暗キ海ノ底ヨリ   作:鈴木颯手

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お待たせしました。漸く完成したので投稿します


第七話「上層部・壱」

「ほう?それは素晴らしい逸材だな」

 

日本国において最重要拠点である横須賀鎮守府。その地下にある中央作戦指令室には横須賀鎮守府の最高責任者兼海軍元帥の細川幸三を始めとして集まれるだけの将校が集まっていた。

彼らが集められた理由は単純で数日前に発見されたSSSランクとSSランクの霊力保有者についてである。細川元帥を始め集まった者達の手元には開始前に配られた資料がありそこにはSSSランク北条和也とSSランク上杉真奈美の簡易的なプロフィールが書かれていた。

 

「きちんと調べた上での数値です。両者ともに高い数値をたたき出しております。加えて上杉真奈美はいい返事を聞けませんでしたが北条和也に関しては迷っている風に感じました」

「場合によっては提督になる可能性もある、か……」

 

報告をする毛利高春の言葉に細川幸三は考え込む。他の参加者はざわつきつつ自分たちの意見を交わしている。

そんな中一人の男が立ち上がり答える。

 

「これは願ってもいない逸材です!今すぐにでも提督になってもらい制海権を奪取してもらうべきでしょう!」

「安芸中将、その様な発言は人権保護者に聞かれたらまた叩かれますよ」

「馬鹿な……、今は非常事態だ!何を優先するべきかは貴公にも分かっているだろ、尼子中将!」

 

男、安芸虎次郎の言葉をたしなめるように尼子伊織が発する。虎の如き体格の安芸虎次郎の怒鳴り声は周囲を圧する力を持っていたがここにいるのは皆深海棲艦と戦い抜いた実力者ばかり。彼の怒声はここではただの叫び声以上の力を持っていなかった。

そんな状況の中参加者の中で一番体躯が小さい、一件少年と間違えそうな童顔の男が手を上げた。

 

「はいはーい。安芸中将の妄言はいつも通りスルーして今はこっちの女性、上杉真奈美に関して話した方が良いんじゃない?」

「貴様……!大佐風情がしゃしゃり出おって……!」

「えー?キチンと“佐官以上”、“姫級撃沈経験者”っていう参加条件は満たしているよ安芸中将?」

 

その言葉に安芸虎次郎は何も言えなくなるが元々文句だけの言葉だったので童顔の男、長宗我部美央は続きを話し始める。

 

「資料によるとあまり望んでいる様には見えなかったんでしょ?もし別の職業に就くことになったら面倒だよ?また(・・)裏から手をまわして就職先を潰す?」

「いや、前回はともかく今は時期が悪い。欧州ではジブラルタルが攻撃を受けた。基地機能は完全になくなり地中海に深海棲艦が出入りするようになったらしい。加えて千島列島の基地も襲撃を受けたばかりだ。その様な事に労力を消費している暇はない」

「でも何かしら手を打たないといけなくない?こんな逸材を逃すなんて馬鹿のする事だよ?」

「それに関しては問題ありません」

 

長宗我部美央の懸念をぬぐうように一人の男が声を発する。眼鏡をかけ理知的な雰囲気を見せるその男に視線が集中する。

 

「彼女はどうやらもう一人の北条和也に異常な執着を見せている様です。北条和也が提督になると決意すれば彼女も自然と提督になる道を選びます」

「ふうん。それならこの北条和也くんを絶対に提督にしないといけないね。訓練は飛ばす?」

「いや、それはさすがに不味い。提督の適性を持っていても訓練をしないと意味がない。最低でも艦娘の運用方法だけでも学ばなければ……」

「そんなものは実戦で経験できるだろう。多少の損害は出るだろうが経費と考えれば良い」

「今の我々に捨て艦戦法は愚策だぞ。提督の数がそこまで多くない上に硫黄島で四人失い残りの一人も未だ意識が戻っていない。これ以上の提督、艦娘の無駄な損害は戦線を支えきれん」

 

ただでさえ姫級が前線に出ないおかげで成り立っている戦線なのに……。と尼子伊織は頭を抱える。艦娘の力を引き出すには提督の存在は必要不可欠だったがその提督の数が足りていない。その為戦線に出せる艦娘の数は制限されていた。それでも長大な太平洋の戦線を支えられているのは姫級鬼級と呼ばれる深海棲艦が出て来ないからだ。姫級鬼級は圧倒的な火力と耐久力を持っておりその力は一隻で6隻の艦娘主力艦隊に勝る程だ。姫級鬼級の撃破には複数の艦隊による同時攻撃が鉄則とされておりその作戦の為に周辺の深海棲艦を減らす必要があった。最近では南シナ海に現れた姫級を長宗我部美央の艦隊が撃破していた。長宗我部美央はその功績で今回の会議に参加できていた。

 

「捨て艦は日本海軍で正式に禁止されている。国家反逆罪に問われるほどの重罪を忘れるな」

「捨て艦ではありません!これはれっきとした必要な犠牲です!」

「その犠牲をなくすために訓練というものがあるのだろうが!」

 

安芸虎次郎の声についに尼子伊織が怒声を上げて反論する。そんな二人を細川幸三は視線で制し話し始める。

 

「どちらにしろ彼らが提督となれば劣勢である戦線を押し上げることが出来る。ハワイに居座る敵の本拠地を落とすことも可能になるやもしれん。北条和也の住んでいる場所の近くの鎮守府には事前に連絡を行いなるべく好印象を持ってもらえるように指示を出す。彼らに関しては以上だ。何か反論や意見はあるか?……ないようだな。では次の議題に移るとしよう」

 

こうして細川幸三の言葉で北条和也と上杉真奈美に関する議題は終了した。SSSランクとSSランクの登場により海軍がどのようになるのか、その事はまだ誰にも分からなかった。

 

和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)

  • 江風
  • 睦月
  • 不知火
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