暗キ海ノ底ヨリ   作:鈴木颯手

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第四話「北条和也・肆」

「いやぁ、待たせてしまったね」

「いえ、大丈夫ですよ」

 

俺が妖精さんたちの玩具になっていると白衣の男がようやく表れた。時間的に大体30分ほどだろうか?白衣の男が入ってくる頃には大半の妖精さんは眠ってしまっている。勿論俺の膝の上でな。おかげで俺は全く動けていないが別に足して苦にはなってないからそのままにしていた。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったな。日本軍特殊技術班所属の毛利高春だよろしく頼むよ」

「はぁ。一応知っていると思いますが北条和也です」

 

俺は白衣の男、毛利さんの求めに応じる形で握手をする。毛利さんは俺の真向かいに座って話を始めた。

 

「早速だが君を留めたのには理由があってね。君の調査結果が原因だ」

「そうですか」

 

何となく予想は出来ていた。とはいえさすがにそれが何の理由かまでは分からないけどな。だが予備留められる位には異常事態という事は確かだろう。

 

「詳しい調査をしないと詳細までは分からないが君は霊力をたくさん持っている。それも異常とも言える程にな」

 

そう言って毛利さんはタブレットを見せてくる。タブレットにはグラフが記されていた。赤と青、そして緑の柱がある。この中だと青が異様に高い。赤の三倍近くあるし緑よりも頭一つ高い数値を記録している。

 

「赤は今まで調査した者たちの平均の霊力。青は君の霊力だ。緑は過去の調査結果で一番霊力を保有していた者だ。見てわかるように君の霊力はとても高い。推定でSSSランクはあるだろう」

 

ランクとは霊力保有者を分類したもので提督に必要な霊力はCランク以上らしい。

 

「これだけあれば練度の低い艦娘も精鋭並みの活躍が出来るだろう。それだけ君の霊力は高いのだ」

「そうなのですか……」

「全く、もう一人(・・・・)も大概だが君はもっと凄いな」

「もう一人?」

 

毛利さんがもう一人。その言葉に俺は反応してしまう。俺の頭には一人の女性が思いつく。異常とも言える霊力を持っていても可笑しくない才色兼備で俺に付きまとう俺が一番嫌いな女性。

 

「ああ、名前は上杉真奈美と言ってな……。おっと、君とは幼馴染だったな」

「そう、ですか……」

 

やっぱりそうだった。神は二物を与えないというがその言葉は嘘らしい。あいつはありとあらゆるものを持っている……。俺がいくら頑張っても持つ事の出来なかったものを……。

 

「どうした?」

「……いえ、大丈夫です」

 

負の感情に呑まれそうになった時毛利さんの言葉にハッとする。考え込むな。毛利さんの話から今回ばかりは俺が上なんだ。だから……、忘れるんだ。

 

「真奈美は、どれだけの霊力を持っているんですか?」

「推定でSSランクだな。二人とも過去の最高記録を抜いている。これだけの逸材が軍に入ってくれれば頼もしいのだがな」

 

SS……、予想通りならSSSの一つ下。真奈美に勝てた要素も結局はギリギリでしかなかったか……。いや、真奈美に勝てている事に喜ぼう。

 

「どうだろう?高校卒業後は提督を目指してはみないか?担任の先生によると卒業後の予定は決めてないのだろう?勿論将来の選択の一つで構わない。だが、君が提督になってくれれば歴代最高の提督になるとは思われる。その事も覚えておいてくれ」

「はい……」

「それにどうやら君は妖精さんにも好かれているようだ。その調子なら何匹かは君に付いていきそうだな」

 

毛利さんは俺の膝の上で眠る妖精さんたちを見てそう言った。どうやら毛利さんも妖精さんたちがみえるみたいだ。

提督か……。一つの手かもしれないな。提督になれば少なくとも真奈美と離れることができる。例え真奈美が提督になったとしても配属先が遠くなれば会う事は物理的に難しくなる。そうなれば俺の願いは叶う。先生に直前まで言わずに遠くの大学に入学するよりそっちの方が行ける気がするな。

 

「それとこれは今日の結果をまとめた資料だ。別に機密でもなんでもないから親御さんにも見せて構わないぞ」

「わかりました」

「うむ、私からはこれで終わりだが君は何か質問とかあるか?」

「では……。提督になった際着任先は選べますか?」

「ふむ、難しいな。基本的に後方に配属される傾向がある。さすがに新人に前線を任せるのは危ういからな。とはいえ多少のお願いなら叶うかもしれないが」

「分かりました。次の質問なんですが新人が同じ鎮守府に着任する事はあり得ますか?」

「あまりないが必ずないとは言い切れないな。すまんな。もう少し詳細な資料とかがあればより詳しく答えられるのかもしれないがそこまで詳しい事は私にも分からない」

 

……まぁ、技術職の人みたいだし仕方ないか。詳しくは聞けなかったけど十分聞きたい事は聞けたしこれで良いかな。

 

「俺からは以上ですね」

「分かった。もし提督になりたいと思った時は最寄りの基地に連絡してくれ今回の結果を見せればすんなり手続きができると思うよ。私の方からも通達しておこう」

「ありがとうございます」

 

こうして俺の人生の転機はこうして訪れた。でも、今考えるとこの時こんな数値を出さなければあんな(・・・)事にはならなかったのかもしれない。

 

和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)

  • 江風
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