前回のあらすじを一言で説明すると、パープルハート様がナスのせいで闇落ちしました。
「殺してあげる……殺してあげるわギンガ!」
やばいです。私めっちゃ狙われてます。
「ギンガさん……あれは?」
「あれは女神様が負の感情により変身する『カオス化』です。私も二回しか見たことがありません」
「二回……今と、あと一回ってことですか?」
「はい、前のは五代前のプラネテューヌの女神様が、好物のショートケーキの上の苺を食べられた時になりました」
(意外としょーもない理由なんだ……)
カオス化すると感情が悪意に支配され、性格も凶暴になってしまいます。おそらく今のパープルハート様は本気で私を殺す気でしょう。とりあえず、今の私だと確実に殺されるので……
「イストワール! 私のモード切り替えを!」
「……させると思う?」
「……っ!」
そう言ってパープルハート様が一直線に私に迫って飛んできます。先程言った通り、ガチで殺す気で来てます……こんなパープルハート様……ちょっと良いですね! ……じゃないです! 今の私はあの剣で切り裂かれたら死にます! モード切り替えが間に合わな……
「てやあ!」
咄嗟にパープルシスター様が庇ってくださりました。申し訳ありません!
「くっ! ネプギア、邪魔よ! ギンガを殺せないでしょう!」
「させないよ! 今のお姉ちゃんはそうしたいかもしれないけど、元に戻ったら絶対にお姉ちゃんは悲しむから!」
「うるさいわ! どきなさい!」
「いーすんさん! ギンガさん! 今のうちに!」
「ありがとうございますパープルシスター様!」
今のうちにイストワールにモード切り替えをしてもらいます。三日かかるとか言いませんよね?
「少し待ってください……よし、切り替えました。ですがギンガさんの身体はまだ完全に治っているわけではないんです。無理だけはしないように!」
「ありがとうございます」
モード切り替えが終わり、自身を縛っていた縄を引きちぎります。よし、これならある程度は抵抗できます。パープルハート様に殺されるのは本望ですが、今のパープルハート様には殺されたくないですからね。
「……面倒ね。まぁいいわ。少しぐらい抵抗してくれた方が面白いし」
「お姉ちゃん……!」
「変身できるようになったばかりのあなたではまだ私に勝てないわよネプギア。そこで少し休んでなさい」
「まだ…まだ負けてないよ……!」
「……前までは私に勝とうなんて思ってすらいなかったあなたにそう言われるのは嬉しいわ。けどやめておきなさい。これ以上は手加減できないから」
パープルシスター様が既にパープルハート様に圧倒されていました。……早い! パープルシスター様が弱いというわけではなく、変身した彼女たちの実力差から考えてもいくら何でも早すぎる……!
「なんて力……!」
「……おそらく、今のネプテューヌさんはカオス化によって自身に影響がある物質からの効果が反転しているのだと思います」
「つまり?」
「通常のネプテューヌさんはこの大量のナスで弱体化します。しかし、今のネプテューヌさんは……」
「パワーアップしている、と?」
「はい……おそらく」
なるほど、厄介ですねカオス化。私の力が戻ったぐらいでは焼け石に水かもしれません…
(馬鹿なっ! ナスモンスターどもの制御ができん……⁉︎ まさか、あの暴走した女神に奪われていると言うのか……⁉︎ ナスモンスターと合体し更なる力を手に入れナスコンヌとなり、女神どもとこの男を抹殺する計画が全て台無しだ! どうする……?)
「おい、マジェコンヌ! 本当は今度こそ殺してやりたいですが、お前は逃げてください!」
「何⁉︎ というか何だお前⁉︎ 女神が来た瞬間言葉遣いが丁寧になりおって!」
「それはそういうものなんですよ! それより、もうお前の手に負える状況じゃないんです! 死にたくなかったらここは逃げてください! お前みたいなやつでも殺したら、暴走が終わったらパープルハート様は後悔しま……避けろ!」
その瞬間、パープルハート様の一閃によりマジェコンヌの後ろのナス畑が切り裂かれました。私の言葉に反応してその場から避けていなかったら、マジェコンヌは無事ではなかったでしょう。私がマジェコンヌを助けたのが気に入らなかったのか、パープルハート様はマジェコンヌではなく私をまた狙ってきました。
「何でそのナス女を庇うのよ! やっぱり私よりナスの方が好きなのね!?」
「そういうわけではありません! しかし物を恵んでもらった礼というものがありますので!」
パープルハート様の連撃を捌きながら……不味い、普段のパープルハート様よりパワーもスピードも段違いです。今の私では捌ききれません……!
「そうだ! なぜ私を庇う⁉︎ 私は敵だぞ!」
早く逃げろって言っているのに……! ああもう!
「そうですよ! 敵です! ですが、お前のナスは美味しかった!」
「!」
「あのナスからは、以前のお前からは感じられなかった、お前なりの命への尽くし方というものを感じたんです! 命と真剣に向き合っている者にしか出せない味でした!」
「何……だと?」
「だから、今はお前を助けます! お前の世界が変わろうとしている……そんな気がしますから! でしたら……それを私は見届けます! 変わった上でまだ女神様と戦おうとするのなら、その時は容赦なく殺しますが!」
「……っ! 貸しだと思うなよ!」
「わかっています! 早くここから消えてください! 邪魔です!」
パープルハート様の攻撃を捌きながら……いえ、捌ききれてはいませんが、とりあえずマジェコンヌに言いたいことを言って撤退させることができました。
「やっぱりナス女の方が良いんじゃない!」
「はぁ⁉︎ あんなのよりパープルハート様の方が魅力的で良いに決まってるじゃないですか!」
「ええっ⁉︎ ……その……困るわよ……いきなり……そ、そんなこと……嬉しいけど……」
「隙ありっ!」
「なっ!」
何故か隙ができたので、防御から態勢を立て直し……ここは逃げます!ひたすら逃げです! お恥ずかしながら私では今のパープルハート様とまともに戦っても勝てません。先の戦いでぶっ壊れたリミテッドパープルを装備していたとしても厳しいでしょう。そもそも私は普段のパープルハート様にも勝てませんし。
逃げるだけなら時間を稼げますし、時間を稼げば再びパープルシスター様が戦闘可能になるかもしれません。そうすれば活路を見出せます。ですのでここはひたすら逃げるのです!
「あら逃げるの? 追いかけっこ? ふふふ、私が幼い頃よくしたわね、懐かしいわ。でも今はそんな気分じゃないの……乙女の純情を弄んで……許さないわ! 行きなさい……!」
パープルハート様の合図で配置されていたナスモンスターが私を追ってきます。なるほど、自身が力を得ているナスエネルギー(私命名)を逆流させ、操っているわけですか。
「本当はナスモンスターなんて操りたくないけど、あなたを捕まえるためだもの!」
くぅ……数が多すぎます……! 『魔界粧・黒霊陣』を使いますか……? いえ、体力消費が多いのでナスモンスターは殲滅できても結局パープルハート様に捕まりますね。
「……っ⁉︎ しまっ!」
そんなことを考えていたら、ナスに擬態したナスモンスターに捕まってしまいました! くそっ! ナス畑のナスそっくりで接近に気づけませんでした!
「うふふふふ、捕まーえた」
ナスモンスターたちに抑え付けられ動けません……パープルシスター様は……まだ動けないご様子……
「安心してギンガ……あなたが死んでも、私の心の中で永遠に愛してあげるわ……!」
パープルハート様の剣が振り下ろされます。
ここまで……ですか……っ!
「ねぷちゃん〜ちょっとおいたが過ぎるんじゃないかな〜?」
全てを諦めて閉じた目を再び開くと……プルルート様が、剣をぬいぐるみで受け止めていました。どうなってるんですかそのぬいぐるみ?
「それに〜この回って〜私の初変身回だよね〜?」
「邪魔しないでぶるるん! 後、メタな台詞は私の専売特許よ!」
「せっかくのあたしの初変身回を〜台無しにしないでくれるかなぁあああ〜〜〜!」
そう言ってプルルート様が光り出します。そのプレッシャーでナスモンスターたちが動けなくなっています。今ならこいつらを振りほどき、変身したプルルート様に平伏すことができます!
「アイリスハート。変身完了よ。さぁねぷちゃん! たぁっぷりお仕置きしてあげるわぁ……!」
アイリスハート様……! やはり、私が思った通りネプテューヌ様がパープルハート様に変身する以上の変わりようです……! 平伏しがいがありますね! どけっ! ナスモンスターども! 俺……私が平伏すのを邪魔するな!
「ギンガさん……? 何してるのかしらぁ?」
「女神様が変身した場合、女神様が良いと言うまで平伏すのはこの次元の民の常識ですので」
(へぇ〜、尽くされたり、平伏されたりするのって悪くないわねぇ。なんかそっちにも目覚めちゃいそう。ねぷちゃんがギンガさんに夢中になるのも少しわかるわ)
「まぁとりあえず、それは良いから早く逃げなさい。ねぷちゃんとは、あたしが遊んでてあげるから」
「かしこまりました。今のパープルハート様はいつも以上に強いので、お気をつけて!」
「そうね、それが終わったら、たっぷりと尽くさせてあげるわ」
アイリスハート様やべえ、ゾクゾクします。やばいものに目覚めてしまいそうです。
「ぷるるん……っ! 私からギンガを奪うつもりっ⁉︎」
「今はあたしと遊んでるのよねぇ? 他の人の話しないでくれるかしらぁ! あたしだけに集中しなさいよぉ!」
「ぐぅ……っ! 強さも性格も厄介ね……!」
ここはアイリスハート様に任せ…いえ、任せきれないでしょう。普段ならお二人の実力はほぼ互角かもしれませんが、今はナスエネルギーの分、パープルハート様が少し強いと思われます。このままではパープルハート様を止めることができません。
……丁度イストワールがいますし、『アレ』をやるしかないですね。
「イストワール! パープルシスター様の様子は?」
「もう少し休んだらまた戦えます!」
「ダメですネプギアさん! まだ戦えるまで回復できていません!」
「ですよね……イストワール」
「はい?」
「『アレ』をやりましょう。今の私では何分持ちますか?」
「『アレ』ですか? ええと、30分……いえ、今のギンガさんは万全ではないので20分が限度かと」
「じゃあ10分にしましょう。10分で活路を開けば、あとはアイリスハート様がやってくれるはずです」
「いーすんさん、ギンガさん、『アレ』ってなんですか?」
「それは今からお見せします、イストワール!」
「はい、ギンガさん!」
「「合体!」」
そう言ってイストワールは私の頭にしがみつきます。それにより、人工生命体であるイストワールと半人工生命体である私の意識をリンクさせる、これが私たちの合体です。
「「ギンガイストワール。合体完了」」
*
「今は私の方が強いようね、ぷるるん!」
「くっ……ねぷちゃんのくせにナスで強くなるなんてねぇ……」
「それは言わないでくれるかしら! ぷるるんはネプギアより厄介だし…少し痛い思いしてもら……⁉︎ 何よあれ⁉︎」
(ギンガの頭にいーすんがしがみついてる……? ちょっとシュールで可愛いけど、すごいプレッシャー……)
「へぇ〜ギンガさんといーすん、なんだか面白そうなことしてるわねぇ」
「何をしようが無駄よ! 『クロスコンビネーション』!」
「「見切っています」」
(ギンガといーすんが同時に喋った……⁉︎)
「このっ……! 当たらない……⁉︎」
無駄です。今の
「当たらないなら……こちらから攻めなければいいだけよ! 多分制限時間付きでしょう⁉︎ それは!」
流石
でしたら、敵の意表を突く行動をすれば……!
(来るっ⁉︎ いや、いいわ! 攻撃をあえて食らって、そこで捕まえるわ!)
……思い切り抱きしめました。
「……え? その……ギンガ? き、気持ちは嬉しいけど……まだこんなに明るいし……それにいーすんもいるのよ? まさか、いーすんごと楽しもうって言うの……⁉︎ ……殺す前にちょっとぐらい楽しんでもいいわよね……?」
何か変なことを言っていますけど、意表を突けたようですね、攻撃もして来ません。抱きしめ返してきたのは謎ですが、まぁいいでしょう。これで確実に巻き込むことができます。
「「『シェアリングフィールド』」」
「……はい?」
抱きしめるぐらい密着する必要はなかったのですが、今の
「……許さない! 一度ならず二度までも、乙女の純情を弄んで……! 絶対に殺すわ! いーすんも共犯でしょう⁉︎ いーすんごと殺してあげる!」
「何よその勝ち誇った顔! 知っているわよ! あなたのこのフィールドは私たち女神には効かないって!」
「「それは、
「何ですって……? ギンガの……っていうことはまさか……⁉︎」
「「はい、御察しの通り、本来
「いーすんの……ルール?」
「ぐぅ……頭が……っ! ……なにこれ⁉︎」
(何よこれ? ギンガはどこ? いーすんはどこ? 目の前にいるはずなのに! いつまでも頭の中の情報が完結しないわ……!)
「「流石は
(動けない……! 今の私はどうやって動けばいいかすらわからなくなっているわ……!)
「「とはいえ、今回はあなたを倒すためではなく、あなたを止めるためなので、ここら辺にしておきましょう。『シェアリングフィールド』解除」」
そう言ってフィールドを解除し、そしてイストワールとのリンクも解除します。フィールドは解除されたものの、まだパープルハート様は情報の波に苦しんでいるでしょう。さて、ここから先はアイリスハート様に任せます。
(フィールドは終わったの……? まだ頭がクラクラする……まともに動けないわ……!)
「あれぇ? ねぷちゃん動けないのねぇ、可哀想〜。でも動けないねぷちゃん可愛いわぁ」
(ぷるるんなの……? 何をする気……?)
「うふふふふ、これなぁんだ?」
(アレは……紫……野菜……ナス⁉︎ 嫌⁉︎ 近づけないで! 逃げなきゃ! 動いて! 動いてよ私の身体!)
「おいたしすぎたねぷちゃんにはぁ、たぁぁっぷりこれを食べさせてあ・げ・る!」
(嫌、やめて、ぷるるん、嫌!)
「よく噛んで味わって食べなさいよぉ! ほらぁ!」
「嫌ぁぁぁああああ! もごっ」
*
ええと、みなさんこんにちは。ネプギアです。メタなことを言ってしまうんですが、この物語の地の文担当であるギンガさんが、ギンガさんいーすんさん……? ギンガいーすんさん? うーん、とりあえずギンガイストワールさんにしておきましょう、それに合体した副作用で、数日間酷い頭痛と身体のだるさで寝込んでいるので、今だけは地の文は私が担当しています。
あれからプルルートさんに大量のナスを食べさせられたお姉ちゃんは気絶し、起きたら正気に戻りました。暴走していた時の記憶は無いようです。……暴走していた時色々と口走ってしまってましたし、良かったんじゃないかなと思います。
あの後ギンガさんといーすんさんは仲直りできたようです。というより、合体して心が一つになったから、お互いがお互いをどれだけ大切に思っているかも伝わった……とのことです。良かったですね。なんか羨ましいなぁそういうの。
いーすんさんも合体した副作用でオーバーヒートして寝込んじゃっていて、元に戻るのに三日ぐらいかかるそうです。国の教祖と女神補佐官が同時に数日間行動不能になってしまうという点では、あの合体は本当に最終秘密兵器ってことなんですね。
そしてお姉ちゃんはというと……
「ほらぁ! 手が止まってるわよぉ! 誰かさんのせいでいーすんとギンガさんが動けなくなったんだからぁ、その誰かさんがちゃんとその分お仕事しないとダメでしょう⁉︎」
「無理だよー! こんなにできるわけないじゃん! 助けてネプギアー!」
「ぎあちゃんは誰かさんのせいで動けなくなったいーすんとギンガさんの介抱で忙しいのよぉ! ほらぁ! 無駄口叩いてる暇あったらお仕事しなさいよぉ!」
「ねぷぅぅぅ! なんでぷるるん変身しててしかもこんなに怒ってるのー⁉︎」
「別にぃ⁉︎ 怒ってないわよぉ⁉︎ 誰かさんの暴走と合体した二人のせいで私の初変身のインパクトが薄れたことに関して何も思ってなんかいないけどぉ⁉︎」
「怒ってるぅぅうう! も、もうナスなんてこりごりだよ〜〜〜〜!」
き、今日もプラネテューヌは平和です。
……多分。
*
「はぁ……随分とナス畑がめちゃくちゃにされてしまったなぁ……まぁ自業自得というやつか」
『あのナスからは、以前のお前からは感じられなかった、お前なりの命への尽くし方というものを感じたんです! 命と真剣に向き合っている者にしか出せない味でした!』
「……ふん、命と向き合う……か。とりあえず畑を綺麗にし直すところから始めよう」
「マジでナス農家になる気っチュか? 世界征服は諦めたっチュか?」
「あぁ、少し疲れたよ。今回の作戦のために有り金をはたいたからな。ここより他に行く場所もない……」
「……手伝うっチュよ。どうせやることないっチュし。それに何も言わずに逃げて悪かったっチュね」
「いや、お前がいたところでどうしようもなかっただろう。逃げていて正解さ」
「……」
「不思議だな……こうやってナスの世話をしているだけなのに、初めて『生きている』と感じるよ」
「……時給はきっちりもらうってチュよ」
本編7話の内容が終わりました。
次回、例のあの回です。
ギンガイストワール。ルビを振るのがめんどくさいので当分出てきません。