怖いのは、悪い奴らだから。
悪いのは、おれたちの命を脅かすから。
ではなぜ、おれたちは命を脅かされているのか。
僕ら勇者御一行は、次の街への道の途中にある、森に入った。
森の名は、特にない。普通の原生林だ。
「ギェェェ!」
突如、先行していた彼と、その後ろについていた僕との間に、ゴブリンが現れた。
「うわっ!?」
思わずびっくりして退いてしまったが、攻撃の準備をする。
「アンフェルカンス…」
その時。
「セダオイマエノラ…」
!?
「ウクゾド、キタエ…セオイマエノラ…」
「な、なに…?」
「ギャアアアアア!」
棍棒を振り上げ、こちらへ走ってくる。
さすがは魔物、雑魚といえど速い。
「ひっ…」
萎縮してしまった。
いや
躊躇った。
攻撃を、躊躇った。
なぜ?
こいつは魔物だ。
敵だ。
殺すべき、相手だ。
気づけば、そいつはもう目の前まで来ていた。
「はっ!」
彼の声が響き、その瞬間にはもうそいつは両断されていた。
死骸は間も無く消えた。
「大丈夫か。」
優しい声。
「うん…」
あいつは、僕に何を伝えようとしてたんだろうか。
-木の街 ハウト-
さっき通った森に近く、豊富な木材が建築などのさまざまな分野に用いられている。
が、森林の減少が進み、文化が衰退しつつある。
問題解決のため、植林などの工夫がなされているが、解決には長い時がかかりそうだ。
「どの家もログハウスみたいで、キャンプ場にきてるような気分だな。」
「はは。昔一回家族ぐるみでみんなで泊まったよね。」
「それ懐かしいな。凱旋したら、みんなでもっかい行こう。」
「そうだね!」
装備屋でも、木製のものが多かった。
「すごい…木でできてるのに、剣も防具も他のに性能が劣ってない…」
「技術力の勝ちだな。」
「あんちゃんら、買ってくかい?」
おじさんに話しかけられた。
「じゃあ…この剣もらおうかな。」
「あい。まいどあり。」
彼が買ったのは、いたって普通の木の剣だった。
「それ、使えるの?」
「いーや、使えない。」
「じゃあなんで買ったの。」
「入ってなんも買わないのもバツが悪いだろ。」
「まぁ、そっか。」
そうこうしているうちに、今日泊まる宿についた。
ここも例に漏れず木の家。
木特有の柔らかい感触、暖かさを感じる一方、頑丈な構造になっている。やはりこの街は技術力が高い。
「はー!つかれた!」
「だな。丸1日歩きっぱなしだったからな。」
疲れた。でも、それよりも、
「ねぇ。」
「うん?」
聞きたい。
「魔物ってさ、なんかこう、さ。」
「なんだよ。」
魔物に
「生きてるん、だよね。」
感情は、あるのか。
「…うん、そうだな。」
なぜ、
「なんで魔物はさ、」
魔物は
「僕らを、殺そうとするの?」
その日、それ以上会話が進むことはなかった。
翌朝。
空は晴れやかでなかった。
曇天。
混濁したような、淀んだ雰囲気の中、僕らは街を出た。
なぜでしょうね。