俺は祝福されて生まれてきた人間ではなかった。物心ついた時には既に親はいなかった。死に別れたのか捨てられたのかはわからないが、今となってはどうでもいい。
年齢が一桁の頃から喧嘩は負けなしだった。今思えば俺はその時から自分の力の『核心』を少し掴んでいたのかもしれない。自分には何もない哀れな存在だと思っていたことと、自分には人が生まれ持つシェアエネルギーが存在しないことが偶然にも一致していたからじゃないかな。
けど、力が強くても餓えには勝てなかった。餓えを凌ぐために人から金でも何でも奪おうと、俺は生まれて初めて人を殺そうとした。運が良かったのか悪かったのか、強盗しようとした相手が女神様だった。生まれて初めて喧嘩に負けた。いや、喧嘩ですらなかったな。今思えば丸腰の人間が女神様に勝てるわけねえよな。
女神様は俺を咎めることはなく、それどころか俺を側に置いた。そして、俺は生まれて初めて他者の優しさに触れた。最初は素直になれなかったけど、ずっとこの女神様の側にいたいと思った。だから頑張った。女神様の役に立つことはなんだってやった。そんな日々の中、俺は……いや、私は大事な人のために何かをすることの喜びを知りました。
その過程で私は人であることをやめました。元々女神様の側にずっといたかったから丁度良かったです。今ではその原因となったあの病に感謝すらしています。あの病がなければ私は人のまま生きて人のまま死んでいたかもしれませんし。
ある時、可愛い同僚ができました。その同僚は私なんかよりよっぽど賢いけれど、よっぽど馬鹿でもありました。そうやって共に過ごすうちに、私にできないことは彼女にはできて彼女にできないことは私にはできる、そんな最高のコンビとなりました。
女神様の妹が誕生しました。その方を育てることを任されました。最初は不安だったけれど、その方がとても優秀な方だったので困ることはほとんどありませんでした。
それからしばらく経ち、最愛の女神様が俺を残して逝ってしまった。胸が張り裂けそうなぐらい辛かったし、正直後を追うか悩んだ。だけど、女神様が残したものを未来へと受け継がせることにも意欲があったから、生き続けることを選んだ。
そうしてそれから多くの女神様と出会い、別れていきました。
ある時には、制御しきれない強大な自身の力を民に恐れられ、女神様であることをやめざるを得なかった方がいました。その方は自分が封印されることを選びました。そしてその方が封印された後すぐに新たな女神様が誕生しました。民は喜びましたが、私は素直に喜ぶことはできませんでした。その時からでしょうか、女神様を信じない民に対する嫌悪感を抱き始めたのは。
それから更に時が経ち、ネプテューヌ様と出会いました。名前は海王星だが、まるで太陽のような方でした。出会ってすぐに確信しました、この方はゲイムギョウ界の運命を変える方だと。
ネプテューヌ様の妹であるネプギア様も生まれてきました。しっかり者だけど素直に甘えてくる可愛らしい方でした。ネプテューヌ様とネプギア様と過ごす日々は常に幸福感に満ち溢れていました。
ネプテューヌ様が『友好条約』なるものを考案しました。それは私の悲願でもありました。他の国も女神様も賛同し、それは締結されました。ゲイムギョウ界の争いの歴史が終焉を迎えました。私が思った通り、ネプテューヌ様はゲイムギョウ界の運命を一つ変えました。
ズーネ地区の件を境に、私は女神様に対する歪な接し方を見直すことができました。そして、ネプテューヌ様を初めて叱りました。叱られていた時のネプテューヌ様はとても嬉しそうにしていて疑問に思いましたが、ネプテューヌ様に叱られている時の自分を思い出してみたらすぐに納得しました。
ネプテューヌ様もネプギア様も本当に立派は女神様になられました。しかしいずれ、このお方たちも私を残して逝ってしまうのでしょう。それはやはり寂しいですね……何度経験しても女神様との別れには慣れません…
\ ん! ……ガさん!/
「ギンガさん!」
「え⁉︎ あ、はい!」
「急にぼーっとして……大丈夫ですか? 気分はどうですか?」
「あ、はい、すみませんコンパさん……気分は……悪くはないです、大丈夫です」
……なぜでしょう? なぜ私は今急に自分の人生を振り返っていたのでしょう?気の遠くなるような長い年月を振り返ったのですが、時間は先程から数分と経っていないようです。
今のは何なのでしょう……これが走馬灯というものなのでしょうか? いや、走馬灯というのは死の直前に見るものらしいですが、わたしは今普通に生きてますよね。腹に穴が空いてますけど。
「どうしたんですか師匠?」
走馬灯のようなものを見たり、女神様が戦っているのを眺めることができない無力感で表情に出るぐらい感傷的になっていた私に、あいちゃんが心配そうに聞いてきました。
「……なんでもありませんよ」
と、ありきたりな感じで誤魔化しておきます。私の返答に納得はしきれていない表情でしたが、あいちゃんはそれ以上何も聞いてきませんでした。
「それよりも、戦っているの女神様たちに祈りを捧げましょう……!」
「……はい!」「はいです!」
「お姉ちゃん…! ユニちゃん……! みんな……!」
「ノワール! ベール! ユニちゃん! 来てくれたの……?」
「全く……これがあなたの言っていたイベントってやつ?随分派手ね」
「ノワール……そのくだりはもう下でやりましたわ」
「ネプテューヌさん、一緒に戦います!」
「ありがとうみんな……行きましょう!」
四人の女神様の華麗なるコンビネーションで、強大な力を持つタリの女神に対しても有利に戦闘を進めていく……
……かのように見えたのですが、空に浮かぶタリの下にある『シェアエネルギーを奪う装置』とやらのせいで、ラステイションやリーンボックスのシェアも奪われているようで、ブラックハート様もグリーンハート様もブラックシスター様も力を失っていきます。
そういえば、ブラックハート様がエディンの本拠地でも同じような装置を見たと言っていましたね。エディンの装置とやらはシェアエネルギーを生み出す装置ではなくシェアエネルギーを奪う装置であった…とするならば…なるほど、エディンはタリ復活の野望のための単なる実験にすぎなかったというわけですか。今更それがわかったところで意味はありませんが。
冷静に分析してる場合ではありませんね。ならばあの装置を破壊すれば……!
「『ギャラクティカクロス………うぇっ……げほぅ……!」
『ギャラクティカクロスシュート』であの装置を破壊しようと思ったのですが…私の身体がこんな状況なのもあり二度目は撃てそうにありません。それどころか止まってきた血がまた流れ出してきてしまいました。
まずい……イストワールとのリンク中に敵のビーム砲のチャージ時間も解析したのですが、それがもうそろそろ撃てるタイミングなのです。
「ま、数が増えたところで無駄なんだけどね。おっ、そろそろレーザーのエネルギー貯まりました〜。目標はまたさっきのところで〜発射!」
ビームがこちらにめがけて飛んで来ます。クロスシュートが撃てないなら防御魔法を……! しかし、今の私が練れる魔力では防げません……っ!
「「『アイス・サンクチュアリ』!」」」
突如発生した魔法の氷壁により、敵のビームが相殺されます。
そして、どこからともなく飛んで来た巨大な斧が、シェアエネルギーを奪う装置を破壊しました。斧……ということは…
「レーザーの下を打てば……稲妻は撃てない……だろ?」
「ブラン!」
ホワイトハート様……! ならば、今の魔法は……
「やったねロムちゃん! 私たちってばさいきょー!」
「うん! さいきょー……!」
ホワイトシスター様……!
「ネプギア ! ギンガさん! おまたせ!」
「ギンガさん……怪我してる……!」
「私たちが治してあげるわ!」
そう言ってホワイトシスター様たちは私に回復魔法をかけてくれました。女神様の強大な魔力から放たれる回復魔法は私の傷をみるみると塞いでいきます。
「ありがとうございます。これで……!」
「ダメ! 怪我自体は治ってもギンガさんはまた休んでて!」
「私たちが戦うから……ね、ネプギアちゃん」
ネプギア様……? そうか! 装置が破壊されたから、変身が可能になるわけですね。
「感じる……シェアエネルギーを! 皆さん! 行ってきます!」
ネプギア様が再び変身し、ホワイトシスター様たちと共に空に戦いに行きます。行ってらっしゃいませ、パープルシスター様。
「エディンの装置がシェアを奪うものなら色々と辻褄が合う…冷静になって考えたんだが……」
「流石はブランね」
「けど、一番美味しいところを持っていくなんてずるいですわ」
「お姉ちゃん!」
「ネプギア……これでみんな揃ったわね! 始めましょう! 私たち、女神のターンを!」
今までは二人か三人でした。女神様と候補生様と私、国を守るために戦うのは。しかし、私はあそこにはいませんが、今は八人います。八人の女神様が世界を守るために共に戦う、その光景見ることこそが私が今まで生きてきた理由とすら思えました。
「ノワール、ベール、ブラン、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん、ネプギア! みんなの力を私に貸して!」
「もう遅いんですけど〜! シェアは充分にもらったから、今度こそビーム砲でお前たちの守りたい奴らを消しとばしてやりま〜す! 今度は猪口才な魔法なんかじゃ防げませんけどぉ?」
(連続放射は砲台が持たない……いや、この一回でいいわね。まずはこの国を吹き飛ばす!)
「……残念ながらエネルギーは充分溜まってるんですよねぇ! 発射ぁ‼︎」
「嘘でしょ⁉︎ 早すぎる!!」
……おっと、もう私には何もやることはないと思っていたのですが…最後の大仕事が残っていたようです。
怪我が治り、体力も回復してきました。ホワイトシスター様には治ってもまだ安静にしているように言われましたが、ここで動かねばいつ動くのでしょうか!
「ギンガ! あいちゃん! コンパ! みんな!」
安心してくださいパープルハート様。そして、お見せしましょう。私の最強必殺技を超えた、究極必殺技を!
「『ギャラクティカエスペシャリー』!」
そう、これが私の究極必殺技『ギャラクティカエスペシャリー』です。『ギャラクティカクロスシュート』が腕から光線を出す技なら、これは全身から光線が出る技です。ゆえに威力も桁違いなのです。一定時間戦闘が行えなくレベルで体力を消費するのが玉に瑕なんですよね。
それにより、先ほど以上の出力があるビームを完全に相殺しきることができました。
「何今の……意味わかんないんだけど!」
私の究極必殺技に唖然としたタリの女神の隙をついて…
「『インフィニットスラッシュ』!」
「『ハードブレイク』!」
「『スパイラルブレイク』!」
3人の女神様の必殺技と
「「「「『スペリオルアンジェラス』!」」」」
候補生の皆様の連携必殺技と
「『ビクトリィースラッシュ』!」
トドメのパープルハート様の必殺技で、空に浮かぶタリの大陸が粉々に破壊されました。
しかし……大陸は粉々になりましたが、大陸に貯められたシェアエネルギーは、タリの女神が既に回収している……!
「大陸を落としたぐらいで勝った気になっちゃってぇ⁉︎ あはははは! 残ったエネルギーを解放するだけで世界の半分ぐらいはかるーく無くなりますから!」
「世界を……? あなたの目的はこの国を奪うことじゃなかったの……?」
「わかったぜ、こいつは多分かつて自分の国が亡くなった復讐を今の世界にしようとしてるんだな」
「そうよ! こんな国なんて……世界なんて要らない! 全部めちゃくちゃに壊してやるわ!」
奴は残ったエネルギーを爆発させて、世界ごと消し飛ばすつもりのようです。
「確かに……驚くほど強い憎しみですわ」
「けど、所詮は憎しみだろ?」
「たとえ私たちのシェアエネルギーを使い果たしたとしても」
「女神が……私たちがやることは一つだけよ」
女神様たちが手を繋ぎ、奴を取り囲みます。まさか…あれを防ぎきるおつもりですか⁉︎
……どう考えても無茶ですが、女神様がやると決めたならば、私は祈るだけです。
そうですよ、女神様が負けるはずがありません……!
「そうやって正義の味方ごっこしてろっての! あの世でな‼︎‼︎」
そして、タリの女神を中心に爆発が起こりました。爆発のエネルギーは女神様たちによって抑えられ、抑えられたエネルギーは光の柱となって天を穿ち、雲が割れ、その直下の大地は抉れ、衝撃の暴風が街から遠く離れたここにまで吹き荒びます。
爆発が終わり、プラネテューヌを静寂が支配します。戦いは終わったのでしょうか。
……いえ、それを判断するのは私の責務ですね。
あいちゃんやコンパさん、5pb.さんが女神様たちの元へ駆け出そうとします。それに続き人々が爆心地へ向かおうとしますが………
「まだ近づいてはいけません! 待機命令!」
私はそう叫び、爆心地まで駆け出そうとする人々を制止します。人々はちゃんと動きを止めてくれました。プラネテューヌの民度の高さに感謝です。
「タリの女神を仕留めているかを私が今から確認しに行きますので、それが終わるまで皆さんはまだ近づかないでください!」
「師匠! 私も!」
「いえ、あいちゃんもここで待機です。おそらく女神様たちは今ので力を使い果たしています。だから、私に何かあった場合もう人々を守れるのはあいちゃんしかいないので」
「……わかりました……!」
そう言って私は現場に向かいます。プロセッサユニットを装備できるほど体力が残っていないため走って行きます。
爆発現場の付近まで来て、そこから遠目で見えたものはシェアエネルギーを使い果たし気を失っている女神様たちと、エネルギーを使い果たさずに爆発の衝撃をも耐えきったタリの女神でした。
「まだやれる……あいつらだけでも吹っ飛ばして……その後世界を粉々に!」
奴め……最後の力で女神様たちにトドメを刺すつもりですか! 魔法は……っ、使えません……! なら私の身体を盾にするしか……いや、それも間に合わない!
「それは困る」
あれは……マジェコンヌ⁉︎
「この世界は私のものになる予定なのでな!」
「はぁ⁉︎ 誰?」
「OKっチュよ、オバハン」
「絶望の奈落で眠れ!」
突如して現れたマジェコンヌとワレチューがアンチクリスタルを使用し、タリの女神の力を奪います。まさか奴らがこちらに協力をするとは、しかし今は助かりました。あのままではタリの女神によって女神様が全員殺されていたので。
「いやぁああああああ! 私の力がああああ! おおおおおおおああああああ!」
アンチクリスタルにシェアエネルギーを吸われ、タリの女神が悲鳴をあげながら変身を解除します。
そして、ようやく現場に到着しマジェコンヌに問います。
「なぜ女神様を助けた」
「今の私にはこの世界を守る理由があるのでな」
「守る理由?」
「私の愛する農作物たちと、その消費者たちさ」
「……そうか。礼を言っておこう。助かった、ありがとう」
「ふん……」
「オイラにも感謝するっチュよ」
……助けてもらったとはいえ、〆をマジェコンヌたちに持っていかれたみたいで少し腹が立ちますね。タリの女神を追い詰めたのは女神様たちですよ。そこんとこちゃんと理解してるんでしょうかこいつらは。
(これは……アンチクリスタル? 私の力が!! ……いや待て! ……これなら!)
……? おかしい……タリの女神が悲鳴をあげるのをやめた? 見た感じ気を失ったわけではありません……! 奴のあの表情………笑顔⁉︎ まさか!
「マジェコンヌ! 今すぐアンチクリスタルを止めろ!」
「何だと? ネズミ! 止めろ!」
「今すぐなんて無理っチュよ!」
(これをこうすれば……いけるわ!)
「うおおおおおおおおおおああああああ!」
……奴のシェアエネルギーが増えています……! そして、増えたシェアエネルギーを元に、奴は再び変身してしまいました……!
「ぅ……ううん……ねぷぅ⁉︎ 何あれ⁉︎ 何が起こってるの?」
タイミングが良いのか悪いのか、ネプテューヌ様だけ目を覚ましたようです。
「おはようございますネプテューヌ様。少々……いやかなりやべえことが起こってしまいまして……」
「見ればわかるよ……なんでタリの女神のシェアエネルギーが増えてるの?」
うろたえながら呟かれたネプテューヌ様の問いに、タリの女神が答えます。
「うふふ、『シェアエネルギーの反転』って知ってる?」
……やはり奴が行ったのは『シェアエネルギーの反転』か!
「ん〜? 今の表情的にそこの男なら知ってそうねぇ、殺す前に説明させてあげようかしら。はいどーぞ」
見るからに上機嫌で腹が立ちますね……しかし説明しない理由はありませんのでさせていただきましょうか。
「……信仰により生まれるシェアとは逆のもの、女神様への悪意であるアンチシェアというものがあります。アンチシェアはシェアと同じく女神様は受け取らないことができますし、シェアが女神様の力の源ならアンチシェアはその逆で女神様には毒となりますので、基本的には女神様はそれを受け取りません。それに、アンチシェアはシェアでかき消されます。つまり、ネプテューヌ様たち守護女神は、アンチシェアというものを感じることはありません。しかし、今のタリの女神は、暴虐の限りを尽くしたことにより、人々からのシェアよりもアンチシェアの方が高くなっているため、アンチシェアを受け取ることができます」
(なるほど……よくわかんないけどとりあえずうなづいとこ)
(なるほど……ならば反転とは……そういうことか……!)
ネプテューヌ様はわかっていない様子ですが、マジェコンヌは少しわかったたようですね。
「先程言った通りアンチシェアというものは基本女神様は受け取らないのですが、奴はこれをあえて受け取り、アンチクリスタルのアンチエネルギーと掛け合わせました。すると負の数と負の数を掛けると正の数となるように、アンチシェアとアンチエネルギーを掛け合わせるとシェアエネルギーを生成できます。これが『シェアエネルギーの反転』です」
「はい、説明ありがとお疲れ様〜! いやぁ私も知識だけあって実際やったことはなかったんだけどねぇ〜土壇場で成功させちゃったってわけ。アンチクリスタルありがとうねぇ! そこのおばさん〜!」
「……すまない、私のミスだ」
「私が知る限り、シェアエネルギーの反転が実際に行われたことは歴史上今の一回だけです……知らなくても無理はありません…」
「そうそう気にしないでマザコング! マザコングが一瞬でも動きを止めてくれてなかったらあの時私たちみんな死んでたんだし!」
今マジェコンヌを責めてもどうしようもありませんからね。と、言いましてもこの戦力ではどうしようもないですね……何か手は……
……あー、この方法しか思いつませんね。なるほど、さっきの走馬灯は虫の知らせだったということですか。死ぬ直前ではなく予兆の段階で走馬灯を見せてくるとは……私の身体というものは本当に変ですね。
「マジェコンヌ、頼みがあります」
「何だ」
「ほんの少しの間だけ奴を食い止めてくれませんか?」
「……いいだろう。それに、別に奴を倒してしまっても構わんのだろう?」
そういうこと言った奴は大体負けるんですけどね。とりあえずここは任せました。
「お、オイラにはそんなこと無理っチュよ⁉︎」
「お前には期待してません、死にたくなかったら逃げてください」
「……逃げはしないっチュよ。悪人には悪人同士の友情というものあるっチュ。もうオイラはオバハンを見捨てて一人では逃げないっチュ」
「……そうですか」
「ネズミのくせに泣かせること言うね!」
ネプテューヌ様、その一言で台無しですよ……
「ん〜? なんかする気? 無駄だと思うけど、念のため何かする前に殺しておくわね!」
「させん!」
「ちっ……どけよおばさん」
「おばさん? お前の方が年齢的にはおばさんじゃあないのか?」
「……殺す」
さて、マジェコンヌが時間を稼いでくれている今のうちに……
「ギンガ、何か秘策があるの?」
「ネプテューヌ様には昔言ったのですが、多分聞いていなかったと思うのでもう一度説明します。私にはシェアエネルギーが存在しませんし、作り出せるシェアエネルギーも虚数のもののため、ネプテューヌ様に信仰によりシェアエネルギーを与えることができません」
「知ってるよ、ちゃんと聞いてたもん。私がギンガの言うことを聞いてないわけないじゃん」
その言葉に少し頬が緩みそうになりますが、今はそんな場合ではありませんね。
「……そうですか、では話を続けます。そんな私がネプテューヌ様が変身できるほどのシェアエネルギーを与える方法があります」
「おぉ! それは⁉︎」
「私の虚数のシェアエネルギーを実数にし、そのシェアエネルギーでシェアクリスタルを生成することです。本来私にはシェアクリスタルの生成は行えないのですが、この方法でならシェアクリスタルの生成が行えるのです」
「よし! じゃあお願……ねえギンガ、それって絶対何か代償が必要とかだよね…すごく嫌な予感がするんだけど……もしかして……」
勘がいいですねネプテューヌ様。私のシェアエネルギーでシェアクリスタルを生成する方法、それは……
「はい、私の命です。私の命を捧げることにより、シェアクリスタルを生成できます」
「絶対にダメ! 他の方法を考えるよ!」
ネプテューヌ様ならそう言いますよね……ですが、残念ながらこの状況では他に方法はないんです。
「そうしなければタリの女神に皆殺しにされ世界も終わります。それにたった今生成を開始しましたので、ネプテューヌ様が受け取ってくれなければ私は無駄死になります」
「どうしてそんなことするの⁉︎ 嫌……そんなの嫌だよ……!」
ネプテューヌ様が泣き出してしまいます。その涙を拭い、頭を撫でながら言います。
「ネプテューヌ様……別れというものは誰と誰の間にも来るものです。友や仲間とも、そしてあなたとネプギア様の間にもです。だから……私で慣れておいてください」
そう、女神様たるもの別れの悲しみというものは乗り越えなければならないのです。こんなタイミングでこんな思いをさせたくはなかったのですがね…
「ギンガ! 嫌だ! ギンガぁ! やめてよぉ! 約束したじゃん! 今度一緒に遊ぼうって!」
泣き噦りながら私に縋りつくネプテューヌ様を優しく抱きしめながら言います。
「ネプテューヌ様、私は貴女やネプギア様に…いえそれだけではなくこれまでプラネテューヌの女神様たちに仕え続けることができて幸せでした。願わくば、生まれ変わったらまた貴女に仕えたいです」
もっと沢山の言葉をかけたかったのですが、これ以上は私の想いが呪いになりかねないのでやめておきましょう。
「ギンガ……私……私…っ! ねぷぅぅぅ!」
ばちぃいん、とネプテューヌ様が自身の手で自身の頬をひっぱたきました。
「女神補佐官のギンガが覚悟を決めてるのに、女神の私が覚悟を決めないでどうするのさ!」
「ネプテューヌ様……」
「守ってみせるよ……この世界を、みんなの未来を! そのために……ギンガの命、貰うね!」
完全に覚悟を決めた表情……それでこそネプテューヌ様です。さて、私はシェアクリスタルの生成の方に集中しましょう。
*
「その程度かよおばさん! このまま愉快な死体にしてやるよ!」
「ぐぁあああああ……っ! まだだ!」
「苦しむ時間が増えるだけなのに粘るわねえ! それに、あんたって女神どもの敵なんじゃないの?」
「敵さ! だが何故だろうな! 自分でもなぜこんなことをしているかわからん!」
「はぁ⁉︎ ボケんのも大概しとけクソババア!」
*
シェアクリスタルの生成が進み、私の身体の消滅が始まりました。ネプテューヌ様のためにこの命を捧げられるのならば本望です。何も悔いはありません。
「さあネプテューヌ様! 私の力と想い……受け取ってください!」
ついに完成したシェアクリスタルをネプテューヌ様に手渡します。シェアクリスタルを手放すのと共に私の身体も消えていきます。ネプテューヌ様の変身を見届けられそうにないのが唯一の心残りですかね……
「ギンガ……変身!」
ネプテューヌ様……私の心は……いつもあなたのおそばに……
「変身……完了……! 女神の……いえ、私とギンガの力、見せてあげるわ!」
ギンガ、プロフィール
身長 182㎝
髪の色 銀
好きな食べ物 ナス 料理が下手だった初代プラネテューヌの女神が作った青色の卵焼き
趣味 散歩 女神様について考える
特技 家事全般
次回、最終回です。