「えー、最近なんか物騒だよねー」
「そうだな」
「もう!最近なんか冷たくない?」
「別に」
俺の横を歩いている真奈美は頬を膨らませて抗議してくるがそれを素っ気なく返した。真奈美とはまともに喋りたくはなかった。真奈美と喋ると自然と劣等感が沸きあがって来る。何気ない会話でもそう感じるほどに俺は真奈美に対してコンプレックスを持っていた。
「そう言えばかず君は卒業後はどうするの?」
「別に」
「むー。たまには会話のキャッチボールをきちんとやろうよ~」
「……」
後半年ほどで高校を卒業する。俺は遠く離れたFラン大学に入学する予定だ。だが、俺は親にも先生にも話していなかった。少しでも話せば確実に真奈美に情報が行く。そうなればまた俺に付いてくるだろう。今こうして話題を振ったのだって俺がどうするかを知り付いてくるためだろう。昔から、こいつは付いてくるがなんで付いてくるのかは分からない。俺と真奈美の能力を比べて悦に浸りたいのか単なる嫌がらせなのか……。どちらにしろ真奈美の近くにいるだけでストレスの現状から逃げ出すには真奈美に知られずに成し遂げることだ。さすがに不可能に近いのは分かっているがこうでもしないと俺は一生こいつから離れることは不可能だろう。
その日俺は何時もよりしつこく聞いてくる真奈美からの追及を無事逃れることができた。しかし、この調子だと教師に相談することもできなくなりそうだ……。そうなれば受験する事は出来なくなるだろうし最悪就職するという道もある。移動の激しい職に就けば自然とこいつと離れられるだろうしな。そんな風に思いながら夜を過ごした翌日、学校に向かうと校庭に軍用車が止まっていた。その周りにはテントが用意され何かの準備を行っている。とはいえその正体を俺は知っているんだけどな。
あれは提督の素質を見極めるための物だろう。今の日本は圧倒的に提督の数が足りてない。艦娘の力を十二分に発揮させるには提督が必要だ。しかし、深海棲艦による鎮守府襲撃やそもそもの素質を持つ者が少ないなどの理由で年中人員不足に陥っている。その為軍ではこの時期になると高校や大学に赴き素質のある者の調査を行っている。対象は卒業生のみで在学生は卒業年になって行われる。今のところはその辺の配慮が出来る位には余裕は残っているのだろう。在学生だろうと調査し強制的に徴兵を始めたら末期になっているだろうから。
「ついにこの時が来たのか」
「お、俺に素質ってあったりするのかな?」
「お前みたいな奴に素質なんてあるわけねーだろw」
「ワンチャン可能性が……」
「私、可愛い娘に囲まれて仕事するのが夢なの……!」
「えぇ……」
教室では検査に関する話で持ち切りだ。俺としては素質があったら将来の選択肢が増えるな程度の価値しかないがほかの人にとってはそうではないらしい。まぁ、確かに見た目は麗しい美女や美少女に囲まれて提督と慕われるのだ。大抵の人は鼻を伸ばすだろう。しかし、提督の仕事はとても大変だ。現に昨日報道していた硫黄島陥落では硫黄島鎮守府に着任していた提督五人のうち二人が戦死。一人が殿となって死亡、残りの二人のうち一人が撤退中に砲撃を受けて死亡。もう一人も意識不明の重体となったと言っていた。
このように後方はともかく前線に近い基地や鎮守府は常に襲撃の危険性がある。だから決して楽でも無責任に行っていい職業ではない。
「皆せきつけー」
そんな事を思っていると担任の教師が教室に入ってきた。教師の言葉で一斉に席に戻っていくクラスメイト。因みに真奈美は別のクラスの為授業中が一番落ち着ける時間だったりする。あとはトイレの個室に籠っているときくらいだ。
「皆ももうわかっていると思うが提督適正検査を受けてもらう。だから1、2時限はこの検査の為自習となる。1時限目は各自ジャージに着替えて校庭に集合するように。SHRは以上だ」
それだけ言って教師は教室を出て行った。再び喧騒に包まれる教室。各自ジャージに着替えていく。早いものはパパっと終わらせて走って教室を出て行った。俺も学校指定のジャージに着替えて教室を出る。昔真奈美が無理やりクラスの輪に入れようとしたのが原因で今付き合いのある友人は誰もいない。常に空気に徹し誰にも関わらないようにしている。
俺が校庭に出たときには既に結構な人数が集まっていた。どうやら俺のクラス以外にも楽しみにしている奴は多かったようだ。中には艦娘で誰が推しかを話す者もいる。駆逐艦を推す者にはロリコンと揶揄われている者もいた。
艦娘は戦艦、航空母艦は20代の年上の女性という感じの人が多いが駆逐艦や潜水艦、海防艦は小学生、幼稚園と言っても可笑しくない艦娘が大半を占めている。一部はそうではない艦娘もいるようだが駆逐艦=幼女というイメージが既に定着していた。
艦娘が一体何なのかは出現から30年経った現在でも詳しくは分かっていない。とうの本人たちもあまり知らないようだ。徹底的に調査すれば分かるのかもしれないがそんな事をする余裕は今の世界にはない。世界規模で海が人類の手から離れようとしているのだ。島国でいろんな物資を輸入に頼っている日本は壊滅的な打撃を受けるだろうし国際的なつながりは絶たれるだろう。俺としては真奈美から離れることさえできればどうでもいい事だがな。
和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)
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響
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江風
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曙
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睦月
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不知火