暗キ海ノ底ヨリ   作:鈴木颯手

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何気に艦娘の口調むずかった……


第九話「北条和也・漆」

「こんにちはー!艦隊のアイドル那珂ちゃんだよー!今日はよろしくー!」

「「……」」

 

勢いよく開かれた扉、そこから現れたのはやたらハイテンションな艦娘だった。柿色のセーラー服に黒色のスカートを履いたその艦娘は俺でも知っていた。

川内型三番艦那珂。艦娘の中では異質とも言える自らをアイドルと称する艦娘。艦娘が現れ始めた初期の段階から確認されており当時から艦娘兼アイドルとして活躍していた。その特性から前線での戦闘より広報活動を主任務としていたはず。まさかこんな小さな鎮守府にまでいたとは……。いや、こういう場所だからこそいるのかもな。横須賀鎮守府みたいな大きな鎮守府が近くにないからこそ艦娘の存在を深く知ってもらうためにはこういった場所で活躍する方が良いのかもしれない。

 

「えっと……、艦娘。だよね?」

「ああ、川内型の三番艦だ。確か、軽巡洋艦だったかな?」

「そのとーり!今日は艦娘についていろいろ教えちゃうよ!」

「こらこら、はしゃがないの那珂ちゃん。他の娘が挨拶出来ないでしょ?」

 

河野さんの言うとおり扉の方にはまだ二人の艦娘がいる。俺たちより若い、おそらく中学生くらいの少女と同学年っぽい年齢の、ギャルっぽい女性だ。

 

「は、初めまして!吹雪型一番艦吹雪です!今日はよろしくお願いします!」

「やっほー、鈴谷だよー。今日はよろしくねー」

 

吹雪と名乗った少女は若干堅く、鈴谷と名乗った女性は軽い感じで挨拶をする。対照的な挨拶を見て俺たちも挨拶をする。

 

「北条和也です。今日はよろしくお願いします」

「上杉真奈美です。提督志望だから今日は楽しみにしてます」

 

こうして艦娘三人との交流が始まった。……のだが男の俺一人に対して女性四人とかなり辛い状況になってしまった。真奈美は持ち前のコミュニケーションの高さを生かして艦娘と会話をしている。俺も時々話すがやはり話づらい空気は治らなかった。

途中で察したらしい河野さんから、

 

「提督って基本的に艦娘との交流が多いのよ。そして鎮守府には後方支援の人を除けば男性職員はほとんどいないわ」

 

という言葉をいただいた。つまり提督を目指すなら今のうちに慣れないとやっていけないという事か?端から見れば羨ましい光景なのかもしれないがこうも女性ばっかりだと居心地が悪かった。

 

「えー!?吹雪ちゃん、ここの提督と付き合ってるの!?」

「そうなんだよー、提督の事を狙っていた何人もの艦娘の中から選ばれたんだよー。このこのー、羨ましいね」

「す、鈴谷さん!そんなに大きな声で、あうあう……」

「はー、アイドルだけど私も恋をしてみたいよー!」

「ふふ、上杉さんはそう言った人はいますか?」

「わ、私は……」

「ははーん。気になる人はいるけど思いは伝えられていない、ってところかな?」

「そ、そう言う訳じゃ……」

「くぅー!羨ましいね!ね、ね!どんな人か教えてよ!」

「私もきになるー!」

「で、できれば参考程度に……」

「こらこら、催促しないの」

「……」

 

それでも交流自体は何のアクシデントもなく進んだ。途中でカラオケという名の那珂による歌唱が始まったがアイドルというだけあって歌はとてもうまかった。そして交流は終わり艦娘三人も合わせて鎮守府の入り口に来た。

 

「今日はありがとうございました」

「鎮守府の事や艦娘の事、いろいろ知ることが出来ました」

「いえいえ、こちらとしてもお二人が提督の道をより志望してくれるなら幸いですよ。きちんと申請してくれればまた時間は取れると思うので是非来てくださいね」

「また那珂ちゃんに会いに来てねー!」

「今日はありがとうございました!」

「またねー、バイバーイ」

 

河野さんと艦娘三人に見送られて俺と真奈美は鎮守府を後にする。帰り道、真奈美が話しかけてきた。

 

「那珂ちゃん達、とても元気だったね」

「……ああ」

「まるで本当に人間みたいだったね」

「……そうだな」

 

真奈美の言葉に同意するが艦娘は人間ではない。今回の鎮守府の案内の途中で河野さんも言っていた事だ。

 

『今でこそ艦娘は人間と同じように権利が保障されるようになりましたがそれはつい最近の事です。艦娘が現れた当初は化け物として忌み嫌う者もいました。今でもそう思っている人は多くいます』

 

「でも那珂ちゃんも吹雪ちゃんも鈴谷ちゃんも話していても人間と変わらなかったよ。お洒落に興味を持って愛や恋に憧れてる普通の“人間”だった。かず君もそう思うでしょ?」

「……そうかもな」

 

“艦娘は艦娘だろ?”という言葉を飲み込み真奈美に同意する。例えどれだけ似ていようとも実態は全く違う両者だ。アジやイワシとサメやクジラを同じ“魚”と括るくらいには暴論だ。どれだけ人間と同じ恋愛感情を持ち、人間と同じ趣味趣向を持ち、人間と同じ姿形をしていようとも、艦娘は“艦娘”でしかない。

改めて、艦娘を同じ人間として見ようとしている真奈美を見て俺はやっぱり合わないなという感情を抱くのだった。

 




結局鈴谷、那珂、吹雪の三人にしました。最初は戦艦か空母を出そうと思ったけど主力艦だし広報活動より前線で活躍してそうと思ったので参加させませんでした。潜水艦は服装的な理由から最初からナシでした(年齢的な問題もあるけど)

和也の最初の艦娘は?(なお、対象は作者お気に入りの駆逐艦のみです)

  • 江風
  • 睦月
  • 不知火
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