってようやく提督となれる。
毎年試験を受ける者は百を超えるが合格できるものは半数以下、育成学校を卒業するまでに更に半分以下に減る。実際に提督になれる物は十分の一程だ。それだけ厳しく狭き門だが待遇の良さと艦娘といううら若く、美しい女性に囲まれて仕事が出来るというのはとても魅力的らしく提督志望の人はたくさん出てくる。
こうして長々と話しているが俺も提督を志望する一人だ。どんな大学にも入れるようによほどの専門教科以外の勉学を行ってきた俺はラストスパートと言わんばかりに勉学に励んでいる。
あの鎮守府に行ってからもうすぐひと月ほどが経過する。俺はあれから二回、真奈美は四回いっていた。積極的な真奈美に今更驚いたりしない。ああして何事にも積極的な姿勢を見せているからこそ同性にも好かれているのだから。決して頭の良さ、コミュニケーションの高さのみが真奈美が人気の秘密ではない。そしてそれは、俺では出来ないからこそ羨ましくも妬ましい気持ちがあふれてくる。
真奈美が高嶺の花だったら少なくともこうはならなかった。自分とは住む世界が違う、それだけで終わったから。だが、真奈美は何時でも傍にいる。俺に引っ付いてくる。
見上げるだけなら問題ない太陽も隣にくれば話は別だ。太陽に抗う力のない俺では簡単に焼き死んでしまう。
……話はずれたが提督になるための最初の関門がもうすぐやって来る。試験日は夏休みの週末、各地の鎮守府で行われる。その為試験の日はあの鎮守府に向かう事になる。そこで試験を受け夏休みが終わる前には結果が出る。
夏休みに行われる理由として合格後に入る育成学校が寮住まいになるためその為の準備を余裕をもって行えるようにするためらしい。
そんな訳で試験まで後一月ほどしかない。それまでに出来るだけ知識を蓄えて試験に備えなければいけない。専門的な知識こそほとんど出ないと聞いているがそれでも難問であることに違いはない。どんなに準備してもし過ぎという事はないだろう。
「提督になりたいなんて一体どうしたのかしらね~」
「親としては心配だが将来の夢がないよりはマシだろう」
親に提督になりたい事を伝えると驚きつつも許可してくれた。このご時世だ。親としては心配かもしれないがその分給料は良いし手当も厚い。そう言った事を伝えたり簡易検査の結果を教えたりした他に今後の日程も伝えてある。妹も去年受験だった為負担は少ないとはいえ受験は直ぐそこだ。両親は最大限のサポートをしてくれると約束してくれたし妹も邪魔しないように気を付けるという。もしかしたら妹も提督になりたいって言いだすかもしれないな。真奈美を姉として慕っているし可能性は少しあるかな。
さて、俺の平穏な生活まであと少しの辛抱だ。叶えられるように全力で取り組むか。
「例の北条和也はどうなっている?」
横須賀鎮守府地下の中央作戦司令室では定期的に行われる会議が行われていた。しかし、元帥の細川幸三を除けば補佐をしている者以外誰もいなかった。代わりに細川幸三の前には数台のモニターがありそこに会議に参加する各提督が映っていた。
「鎮守府からは説明会を受けてからちょくちょく顔を出している様です。北条和也は勉学に励んでいるらしく数こそ少ないですが提督になる事に意欲的です。一方の上杉真奈美は元々秀才の為か艦娘とのコミュニケーションを取っている様です。艦娘によると『
「艦娘は人間の姿形をしているが根本が違うからな。むしろ人間の様に扱われて情が沸かれるよりはマシだ」
正式に二人の担当になった毛利高春の報告を聞き細川幸三はそう言った。提督の中には艦娘と
「両者ともに学力に問題は無いな?」
「ええ、確認したところ模擬テストも成績は良くよほどの事が無い限り確実に受かるでしょう」
『へぇ~、才能もあって頭もいいなんて羨ましいね~』
『それを提督として生かせるか殺すかは別だがな』
長宗我部美央の軽口に尼子伊織が突っ込む。長宗我部美央はいつもこんな感じでありきちんと功績をあげていなければ呆気なく降格処分なり提督の地位をはく奪されていただろう。それでもこの中では上位の功績を出す長宗我部美央を咎める事は出来ても処罰する事は出来なかった。
『そんな事より中国さんが東南アジア諸国に対して圧力を強めているみたいだけどどうなってるの~?インドネシアに駐留している知人の提督から愚痴られたんだけど~?』
「その件に関しては政府が既に対応済みだ。中国とて我らがいなければ制海権どころか沿岸部の防衛すらままならないからな」
『ほんと嫌な時代になったよね~』
『そう言えばアフリカ連合は人工艦娘の実用化に成功したらしい。インド洋の防衛をさせていると聞いたが』
『ふん!あんな艦娘擬きで何が出来るというのだ!』
『出力は提督がいない艦娘レベル。エネルギー消耗は駆逐艦ですら戦艦並み。確かに艦娘がいる国にとってみれば使う価値もないがそれでもいない国にとってみれば生命線だ。実際南米諸国を始めオーストラリアやニュージーランドでも研究が進んでいるらしい』
『あれ?でもあそこも艦娘出るでしょ?
『ああ、あれはオーストラリア政府が意地を張ったせいらしい。そのせいで制海権はボロボロでただ深海棲艦が全く来ないおかげで維持できているのは笑えるがな』
「そこまでだ」
好き勝手に話す提督たちに細川幸三が一言告げるとピタリと静かになる。それを確認した細川はゆっくりと口を開いた。
「我らの目的は深海棲艦を滅ぼし海を取り戻すことだ。国家間の争いは巻き込まれないための自衛程度に知っていれば十分だ。ましてや、態々介入する意味もない。長宗我部大佐、分かっているな?」
『……分かりましたよ~』
釘を刺された長宗我部美央は大人しく従った。その後も上層部の会議は続き日本海軍の戦略を決めていくのだった。
和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)
-
響
-
江風
-
曙
-
睦月
-
不知火