紫の星を紡ぐ銀糸   作:烊々

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戦闘シーンはライブ感で書き上げてるのでわっかりにくいと思います。申し訳なさの極みな初投稿です。



15. MEMORY OF EDIN

 最初にエディンが侵攻してきたのはプラネテューヌでした。上等です、血祭りにあ…………なんでもありません。

 

 エディンと同じ主張をする暴徒によるテロが他の国でも多発しているようで、他の女神様たちはその対応に追われているため援護は期待できませんが……それが無くてもなんとかしてみせましょう。

 

「というわけで、敵の前線は全て私が抑えるので、漏れた敵はあいちゃんたちや防衛ラインの兵士たちにお願いしますね」

「……全部師匠がやるんですか?」

「敵はロクな訓練も受けてなさそうな兵隊なので、兵器とモンスターが少しいたところで、私一人で十分です。それに場合が場合なので死傷者を出すわけにはいかないんですよ」

 

 そうなんですよね。困ったことに、見た感じどうやら敵の兵隊は全て洗脳されているようです。完全な敵兵なら皆殺しにしても問題はないのですが、操られているだけの民間人となると、もし殺してしまった場合、戦後の事後処理が面倒なことになります。シェアにも影響が出そうですし。

 

 R-18アイランドを拠点に国を作ったのはそういうわけですか。はしゃいでいて頭が馬鹿になっている人間の方が洗脳が楽そうですしね。ほんとクソですねあの島。エディン制圧のどさくさに紛れて沈めて地図から消しましょうかね?

 

「師匠、死なないでくださいよ」

「死ぬわけありませんよ。殺し合う覚悟もない兵では私は殺せません。問題は……」

「ピーシェ……イエローハートですね?」

「はい、あの方には私では勝てません。パープルシスター様が抑えると言っていますが厳しいでしょう」

「ネプギアじゃ勝てない……ということですか?」

「いえ、イエローハート様の力の源が不明だから、と言うべきですね。女神様が信仰によるシェアもないのにあれだけの力を持てるはずがありません。何かカラクリがあるはずです。そのカラクリをどうにかしない限りパープルシスター様どころかパープルハート様でも厳しいでしょうね」

「そんな……!」

「それと、あいちゃん。私が前線を1人で抑えると言いましたが、リミテッドパープルの修理がもう少しで終わるらしいので、終わったら一度教会に取りに戻ります。その間は、あいちゃんたちに防衛ラインを任せてもよろしいでしょうか?」

「はい! 任せてください!」

 

『こちら偵察班! 敵部隊はマイダカイ村を進行中! 防衛ラインに向かっています!』

「了解。防衛ライン、戦闘態勢に入ります」

 

 エディン建国を聞いた時から、あらかじめ国境付近のマイダカイ村の人々を全て避難させておいて正解でした。

 

「さて、お出ましのようですね」

 

 そこそこの数の兵士と戦車と敵モンスター、それを先導するのはイエローハート様ですね。

 

「ギンガさん! さっきも言いましたが、ピーシェちゃ……イエローハートは私が抑えます!」

「任せます。ですが無理をしないように、先程あいちゃんには言ったのですが、敵の力の源が不明ですので、正面から戦っても勝てるか怪しい相手です」

「わかりました……!」

 

「エディンの皆さん、止まってください! これ以上進んだら……撃ちます!」

「あー! 悪い女神だー! 悪い女神は嫌いだけど……遊ぶだけならいいってパパが言ってた! ……だから、遊ぼー!」

「たとえピーシェちゃんでも、ここから先へは行かせません!」

「じゃあ、ここで遊ぼー!」

 

 まぁ……警告を聞くような相手ではありませんよね。パパ……おそらくあのオカマロボットですか。誘拐して洗脳して父親と刷り込むなど趣味が悪いですね。

 

「あははは! それーっ!」

「たぁぁああっ!」

 

 パープルシスター様とイエローハート様の戦いが始まりました。私も私の戦いを始めましょうか。とりあえずは……

 

「『魔界粧・黒霊陣』!」

 

 私の魔法で亡者たちを召喚します。前線を一人で抑えると言ったのはこれがあるからですね。

 

「亡者共よ、モンスターは殺せ、兵器は壊せ、だが人だけは殺すなよ。適当に戦力を奪ったらそこらへんに放っておけ」

 

 私の命令を皮切りに、亡者どもが敵兵に襲いかかります。しかし、正気ではない敵兵は亡者に恐れずに応戦します。向こうはこちらの命関係ないのに、こちらはなるべく殺さないように戦うので、分が悪い戦いですね。亡者はもう死んでいるので死にませんけど。

 

(確かに……師匠にはこれがあるから一人で抑えられるわよね。女神様より弱いって言うけど、師匠も師匠でとんでもない人よね……)

 

 

 

 

 

 

 

「一瞬にして……世界中がめちゃくちゃに……」

「あら、他人事みたいに言わないで頂戴? 我が軍の最高責任者はあなたなのよ?」

「我が軍って……兵隊も暴徒も操って言うことを聞かせてるだけじゃないですか!」

「操ってるのはあたしだけど、どう操ってるかは知らないわよ。そのための道具は全部クライアントから送られてきたんだし、詮索は禁じられてるし。それにしても、あの女神補佐官ほんと鬱陶しいわね! なんで一人で兵士たちを抑えられんのよ!」

 

「……俺が行こう」

 

「あら、あなたにはここの守りをしてもらおうと思ったけれど……まぁ今はあの女神補佐官を叩いてほしいわね。じゃあ任せるわ」

「……俺は貴様らの目的に賛同しているわけではない。成人コンテンツとやらもどうでもいい。しかし、貴様らは協力すれば俺の理想を叶えると言った、だから今はエディンに所属しているだけということを忘れるな」

「あたしの仕事は今のゲイムギョウ界をめちゃくちゃにすること。あたしも成人コンテンツがどうとかはどうでもいいし、めちゃくちゃになった後の世界のことなんてもっとどうでもいいの。その後の世界はあなたの好きに創り変えればいいじゃない?」

「……そうだな。とりあえず、俺も戦場へ向かおう」

 

「いってらっしゃーい! 『ブレイブ』ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 亡者たち生前では歴戦の兵士だった者がほとんどなので、敵の雑兵では相手になりませんし、急拵えの戦力だろうから亡者では厳しそうなモンスターはいませんでした。そういうわけで、敵の第一波の制圧は即終了です。一旦術式を解き、おそらく来るであろう第二波に備えます。パープルシスター様は……

 

「うわぁ! みんなもう負けてるー⁉︎ まぁいっか! ほらほら! もっとあそぼー!」

「くっ……! 強い……! でも、負けない!」

 

 ……まだ持ち込たえてくれていますね。私は今飛行できないので、空で戦っているパープルシスター様に加勢できません。魔法などで援護はできるかもしれませんが、あまり効果はなさそうです。

 

『こちら、イストワール! ギンガさん聞こえますか⁉︎ リミテッドパープルの修復が完了しました!』

「ありがとうございますイストワール、今取りに行きます」

 

 ようやく終わりましたか。とりあえずここはあいちゃんたちに任せましょう。

 

(本当に師匠一人で制圧したわ……)

 

「あいちゃん、イストワールからリミテッドパープルの修復が完了したと連絡が入りました。今から急いで取りに戻るので、その間お願いできますか?」

「はい!」

 

『こちら偵察班! 敵の侵攻ルートから第二波が来ています! 敵戦力……え⁉︎ 一です! 大型のロボット系モンスターが一機のみ! 今、画像を送ります!』

 

 ……第二波が来るのは予想できていましたが……一機? 画像を確認してからプラネテューヌ教会に戻るとしましょうかね。

 

「大型のロボット系モンスター? どれどれ……何ですかこの出来損ないのガオガイガーみたいなロボット? エディンというのはこのようなビックリドッキリメカを使ってくるのですね」

「強敵登場シーンのはずなのに、今の師匠のセリフで緊張感が消えちゃいましたけど……」

「しかし、一機だけで来るとなると相当な強さなのでしょうね。やはり私が残った方がいいかもしれません」

「師匠、あれは私たちが食い止めます! その間に師匠はプロセッサユニットを!」

「あいちゃん……しかし……!」

「なんとなくわかります、師匠でもプロセッサユニットがないと厳しい相手だと! だから……!」

「……申し訳ありません、すぐに戻ります!」

 

 戦場を後にし、急いでプラネテューヌ教会に戻ります。私がまた戦場に戻るまで、どうか持ちこたえていてください……!

 

 

「どうやら来たようね……!」

「……女神補佐官の男……奴はどこに行った?」

「(このロボ喋るのね……)タイミングが悪かったわね、今はいないわ」

「そうか……貴様らでは俺の相手にはならん、退け。無駄な戦闘をするつもりはない。それでも俺の前に立つというのなら倒させてもらう」

「舐めてるの⁉︎ 何が無駄な戦闘よ! 戦争を始めたのはあんたたちじゃない!」

「……この戦争自体は無駄ではない、我が理想を叶えるために必要なものだ」

「だったら私はあんたと戦う理由があるわ! あんたのことなんて知らないけど、あんたの…エディンの理想なんて叶えさせてやるもんですか!」

「俺の理想はエディンとは異なる……とはいえ、来るなら来い! 相手してやろう!」

「望むところよ!」

「アイエフさんだけに戦わせるわけにはいきません! 私たちも戦います!」

「みんな……! えぇ、行きましょう! 師匠が……ネプ子が来るまで食い止めるわよ!」

「「「「「はい!」」」」」

「雑兵共め……纏めてかかってくるがいい!」

 

 

 

 

 

 

 

「イストワール! 戻りました!」

「あ、ギンガさん! 例の物は用意してありますよ!」

「リミテッドパープルもですが……ネプテューヌ様もですね……」

 

 ネプテューヌ様はピーシェ様と戦いたくないからか、部屋に閉じこもってしまっています。そっとしておいて、私たちだけでなんとかしようと思っていたのですが、状況が状況なのでそういうわけにもいかなくなってきました。

 

 ……ん? ネプテューヌ様の端末へ着信がありますね。本人は出る様子がないので代わりに私が出ましょう。

 

「もしもし」

『ネプテューヌ! ……ってその声はギンガね』

 

 ブラックハート様ですか。周りの音的に高速で飛行中のようですね。

 

「はい……あの島に向かっているのですか?」

『ええ、あの島を直接叩けばすぐにこの騒動を終わらせられそうだわ。国の方はできる妹に任せておけば問題ないもの。どこかの誰かさんにきつい指導を受けたらしくて、前よりも頼れるようになったし』

「……そうですか」

『ネプテューヌに代わってもらえる?』

「かしこまりました」

 

 今のネプテューヌ様は代わるかわからないのです端末を耳に近づけて強引に聞かせるとしましょう。

 

『こらぁネプテューヌ !』

「うわぁ⁉︎ ノワール⁉︎」

『まだそんなとこにいるの? 早く国民を守りに行ったらどうなの?』

「でも……だってピー子だよ?」

『あなた女神でしょ⁉︎ 女神なら自分の感情より国のことを考えて行動しなさいよ!』

「ピー子をやっつけろってこと……?」

『私ならやるわ……言いたいのはそれだけ。じゃあね』

 

 そう言ってブラックハート様は通話を切りました。ネプテューヌ様が心配でしょうがなかったのでしょう。言葉は厳しくても、本当にお優しいお方です。

 

「ギンガさん〜」

「はい」

「あたし〜ノワールちゃんを手伝ってくるから〜ねぷちゃんをよろしくね〜。あたしが言うより〜ギンガさんが言った方が効果あると思うし〜」

「…わかりました。行ってらっしゃいませプルルート様」

「うん〜ギンガさんも頑張ってね〜」

 

 そう言ってプルルート様は変身し、R-18アイランドに向かいました。さて、こちらも時間がないので、少し厳しめにいきましょう。

 

「ノワールにはできるかもしれないけど……私には……」

「ネプテューヌ様」

「……ギンガ……」

「正直に申し上げるとパープルシスター様ではイエローハート様の相手は厳しいです。この国を守るためにはあなたが戦うしかありません」

「……嫌だよ……私ピー子と戦いたくなんて……」

「……ネプテューヌ様がこの国の守護女神になった時、私に言いましたよね? 『自分の信じるもののために戦う』、『自分を信じるもののために戦う』と。それ、嘘だったんですか? それか、友好条約で一応平和を築いたから、そこらへんの気持ちはぜーんぶ忘れちゃいましたか?」

「……」

「私は……敵を倒すつもりで戦います。ですが、あなたにもそうしろとは言いません」

「でも……戦うって……」

「奪われたものは奪い返せばいいんですよ。敵を倒すんじゃなくて、そういう戦いをすればいいんです」

「奪い返す………っ! ギンガ!」

「何でしょう?」

 

「私はピー子をエディンから奪い返す! だから、誰にも邪魔させないで!」

 

「……ふふふ、ははははは! ……失礼しました。ですが、それでこそ、ネプテューヌ様です! かしこまりました! あなたとピーシェ様の間に……何者も入れさせないと約束しましょう!」

「……ありがとね、ギンガ。……変身!」

 

 ネプテューヌ様は変身し、私はリミテッドパープルを装備します。以前と比べ、少し性能と付け心地が良くなっていますね、流石はイストワール。

 

「ギンガさん……リミテッドパープルの長時間の使用は……」

「わかっています。もうあんなヘマはしませんよ」

「わかっていても無茶をするのがギンガさんじゃないですか……まぁそれでこそギンガさんですものね。ネプテューヌさんもお気をつけて」

「ええ、ありがとういーすん」

「あ、ねぷねぷ、ギンガさん、これ、私特製の救急キットです! 一つしか用意できなかったですけど……」

「じゃあそれはギンガが持っていて」

「よろしいのですか?」

「私とピー子の間にそれは必要ないわ」

「…わかりました。コンパさん、ありがとうございます」

「はい、二人とも頑張ってくださいです!」

「ええ!」 「はい!」

 

 コンパさんとイストワールに送り出され、パープルハート様と共に空を翔けまた戦場に戻ります。

 

「行きましょうギンガ。ネプギアが、あいちゃんが待ってるわ」

「そのお二人だけではありません。プラネテューヌ中があなたを待っています」

「そうね!」

 

 ……こうなったネプテューヌ様、パープルハート様はもう誰にも止められません。これはもう凱旋です。

 

 

 

 

 

 

 

「パープルハート様、二手に分かれましょう。実はイエローハート様以外にもう一人? 一機? ……とりあえず強敵がいまして、そちらをあいちゃんに任せたままにしてしまっているので」

「わかったわ。お願いね、ギンガ」

「はい」

 

 パープルシスター様ははちゃめちゃな戦い方をするイエローハート様のせいで、防衛ラインからはだいぶ離れたところに行ってしまったようです。パープルシスター様の方へ向かうパープルハート様と、防衛ラインの方へ向かう私とで分かれました。

 

 

「あははは! 面白ーい!」

(……やっぱり、ピーシェちゃんには何度攻撃を当てても……全然ダメージがない)

「それぇ!」

(もう、抑えられ……!)「きゃあっ!」

 

「遅くなってごめんね、ネプギア。少し休んでなさい」

「お姉ちゃん……! でも……っ!」

「大丈夫……私がなんとかしてみせるわ」

 

「新しいのが来たー! ねー! 遊ぼうよ!」

「そうね、ピー子! 今度は私が遊んであげるわ! ……私のやり方で、さあ来い! ピー子!」

 

(お姉ちゃんが変身を解除した……? 何をするつもりなんだろう……?)

 

 

 

 

 

 

 

「弱いな。もう立っている兵はお前だけだぞ。最後の警告だ。いたずらに命を落とすことはない、退け」

「まだよ……師匠が来るまで食い止めてやるんだから……!」

「……少し訂正しよう。弱いが、意思は強いな。貴様のことは敵として認めてやる。だが、退かぬならトドメだ!」

「……っ!」

「アイエフと言ったか。貴様の名は覚えておこう! はぁっ!

 

 ……っ⁉︎」(手応えがない?避けられたか?いや……)

 

 ギリギリ間に合ったようですね。奴の大剣が振り下ろされる前にあいちゃんを抱えて回避しました。

 

(速い…っ! あの少女も素早かったが、あの男はそれ以上だ)

 

「師匠……?」

「こんなボロボロになるまで……遅くなって申し訳ありませんでした。よく私が来るまで持ち堪えてくれました。ありがとうございますあいちゃん、いえ、我が弟子アイエフ」

「(師匠が……やっと私を……名前で……)師匠……ししょぉ〜……!」

「な、何故泣くのですか…⁉︎ そんなにあのロボに痛めつけられたのですか⁉︎ ……俺の愛弟子を……許せねえ……っ‼︎」

「ちがうんです〜あと素が出てます〜」

「おっと、いけません」

 

 アイエフだけでありません、プラネテューヌの兵が皆、奴を食い止めてくれていたそうです。皆ボロボロですが、死傷者は……いないようですね。よかった……

 

「……貴様が女神補佐官のギンガだな?我が名はブレイブ。矛盾に満ちた今のゲイムギョウ界の女神の統治に異を唱えるためにエディンに身を寄せている」

「あなたのことはどうでもいいです。しかし、私の愛弟子や教え子たちを可愛がってくれた借りを返させていただきます」

「……奴らは強くはなかったが、よく鍛えられていた兵たちだった。貴様が育てた者たちなのだな……ふっ、貴様には期待できそうだ!」

 

(アイエフ)

「はい!」

(ーーーーーーーー)

「……! わかりました!」

 

「話は済んだか……?」

「待っていてくださったのですか? お優しいことで」

「ふん、準備ができたならば……これは挨拶代わりだ! 我が剣を受けよ! 『ブレイブソー「『ギャラクティカエッジ』」……ぬっ!」

 

 敵の大剣から繰り出される技の前に、こちらの技を出し潰します。しかし、技を潰すためのものなので大したダメージになっていませんね。

 

(あれが噂の剣技……予備動作無しで技が出てくるのか……厄介だな)

 

 とりあえず、少しずつ削って行きましょう。大きなダメージを狙うと逆にこちらがやられそうです。正面からまともに相手する気はありません。

 

「くっ……ちょこまかと……!」

 

 それは当たり前でしょう。自分より大きくてパワーのある相手に正面から戦う人がどこにいますか。常に敵の死角に回りながら戦うんですよ。敵の大剣の大振りの攻撃は当たらないし、技ならば発生前に潰せます。しかし、大剣を振ることしか脳がないわけでもなさそうですね。それに巨体だから動きが遅いというわけでもなさそうです。見た感じ肩とかからミサイル出してきそうですし、ビームとかも出すんでしょうか?

 

「まずは足を止めるか」

 

 肩からミサイル……! やはり来ましたね。弾速と誘導が良く、避けきれそうにありません。ならば……

 

「闇の氷に抱かれろ……『魔粧・氷結樹』!』

 

 その名の通り、魔力でできた氷を樹のように張り巡らせ、ミサイルを誘爆させます。ちなみにこの魔法名もアイエフの設定ノートから付けたものです。私の使う魔法は彼女の設定ノートから名前を借りまくってます。

 

「(魔法まで使いこなせるのか……アノネデスの言っていた通り、下手したら女神と戦うより厄介かもしれん)しかし、避けているだけでは勝てんぞ!」

 

 確かに奴の言う通りですね。とはいえ、巨体のくせに意外と隙がありません。大きな一撃を食らえば即ゲームオーバーです。敵の大剣の技をまともに食らえば体の半分がもう半分とお別れすることになるでしょう。敵の技は発生前に潰せますが、こっちから技を仕掛けに行っても逆にダメージ覚悟で突っ込んで来られたらおしまいですね。さて、どうしたものか。

 

(この男……一切戦闘に焦りを見せない。いや、焦りをだけではない、無駄な感情を持ち込まず、最適な行動を繰り返している、敵ながら綺麗な戦い方をする……面白い!)

 

 敵の攻撃を捌きながら、技を発生前に潰すものの、こちらの攻撃も大したダメージになっていない膠着状態が続きます。しかし、そうなるとリミテッドパープルの制限時間がある私の方が不利ですね。

 

「……一つ聞こう。貴様のような男が、なぜ女神に尻尾を振るようなつまらん生き方をしている?」

「つまらない……? 最高の生き方じゃないですか」

「くだらん、その女神の悪政により、ゲームのできない恵まれない貧乏な子供が増えているというのに!」

「はぁ……?」

「高額化するゲーム、サービス、それにより恵まれない子供達は娯楽を奪われ続けている! 今のゲイムギョウ界はそんな子供たちを切り捨てている!俺はそんな子供たちの嘆きによって生まれた存在だ!」

「……エディンがその子供達を救うという理想のための国と? 私には到底そうは思えませんが」

「エディンは今の世界に打ち込まれる変革の楔に過ぎない! その変革の果てに……俺は全ての子供が平等に娯楽を楽しめる世界を創る! それが俺の正義だ!」

 

 あーはいはい、その手のやつですねこいつは。女神様ならばそれを聞いて何か思うことがあるのかもしれませんが、私は別に…………

 

 

 

『あなたのような子供を作らないためと思って頑張ったのよ』

 

 

 

 …………なんでこんな時にあなたの言葉を思い出してしまいますかね。まぁでもそうですよね、女神様が子供達を切り捨てるわけなどないというのに。

 

「お前は知らないだけでしょう……一つ、言っておきます。『お前』は『私』です」

「何? 誰が貴様のような……!」

「わかりませんか? わからないなら私には勝てません」

「ほざけ! 小手調べは終わりだ! 食らうがいい!」

 

 敵の背部のキャノン砲から上空に放たれたビームが雨のように降り注いできます。上からのビームと前からの剣……二段構えですか。上で防げば前から斬られ、前を防げば上からビームを浴びるはめになる……割とやばい状況です。ミサイルならさっきみたいに誘爆させればなんとかなるんですけど……ビームとなると話は別ですね。

 

 ……完全に避けるのは無理ですね、ダメージを安く済ませるように動きましょう。

 

(なるほど……あえて上のビームに突っ込みダメージを少なく済ませるか)

 

 逆に敵のビームの雨の真ん中は、敵の斬撃からの安全地帯になるわけです………が。

 

「ぐぅぅぅぅっ! 痛ってぇ……そりゃ防御したとはいえビームの雨に突っ込んだんですから痛いに決まってますか……」

「だいぶダメージを食らったようだな!」

「いいえ、まだまだですよ」

 

 ……強がってはいますが、今のでだいぶこちらの体力が削られました。そのせいでリミテッドパープルも制限時間もかなり減らされましたね……しかし、大剣の技を直接食らうよりはマシだったということにしておきましょう。しょうがありません、こっちもとっておきを使うとしましょう。秘策も込みで……!

 

「風よ! 来い‼︎」

 

「(……風? 風魔法か? ……何も起こらんぞ?)錯乱したか! 仕留めさせてもらおう!」

 

 近づいてきましたね……! これならばいけます!

 

「『シェアリングフィールド』!」

 

 

 

 

 

 

 

「弱い! つまんない! もう遊ばない!」

「……弱いって言う方が弱いんだもんね……!」

「離して……離し……離せっ! 離せぇっ!」

「離さない! もう絶対に……!」

 

 

 

 

 

 

 

「面妖な空間だ……だが、問題はない!」

 

 私のシェアリングフィールド内のルールは女神様への想いの強さで戦闘力が変化する…のですが、一つ問題がありまして、それはプラスの感情じゃなくても良いんですよ。奴のように信念があって女神様を憎んでいる相手にはそこまで効果がないんです。

 

 まぁいいです、今は奴の弱体化が目的ではありませんので。

 

「これが貴様の奥の手か……しかし無駄だったようだな!」

「さあどうでしょうね?」

 

「『クロスエッジ』!」

「ぬぅぅっ!?」

 

 背後からの一撃で奴が体勢を崩します。

 いい一撃です…………アイエフ。

 

「ぬぅ……っ⁉︎ 貴様は動けなくなるぐらいダメージを負っていたはず……」

「そうね……知り合いに腕のいい看護師がいてね。その子特製の救急キットがすごいのよ。あんなダメージを食らった後でも、それを使えばすぐに動けるようになるの」

 

(……今の一撃……本当にあの少女のものなのか? 威力が先程戦った時とは段違いだったが……)

 

 そう、これが私の秘策です。

 

『アイエフ』

『はい!』

『そのコンパさん特製の救急キットを使って待機しててください。そして、私が『風よ!』って叫んで呼んだら私のシェアリングフィールドの範囲内に急いで来てくださいね』

『……! わかりました!』

 

 てな感じですね。『風』というのは、相手が魔法を警戒してくれるかもしれないのと、あいちゃんが以前『ゲイムギョウ界に吹く一陣の風』と名乗っていたからそう叫ぶことにしたのです。

 

「それが貴様らの策か⁉︎ 二人になったところで俺の相手ではない!」

「それはどうでしょう。あなたも気づいているはずです。先程のアイエフの一撃が、あなたの思ってる以上の威力だったことを」

「この面妖な空間のせいというわけか!」

「ご名答! 今の彼女をさっきまでの彼女だと思わないことです」

 

(師匠が前言ってたわ……師匠のフィールド内では女神への想いが強さになるって、だから今の私はなんかすごく強くなってる気がする……って! これじゃあ私がネプ子のこと大好きみたいじゃない!!」

「大好きじゃないのですか?」

「し、師匠! 思考を読まないでください!」

「私は思考を送れても読むことはできませんよ。途中から声に出てました。話を戻しますけど、ネプテューヌ様のことがお嫌いなのですか?」

「え⁉︎ そ、それは……好きですけど……」

「そうですよね! ネプテューヌ様を愛する者同士! 共に参りましょうか!」

「誤解を招きそうな言い方しないでください!」

 

「何が女神を愛する者同士だ! 女神が正義だと誰が決めた!」

 

「さぁ、敵が来ますよ。指示は……必要ですか?」

「大丈夫です! 師匠に合わせてみせます!」

「OK!」

 

 そうしてアイエフは右から、私は左から斬りかかります。

 

(狙うはあの男一択だ! 少女の方は強くはなっているが、気にするほどではない!)

 

 奴は私しか狙ってませんね。好都合です。奴も疲弊してきてるはず……いやロボだから疲弊とかしないんでしょうか? とりあえずこのフィールド内で仕留めます!

 

(ミサイルもビーム砲のエネルギーはもうないが…この空間を生成してからか奴の息も上がってきて、機動力も落ちてきている!ならば剣だけで充分だろう!)

 

(あいつ、私のことを気にも留めてないわね……! まぁ、私と師匠相手ならそうなるか…………それにしても、今の私……そんな状況じゃないのに…なぜかとても心地がいいわ……なんでだろう……)

 

 ……アイエフ? あの表情……気配……なるほど……!

 

「余所見をしている暇があるのか!」

「さっきからずっとしてるお前には言われたくありませんね!」

「何……?」

「気づいていないならいいです」

 

(あぁ、これが……ずっと前、師匠が言ってた自分の力の『核心』に近づくってことなのかしら? なんかわかってきたわ……自分がどう動けばいいか、どうやって戦えばいいか)

 

 そうですよ、アイエフ。そういうことなのです。さて、少しの間……こいつの動きを止めていてあげましょうか!

 

(何⁉︎ 俺の大剣を剣で受けただと⁉︎ 俺と力勝負をしようというのか……? 舐められたものだ! ……後ろからあの少女に攻撃させようとしているようだが、無駄だ! この男の一撃ならまだしも、あの少女の攻撃では俺の装甲に傷などつかん! 俺はこの男だけに意識を集中していればいい! このまま押し切って仕留める!)

 

 ……みたいなこと考えてそうですね。ならば、ぶちかましてやりなさい、我が愛弟子よ!

 

(今の私なら『これ』ができそうね……見ていてください、師匠! そしてネプ子……先を行くわよ……!)

 

「はぁぁっ! 『ギャラクティカエッジ』‼︎」

 

 無防備な敵の背部へ放たれたアイエフの一閃は、敵の装甲の表面を砕きました。己の力の『核心』を掴んだ者の一撃です。まともに食らって無事で済むわけがありません。

 

「ぐぁあああ! 馬鹿なぁっ!」

「舐めすぎましたね、我が自慢の愛弟子を」

「師匠!」

「わかっています」

 

 怯んだ相手に、今度は合わせて叩き込んでやりましょう。

 

「「『クロス・ギャラクティカエッジ』!」」

 

 剣技の真髄が合わさったその技は……敵の大剣ごと装甲を切り裂きました。

 

 ……私たちの勝ちです。

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ……シェアエネルギーが……機械から発生しているの? これがイエローハートの強さの秘密なのね!」

「じゃあこれを壊したら……ピーシェちゃんとかエディンの暴徒たちはどうなっちゃうのかしらぁ?」

「そこのオカマが教えてくれない以上、やってみるしかないわよね!」

 

「『ファイティングヴァイパー』!」

「『レイシーズダンス』!」

 

 

 

 

 

 

 

「嫌い……っ! 嫌い……」

「いいよ……嫌いでもいい。ピー子がここにいるんなら……」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……負けたのか……」

「えぇ、負けです。今連絡が入りました。R-18アイランドが落ちた、と。イエローハート様の力の源と人々を洗脳していた機械も破壊されたようです。それにより変身が解けたイエローハート様……ピーシェ様の身柄はこちらの女神様が確保しました。エディンは終わりです。お前たちの負けなんです」

「そうか……

「……ここからは、プラネテューヌの女神補佐官としてではなく私……俺個人の言葉で喋ろう」

「……」

「俺は……お前の言ってることはそこまで間違っていないと思う。確かに、この世界にゲームができないぐらい貧しい子供がいることは事実だ。俺もそうだったよ、俺がガキの頃はゲームどころか衣食住も無いような日々を送っていた」

「……!」

「けど、そんな俺は女神様に救われたんだ、そして女神様は俺みたいな子供を作らないように力を尽くしてくれた。それは今からはもう数えるのも面倒なぐらい昔の話だけど、その女神様の想いは時を超えて、今の女神様にも受け継がれているはずなんだよ。だから…… もう少し、女神様を信じてくれないか? 女神様だけじゃない、俺も俺たち教会も……お前の言う全ての子供達が平等にゲームを楽しめる世界とやらに近づけるように頑張るからさ」

 

「師匠……」

 

「……あの言葉の意味がようやくわかった。貴様も俺も自分の信じる正義のために戦っている点では同じだったというわけだな」

「そうだよ、正義の押し付け合いさ。その果てに未来で立ってるのは俺かお前らか、それはこんな戦いだっだわけだ。それが戦争なんだよ」

「ここで俺が消えても……貧しい子供達の心の嘆きがあれば俺は何度でも蘇る。そのことを肝に命じておけ」

「なら今度お前が蘇ったら、戦うんじゃなくて協力してもらおうかな」

「……そうか。ギンガ、それとアイエフ、貴様たちと戦えたことを誇りに思う。さらばだ……」

 

 そう言ってブレイブは活動を停止しました。

 

「終わり……ましたね」

「パープルシスター様がネプテューヌ様とピーシェ様を無事回収したようです。兵士たちも撤退が完了したらしいので、私たちも戻りましょう、あいちゃん」

「……え? 何であいちゃん呼びに戻ってるんですか? さっきはアイエフって呼んでくれてましたよね?」

「さぁ? ほら、置いていきますよあいちゃん」

「えぇ⁉︎ せっかく名前で呼んでくれたと思ったのに〜!」

「そうですね、先ほどあいちゃんがやった『ギャラクティカエッジ』、見事でした。しかし、予備動作があるのでまだまだです。次は予備動作無しで出せるようになったらまた呼び捨てにしてあげましょう」

「そんな〜〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、新国家エディンはその短い歴史の幕を閉じました。暴徒の洗脳も解けたため、各国の暴動も大きな被害を出すことなく終わりました。しかし、全てが元通りというわけではありません。

 

 失われたピーシェ様の記憶は戻ることはなく、そのままプルルート様と彼女らの次元に帰ることになりました。

 

 私は、エディンの件の事後処理があまりにも忙しいので立ち会うことができませんでしたが、先にプルルート様とピーシェ様への別れの挨拶を済ませ、プルルート様から私の人形をいただきました。

 

 そしてお二人が帰ってしまった日の夜、仕事から教会へ戻るとネプテューヌ様がピーシェ様の描いた絵を眺めていました。

 

「ねえギンガ……」

 

 声をかけずに見守っているつもりでしたが、ネプテューヌ様からこちらに声をかけてくるとは。

 

「……どうしました?」

「ピー子がさ、最後ねぷてぬって言ったんだよ。記憶なくしてからねぷてゅーぬだったのに……」

「……いつか、また会えた時、その答えは分かりますよ」

「……そうだね」

 

 

 

 会えますよ。いつか、また、どこかで、必ず。

 

 

 

 

 




次回から最終章に入っていきます

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