-アイエフとの出会い編-
諜報員って戦闘訓練もやるのね……諜報員になってからの初めての戦闘訓練、少し緊張するわ。
訓練の指導してくれるのはプラネテューヌの女神補佐官か……どんな人なんだろう? ネプ子やイストワール様は式典みたいなイベントで見ることが多いけど、女神補佐官は表舞台にはほとんど出てこないし、どんな人だか知らないのよね。ネプ子曰く無駄に良い顔らしいけど。
……ていうか私一人しかいないんだけど⁉︎ そういえば他の諜報員に会ったことないわね……プラネテューヌって人材不足なのかしら?
そんなことを考えていたら女神補佐官が来たようね。
「遅れ……てはいませんけど、待たせてしまったようですね。申し訳ありません。戦闘訓練の指導をさせていただきます、女神補佐官のギンガです。よろしくお願いします」
「あ、アイエフです! よろしくお願いします!」
この人が女神補佐官のギンガって人か。うわぁ……ネプ子が言ってた通り良い顔……
「さて、早速ですがアイエフさんがどれぐらい戦えるのか見させてもらいますね」
「え?」
「プラネテューヌには衛兵はまだしも、諜報員は人材不足なのはご覧の通りでご存知だと思いますので、その分アイエフさんにはしっかりと指導したいのです。だから、まずはどれくらい戦えるのか見たいんですよね」
「今すぐ……ですか?」
「はい、どこからでもかかってきてください。手加減とかはしないでくださいね」
当然といえば当然だけど甘く見られてるわね。私、プラネテューヌではネプ子の次くらいに強い自信あるのよ! それを見せてあげようじゃな……
……隙、どこ? 何で突っ立ってるだけなのにどこにも隙が見当たらないの⁉︎ 何この人……
でも、隙がないなら、私のAGIの高さを活かした高速戦闘で翻弄してやるわ!
「ほぅ、中々速いですね」
「……っ!」
完全に私の動きを見てから対応してきた……! 嘘でしょ、私よりAGIが上だってこと……?
だったら、対応できなくなるまで畳み掛ける!
「はぁああっ!」
(……なるほど)
顔色ひとつ変えずに全部対応してくるなんて……こうなったら本気で行くわ!
「『クロスエッジ』!」
技を使う! 訓練用のゴム製の武器だから当たっても大丈夫でしょ!
「良い技です」
何事もなかったかのように受け止められた……! こうなったら……魔法でどう⁉︎
「『魔界粧・轟炎』!」
(……魔法も使えるのですか、とりあえず火は危ないので適当に水魔法で消化しておきますか)
あ、この人魔法も使えるのね。私の魔法が簡単に消されちゃった。うん、これもう無理ね。今の私じゃこの人には何しても勝てないわ。こんな無理ゲーを確信するのなんて、変身したネプ子と戦った時以来だわ……
「……ここまでにしましょう。よく分かりました」
はぁ、全然良いとこなかった……自信なくしてきた。こんなんで諜報員続けていけるかしら……
「中々良かったですよ」
「え?」
「戦闘力に関しては申し分ないです」
「けど、私何もできてなかったじゃないですか……」
「まぁ、私とあなたでは戦闘の経験値が数千倍ぐらい違いますし、ゲイムギョウ界で私に勝てるのは女神様ぐらいしかいませんから」
「……」
「アイエフさんならもっと強くなれますよ。私と共に戦えるぐらい」
多分この人はお世辞で言ってるわけじゃない。それがわかったから少し自信を取り戻してきた。でも、私が思い上がっていたのも事実。この人にもっと近づけるように強くなりたい。
「……ん? アイエフさん……アイ……あっ!」
「どうかしたんですか?」
「あなたがネプテューヌ様の親友の『あいちゃん』ですか?」
「え、あ、そうですけど」
「ふふ、なるほど、ネプテューヌ様は良い友をお持ちのようです。いつもネプテューヌ様からあいちゃんのことは聞いています。これからよろしくお願いしますね、あいちゃん」
「あいちゃん⁉︎」
「ネプテューヌ様がそう呼んでいますし、可愛らしい響きなので私もそう呼んだのですが、嫌でしたか……?」
「いえ! あいちゃんでいいです!」
その良い顔でしょんぼりするのは卑怯よ! なるほど、ネプ子の言う『無駄に良い顔』の『無駄』ってそういうことなのね!
なんかこのやりとりだけでこの人と仲が良くなった気がするわね。ネプ子のおかげかしら? ……決めた! 私はこの人に習おう! この人について行くわ!
「これからも指導お願いします、師匠!」
「……し、師匠?」
「はい」
「あの、その呼び方は……少し……」
「なら師匠があいちゃんって呼ぶのをやめてくれたらやめます」
「え? ……あー……じゃあ師匠でいいです」
ええー……
-コンパへのお料理講習編-
「……どうですかギンガさん?」
「うーむ、火を通しすぎですかね。プリンのカラメルソースは加熱時間が1秒違うだけで世界が変わると言いますし」
「ショックです……」
「いえ、それでも良いものにはなると思いますよ」
「ギンガさんってとってもお料理が上手ですよね。何でそんなに上手なんですか?」
「料理をできるようになろうと思ったきっかけは……初代のプラネテューヌの女神様の料理がクソ不味かったからですかね。食材への冒涜レベルで料理がヘッタクソだったので、これは私が作るしかないな、と」
「そうだったんですか……」
「そういうわけで作りだして、同じものばかり作るのもつまらないのでレパートリーを増やしてみて、仕事があまりない期間はプロのシェフに弟子入りしたりして、今に至るというわけです」
「……思ってたよりギンガさんの料理にかける情熱かすごかったです」
「そうですね……弟子入りした店の料理長が引き起こした連帯食戟に巻き込まれたり、同じ値段でのステーキデスマッチをやったり、グルメ界に行ったり……私にとって料理とは第二の戦場のようなものでした」
「壮絶すぎです……」
「あ、今の全部嘘ですからね」
「……怒ってもいいですか?」
「ごめんなさい」
「じゃあ昔のプラネテューヌの女神様の料理が下手だったっていうのは……」
「あ、それはマジです。クッッッッソ下手でした」
「そ、そうですか」
「……けど、今となってはそのクソ不味いゴミみたいな料理をふと食べたくなってしまうものなんですよね」
「……(く、クソ不味いゴミみたいな料理……逆に気になるです……)」
「さて、仕上げに入りましょうか」
「はいです!」
-イストワールと二人きりの夜編-
「ラステイションでお泊り会だよ!」
「全く……女神とあろう者がそんなことではしゃいでるんじゃないわよ」
(お姉ちゃんがすっごく楽しみに準備してたことは黙っておこう……)
「ユニちゃん! ユニちゃん! 一緒に寝よ!」
「何言ってるのさネプギア。今夜は朝までゲーム大会だよ! 寝てる時間なんかないよ!」
「えぇ⁉︎ ……まぁそれはそれで楽しそうだからいいか」
「夜更かしは健康に悪いのよ? ちゃんと寝た方がいいわ」
「ふ〜ん、ノワールってばわたしたちに負けるのが怖いんだ〜?」
(うわ、安い挑発。流石にこんなのに乗るお姉ちゃんじゃ……)
「そんなわけないでしょ! いいわ、かかってきなさいネプテューヌ!」
(えぇ……)
「よーし、ゲーム機のセッティングもできたし、早速始め……る前にちょっと電話していい?」
「電話?」
「ほら、ギンガがわたしがいなくて寂しがってるかもしれないからさ。ちゃんとわたしの声を聞かせてあげないと」
「考えすぎじゃないの? って思ったけどあながち間違いではなさそうね……」
「さてさて……もしもしギンガ?」
『あ、ネプテューヌ様? どういったご用件でしょ…………おい! イストワール! 不利だからって一時停止解除して棒立ちの俺のキャラをサンドバックにするな! ずりぃぞ! 名付けてずるいーすんだ! …………失礼しました、ええと今立ち込んでおりまして、落ち着いたら必ず折り返しかけ直しますので…………おい! それ即死コンじゃねえか! そんな勝ち方して嬉しいのかよ⁉︎ …………申し訳ありません! 切りますね! ………イストワール‼︎‼︎』
「え⁉︎ ちょっ! ギンガ⁉︎ ……切れちゃった……」
「どうしたんですかネプテューヌさん?」
「ギンガはどうだったの?」
「……いーすんとめっちゃ楽しそうにゲームしてた」
「いーすんさんとギンガさんって二人きりの時は意外と子供っぽくはしゃぎますよね」
「…………むぅ〜〜っ!」
「ちょっとネプテューヌ! 急に変身なんかしてどうしたのよ⁉︎」
「少し待っててちょうだいみんな。私はちょっとプラネテューヌに戻って女神補佐官を教育してくるから。私と遊んでる時より楽しそうにしてて……許せない! 誰が一番か思い知らせてあげるわ!」
「やめなさい! そんなくだらないことで変身なんかするんじゃないわよ!」
「離してノワール! あんなにはしゃいでるギンガなんて私見たことないのに!」
「あーもう! ユニ! ネプギア! 手伝って!」
「うん!」「はい!」
「大人しくしなさいネプテューヌ! 三人に勝てるわけないでしょう!」
「いや私は勝つわ私は!」
(結局お姉ちゃんを抑え込むのに朝までかかりました……けど、ちゃんと抑えていたのは最初の方だけ途中からベットの上を転がりまわったり枕を投げ合ったりでそれはそれで楽しかったお泊まり会でした。またやりたいなぁ)