「嫌です!」
「なんでよー⁉︎」
「嫌なものは嫌なんです! それにあの島は男性禁制ではありませんか!」
「そんなもの女神権限でどうにでもするよ! 女神命令だよー! ついて来なさーい!」
「そんなことに女神様の権限を使わないでください!残念ながら、今の私には女神命令に対するカウンターがあります!『いーすん助けてくださーい!』」
「い、いーすんを呼ぶのは反則だよー! 」
「まぁお姉ちゃん、嫌がってるのに無理やりついて来させるのは……それにギンガさんの言う通りその島は男性禁制らしいし……」
「えー⁉︎ ネプギアは行きたくないのー⁉︎ ギンガとバカンス!」
「それは行きたいけど……」
「ネプテューヌったら、遊びに行くんじゃないのよ」
「はい、R-18アイランドに設置されている砲台の調査が目的なので、遊びに行くわけじゃないんですわよ」
「だけどさぁ……」
状況を簡潔に説明しましょう。R-18アイランドというその名の通り俗人が低俗な水着姿もしくは全裸ではしゃいでいるクソみたいな島がありまして、そのクソみたいな島に巨大な砲台が設置されているらしく、その調査に女神様は向かうようなのです。
女神補佐官は女神様のお仕事に同行するのが仕事と以前言いましたが、こればっかりは私は絶対に嫌です。仕事に私情を持ち込むことなど愚の骨頂ですが、あんなところに行くぐらいなら愚の骨頂で構いません。
そもそもあの島は先程言った通り男性禁制なので行かずに済むと安堵していたら、ネプテューヌ様は私についてこいと言うんですよ⁉︎
「それにしてもギンガ、どうしてそこまでR-18アイランドを嫌うのですか?」
「はしたないからです。俗人共が低俗に肌を晒す姿など身の毛がよだつのです」
「肌を晒すという点では私たちのプロセッサユニットもそうではありませんか」
「……ベール様は女神様の神聖なプロセッサユニットと俗人共の低俗な水着を一緒になさるつもりですか‼︎⁇ 女神様とはいえ、そのような物言いは許しませんよ‼︎‼︎」
「しまった! 地雷踏みましたわ!」
「もうめんどくさいから置いてけばいいじゃない……」
「でも……ギンガと……ねぷぅ」
ようやくネプテューヌさまが諦めてくれました。私にも譲れないものはあります。
女神様たちが変身し、飛んで出発して行きました。ですが、どうやらプルルート様は変身しないようですね。パープルハート様とブラックハート様が二人で持って行くようですが、変身してもらった方な楽なのでは……?
*
「砲台…誰かが戦争でも始めようとしているのかしら?」
「ねぇねぷちゃん〜。あたし自分で飛びたいな〜」
「え? だ、だめよ! お願いだからぷるるんはそのままでいて!」
「どうして? 変身できるならして貰えばいいじゃない」
「ノワールだってアレを見たら絶対そう思うから! ダメったらダメよ!」
「ねぷちゃんのけち〜〜!」
「あ、暴れないでよ!」
*
「なんであたしはR-18アイランドに一緒に行けないのよ! 納得いかないわ!」
「いかないわ!」
「いかない……!」
そういえばあの島はその名の通り大人しか入れないんでしたね。ユニ様もラム様もロム様も実年齢的に考えると入れるのでしょうけど…たとえ行けたとしても、私的にはあんなところ行って欲しくはないですがね。
「どうしたですか? ピーシェちゃん」
「探し物なら手伝うわよ?」
「……探してない!」
……ピーシェさんの探し物……それはおそらくネプテューヌ様でしょうね。そういえばネプテューヌ様がR-18アイランドに行く前にプリンの取り合いになって喧嘩していました。それはいつものことなのですが、今回はその喧嘩のせいでプリンが床に落ちてしまったから、いつも以上にネプテューヌ様がピーシェさんを責めてしまって更に大喧嘩になってしまったようです。
皆様はネプテューヌ様に大人気ないと言いますが、多分その大人気無く全力でぶつかってくるのがピーシェさんは嬉しくて楽しいんだと思います。時に喧嘩はしても、ネプテューヌ様はピーシェさんと仲良しなのです。
だから、ピーシェさんはネプテューヌ様に謝って仲直りがしたいのでしょう。ですがネプテューヌ様は出かけてしまいましたし……タイミングが良くないですね……
「ネプテューヌ様ならお仕事に出かけましたよ。帰ってきたら一緒に謝ってあげますから、ちゃんと仲直りしましょうね」
「ぎんが……」
「ネプ子も仲直りしてから行けばよかったのに」
「二人はもう家族みたいなものですから、家族だったらそんなこともあるです」
家族、ですか。
現時点では私の推測に過ぎないですし、ピーシェさんのことについて何もネプテューヌ様にお伝えしていない私が言うのもなんですが、いずれ別れることになるので仲良くなりすぎても…辛いと思うんですがね。
*
「クエスト……ですか?」
「はい、バーチャフォレストに大量のモンスターが発生しているとの情報が…昨日までは何もなかったらしいのですが……」
「わかりました、処理してきます」
「申し訳ありません、お願いします」
「いえいえ、サクッと終わらせてきますので。行ってきます、いーすん」
「はい、ギンガさん」
あ、そういえば、先日のナス騒動のおかげといいますか、イストワールがついに私にもいーすんと呼ばせてくれるようになったんですよ! めっちゃ嬉しいです! これからは用がない時にもどんどん呼んでいきたいですね!
私が身支度を整えているとロム様とラム様が駆け寄ってきました。
「ギンガさん出かけるのー?」
「出かけるの……?」
「はい、緊急のクエストが入ったので」
「じゃあわたしたちも行く!」
「行く……!」
「え?いや、わざわざロム様とラム様の手を煩わせるわけには……」
「ギンガさんに色々教えて欲しいの!」
「もっと強く……なりたいから」
……確かに以前ルウィーで約束しましたね、色々教えると。
「わかりました。一緒に行きましょう!」
「「はい!」」
となると、あの方を置いて行くわけにもいきませんよね?
「あたしも連れて行ってください!」
おっ、丁度今誘おうと思っていたところをユニ様から声をかけていただけました。
「勿論です。逆に申し訳ありませんね、うちの国の問題ですのに」
「そんなことないです! その、ネプギアが羨ましくて…いつもギンガさんに色々教えてもらってるって自慢してくるから……あっ! ネプギアは自慢なんかしてるつもりじゃないと思うんですよ! でも……」
「ユニ様は可愛いなぁ(わかっていますよ)」
「え⁉︎」
「いえ、なんでもありません何も言っていません」
「そ、そうですか……」
やべっ、逆になってました。
「ふふ、大人気ですねギンガさん」
「他国の女神様を使い走りにしているようで少し心が痛みますが……」
「そんなことありませんよ。それに、そのための友好条約ですので、ちゃんと女神候補生の皆さんに指導してあげてくださいね」
「わかっています。では改めて行ってきます!」
「「「行ってきまーす!」」」
「はい、いってらっしゃい」
正直めんどくさいなーって思ってたクエストですが、楽しくなってきました。ですが気を緩ませすぎず、女神補佐官として恥じぬ戦いと、指導をしなければなりませんね。
*
「アレが例の砲台?」
「ただのシャボン玉製造機じゃん!」
「こんなもののためにわざわざ私たちはこんなところまで来たってこと⁉︎」
*
バーチャフォレストに到着しました。聞いていた通りやけにモンスターが多いですね。ダンジョンにモンスターがいることなど当たり前なのですが、ここは居住区に近いので放っておくわけにもいきません。さっさと片付けましょう。
「あの、ギンガさん。ネプギアがギンガさんは戦闘の指導の時だけはめちゃくちゃ厳しいって言ってたんですけど……」
「私としてはそんなつもりないんですけどねぇ…どうしてもそうなってしまうようです……」
「だから厳しくお願いします!」
「え?」
…そうきましたか。厳しく、と言われましても…どんな感じにすればいいでしょうかね? とりあえずモンスターをしばきつつユニ様の動きを見ながら考えましょうか。
私たちの接近に気づいたモンスターたちが次々と襲いかかってきます。ガンナー一人と魔法使い二人なので前衛は私が勤めましょう。
「皆様、前衛は私がやるので後衛で援護をお願いします!」
「「「はい!」」」
見た感じ雑魚モンスターばかりですね。今回はプラネテューヌの件ですので、他の国の女神様である三人を立てるような戦いをする必要はありませんが、指導するために三人にはできるだけ多めにモンスターを倒してもらわないといけません。ですので、最低限の前衛の仕事しかしないことにしましょう。
迫り来る雑魚モンスターをどんどん斬り伏せます。しかし全て私が処理するのではなく、後衛の皆様に任せるようにあえて多めに斬り漏らします。で、私は空いた手間でしっかりと後衛の皆様の戦いを観察するわけです。
ほうほう……なるほど。
そうこうしてる内にモンスターの群れの第一波を殲滅しました。正直、私一人で充分なぐらいの雑魚ばかりだったのであまり時間はかかりませんでした。
「ギンガさん! あたしの戦い方……どうでした?」
うーん、ユニ様の戦い方は悪くなかったのですが、厳しくするように言われているので、ここはあえてめっちゃ厳しく評価しましょう。
「全然ダメですね。以前私が見せたことの三分の一程度しかできてません」
「え?」
「クエストなどはノワール様と共にやることが多いのですか?」
「はい……」
「なるほど、いかにノワール様の素晴らしき前衛に甘えてるかということがわかりました」
「で、でも、お姉ちゃんはあたしは役に立ってくれてるって……!」
(ギンガさん怖い)
(怖い……)
ユニ様の戦いは悪くはないしむしろ良いですよ。しかし、それはノワール様ぐらい強い前衛がいる場合です。ノワール様って態度だけならユニ様に厳しいように見えますが、ぶっちゃけ甘々のデレデレですからね。ユニ様を認めていて、頼る時は頼るとしても、なるべくユニ様の負担を減らすような戦い方をする、そんなお方です。今のユニ様は、そんなノワール様と多く共に戦ううちに、無意識に自分を型にはめてしまっています。
「ユニ様。あなたが目指しているものは『お姉ちゃんの役に立つ妹』ですか?それとも『女神ブラックハート様を超える新たなラステイションの女神様』ですか?」
「それは……」
「勿論後者なのはわかっていますが、立ち回りからは前者の考えが滲み出ていました」
「……」
「変身できるようになってから少し経ち、初めて変身した時のお気持ちを忘れかけてしまっているのでは? もう一度、考え直してみてください」
「……はい!」
いくら厳しくと言われたとしても……少し言いすぎましたかね?
(……正直心折れそうになったけど、お姉ちゃんでも言ってくれないようなあたしの甘えてるところを容赦なく言ってもらえて……なんか良いわねこれ! なるほど、ネプギアが強くなるわけだわ……!)
いえ、ユニ様の表情は闘志に燃えています。上手くいったということでしょう。さて、次はロム様とラム様ですか。
「あの! ギンガさん!」
「はい、なんでしょう?」
「わたしたちにも厳しめにお願いしまーす!」
「お願いします……!」
まさかこのお二人にもこう言われるとは……では容赦なく。
「ロム様とラム様は魔法の使い方がダメダメですね。せっかく高い魔力を持っているのに、それを無駄にしてしまっています」
「ダメダメ……」
「はーい! ギンガせんせー! どうすれば無駄にならないですかー⁉︎」
せ、先生⁉︎ ……女神様にそう呼ばれるのは……その、ふふ、なんか良いですねぇ……じゃありません! ええと、今のロム様とラム様に足りないことは……
「魔力をちゃんと練れば少ない魔力でも強い魔法を使うことができますが、今のお二人は逆です。魔力が練られていないので弱い魔法になってしまっています」
「ギンガせんせー……どうすれば上手く魔力を練れるようになりますか……?」
「どのように魔力を用いて魔法を使えばいいかという想像力が大事ですかね」
「よくわかんない」
「お絵描きと一緒ですよ。何も考えずに描いてもよくわからないものしか出来上がりませんが、ちゃんと想像力を働かせた上で描けばいいものが出来上がるでしょう?」
「なんとなく……わかったかも……」
「とりあえずまた戦って試したいなー」
「はい、では奥へ向かいましょう。まだ大量モンスターがいると思われるので」
「「「はい!」」」
先程言った通り、今倒したモンスターたちは第一波に過ぎません。多くなりすぎたモンスターを減らすという今回のクエストにおいては、おそらく第三波ぐらいまでは倒す必要がありそうですね。
*
「何も無かったからそのまま帰ることになるなんて……骨折り損のなんとやらね……」
「みんなあたしが変身したとこさっき見たんでしょ〜? だったらあたし変身しても…」
「「「「「絶対ダメ!」」」」」
「みんなのケチ〜! ギンガさんなら良いって言ってくれるのに〜! むしろ変身して欲しがるよ〜?」
「それはギンガがおかしいのよ……」
*
「クエスト、完了ですね。皆様、お疲れ様でした」
私はあの程度の指導しかしていないのに、信じられないぐらい三人の動きが良くなっていまして、速攻で第三波まで倒し終えました。ネプギア様もそうですが、本当に候補生の皆様は成長が早いです。今はまだ私の方が強いでしょうけど、すぐに超えられてしまうでしょうね。
「はぁ……ものすごく考えながら動いたから、今までで二番目にしんどい戦いだったわ……疲れたぁ……」
「えー? 一番じゃないのー?」
「一番は……多分最初に変身した時の戦いだと思う……」
「確かに……でも今日もすっごく疲れたよ……」
「……なんでギンガさんはあたしたちの中で一番動いてたのに全く息が上がってないんですか……?」
「長年の鍛錬の賜物です。透き通る世界が見えているので」
「何ですかそれ……」
「とりあえずもう少し休んだらプラネテューヌ教会に帰りましょうか。おそらくお姉様方が帰ってきているかもしれません」
「「「はぁい……」」」
疲れているからか返事に覇気がありませんね。ですが、あなた方は今日は本当によく頑張りました。ノワール様とブラン様に今日の三人の活躍を教えてあげたいですね。
*
「ただいま戻りました、いーすん」
「おかえりなさい、ギンガさん。それにユニさん、ロムさん、ラムさん。あの、一つお伝えしておきたいことがありまして、ピーシェさんのことなんですけど……」
「ピーシェがどうかしたの?」
「ピーシェさんのお母様が迎えにいらして……ピーシェさんがどうしてもすぐにお母様と帰ると言ったので…」
……どうやら私の推測は間違っていたようですね。次元を超えた大きな力を持つ存在…私はそれがピーシェさんだと思っていたのですが、普通にお母様が引き取りに来るような子供ということは、違ったわけですね。エネルギー量が多いというのも……偶然そんな子が生まれてくるのはゲイムギョウ界ではあり得なくはない話ですし。
「そうですか……でも、家族と再会できたならそれは良いことなのではないでしょうか?」
「ギンガさんは寂しくないの?」
「寂しいことには寂しいですよ」
……ですが長年生きていて人との別れには慣れていますので。
「また会いに行けないの?」
「それが……住所を聞く前にいなくなってしまって……」
「たっだいまー! 見てみてほらー! お土産のプリン! 全部『ねぷの』って書いてるからこれでもうピー子と喧嘩しなくて済むね!」
ネプテューヌ様たちか帰ってきました。ピーシェさんと喧嘩しなくなるように大量のプリンを買ってきてようですが……ピーシェさんはもう……
「あれ? ピー子は?」
「ネプテューヌ様……実は……」
ネプテューヌ様たちにピーシェさんが帰ってしまった旨を話しました。ネプテューヌ様はそれを聞くとすぐに駆け出して行きました。他の皆様は腑に落ちないような表情をしていましたが、ピーシェさんの意思ということもあり一応納得していました。
結局、ネプテューヌ様はピーシェさんと喧嘩したまま別れることになってしまいました……
あの時私が強引に仲直りさせていればよかったのかもしれません……
「バカ…ピー子のバカーーーーーーっ!!」
「………バカって言う方がバカだ…」
*
「あの、例の子を連れてきました……」
「ご苦労様」
「アノネデスさん……こ、こんなことしてよかったんですか?」
「……あなた、キセイジョウ・レイちゃんって言ったかしら?」
「は、はい」
「じゃあ覚えておきなさい。質問っていうのは答え聞くことに意味がある時だけするものよ」
「……」
「バーチャフォレストにモンスターを多めに放っておいてよかったわね。多分女神補佐官の男が教会にいたら、今ごろレイちゃんの命はなかったかもしれないわ」
「えっ⁉︎」
「それにR-18アイランドの地下に拠点を構えて正解だったわ。下手したら女神より厄介なその補佐官は、あそこなら一切手出しして来なさそうだし」
*
この時私は気づいていませんでした。
友好条約によって築かれた平和が、少しずつひび割れてきていることに。
『ゲイムギョウ界こそこそ裏話』
アノネデスはギンガのことを女神以上に警戒しています。しかし、ギンガはラステイションの盗撮騒動の時、入院中で不在だったため、アノネデスのことを知りません。もしギンガがアノネデスのことを知っていて、一瞬でもピーシェとアノネデスが接触していることを知っていれば、たとえ母と名乗る者が引き取りに来てもピーシェを渡さなかったかもしれません。
レイもアノネデスもこの作品だと今回が初登場みたいになってしまいました、ていうかそもそもこの作品のストーリー構成は原作アニメにおんぶに抱っこなんですよね。何が言いたいかと言うとまぁあれです、原作アニメ知らないのにこの作品読んでる人はおそらくいないと思うので大丈夫でしょうってことです。