「初めて会った頃と比べると随分身長が伸びたわね。私よりも大きくなっちゃった」
「女神様のおかげです」
「言葉使いも丁寧になっちゃって、二人きりの時はいいって言ったのに」
「使い分ける方が難しいのでこっちで統一しましたよ。それに今あの頃の自分を思い出すと女神様への非礼の数々を思い出して死にたくなります」
「死んじゃダメよ。あなたが真面目になってくれて嬉しいけど……それはそれで少し寂しいわね」
「むぅ……では、戻した方がいいです……いいのか?」
「いやいいわ、あなたのしたいようにしなさい」
「かしこまりました」
「教会も随分と賑やかになってきたわね」
「私としては女神様と二人きりだった頃が恋しいです」
「あら、私も最近少しそう思うのよね」
「ですが、教会が賑やかになったというのはそれだけ人々の暮らしも良くなったということ。女神様を信じる国民も以前とは比べものにならないほど増えました」
「そうね、あなたのような子供を作らないためと思って頑張ったのよ」
「……」
「……前の私は他の国の女神を倒すことばかり考えていて、国民たちがどんな暮らしをしているかなんて考えたこともなかった。そんな時に私を殺そうとしてきたあなたと出会ってようやく気づくことができたのよ。私はこの国をこんな小さな子供がこんな生き方をしなきゃいけないようなひどい国にしていたってことに」
「……」
「それに……きっと、あの時の私はいつも戦いばかりで寂しかったんだと思うわ。おかしいでしょう? 自分を殺そうとしてきた子供を寂しさを紛らわすために連れて帰るなんて。でもあなたが来てからは寂しいって思うことが全くなくなったのよ」
「……」
「少し話が逸れたわね。えっと、だから……この国が良くなったのはあなたのおかげなのよギンガ……ギンガ?」
「……」
「ちょっと、せっかくいい話をしてたのに、何よ急にそんなところで倒れ込んで……お腹でも痛いの? ……ねえ? ……ギンガ? え……? 血……? ギンガ‼︎⁇」
*
「余命……半年ほどらしいです」
「そう……」
「この国どころか今のゲイムギョウ界の医療では治す方法がないって言われてしまいました」
「……っ! そう……」
「情けないものですね。女神様と肩を並べて戦うゲイムギョウ界屈指の猛者と言われた男が病なんかでこのザマです」
「……」
「女神様、この間、私見てしまったんですけど」
「何をよ?」
「ゲイムギョウ界初の人工生命体を作るという計画の書類をです」
「勝手に見ないでくれるかしら」
「すみません、目に入ってしまいどうしても気になったので」
「で? それがどうかしたの?」
「非人道的だから用意できないけれど、人体のサンプルがあれば完成が数年は早くなる……みたいなことが書いてありましたよね」
「書いてないわよ」
「いやいや、書いてありましたって」
「書いてないわ」
「いやいや、書いて……」
「……ッ! そんなこと書いてないって言ってるでしょ! それにもし書いてあったらとしたら何なのよ! あなたを実験台にしろってこと⁉︎ ふざけないで!」
「ふざけてなんかいませんよ、このまま何もできずに病に殺されて死ぬぐらいならあなたの役に立って死にたいのです」
「もう充分役に立ってくれたじゃない……私にあなたを殺せっていうの……?」
「私の死すら役に立てるなら光栄です。病に殺されるなら悔いが残りますが、あなたに殺されるなら悔いはありません」
「……わかった。あなたの命…貰うわ」
「ありがとうございます。申し訳ありません、嫌な思いをさせてしまって」
「ほんとよ。でも、さっき言ったことを訂正するわ。これはあなたを殺すためじゃない、あなたを救うためよ」
*
「まさか人工生命体の技術の完成が間に合うとは……」
「成功したのは奇跡って言われてるわね。私言ったでしょ、あなたを救うって。そのために奇跡でもなんでも起こしてやったわ」
「……なんといいますか、体の半分が人口生命体になっても、以前とあまり変わりませんね」
「そりゃそうよ、どこかの改造人間じゃないんだから」
「超パワーを手にするのを少し期待したのですが……」
「そんな技術があったらとっくに守護女神戦争なんて決着がついているわよ」
「人工生命体ってだけで凄まじい技術だと思いますけどね。あと、お願いがあるのですが」
「なにかしら?」
「女神様に抱きしめてもらえるのは嬉しいんですけれど、それ以上に痛いので離してください、それか少し緩めてください」
「だーめ」
*
「小さいですね」
「あなたのように人体がベースならともかく、0から作ったらこんなものよ」
「名前はなんというのですか?」
「そういえば、まだつけてなかったわ。そうねぇ……うーん……『イストワール』ってのはどうかしら? 『歴史』という意味よ」
「直球ですね」
「名前なんて直球でいいのよ。よし、起動するわ」
「ちゃんとできるでしょうか?」
「大丈夫よ……多分」
「多分ですか……申し訳ありません、私にシェアクリスタルの生成ができれば教祖をやれたのですが……」
「それは先天的な才能が必要だから仕方ないわよ」
「それができる生命体を人為的に作れるなんて……本当にすごい技術です」
「この子を作れたのは奇跡に近いわね。たとえ技術があっても再現できるかわからないし、ぶっちゃけ何で成功したかもわからないわ。……とにかく、あなたの部下になる子よ、ちゃんと面倒を見てあげてね」
「最初から育った状態で生まれるのがこの人工生命体ですよね? 面倒なんて見る必要あるんですか?」
「膨大な知識がデータとしてあるから既に私やあなたより賢いと思う。でもデータだけじゃなくて実際に色々な経験を積ませてあげるべきよ」
「わかりました。その前に1つ、我儘を聞いて欲しいのですが」
「なにかしら?」
「部下じゃなくて同僚が欲しいです」
*
「紹介するわ、私の妹よ」
「はい?」
「だから、私の妹よ」
「え? 女神様に妹さんがおられたのですか? 初耳なんですが」
「違いますよギンガさん、国民の皆さんからの女神様への過剰なシェアにより、プラネテューヌに新しい女神様が生まれたのです」
「説明ありがとうイストワール。それにひきかえギンガったら、女神の生まれ方はちゃんと教えたはずなのに忘れたのかしら?」
「すみません……」
「まぁいいわ。ほら、△△、挨拶しなさい」
「△△です! よろしくおねがいします!」
「はい、プラネテューヌの……イストワール、私の役職名ってなんでしたっけ?」
「え?えーとですね……あれ? データがありません」
「そういえば『部下』ってだけで役職名なかったわね。まぁ『女神補佐官』でいいんじゃないかしら?」
「そんな適当な……」
「いえ、それで構いません。……気を取り直して、女神補佐官のギンガです。△△様、よろしくお願いします」
「こら、△△、私の後ろに隠れないの。確かにギンガは顔が無駄に良いから緊張するのはわかるけど、これからは私より一緒にいることになるかもしれないんだから慣れなさい」
「無駄に、ですか」
「無駄に、よ。そのせいで、プラネテューヌ教会には私じゃなくてギンガの信者がいるぐらいよ。ちょっと気に入らないわ、ギンガは私のものなのに」
「そうですか……ん? 最後なんかちょっと変なこと言ってません?」
*
「ぎんがぎんが!」
「どうしました△△様?」
「わたしね、おおきくなったらぎんがとけっこんするー!」
「お気持ちは嬉しいのですが、私などが女神様と結婚なんて烏滸がましいのでできません。それに、私には心に決めた方がいますので」
「えー! めがみをふるなんてしけーよ!」
「わかりました……私が死刑なら明日の動物園は無しですね」
「やっぱしけーなし!」
「ありがとうございます」
「じゃあぎんがはそのひととけっこんするの?」
「いいえ、しませんよ」
「なんで? すきなんでしょ?」
「はい、好きですよ。愛しています。ですが、私だけを愛するその人のことは好きではありませんから」
「よくわかんない」
「そうですね、△△様にはわかりにくい話かもしれません」
「うーん、ぎんがはおねえちゃんのことがだいすきだけどぎんががすきなのはみんなのことがすきなおねえちゃんだからぎんがのことだけがすきなおねえちゃんのことはすきじゃないってことぐらいしかわかんないかなー」
「全てを理解されていますね、この方が次の女神様ならプラネテューヌの未来は安泰でしょう」
*
「私、そろそろこの国の守護女神やめるわ」
「そうですか、では△△様に女神様の座を譲るための手続きなど色々準備しなければいけませんね」
「……驚いてないわね」
「最近の女神様のご様子からそんな気はしてたので」
「そんなにわかりやすかった?」
「自惚れかもしれませんが私だからわかったのかもしれませんね。もう数百年の付き合いですので」
「……多分、自惚れじゃないと思うわよ」
「女神様は……守護女神を辞めたあとどうなさるおつもりで?」
「少しの余生を過ごしたら死ぬでしょうね」
「死なないでください」
「あなたのお願いなら人工生命体になってでも生きてあげたいわ。でも、不謹慎だけど私、死ぬことに憧れているのよ。女神って人とは比べ物にならないぐらい長く生きるから、天寿を全うした人間のように大事な人に看取られることに憧れてるの」
「では死んでください」
「なんかすごく暴言を吐かれてる気分だわ」
「半分暴言です」
「あら」
「ですが、それが女神様の願いなら私は受け入れましょう。後のプラネテューヌは△△様やイストワールや私に任せてどうぞ死んでください」
「ねえ、もしかして怒ってる? 自分の願いとはいえ死ね死ね連呼されると少し傷つくんだけど」
「別に怒ってませんが? 私を半永久的に生きる人工生命体にしておきながら私を残して自分だけ安らかに逝こうとしている女神様に対して全く怒っているわけではありませんが?」
「怒ってるじゃない」
*
「ねえギンガ、今日はいい天気なのかしら?」
「曇りですね、雨になるかもしれません」
「そこは嘘でも晴れって言うべきだと思うけど」
「女神様に嘘はつけません」
「ねえ、前から気になってたんだけど、どうして△△は△△様って呼ぶのに私は女神様って呼ぶの? もう私は守護女神じゃないのに」
「女神様は守護女神をやめても私の女神様ですよ。それに、こんなことを言うと女神補佐官として失格ですが、私にとっての唯一絶対の女神様はあなただけですので」
「それ△△とかその後の代の子たちに絶対言っちゃダメよ」
「わかってますよ。あとは本当に好きな人を名前で呼ぶのは恥ずかしいからですかね」
「なんか今とんでもないことさらっと言われた気がするわ。そうね、私もあなたことが大好きよ、愛しているわ。でもあなたしか愛していない私のことは好きじゃないんだっけ?」
「……△△様から聞いたのですか?」
「あなたからそれを聞いた日にすぐ私に教えてくれたわ」
「マジですか」
「マジよ」
「△△様め……」
「……ねえ、最期の頼みを聞いてほしいわ」
「何でしょう」
「私と会ったばかりの頃の言葉遣いに戻してくれない?」
「今更できますかね」
「できるでしょう。たまに出てたし」
「誤魔化せてたつもりでしたけどバレてたんですね」
「バレバレよ」
「咄嗟に出んのと使うのじゃわけが違えんですよ」
「本当ね、混ざってて面白いわ」
「ちょっと待っててくれません? 頭を整理するので」
「早くしないと私死ぬわよ」
「不謹慎なジョークやめろ」
「できてるじゃない」
「あんたが死ぬとか言うから速攻で頭整理して切り替えたんだよ。つーか、何で今更俺の言葉遣い戻せなんて言うんだよ」
「『私』のあなたも好きだけど『俺』のあなたも好きだったからかしらね。あの頃のあなたは可愛かったから。今も可愛いけど」
「そうか」
「照れてる?」
「千年以上の付き合いだからもうあんた相手じゃ照れねーよ」
「ふーん、つまんないの」
「なぁ、やっぱ死なないでくれってのは無しか?」
「あーもう、あなたがそれを言わなかったら何も思い残すことなく死ねたのに」
「悪い、忘れてくれ」
「あ、最期の頼みがもう1つあったわ」
「最期じゃねえじゃねえか」
「ごめんなさいね、これが本当の最期よ」
「ムシキングかよ」
「言う前に本当に死ぬわよ私」
「……頼みって何だよ」
「私より好きな人を作ってね」
「は?」
「あなたの呪縛にはなりたくないのよ」
「呪縛ねえ……ま、あんたより素敵な女神様が生まれりゃそーなるかもな」
「意外と気が多いのね」
「あんたのせいで女神様の狂信者に育て上げられちまったからな」
「いや、絶対それは私のせいじゃないわよ」
「初めて会った女神様があんただったからあんたのせいだよ」
「もう……」
「へっ」
「ねえ、ギンガ」
「ん?」
「私が生きていて1番幸せだったことは……あなたに会えたことよ。ありがとう、ギンガ」
「……あぁ、どういたしまして」
「……」
「おやすみなさい、女神様」
*
「すみません△△様、イストワール。あの方の最期の時間だったのに、二人きりにさせてもらって」
「いいんですよ、○○さんが望んだことですから」
「私も構わないよ。ねえ、ギンガ」
「何でしょう?」
「お姉ちゃんへの恋は叶ったの?」
「ええ、叶いました。その直後に振られましたけど」
「それはどういうことなんでしょう?」
「うーん、お姉ちゃんとギンガは結局相思相愛だったけどお姉ちゃんはこの先も生き続けるギンガの心を縛りたくなかったからお姉ちゃんが死ぬ直前でギンガを振ったってことぐらいしかわからないかな」
「相変わらず凄まじい理解力ですね」
*
「何度経験しても、女神様を看取るのは慣れませんねイストワール」
「慣れなくてもいいことだと思いますよ、ギンガさん。私だって慣れませんし、慣れるつもりもありません」
「ハンカチ……貸しましょうか?」
「ありがとうこざいます、お借りします」
「鼻は噛まないでくださいよ」
「噛みません! ……引退した女神様はほとんど死ぬことを選びますよね」
「昔、女神様が言ってました。人より長く生きる女神様たちは、人のように逝くことに憧れるんだって」
「ギンガさんは……憧れたりすることはありますか?」
「いいえ全く。いつ死んでもいいと思ってますが、死にたいと思ったことはないですね」
「いつ死んでもいい……ですか」
「私の役割を果たせたなら、です。無駄死には御免ですよ。あ、でも、女神様への失態は命で償わなければならないのでその場合はすぐ死にます」
「やめてください」
*
「ねえねえ、あなたがギンガって人?」
「ええ、ギンガは私ですが」
「おぉ! 早速探し人を見つけるとは流石はわたし! えっと、自己紹介が遅れちゃったね! はじめまして! わたしの名はネプテューヌ ! プラネテューヌの女神候補生だよ! よろしくね!」
「知っていますとも。こちらも自己紹介をしておきましょう。私の名はギンガ。プラネテューヌの女神補佐官をしています。これからよろしくお願いします、ネプテューヌ様」
「堅苦しいなー! ネプテューヌって呼んでよー私もギンガって呼ぶからさー」
「私のことは好きに呼んでくれて構いませんが、私は女神様を呼び捨てにはできません」
「なんでよー」
「なんでもです。女神様を呼び捨てにするぐらいなら死を選びます」
「え? 死? もしかしてこの人やばい人? もしかしてやばい教育されるの私?」
「では、早速、戦闘の訓練……はネプテューヌ様がもう少し大きくなってからにしましょう。まずはお勉強からですね」
「えーめんどくさーい! 勉強なんかよりゲームしよーよ! ほらほら座って!」
「……まぁ顔合わせ初日からお勉強をさせるのもあれですし……そうですね、一緒にゲームしましょうか」
「しましょうか、じゃありませんギンガさん! ちゃんとネプテューヌさんにお勉強をさせてください!」
「げっ、いーすん」
「げっ、じゃないですよネプテューヌさん! ゲームは1日1時間と決めたじゃないですか! さっきまでゲームをしていたので今日はもうダメです! ギンガさんとお勉強をしてください!」
「決めてないよー! いーすんが勝手に言ってるだけじゃん!」
「いーすん、ここは私に免じてネプテューヌ様を許してあげてください」
「何でギンガさんまでいーすんと呼ぶんですか! ネプテューヌさんならいいですけど、ギンガさんにそう呼ばれるのは恥ずかしいからやめてください!」
「えぇ、なんでよー! 可愛いのにー」
「そうですよ、可愛いのに。ねえ、いーすん」
「次そう呼んだら一週間仕事以外ではギンガさんと口聞いてあげません。だいたいギンガさんはいつもそうです。女神様に厳しくすることを私に押し付けてギンガさんは甘やかすばかり、300年前のあの日もそうでした………」
「……ねーギンガ、めっちゃ話長くなりそうだし外で遊ぼうよ」
「……そうですね、イストワールが説教に夢中になっている隙に逃げましょう」
*
「ギンガー! わたしにも妹ができたよー!」
「ネプギア様ですよね、存じ上げております」
「もうギンガったら! 知ってたとしてもネプギアが自己紹介する前に名前言っちゃダメでしょ! ネタバレ厳禁だよ!」
「申し訳ありません、ネプテューヌ様、ネプギア様」
「い、いいんですよ。えーと、プラネテューヌの女神候補生、ネプギアです。よろしくお願いします、ギンガさん!」
「ええ、よろしくお願いします」
「可愛いでしょー?流石わたしの妹って感じ」
「はい、とても可愛らしいです」
「そ、そんな……恥ずかしいよお姉ちゃん……」
「可愛いなぁネプギアは! ……ねえ、ギンガ」
「はい」
「わたしに対してやってた厳しいシゴきはネプギアにはしないでね」
「厳しいシゴき……ですか?」
「自覚なかったの⁉︎ ギンガが優しかったのは最初の最初だけであとは鬼の訓練だったよ! 笑顔でえげつない訓練内容を課してくる悪魔だったよー! とにかくネプギアにはもっと優しくしてね!」
「私としては普通にしてたつもりだったのですが……」
「ねぷぅ⁉︎ あれが普通ぅ⁉︎」
「ギンガさん……その……変えなくてもいいですよ?」
「ダメだよ! お姉ちゃんはネプギアにあんな思いさせたくないんだよー!」
「昔から同じようにやってきたのですが……これも時代というものなのでしょうか……?」
「そうそう! 昔は教育的指導だったけど今は体罰になるのと一緒だよ! 懲戒免職ものだよ!」
「でも……私はお姉ちゃんと同じ訓練がしたい……かな」
「ネ、ネプギア…?」
「だから、お願いしますギンガさん! 私を厳しくシゴいてください!」
「ダメーーーーーーーっ!」
*
「明日は、待ちに待った友好条約の式典だね」
「そうですね、ここ最近は条約の締結に関するゴタゴタでとても忙しいです。おそらく締結後はもっと忙しくなるでしょう。あまりにも忙しいのでイストワールもオーバーヒートを起こしかけていました」
「わたしみたいにお仕事サボっちゃえばいいのにー」
「忙しいと言いましたが、私にとっては好きでやっていることですので」
「……式典には来るよね? わたしがじゃんけんで勝ってスピーチできるようになったんだよ?」
「行けたら行きます」
「それ来ないやつじゃん!」
「それにしてもお姉ちゃん、じゃんけん強いね」
「まぁそれはあれだよ、ギンガから教わった反射と思考の融合ってやつ。みんなの手の予備動作から気づかれないぐらい早く有利な手を出したんだ。でも多分二度と同じ手は通用しないと思うよ。ノワールとブランは気づいてなさそうだったけど、ベールはわたしが何したかなんとなく気づいたっぽいし」
「ギンガさんから教わった戦闘の技術をそんなことに使っちゃうんだ…」
「私の教えを日常生活にまで活かすなんて……流石はネプテューヌ様」
「ギンガはわたしのやることなすことなんでも褒めてくれるよね。……なろう主人公ってこんな気分なのかなー」
「お姉ちゃん、私も……それできるようになれるかな?」
「ネプギアなら余裕だよ余裕! でもまずは変身からだね! よーし、ギンガは忙しそうだから今日はお姉ちゃんが直々にネプギアを鍛えてあげよう! ついてこいネプギアー!」
「あ、待ってよお姉ちゃーん!」
「二人とも行ってしまいましたね……明日は忙しいですし今日は好きに過ごさせてあげましょう」
「あ、イストワール。オーバーヒートは大丈夫なのですか?」
「クールダウンするために少しお喋りしにきました。ギンガさん、式典を欠席するというのは本当ですか?」
「はい、私がその場にいると感慨深さから自らの感情を制御できず何をしでかすかわからないので。それに式典が終わったらすぐに仕事で四国間を行ったり来たりしなければならないので、式典に行かない方が都合が良いんですよね」
「……ネプテューヌさんに怒られますよ」
「ネプテューヌ様は怒っていても可愛いのでむしろ怒られたいです」
「はぁ……そうですか……友好条約の締結、ついにこの時が来ましたね」
「ええ」
「友好条約の締結はギンガさんの願いでもありましたよね?」
「そうですね、いつも思ってたんですよ。どうして同じこのゲイムギョウ界に生まれ、同じこのゲイムギョウ界を愛する女神様たちが同士が争わなくてはならないのかを」
「それは……」
「歴代の女神様は皆それを運命だと受け入れて戦い続けてきました。いえ、中には戦いを望まなかった方もいましたが、殺伐とした戦乱の時代ではそんな思いはかき消されていきました。私も女神様が戦うと決めた以上それに付き従い戦ってきました。……ですが、女神様の意に反したとしても、戦いを止めるために私に何かできることがあったんじゃないか…と思うのは自惚れですかね?」
「ギンガさん……」
「……しかしついに、武器を捨て、手を取り合うことを今の世代の女神様たちは選びました。それにより新たな問題も生まれるでしょうが、彼女たちなら乗り越えていけるでしょう。何より、人々が待ちわびた真の平和を、私も喜ばずにはいられません」
「式典には来ないのに……ですか?」
「うっ……」
*
「教会がこんなに静かなのは珍しいですね。皆式典に行っているから当たり前なのですが」
「おっといけません、そろそろネプテューヌ様の……いえ、パープルハート様のスピーチの時間ですね。テレビをつけて『刮目』しなければ……」
『ゲイムギョウ界にあまねく生を受けし皆さん…………
話のストックが無くなりました。
おそらく、次回で1部?前半?…なんて言い方をすればいいか分かりませんが、とりあえずそれが完結です。