遂にこの日を迎えた。提督になるために必要な育成学校の受験日を迎えた。この日の為に出来る準備は全てやってきたつもりだ。俺は必要な物を持って試験会場である例の鎮守府に向かう。受付開始時間に間に合うように家は少し早めに出てきた。
「おはようかず君。今日は頑張ろうね!」
「……ああ」
家を出ると予測でもしていたように真奈美が待っていた。緊張は特にしていないようで自然体だ。少しでも緊張して馴れ馴れしい感じが無くならないかな、と思ったが俺の願いは呆気なく崩された。まぁ、別に期待はそこまでしていなかったが。
真奈美は当たり前のように俺の隣に並んで歩き始める。この辺は何時もの事なのであまり気にしない。それよりも今日の為に覚えて来た数学の数式などを頭の中で振り返りながら真奈美のどうでもいい雑談を聞き流した。
そうしていると漸く鎮守府にたどり着いた。途中で振り返りに集中できなくなるくらい話しかけてきたせいで適当に相槌を打つ羽目になった。真奈美から離れるためにはここでしくじるわけにはいかないのにそれを邪魔されてはどうしようもない。無事に合格する事を祈るのみだな。
「北条和也です」
「上杉真奈美です」
「はい……。確認しました。試験会場は大会議室で行われます。場所が分からない時はそこの地図を見て進んでください」
「分かりました」
受付の女性に送付されていた受験票と高校の学生証を見せて本人確認を済ませる。試験会場はここに来るたびに艦娘たちと触れ合っていたあの大部屋らしい。何度も訪れた事で場所は知っているが念のためにと地図を見て再確認する。やはりあの部屋だったようで俺はさっさと大部屋に向かう。そのすぐ後ろを真奈美がついてくる。流石に鎮守府の中だから俺に不必要に話しかける事は無く試験に集中して取り組めそうだ。
受験生は俺と真奈美以外に数人だが存在した。全員俺と同じくらいの年齢だと思うが見た事ない顔ぶれだ。とは言え毎日ここに来ていた訳じゃないし偶々出会わなかっただけかもしれない。
「試験開始の前にいくつか注意事項があります」
暫く持ってきた参考書などで予習をしていると試験官と思われる人物が複数人入ってきてそう言った。内容は一般的な試験におけるものと大して変わらなかったが試験内容には驚いたな。
「昼までは一般教養で昼食を取った後はグループセッションをしてもらう。内容はその時に話そう」
どうやら一般教養だけではないらしい。グループセッション……。この受験生で話し合いをしろって事なのか?一体何を、と恐らく艦娘若しくは深海棲艦に関してだろうな。自由な発想を求めるのであれば海戦における艦娘の指揮に関してなども出てきそうだ。グループセッションで求められるのは話の輪に積極的に参加し自分の意見を言う事だ。こういうのはあまり得意ではないが真奈美にとっては独断場だろうな。それも無意識のうちに真奈美を中心の輪を作り上げている。真奈美はまさに人を惹きつけるカリスマを持っている。
だからと言って真奈美と話さないという選択肢はない。これはあくまで試験だ。試験と考えれば話し合う事だって出来るさ。
一般教養は何事もなく終わった。手ごたえは十分に感じた。九割は確実に正解しているだろう。ずっと続けてきた勉強が遂に真価を発揮した形だ。将来に備えて幅広く勉強しておいて良かった。
試験後にちらりと周囲を見れば真奈美以外はあまり出来が良くなかったのか顔色は良くない。それでもここを受験するという事はそれなりの学力を身に着けている者ばかりだろう。
真奈美は特に難しい所でもなかったのか背伸びをしている。
試験が終われば昼食の時間となり俺は母が作ってくれた弁当を食べながらグループセッションについて考える。一体どんな内容が出てくるのか?深海棲艦に関する考察か?提督において必要な立ち回りか?それとも艦娘との接し方か?何が出てくるか分からない以上どんな内容でも答えられるように幾つも回答を用意しておく。
食事中、真奈美の視線が偶に飛んできたがやはり絡んでくることはなかった。ウキウキしている様子からこの後のグループセッションに取っておくつもりらしい。これは積極的に話しかけられるなと俺は内心辟易する。
昼食後は試験官がテーブルをどかして中央に人数分の椅子を置いた円形の配置を作る。
「それぞれ好きな場所に座ってくれ。友人と隣同士に座るのも問題ない」
試験官の言葉に従い各々が好きな場所に座る。真奈美が俺の隣になりたそうな感じがしたので運よく開いた一席分の隙間に入り込む。これで俺の隣に真奈美はいないし真ん前には既に人が座っている為向かい合う事もない。結局真奈美は俺が12時の立ち位置にいるとするなら4時の位置に座る事となった。
「よし、全員座ったな。これから行うのは今から言うお題について各々意見を出し合って話してくれ。過激な発言、他者を貶める様な言動は無しで頼むぞ。ではお題を発表する」
試験官がそう言うと会議室の前のホワイトボードにプロジェクターによってお題らしき文言が映し出された。それは……。
【提督と艦娘の関係性について】
和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)
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響
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江風
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曙
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睦月
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不知火