紫の星を紡ぐ銀糸   作:烊々

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今よりもずっと昔のプラネテューヌで、まだ何者でもなかった彼が、何者かになるおはなし。

幕間の回想シリーズです。会話文のみの回想で本編とはあまり関係がなく、オリキャラ同士の会話が続くだけで本編以上に人を分ける内容になっているので、読み飛ばしても大丈夫なため初投稿です。




俺の名前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離しやがれ! クソ! 殺すぞ!」

 

「それができないから今私に捕まっているんでしょう? どうして私を狙ったのかしら?あまりにも幼いし、他の国からの暗殺者……ってわけでもなさそうだけど」

 

「あ⁉ てめえが金持ってそうだったからぶっ殺して奪えば久しぶりにまともな飯が食えると思ったんだよ!」

 

「……」

 

「俺を殺すつもりか⁉ ああそうか! だったら早く殺せよ! 殺そうとしたんだ! 殺される覚悟はできてんだよ! 失敗したからあとは飢えて死ぬだけだしな! 殺されてもまた生まれ変わって今度こそぶっ殺してやるからな‼」

 

「もう、殺す殺すうるさいわね、見た感じ身寄りもなさそうだし、教会に連れて帰りましょう」

 

「おい! どこ連れてくんだよ! 離せよ!」

 

「大人しくしててちょうだい」ぺしっ

 

「ぐぇっ」

 

「安心しなさい、峰打ちよ」

 

 

 

 

 

*

 

 

「おい! どこだよここ! 俺をどうするつもりだ!」

 

「はぁ…目覚めて早々うるさいわね、とりあえずは……ご飯の前にお風呂かしらね」

 

「あ⁉ おいやめろ! 離せよ!」

 

「もう、じっとしてて、服を着たままだと身体を洗えないでしょう?」

 

「……自分でやれるから離せ」

 

「いい子ね、でもダメよ。一人じゃちゃんと洗えないわ」

 

「ちょ、何でてめえも脱いでんだよ!」

 

「服を着ながらじゃお風呂入れないじゃない」

 

「そういうこと言ってんじゃねえんだよ!」

 

「あら、照れてるの? 可愛いわね」

 

「あーうぜえもう好きにしろ……いや前は自分で洗うからやめろ! やっぱ好きにすんな!」

 

 

 

 

 

*

 

 

「さっきは汚れていてわからなかったけど、あなた意外と可愛い顔してるじゃない」

 

「うるせえな」

 

「髪も綺麗な銀色ね」

 

「……」

 

「目も綺麗だわ……まるで星空のようね」

 

「ジロジロ見んじゃねーよ」

 

「言葉使いがとても悪いけど、それは少しずつ直していくしかないわね」

 

「あん?」

 

「とりあえずご飯にしましょう」

 

「おい」

 

「なぁに?」

 

「なんで俺に優しくすんだよ……風呂に飯まで……俺はてめえのこと殺そうとしたんだぞ?頭おかしいんじゃねえの?」

 

「殺そうとした……? ふふ……無理よ、あなたには私は殺せないわ」

 

「あ?」

 

「あんなの、小さな子供にじゃれつかれたようなものよ」

 

「ちっ」

 

「ねえ、ずっとあんなことして生きてきたの?」

 

「人殺そうしたのは初めてだよ」

 

「でしょうね、明らかに慣れてなかったもの」

 

「…腹減ってた……これ以上何も食わねえと死ぬってぐらい……だから人殺して奪おうとした」

 

「殺そうした相手が私でよかったわね。その時誰かを殺してたら、あなたはもう後戻りできなくなってたかもしれないわ。……けど、あなたがそんな生き方をしてこなきゃいけなかったのは私のせいね…」

 

「……? なんでだよ? てかてめ…あんた何もんなんだ? なんかこの家すげえでけえし」

 

「そんなことも知らないのね……」

 

「?」

 

「私は○○。この国、プラネテューヌの女神よ」

 

「メガミ? なんだそれ?」

 

「そこからなのね……」

 

 

 

 

 

*

 

 

「ここがあなたの部屋よ」

 

「は?」

 

「今日からあなたはここで暮らすのよ」

 

「は?」

 

「わからないことがあればすぐに聞いてちょうだい」

 

「何もかもわかんねえよ」

 

「教会なんてものをノリで作ったはいいんだけど、信者はいてもまだ教会員が誰もいなくて、広すぎて少し寂しいのよ」

 

「まぁ、寝床があんのはいいけどよ」

 

「そう……とりあえず今日はもう遅いわ、早く寝なさい」

 

「けっ」

 

 

 

 

 

*

 

 

「寝てやがんな…油断しやがって……死ね! ……⁉ 嘘だろ⁉ ナイフが刺さんね⁉ これがメガミ……人じゃねえってことなのか……? うわっ! 離せ! 寝ぼけてんじゃねえ! おきろ、この! 寝てるくせになんて力だよ! くそっ! 離せーーーー!」

 

 

 

 

 

*

 

 

「目が覚めたらあなたを抱きしめていたのは驚いたわ」

 

「……」

 

「けど久しぶりに気持ちよく眠れた気がするの。あなたのおかげね」

 

「……なぁ」

 

「何かしら?」

 

「昨日寝てるあんたをあのナイフで殺そうとしたんだけどよ」

 

「あー、あの転がってる折れたナイフってそういうことだったのね」

 

「俺じゃあんたを殺せねえってのは本当だったんだな」

 

「そうよ」

 

「……殺されそうになったんだぞ? 怒んねえの?」

 

「何もされてないのと一緒だから怒る必要なんてないわ。けどレディの寝込みを襲うのはよくないわね。ていうか失敗したなら黙っていればよかったのに」

 

「あんたに聞きたいことができたから……俺なりのイジメってやつ?」

 

「ケジメね。聞きたいことって何?」

 

「教えてくれ、メガミってなんだ? キョーカイってなんだ? あんた人じゃねーのか?」

 

「いいわ、教えてあげる。その代わり……私の言うことをちゃんと聞くこと」

 

「はぁ? ……まぁいいか、わかった」

 

「そういえば聞いていなかったけど、あなた名前は?」

 

「んなもんねえよ」

 

「ないって……」

 

「ねえもんはねえ」

 

「なら、私がつけてあげる」

 

「は?」

 

「そうねえ……うーん……あ!」

 

「?」

 

「『ギンガ』っていうのはどう? あなたのその銀色の髪とまるで星空のような綺麗な眼を見て思いついたの」

 

「んー」

 

「嫌かしら?」

 

「いや、悪くねえ、なんかかっこいいし」

 

「じゃあ、ギンガ、あなたには色々と勉強してもらおうかしらね」

 

「勉強?」

 

「女神や教会だけじゃなくてこの世界の色々なことについてよ」

 

 

 

 

 

*

 

 

「おい、飯できたぞ」

 

「ありがとう。あら美味しそうね」

 

「ん」

 

「美味しいわ。料理、上手になったわね」

 

「あんたが下手すぎんだよ。何をどうやったら青い卵焼きができんだよ」

 

「でも前は美味しそうに食べてたじゃない」

 

「まともな飯なんて久しぶりだったから食えばなんでも美味かったんだよ。今思えばまともじゃねえけどな」

 

「……そう」

 

「けど今は」

 

「?」

 

「あんたのおかげで飯に困らねえ。寝るとこもだ。勉強ってのも少し面倒だけど悪くねえ。だからよ、その、あ、ありがとな」

 

「!」

 

「二度は言わねえぞ……ってうわ! なんだよいきなり! おい! やめろ! 離せ!」

 

「だーめ」

 

「絞め殺す気か! 俺が何したってんだよ」

 

「嬉しいことを言ってくれたわ」

 

「はぁ?」

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「あの時ナイフが折れるぐらいの力で刺したってことよね?」

 

「あー、あんたと始めて会った日の夜の話か? そういや謝ってなかったな。悪かった」

 

「ちゃんと謝れたのは偉いけど、責めようと思って言ったんじゃないの。あなた見どころあるわよ。強くなれそう、私が直々に鍛えてあげる」

 

「?」

 

「ゆくゆくは私と一緒に戦えるぐらい……強くなってもらおうかしらね」

 

「あんたと? 無理だろ」

 

「いいや、あなたならなれるわ」

 

 

 

 

 

*

 

 

「これ書類。あと、言われたクエストやってきたぞ」

 

「ありがとう」

 

「明日は空いてんだろ? また稽古つけてくれよ」

 

「いいわよ」

 

「なんだよニヤニヤしやがって」

 

「別に、色々と手際が良くなったわね」

 

「メガミサマの教え方が良かったんだろうよ」

 

「もう、褒めても何も出ないわよ」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「俺が少し仕事すりゃメガミサマも楽できんだろ?」

 

「……なんていうか怖いぐらい良い子になったわね」

 

「良い子? これぐらい普通じゃね?」

 

「そうだわ、ギンガ、正式に私の部下にならない?」

 

「もう似たようなもんだろ」

 

「正式にってことよ、私の仕事を今以上に本格的に手伝ってもらいたいの」

 

「俺はメガミサマに生かされてんだ。拒否なんかできねえよ」

 

「私が強引にさせるのとあなたが決めるのでは違うわ」

 

「断ったら強引にやらせる気だったのかよ」

 

「そうだけど?」

 

「はぁ……まぁやるよ。出来ること増やしてえし」

 

「嬉しいわ。……じゃあ今まで避けてきたけれど……」

 

「ん?」

 

「言葉使いを正すしかないわね」

 

「おう」

 

「おうじゃなくてはい」

 

「ハイ」

 

「私と二人きりの時はいいけれど、これから公の場に出ることも増えるだろうからちゃんとしてちょうだいね。それに私の部下として仕事する以上、仕事中は一人称も『俺』じゃなくて『私』か最低でも『僕』にしなさい」

 

「えー」

 

「えー、じゃないわよ」

 

「めんどくせえ……けどやるって決めたからなぁ……『僕』……はなんかちげえな、『私』にするわ……します?」

 

「私と二人きりの時は正さなくていいわ。それと、『私』の方を選ぶなんて意外だったわね」

 

「なんかそっちの方がいいと思ったんだよな。メガミサマがそうだし」

 

「……そう」

 

「なにニヤニヤしてんだ気持ち悪……痛っ! 殴るこたねえだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これの続きはまた本編のキリがいいところでやります。
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