暗キ海ノ底ヨリ   作:鈴木颯手

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結構かけたので投稿します。後2話くらいで入隊後の章に入ると思います。


第十三話「北条和也・拾壱 上杉真奈美・弐 上層部・参」

 その後、グループディスカッションは終始ギクシャクした雰囲気で終了した。とは言え真奈美がいなかったらもっとひどい状態になっていたと思う。俺のせいだけど。

 

 

―私はかず君の言葉は排他的な思想だと思うよ

―私は提督と艦娘を“家族”だと思っているよ

 

 

 ……真奈美の言っていた事、それを理解できない訳じゃない。交流会に参加し、艦娘と触れ合った事で彼女たちの事は分かっている。人間みたいに笑って泣いて喜んで悲しむ。艦娘だって言われず、服とかが制服ではなく私服だったら分からなかったかもしれない。それだけ、彼女達は()()()()()()

 だが、理解は出来ても納得はできない。人間ならなんで()()なんて言われる?そう決められたから?違うだろ。この名前から分かるように彼女達は()()()()()()()()()なんだよ。そんなのが果たして人間と言えるのか?ちょっと違うだけで済まされるのか?

 もし、彼女達が人間なら軍は批判を受ける事になるだろう。どう考えても艦娘という人間ではない、()()()()()()()()()()()()状態と言えるからだ。

 

「……艦娘か」

 

 彼女達は何物で、何のために存在しているのだろうか。その疑問は、試験を終えて入試から帰って来た今でも心の中で燻り続けている。

 

「よくよく考えたら、今の状況があり得ないんだよな」

 

 30年前には存在しなかった妖精や深海棲艦と言った者達。彼らは何処から現れたのだろうか……。

 

「和也―! ご飯よー!」

 

 部屋の外で母が俺を呼んでいる。時計を見れば帰宅してから大分時間が経過している。外も暗くなっており長い時間の間こうして考え事をしていた事が分かる。

 

「……分かった。今行くよ」

 

 俺は取り敢えずご飯が先だと思ってもやもやした心に蓋をして返事をした。しかし、俺の疑問や真奈美の言葉は蓋の隙間から溢れ、再び俺の中で燻り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

―俺は、艦娘と提督に必要なのは別のものだと思っている

―提督と艦娘とは軍人とそれに使われる兵器の関係性でしかない

―そもそも、艦娘は人ではない。妖精という存在が生み出した未知の存在だ。艦娘を人間として見るのは人が描かれた等身大抱き枕を人間として見ていると言っている様なものだ

 

 まさか大切な入試の場面でかず君があんな事を言うなんて思わなかったよ。思わず反論しちゃったけどかず君の心を傷つけてないよね?もう少し優しく言えばよかったなぁ。

 それにしても、かず君ってそう思っていたんだ。確かに、艦娘って人間じゃないし絶対に人間だったらできない事を普通にやれるけど、私には人間としか思えない。兵器なら笑う事も、泣く事も、喜ぶことも悲しむ事だって出来ない。それに、子供だって……。

 

―そう言えば、真奈美っちは知ってる? 隣、って言っても少し離れた場所にある鎮守府の提督さんとケッコンカッコカリで相手になった艦娘がガチ結婚したんだって! しかも妊娠したらしいよ!

―え!? 艦娘って妊娠できるの!?

―んー、その辺はよくわかってないみたい。私達は誕生した頃って()()()()検査もしたらしいけどあんまり分からなかったんだって

―そ、そうなんだ……

―まー、艦娘なら誰でも知っていると思うよ。生理だってあるんだし

―せっ!!??

―この前なんて吹雪っちが倒れちゃって……

―す、鈴谷さん!? 何話しているんですか!!

 

 あれを聞いてしまっては、私は艦娘を兵器として、道具として扱うなんてできなくなっちゃったよ……。でも、そう扱ってから知るよりはマシだったかもしれない。そう思う事にしている。

 

「結婚か……」

 

 いつか私もかず君と結婚して子供を産む事になるのかな?そしたらかず君の子供だもん。

きっと負けないくらい可愛くて、カッコいいんだろうなぁ。その時は家族三人で仲良く暮らしたいな。

 取り敢えず、そうなれるようにもっといっぱい頑張らないとね。よーし!先ずは今週習った箇所の復習を始めるぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……片や、艦娘を兵器と考え、もう片方は家族と考えるか」

「中々に面白いですね」

 

 その日の夜、上杉真奈美と北条和也の情報は上層部へと送られた。そして、グループセッションの話を聞き終えていた。

 この場にいる者の反応は様々だった。当然、両者に対して。

 

「北条和也。彼はきっと素晴らしい提督になれる。合理的思考を持ち、轟沈艦が出ても職務影響を来たすことなく通常と変わらない指揮を執ってくれそうだ」

「上杉真奈美だって負けてはいないでしょう。彼女の下についた艦娘の結束力は高いものになりそうだ。どんな困難が待ち受けようとも一丸となって乗り越えていきそうですよ」

「だが、家族と言っている以上轟沈艦を出せば気を病むのではないか?」

「分からないぞ。北条和也だって艦娘がついてくるか分かった物ではない。それどころか反乱を起こされてしまう可能性もある。過去に艦娘を酷使して惨殺された提督もいただろう」

「あれは艦娘へのケアが出来ていなかったせいです。彼ならそう言った事も職務の一つとして全うできると思いますよ。」

「なぜそれが分かる! 貴様はこの小僧の事を知っているのか!?」

「それを言うのなら彼女の事をあなたはどの程度知っているのですか! 答えてみてください!」

 

 両者の答えをもとに参加者達の間で意見が割れるが和也を擁護する者達が多く優勢である事から、上層部がどういう方針を取っているのかが分かる結果だった。その様子を細川幸三元帥は呆れた目で見ているが再び手元の資料を見る。そこには二人のプロフィールが事細かに書かれており“合格”の判が押されていた。

 

「この二人の入隊が上層部に新たな風を吹き込むのか、それとも……」

 

 細川幸三はそこまで言うと次の議題を話すべく殴り合い一歩手前に発展しそうな参加者達を一括してとめるのだった。

 

和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)

  • 江風
  • 睦月
  • 不知火
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