適性検査を終えた俺はその日いつも通りの日常を送った。一つ違うところがあるとすれば皆が今回の検査結果に関して話題が尽きなかった事だろう。「隣のクラスの○○君がBランクを取った」とか「私Cだったけど妖精さんの姿が見えなかった」とか様々な話題が上がっていた。おそらくこの調子なら明日も明後日も続きそうだ。そのあとは偶に話題に上がるだけで皆の興味から離れていくだろう。
そうして一日を何事もなく終えた俺は教室まで迎えに来た真奈美と一緒に帰る。クラスメイトの何人かは俺をにらみつけてきたが真奈美が欲しいなら上げたい気分だ。むしろさっさと俺から引き離して一生出会わないようにしてほしいとすら思っている。
下校途中、真奈美も今回の適性検査の結果を話題に出した。どうやら真奈美も毛利さんから聞いたのかは分からないが同じように説明を受けたらしい。その際に俺の事も知って笑顔で話している。
「提督かー。あまり考えていなかったけどなるのもいいのかもしれないねー」
「……」
「私としてはかず君と一緒の鎮守府で提督をやりたいけど難しかもって言われちゃったよ」
「そうか」
「ねぇねね、かず君は提督になりたいと思ってるの?」
「……ああ」
何時もの様に真奈美が訪ねてくる。普段の俺なら素っ気なく返すか無視するかだが俺は気づいたら肯定の言葉を発していた。真奈美は初めて俺が答えたからか目を見開いて驚いている。真奈美も俺が返してくるとは思っていなかったようだ。まぁ、ほぼ毎日の様に聞いてきてははぐらかしていたから仕方ないのかもしれないが。そしてこういった俺に対して真奈美が何ていうかは予想が付いている。
「ほ、本当!?なら私も提督になる!」
「……」
出来れば予想とはずれていてほしかったが真奈美は予想していた言葉通り、一字一句間違えることなく俺の予想通りの言葉を放ってきた。そう言っておいて別の将来を模索するという手もあるが確実に親からバレる。いきなり別のところに就職なり受験なりすれば親が黙っていない。それにその事に気づいた真奈美が絶対に追いかけてくる。そうなれば俺の言葉をそのまま信じずに更に俺を見るようになる。そして俺は真奈美から離れるのが困難となるだろう。
「えへへ~、かず君と一緒の職業か~。二人で提督になれるように頑張ろうね!」
「……」
ああ、その無邪気に言ってくるその言葉がどれだけ辛いか。真奈美がその言葉を言うたびに俺の心はナイフで刺されたような痛みとともに一気に熱を失っていく。俺から希望を、光を奪い劣等感や嫉妬といった闇を溢れさせる。真奈美が太陽だとするなら俺はその太陽に無理やり近づかれて焼き殺される只の蛆虫だろう。決して太陽になれない。太陽の熱に耐えられない。傍にいるだけで無数の痛みが伴い、最終的に焼き消えていく存在だ。
もし、ここがゲームの世界なら俺は悪魔に魂を売るなり闇落ちするなりするのかもしれない。だが、ここはゲームの世界ではない。そんな都合がいい出来事なんて起きるわけがない。永遠に抜け出せないとも感じるこの状況から抜け出す方法はほとんどないだろう。
そんな風に思っていると漸く家に付いた。家から学校までは徒歩で二十分もかからない。それもあってこの高校を選んだが今日は一段と距離が長く感じた。
「それじゃかず君!また明日!」
「……」
笑顔を浮かべる真奈美はそう言いながら自分の家へと入っていく。二階建ての、どこにでもありそうな日本の住居。それが真奈美の家と俺の家だった。まるで狙ったように互いの家は近い。おそらく幼馴染が出てくる物語でよくあるような窓を伝って互いの部屋に入るなんてことができる位には。ただ、幸いな事に真奈美の部屋は俺の家とは反対側にあり俺の家も真奈美の家と接している部分には妹の部屋がある。妹の部屋から窓を使って真奈美の家に侵入してもそこにあるのは真奈美の両親の寝室だ。もし俺の部屋と真奈美の部屋が隣同士だったら俺は窓を常に締め切りカーテンを開けることも出来なかっただろうしもしかしたら心が壊れていたかもしれない。
「……ただいま」
「あ、おかえりー。お兄ちゃん」
鍵を開けて一言呟くと丁度妹の彩香がいた。妹との仲は悪くもなければ良くもない。別に嫌いという訳ではないし妹も俺の事を嫌ってはいないと思う。ただ、妹は真奈美を姉の様に慕っているから俺が距離を取っているだけだ。
「お兄ちゃん、棚にあるポテチ食べていいー?」
「ああ、食べていいよ」
やったー!と言って妹はリビングに向かっていく。お菓子が大好きな妹だが常に体系を保つ努力を続けておりその体には余分な脂肪はほとんどついていない。それに顔も美人といえるレベルであり偶に妹を好きだという後輩(妹は高校一年生。妹も距離が近いという理由で同じ高校に入学している)から間を取り持ってほしいという事を頼まれることがあるがそのたびに自分で何とかしてくれ、といって断っている。
妹が誰と付き合おうが俺にはどうでもいい事だし物語の様に「妹が欲しければ俺を倒していけ!」みたいな事をするつもりもない。ただただ、興味がないだけだ。今の俺にあるのは真奈美から離れたいという願いだけ。それ以外の事は、どうでもいいとすら思ってしまっている。そこまで考えて俺は頭を振る。真奈美から離れることを考えるあまりにこういったことが良く起きるようになった。大事な家族である妹をどうでもいいと思ってしまう自分に俺は様々な気持ちとともに息を吐きだすのだった。
北条家
主人公である北条和也の家族。両親と妹がいる。基本的に真奈美を両親は娘の様に可愛がっており妹の彩香も姉と思って接している。それが和也の心を更に苦しめる原因ともなっている。両親はサラリーマンとOLとして働いており基本的に家事は和也と彩香で分担して行っている。
上杉家
父、母、真奈美の構成。もともと別のところで暮らしていたが父親がこの地域にある子会社に移ってきた。父親はかなり役職が高く収入がいいため母親は専業主婦となっている。たまに北条家の家事の手伝いを行っている。
和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)
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響
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江風
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曙
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睦月
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不知火