「ねえ、よくわからないんだけど、どうしてお隣の国の女神がうちの教会で寝ているのかしら⁉︎ そしてこのお隣の国の女神補佐官は私に平伏したまま動かないのかしら‼︎⁇」
「あー、構わずにお仕事してー私気にしないからー」
「私が気にするのよ! あなたならまだしもこの男を‼︎」
「ノワールがやめろって言えばやめると思うよー」
「そ、そうなの? じゃあやめなさいギンガ!」
「かしこまりました」
「ていうかギンガは私の補佐官なのに何でノワールに平伏すのさー? 浮気はダメだよー」
「いえ、確かに私が仕えているのはネプテューヌ様とネプギア様ですが、ゲイムギョウ界に生きる人間として、己が仕えていない女神様相手でも、女神様が良いと言うまで平伏すのは当然のことです」
「ねえ、ネプテューヌ、あなた部下にどんな教育をしてるの……?」
「ギンガがこうなのは私のせいじゃないよー!」
ネプテューヌ様はラステイションの教会に着くとすぐ横になってしまいました。そして私もノワール様に平伏すために横になりました。ネプテューヌ様が動かない以上私もラステイションの教会から動くことはできないので、ノワール様に平伏した状態から動く許可をいただいたあと、女神の心得その1『書類の整理』を手伝わせてもらっています。
「ユニ様、お久しぶりです」
「こんにちはギンガさん、とりあえず平伏そうとするのをやめてくださいね」
別室で書類整理をしているとノワール様の妹でラステイションの女神候補生のユニ様にお会いしました。どうやら、ユニ様は自分が姉であるノワール様に認めてもらえないことを悩んでいる様子でした。
「お姉ちゃんは自分みたいにできないと認めてくれないんです。そんなの絶対あたしには無理なのに……」
「そうですね……そのことに関しては私は何もできません」
「そうですよね、あたしなんかじゃ……」
「悩むのは女神候補生の特権です。女神様になってからでは悩んでる時間なんてほとんどありません。たくさん悩んで、たくさん壁にぶつかって、そうして女神候補生は女神様に相応しい強さを身につけていくのです。ノワール様だってそうでした。ネプテューヌ様もです。」
「……」
「さて、私の分の書類は片付いたので、私はノワール様のところに行きます」
「え⁉︎ もう終わったんですか?」
「はい、ユニ様の分もお手伝いしましょうか?」
「これは……自分でやります!」
「そうですか、ではお先に失礼します。ネプギア様が会いたがっているのでお早めにお越しくださいね」
「はい!」
「ネプギアが羨ましいなぁ、ギンガさんみたいな人がうちにもいればいいのに」
ノワール様のところへ戻ると、まだ横になっているネプテューヌ様にネプギア様が注意しています。ネプギア様は私ほどではありませんがネプテューヌ様に甘いので珍しい光景ですね。
「ごめんなさいノワールさん…お姉ちゃん、女神の心得を聞くんじゃ…」
「悪いけどお断りよ、私敵に塩を送る気なんてないから」
「あー! 敵は違うでしょ?友好条約結んだんだからー」
「そうですよ、せっかく友好条約を結んだのですから、昔のように仲良くしたらどうでしょう。お互いをネプちゃん、ノワちゃんと呼び合うぐらい仲が良かったあの頃のように…」
「のわぁぁぁっ⁉︎ ギンガ⁉︎ 急に何言い出すのよ‼︎」
「あ、ギンガおかえりー」
「ただいま戻りました。……話を戻しますと、ネプテューヌ様とノワール様がまだ女神候補生だった頃はお互いをネプちゃん、ノワちゃんと呼び合……」
「戻さなくていいわよ! あなたはもう黙ってて!」
「ノワちゃん、私のこともまたネプちゃんって呼んでもいいんだよ」
「呼ばないわよ! てかノワちゃん言うな!」
「お姉ちゃん! 書類の整理終わったよ!」
「ありがとうユニ。でも、ちょっとこの馬鹿二人の相手に忙しいからそこに置いといて」
「はーい!」
ユニ様もお仕事を終えた様子ですね。先程と変わって良い表情をしています。あなたもネプギア様も今よりもっとずっと強くなれますよ。
「ネプギ……ぎ、ぎあちゃん…」
「どうしたのユニちゃん?何か言った?」
「な、なんでもないわよ‼︎」
「えぇ⁉︎ 何で怒ってるの⁉︎」
ネプギア様とユニ様はとても仲が良く、彼女たちを見ていると私の心までも洗われるようです。それは良いのですが……私はノワール様を怒らせてしまいました。女神様を怒らせてしまうという女神補佐官とっての『生き恥』を一日に二度も晒すことになるとは。切腹……はネプテューヌ様に禁じられてしまっているので、この罪をどう償いましょう。
おっと、そういえば私はノワール様に書類を渡しにきたんでしたね。ネプちゃんノワちゃん談義に気を取られ忘れてしまっていました。
(ノワール様、書類の整理が終わりました)
「え、何? あ、書類ね、ありがとう」
(ノワール様が目を通す必要があるもの、必要のないものに分けておきましたので)
「何で黙って私を見てるのよ? 何か言いなさいよ」
(先程ノワール様に黙るように言われたので……)
「あ、もしかして私がさっき黙っててって言ったから……?」
(はい)
「嘘でしょ、本当にここまで徹底して黙るなんて……」
(できれば、喋る許可をいただきたいのですが……)
「まぁもう喋っても良いけれど……ちょっと待って、あなた今喋ってないわよね? 頭に言葉が流れ込んでくるんだけど……」
(喋ることができないので、ジェスチャーでは限界がありますし、直接脳内に語りかけることにしたのですが)
「やめて! 怖い! 喋っていいから!」
(かしこまりました」
「もうこいつほんとになんなの!」
*
その後、私たちはあいちゃんとコンパさんの提案で、国境沿いのモンスター退治をしながらノワール様に女神様の心得を学ぶことになりました。今回のクエストはラスーネ高原とトゥルーネ洞窟の二つでどちらも難易度は高くないとのこと。私は今、私たちの歩くペースに付いてくるのが難しいコンパさんを抱えて歩いています。
「ギンガさん、重くないですか?」
「いえ、全く、むしろ軽すぎます。もう少し重くなった方が健康にいいと思いますよ」
「こらー! ギンガったらデリカシーのないこと言わないの!」
「申し訳ありません」
「ギンガさん、そろそろ自分でも歩けるので降ろしても大丈夫です」
「わかりました、また疲れたらすぐ言ってください」
「はい、ありがとうございますです」
「ネプ子もコンパも師匠も緊張感ないわね…」
「あいちゃんも疲れたらすぐ言ってくださいね、だっこしてあげますので」
「わ、私はいいです!」
「ねーギンガー、私はー?」
「命令ならば抱えますよ」
「それはちょっと違うんだよねー」
ネプテューヌ様をだっこ……ですか。昔はよくしましたね。先代のプラネテューヌの女神様には自分よりネプテューヌ様のことをよく見るように言われていたので、幼い頃のネプテューヌ様とは常に一緒にいたものです。
「ねえユニちゃん機嫌なおしてよー! というか何で怒ってるのー⁉︎」
「別に怒ってないわよ! ぎあちゃんのことなんか知らないわよ! あっ…」
「え⁉︎ ユニちゃん今のもう一回言って! ねえもう一回!」
「はぁ……もう諦めよ、ネプテューヌ一人だけならまだツッコミは間に合うんだけどギンガまでいるとなると私の手には負えないわ……」
*
そんなこんなで私たちはラスーネ高原の現場に到着しました。女神様を待っていた集落の人々を前に、ノワール様は女神ブラックハート様に変身し手を振ります。女神の心得その2『国民には威厳を示すこと』ですね。しかし、私はその光景にある違和感を覚え、つい口を開いてしまいました。
「……あの人たち、頭が高くないですか?」
「「「「「「え?」」」」」」」
その場にいた全員が私に振り向きます。あれ、私何か変なこと言いましたかね? とりあえずブラックハート様に平伏しながら話を続けるとしましょうか。
「いや、普段のお姿ならまだしも目の前に変身した女神様がいるんですよ? 女神様が良いと言うまで頭を垂れて平伏すか、最低でも跪くのは常識でしょう⁇⁇⁇」
「どこのディストピアの常識よ! ネプテューヌ、ゲイムギョウ界の平和のためには友好条約を結ぶことよりも先にこいつを殺した方がいいと思うわ」
「まぁ確かにギンガは少し過激だしすぐ粛清とか言うけどー、実際にするわけじゃないしー」
「実際にしてたら大問題よ‼︎ ていうかギンガも早く顔を上げなさいよ‼︎」
「わかりました……このようにお許しが出るまで頭を垂れて平伏すのが常識ですよ! わかりましたか皆さん!」
「いやーーーー! 私の国民を過激思想に洗脳しないでーーーー‼︎」
「変身後のお姉ちゃんがこんなに取り乱してるの初めて見た……」
「ねえユニちゃん! さっきのもう一回言ってよ! ねえってばー!」
「……もうカオスね」
「……ですぅ」
次回、おそらく初戦闘です