紫の星を紡ぐ銀糸   作:烊々

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女神候補生たちの精神年齢を上方修正しすぎた感がありますけど初投稿です。


08. 怒りの銀糸

「私の名はマジェコンヌ。四人の小娘たちが支配する世界に混沌という福音を齎す者さ」

「そして、オイラはワレチュー。ネズミ界ナンバー3のマスコットっチュ! ……あんたは名乗らなくていいっチュか?」

「必要ねえ。それより、なんかニ匹見てたやつが逃げていったぜ? 追った方がいいか? いや、追わせろ! ぶっ殺させろ!」

「必要ない。まだ変身さえできない女神の妹などな」

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか……女神様たちが………」

 

 何か胸騒ぎがした、と言って現場に向かい、そして帰ってきたネプギア様とあいちゃんから聞かされたのは、簡単にいえば、女神様の敗北でした。

 

「……すみませんあいちゃん、ネプテューヌ様の命令で動けなかった私の代わりに」

「いえ、そんなこと……」

「今回の件について、とりあえずイストワールに連絡をしてください。私のことは……少し一人にさせてもらえませんか」

「え…はい。……その、師しょ……いえ、何でもないです。女神候補生を集めておきますね」

「はい、ありがとうございます」

 

 教え子に気を使わせてしまいました。そんなにしんどそうな顔してましたかね私。

 

 ………さて、あいちゃんはもう行きましたよね?

 

「……ああああああああ‼︎ クソッ! クソクソクソ‼︎‼︎ 何で今までアンチクリスタルの存在を忘れてたんだよ俺は‼︎‼︎ てか何でまだアレがこの世に存在すんだよ‼︎‼︎ 全部俺がぶっ壊しただろうがよ‼︎‼︎‼︎ クソ‼︎‼︎‼︎」

 

 その昔、ネプテューヌ様が生まれるよりも昔、女神様に仇なすクソみてえな物質であるアンチクリスタルを、俺はゲイムギョウ界中を探し回って全部壊しつくした……はずだったのに。それに、全部壊したと思ってたから、その存在を今の今まで忘れかけてた。たとえ、もうこの世には無いと思ってても、こんな石が昔あった、みたいなことを一言でも女神様に教えておけば……

 

 ……取り乱しました。つまりは今回の件は私の責任です。私の失態です。失態しかしませんね私って。

 

 

 

 

 

 

 

『一体どういうことなんですか? アイエフさん』

「よくはわからないんですが、アンチクリスタルがどうとか……多分、それがネプ子たちの力を奪ってるんです」

『アンチクリスタル……ゲイムギョウ界にまだ存在していたとは……』

「知ってるんですか? イストワール様」

『はい……でもあれは昔ギンガさんが処分し尽くしたはず……とりあえず、ネプギアさんはプラネテューヌに戻ってきてください。ユニさんたちもお国にお戻りになった方がいいと思います。それでは』

 

「……そういうわけだから「待って!」……ん?」

「帰れって言われて大人しく帰れるわけないでしょ、もっとちゃんと説明して!」

「いつものお姉ちゃんなら悪者なんて一発なのに!」

「お姉ちゃん……死んじゃうの?」

「きっと大丈夫です。女神様がそんな簡単にやられるわけ……」

「でも! 力が奪われたって……さっき」

 

 少し落ち着いたので、あいちゃんたちのところに向かうと、少し口論になっていました。とりあえず責任の所在を私であることで明らかにして、口論をやめてもらいましょう。

 

「私のせいで……」

「いいえ、ネプギア様のせいではありません。……ユニ様、いえ皆様、今回の件は全て私の責任です。私がアンチクリスタルのことを失念していたからです。この罪は後で必ず償いますが……」

「やめてください師匠……そんなこと今考えたって」

「……なんで、何でギンガさんはいつもそうなんですか……っ」

「ユニ様……?」

「……っ! ルウィーの時だって! 全部自分のせいって言って! ……あたしのお姉ちゃんは強いけど、最強だけど! もしかしたら油断しちゃったのかもしれないのに! それでも全部ギンガさんのせいってことですか⁉︎ だったら……!」

 

「だったらギンガさんは、最初からお姉ちゃんたちのことなんて信じてなかったってことじゃないですか‼︎」

 

「……っ⁉︎」

「ユニちゃん! どうして……どうしてそんなこと言うの!」

「ネプギア……? ……っ! ネプギアには関係ないでしょ!」

「関係あるよ! それに関係なくてもだよ! ギンガさんに謝って! 謝らないんだったら……そんなこと……そんな酷いこと言うユニちゃんなんか大きら「やめてください‼︎‼︎‼︎」

 

 ネプギア様の言葉を遮って大声をあげてしまいました。普通こんなことは死罪級の非礼です。ですが、そんな言葉、本心じゃなくても言ってはいけませんよ……

 

「申し訳ありません……外の風に当たりながら作戦を考えてきます。女神様たちを奪還するための」

「師匠……」

 

 

 

 

 

 

 

「足元を見るがいい、アンチクリスタルの力から生まれたそれは、いずれお前たちを苦しめ死に至らせるだろう。残された僅かな時間を楽しむがいい…!」

 

 

 

 

 

 

「おえええっ……! げほっ! ごほっ!」

 

 教会の庭で吐瀉物を撒き散らしてしまうとは……参りましたね……しんどいです。ユニ様が悪いわけではありませんが、あの言葉が心に突き刺さって吐き気が止まりません。

 

「「ギンガさん」」

「ロム様? ラム様?」

「大丈夫……?」

「心配ありません。申し訳ありません、見苦しいところをお見せしてしまって」

「ねえギンガさん」

「はい」

「女神様って失敗しちゃいけないのかな……?」

「そんなことありませんよ。女神様だって失敗ぐらいします」

「そっか、じゃあ、お姉ちゃんとギンガさんってどっちが強いの?」

「それはブラン様に決まっていますよ」

「…お姉ちゃんのこと……尊敬してる……?」

「それはもちろん」

「だって……ラムちゃん」

「そうだね、ロムちゃん」

「?」

 

 女神様とはいえこんな幼い子たちにすら心配をかけてしまうなんて……いけませんね私は。正直、質問の意図がわかりませんが……ロム様とラム様なりに私を元気付けてくれてるのでしょう。

 

「じゃあさ、ギンガさん」

「はい」

「どうして、ギンガさんより強くて、ギンガさんが尊敬してるお姉ちゃんが失敗しても良いのに、ギンガさんは失敗しちゃいけないの?」

「……! それは……」

 

 ……さっきは幼いなんて言ってしまいましたが、どうやらロム様もラム様も立派な女神様だったようです。見事に私の心に寄り添ってくれて、おかげで気分も落ち着いてきました。

 

「……ロム様、ラム様、中に入りましょう。……ユニ様に、いえネプギア様にも伝えたいことがあります」

「「はーい」」

「それと、ありがとうございます、ロム様、ラム様」

「私たちなーんにもしてないよ」

「うん……(こくこく)」

 

 たとえ、四人の女神様たちが負けてしまったとしても、ゲイムギョウ界にはまだこの方たちがいます。失意などしてる暇はありません。女神補佐官として、私がこの方たちを導かなければ。

 

 まずは……ユニ様とネプギア様を仲直りさせて、私もユニ様と仲直りしなくては。

 

 

 

 

 

 

 

「さっきはその……言い過ぎちゃい……ました。ごめんなさいギンガさん……」

「ユニ様が謝る必要は……いえ、めっちゃ傷ついてしんどかったのでもう言わないでくださいね……あ! 責めてるわけじゃないんです! いや少し責めてますけど! あぁ! 泣かないでください! ……仲直り、しましょう」

「……はい!」

「ネプギア様とも」

「もうしましたよギンガさん。それよりさっきは遮ってくれてありがとうございました。本心じゃなくてもユニちゃんに嫌なこと言っちゃうところでした」

「どういたしまして……その、皆さんに少し聞いてもらいたいことがあります」

「何ですか?」

「私は今まで、女神補佐官として長い間女神様に仕え、このゲイムギョウ界で生き続けてきました。でも、女神補佐官なんて役職は他の国になくて、プラネテューヌにおいても私以外いないので、どうやって女神様と接していくべきかわかっていなかったんです」

「「「「……」」」」

「私なりにそれを上手くやってきたつもりだったんですが、長い時が経つにつれて、どうやら歪な接し方になってしまっていたようで、それで今回のようにネプテューヌ様に怒られてしまったんだと思います」

「ギンガさん……」

「だから、もう一度考え直そうと思います。女神様との接し方を、また1から。これはその宣誓です」

「……ギンガさん……あたし、ギンガさんのことは仲間だと思っていたのに、ギンガさんはそう思ってないって思ったから……怒っちゃったのかもしれません」

「ユニ様……」

「ギンガさんも私たちの仲間なんです。部下とかじゃなくて。ギンガさんはよく『烏滸がましい』なんて言いますけど、そんな寂しいこと言わないでほしいです……」

「ネプギア様……努力はします」

「わたしたちが言いたいことはもう言ったわ!」

「言ったよ……!」

「はい、わかっています。ロム様、ラム様」

 

「作戦を思いつきました。私たちの反撃を始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 女神候補生の皆様にあいちゃん、コンパさんを加えて、作戦の説明をします。

 

「私は今から単独でズーネ地区に突っ込み、モンスター包囲網を突破し、女神様たちを救出しに行きます。アンチクリスタルを使うということは、敵の強さは女神様ほどではないと思うので私でも充分戦えるでしょう」

「じゃあ私たちも!」

「いいえ、皆様はここで待機です」

「ギンガさん! さっき私たちが言ったこと…わかってないんですか!」

「わかっていますよ。ですが、変身もできない皆様が来てもぶっちゃけ足手まといです」

「それは……」

「師匠! そんな言い方は……!」

「いいんですアイエフさん。おかしいかもしれないけど、ギンガさんがそうやってハッキリ言ってくれるようになったのが、逆に少し嬉しく感じるんです」

「ネプギア……」

「……この非礼は後で詫びます。私が単独で突っ込むのが作戦のフェーズ1、そして候補生の皆様が戦うのがフェーズ2です。フェーズ2開始ギリギリまで候補生の皆様には修行してもらいます」

「ですが師匠が一人で行くよりも、師匠がネプギアたちの修行を見ててあげた方が…」

 

 あいちゃんがいると話が進むのが早くて助かります。何故かというと、私がして欲しいタイミングでして欲しい質問や意見を言ってくれるからです。

 

「確かに、あいちゃんの言う通り私がギリギリまで皆様の訓練を見たほうが良いかもしれません、敵も今すぐ女神様を始末することはないと思いますし、その時間はあると思います。なぜ今すぐ始末しないかと言いますと……そうですね、少し授業をしましょう。

 嫌な例えですが、女神様がこの瞬間に亡くなっても、国にシェアがあれば女神様へ行くはずだったのに行き場のなくなったシェアが溢れ、それにより新しい女神様が誕生します。

 しかし、シェアがない状態で女神様が亡くなると、何も起こらず、そのまま国が滅亡の危機となります。

 アンチクリスタルの発掘やモンスターの配置など手の込んだ手段ゆえに、おそらく敵の狙いは女神様を殺すことだけではなく、国やゲイムギョウ界そのものを崩壊させることだと思われます。

 つまり、捕らえた女神様をすぐに殺すのではなく、その失態を世界中に拡散し、シェアを下げてから殺すつもりなのでしょう」

「じゃあ、シェアが下がる前にお姉ちゃんを助けないと!」

「それはそうなのですが、ズーネ地区はものすごく電波が悪いので、敵は女神様の失態の情報を世界中に拡散するのはかなり時間がかかると思われます」

「じゃあ確かに……時間はあるということですね」

「はい。……となると、私が今すぐ向かう理由もないのですが……これは、まぁ、嫌な予感といいますか……」

「嫌な……予感?」

「……女神様にケンカを売るような奴らですよ? 捕らえた女神様に何もしないなんて思えますか? 殺さないようにギリギリ痛めつけるなんてことしかねません。それに勢い余って殺すなんてことも……そうなったら敵の作戦も失敗ですが」

「……」

「確かに女神様はシェアがあれば人間とは比べ物にならない回復力で身体が再生します。だからといって、女神様が、大切な人が傷ついているかもしれない瞬間に何もしないなんてできません。だから、私が先に突っ込んで行って、可能ならば救助します。皆様も同じ気持ちかもしれませんが、ここは私に皆様の気持ちを背負わせてください」

「わかりました。ギンガさん…絶対に死なないでくださいね」

「わかっています」

 

 無駄死だけはしません。それに、ネプテューヌ様とも仲直りをしないと死んでも死にきれませんので。

 

「というわけで先程言った通り、皆様にはフェーズ2開始ギリギリまで修行してもらいます。修行の目的は三つ、一つは『モンスターを怖がらなくなるため』。これはネプギア様とユニ様なら既にクリアしているでしょう。そして二つ目は『心の鍵を開けるため』です」

「心の鍵……そういえば、お姉ちゃんが言ってたことあるわ。私が変身できないのは自分の心にリミッターをかけてるからだって」

「心の……リミッター……」

「はい、皆様はおそらく変身できるほどの実力は既に持ち合わせていると思いますよ。でも、その心の鍵……リミッター……どっちでも良いですけどそれをなんとかしなければ変身はできないと思います」

「……三つって言いましたよね? あと1つは何ですか?」

「単純に『強くなるため』ですね。女神様にとって、変身できるようになったとしても、それがスタートラインです。ハッキリと申し上げますが、皆様が変身できるようになったぐらいでは、お姉様たちはおろか私にすら勝てません」

 

 また嫌な言い方をしてしまいましたが、言葉を選んでる暇はありません。この非礼も後で詫びます。

 

「というわけで、先ほどベール様から紹介してもらったこのゲームで鍛えてもらいます。このゲーム、どうやら難易度調整ができるようで、皆様には最低でも、一番上の難易度の敵モンスターに勝てるぐらい強くなってもらいます」

「一番上……」

「はい、例えるならコンパさんが八十禍津日神ぐらい強くなる難易度です」

「すごいです……私は今から八十禍津日神です!」

「ノリノリねコンパ……」

 

 と言いましても、あいちゃんとコンパさんにそんなサンドバックみたいなことさせたくはありませんし、私も作戦によりすぐいなくなるので困りましたね。

 

 このゲームはCPUとの対戦もあるんですけど、この手のCPUって攻撃パターンがだいたい決まってて、それ覚えたらヌルゲーになるせいで訓練にならなくなってしまうので、なるべく対戦相手は生きた人間の方がいいんですよね。どこかに都合のいいサンドバッグいませんかねえ?

 

「ガラッ! ガラッ! ガラッ! 見いつけた!」

 

 ……いた。

 

「え? ……あ、あの時の狂人⁉︎ 撤退よてった……捕まった⁉︎ いやぁあああ! やめてえええ! 殺されるううう‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「それでは行ってきますあいちゃん」

「師匠! 私も一緒に……!」

「確かに……あいちゃんがいれば百人力、いえ千人力です。だからこそ、あいちゃんは候補生の皆様についていてあげてください」

「……はい」

「それに、本当はフェーズ1で作戦が成功するより、フェーズ2で成功した方が良いんですけどね。私が終わらせるより、たとえ情報が拡散しシェアが減っても、女神様が負けても妹たちがいるって感じでシェアが回復した方が、その先もシェアが減りにくくなりますし。……しかし、そう言ってられないほどの嫌な予感がするんです。だから、私がフェーズ1で全部終わらせる気で行きます。たとえ、今回は候補生の皆様の出番がなくなっても、この修行は無駄にはなりませんし」

「そうですね……ご武運を、師匠」

「ふふっ、最近あいちゃんにそう呼ばれるのを気に入ってきました。では、改めて、行ってきます」

 

 そう言ってからリーンボックス教会を飛び出し、私専用のプロセッサユニット『リミテッドパープル』を展開します。

 このリミテッドパープルというのは、パープルハート様が使用していたプロセッサユニット『パープル』が今使用している『ロストパープル』にアップデートされた際に、その時できた残骸を、イストワールに集めてもらって、それっぽく作ってもらったものです。

 衣装が変わるのではなく、普段の服装の上に追加装甲が少し付き、背中に小さめの羽型装備が付きます。これにより、私も変身後の女神様のように飛行することができるようになります。

 身体への負担が大きいので、装備していられる制限時間があります。というわけで、雑魚に構わず一点突破です。

 

 さて、ズーネ地区が見えてきました。モンスターがそれなりにいますね、一番層が薄いところから吶喊します……!

 

 そして、敵の対空攻撃をかいくぐり、アンチクリスタルの結界が展開されている場所までたどり着きました。……やけに敵のモンスターの攻撃が散発的でしたが、今はそんなことを考えても仕方ありません。

 

 結界の中には、ノワール様とブラン様とベール様が捕まって……ネプテューヌ様は?

 

「ギンガ…! ネプテューヌが! ネプテューヌがっ!」

 

 ノワール様がそう言って顔を向けた先には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ボロボロになりながら横たわっているネプテューヌ様がいました。

 

 …………は?

 

「ネプテューヌ様‼︎」

 

 ネプテューヌに様に駆け寄って抱き上げます。何でネプテューヌ様が…

 

「……ギンガ……な……んで……来た……の?」

「ネプテューヌ様! 喋らなくていいです!」

「こ……んな……かっこ悪い……とこ……見せたく……なかったのに…」

「……っ! そんなこと言ってる場合ですか!」

 

 ネプテューヌ様をなるべく平らなところに寝かせ、背後から感じる気配に対して振り返ります。

 

 ……お前か? ……お前がこれをやったのか?

 

「ようやく来やがったか! 会いたかったぜええ、ギンガァ! てめえが来るまで退屈でしょうがなかったからなぁ………

 

 

 

『退屈すぎるぅぅ…! いつになったら来やがんだあのクソ野郎はああああ!』

 

『うるさいぞ、落ち着け』

 

『もうこうなったらマジェコンヌ! てめえでいい! てめえが俺と戦いやがれええええ! それかそこのネズミだああああ‼︎』

 

『オ、オイラっチュか⁉︎ やめて欲しいっチュ! オイラと戦っても面白くないっチュよ!』

 

『そこらへんのモンスターとでも遊んでいろ! ……と言いたいところだが、貴様があの女神補佐官とはタイマンでやりたいと言うからモンスターどもをあえて散らばらせているんだったな……』

 

『退屈で死ぬううう……! 退屈死するううう! ……ん? ああ、いいこと考えたぜええええ!』

 

『何?』

 

『今はこの女神どもを殺さねえのはわかったけどよお、だったらもっとボロボロにしてやった姿を国民に見せた方がシェアも下がるんじゃねえかあ?』

 

『ほう?』

 

『俺じゃあ全快の女神にはタイマンで勝てねえっつってたが、アンチクリスタルっていう石のせいでこの女神ども弱ってんだろ? 一人ぐらい出して戦わせろおおおお!』

 

『ふん、結局は貴様が暇つぶしをしたいだけだろうが。まぁいい、確かにアンチクリスタルでの弱体化は進んでいる。今の貴様なら楽に倒せるだろうから、殺さないようにするなら好きにしろ。殺すのはシェアが下がってからだ』

 

『脳筋っぽいのに割とえげつない発想するっチュね』

 

『あと、逃したら承知しないぞ。もし今殺したり、逃がしたりしたらあそこに捕まってる女神のようになってもらうからな』

 

『大型のモンスターが触手に捕まってる絵面なんて需要ないっチュよ……それに、逃げたら逃げたで仲間を見捨てるような女神ってことを拡散したらシェアが爆下がりするっチュ』

 

『それもそうか』

 

『……っつーわけだ女神ども! 今からてめえらの中から一人を徹底的に痛めつける! 誰がそうなるかはてめえらに選ばせてやるぜええええ!』

 

『何よそれ……悪趣味ね……』

 

『私が行くわ』

 

『ブラン⁉︎』

 

『私はこの中で1番防御力が高い、だから……!』

 

『そんな理由でそんなことさせられませんわ! ここは私が!』

 

『いや、ベールはだめだよ。リーンボックスにはベールしかいないんだから、そうなると……ここはわたしかなぁ』

 

『どうしてよネプテューヌ! 妹なら私にも……』

 

『じゃあノワールは今すぐ国をユニちゃんに任せられる? ブランもロムちゃんとラムちゃんに……』

 

『ネプテューヌ……』

 

『わたしもネプギアに今すぐ任せるのは不安だけど、いーすんも……ギンガもいるから大丈夫でしょ!』

 

『だからって……』

 

『あーー、またいいこと思いついちまった、おい! プラネテューヌの女神ってどいつだあ⁉︎』

 

『どうしてプラネテューヌの……?』

 

『あのクソ野郎は確かプラネテューヌのやつだったからなぁ! てめえのとこの女神をボコしたところを見せてやりてえんだよおおおお‼︎』

 

『……わ、私がプラネテューヌの女神、ネプテューヌねぷぅ!』

 

『ノワール⁉︎』

 

『いえ、私がプラネテューヌの女神、ネプテューヌよ……ねぷぅ……』

 

『ブランまで⁉︎』

 

『いいえ! 私こそがネプテューヌねぷぅですわ!』

 

『ベールに至ってはできてないし! ていうかわたし語尾にねぷぅなんて付けてないよ! わたしこそがプラネテューヌの女神ネプテューヌだよ!』

 

『あああああ! 結局どいつなんだよおおおお⁉︎ 紫色の髪のやつじゃねえってことしかわかんねえぞおおおお!』

 

『ねぷぅ⁉︎ わたしが本物なんだけどー!』

 

『何ふざけたこと言っている。そいつがプラネテューヌの女神だ』

 

『あぁ⁉︎ そうなのか……』

 

『ねぷぅ⁉︎ 何その冷めた反応⁉︎』

 

『……まぁいいかあ! 精々楽しませてくれよおお⁉︎』

 

『くっ……力がでなくても、変身ができなくても、ねっぷねぷにしてやんよー!』

 

『そうだそうだそうだあああ! やる気出してくれねえと面白くねえからなああああ!』

 

 

 

 

 ……っつーわけで、この女神をボコってたんだよお! 中々いい抵抗してくれて面白かったぜえええ?」

 

「………様に」

「あ?」

 

「ネプテューヌ様に何してんだてめえぶっ殺すぞ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 無理だ、こんなもん見せられちゃもう無理だ。今は一応仕事中だけどもう言葉使いなんて知らねえ。

 

「はははははは! そうだ! そのツラだああああ! てめえのそのツラが見たかったぜええええええ! 前は表情一つ変えずに俺のことをやりやがったからなああああ!」

「知らねえな。倒した雑魚モンスターなんていちいち覚えてねえよ」

「んだとてめえ!」

「……俺の大切な女神様にこんなことしてくれたんだ……覚悟はできてんだろうな…⁉︎」

「へっへっへっへ! そうこなくちゃなあ! 殺し合いの時間だぜええええ!」

 

 ムカついてたから覚えてねえっつったが、こいつのことはよく覚えてる。こいつの名は「ジャッジ」。別にどこかの犯罪組織の四天王とかそういうわけじゃない。だいたい1000年ぐらい前に、人にもモンスターにも見境なく襲いかかる危険なモンスターがいるってことで、当時守護女神戦争で忙しかった女神様に代わって俺が討伐したモンスターだ。それに、雑魚っつったけど俺が今まで戦ったモンスターの中では一番強かったんじゃねえかな。まさか生きてやがったとは。

 

 怒りで頭がおかしくなりそうだ。……けど、どれだけキレていても戦闘では冷静に、だな。一度は倒した相手、どう立ち回って戦えばいいかは知ってる。……とりあえず敵のでけえ武器から繰り出させる大振りの攻撃を、最低限の動きで避けつつ、敵の懐に飛び込んで……っ!?

 

「オラァ!」

「ちぃっ……!」

「てめえの技は知ってんだよおおおお! 間合いに入らせるわけねえだろうがああああ!」

 

 ……なるほど、以前より強くなってやがるな。前は懐に飛び込んでからの『ギャラクティカエッジ』で勝てたんだが、今回はそもそも俺の技の範囲に近づけさせてくれねえ。こいつは攻撃範囲が広い代わりに小回りがきかないのが弱点だったんだが、その弱点をカバーできるようになったらしい。面倒だな……

 

「ははははは! 1000年だ! てめえを次確実に殺すために生き延びても1000年ぐらい大人しくしててやったんだ! 弱点ぐらいなんとかしてんだよおおおお!」

「……」

「どうした⁉︎ 逃げてるだけじゃ勝てねえぞおおおおーー!」

 

 怒りでおかしくなりそうな頭をなんとか冷静に抑えながら考える。リミテッドパープルの制限時間もあるし、こいつはなるべく迅速に仕留めたい。こいつはまだ知ってるからいいが、問題は奥に立ってるあの魔女みてえなやつだ。情報がねえ、なんだあいつ。情報がねえからこいつより、あの女と戦う時間の方を多目に残しときたい。

 

「……『魔界粧・轟炎』!」

「あ⁉︎ 効かねえんだよお!」

 

 ……ちっ、牽制にもならねえか。ごめんあいちゃん、あいちゃんの技が弱いわけじゃないからね。

 

「終わりかぁ⁉︎ だったら八つ裂きにしてやる……! 八つ裂きにしてやるよ雑魚がああああ!」

 

 うるせえな、誰が雑魚だよ。てめえ俺に一回負けてんだろうが。いや、殺せてなかったってことは俺は勝ててねえわけだ。試合と死合は違えし。

 

 ーーーーじゃあ今度こそ確実に殺してやる。

 お前に教えてやろう、お前如きならまだしも、今の女神様でさえも到達していない、シェアエネルギーを用いた戦闘の『真髄』というものを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………『シェアリングフィールド』展開……!」

 

 

 

 

 

 




ジャッジ・ザ・ハード好きな人はマジで申し訳ありません。
原作ゲームの誇り高き犯罪組織マジェコンヌ四天王の「ジャッジ・ザ・ハード」とこの作品のなんかそこらへんの乱暴なやつ「ジャッジ」は別物として考えていただければ…

次回は、ちょっと整理したい情報や設定があるので、それに関する番外編をやります。

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