轟沈しましたが悪運はあったようです(大井になりました) 作:Toygun
驚異的な身体能力を誇るはずなのに、一部駆逐艦は妙に子供っぽい動きをすることが多い。現状の電を見てみよう。手を振り回すように不規則に振り、よたよたとバランスが取りにくい子供の様に、その身体能力を使わずに歩いたり走ったりする個体も大井、もとい多いのだ。トテトテと歩いたというか走ると大井の背にひっついてみたり、天龍の正面から突っ込んでみたりとまあガチで子供のような振る舞いを、特に元タウイタウイ第3の電はする。
「あんだ?」
なお、その標準より大きな胸に突っ込んだものの、いきなり苦い物でも食べたかのような顔をして離れるのだが。
「ああ、わりい、さっき一服してきたところでよ」
平然とそんなことを許す天龍だった。本棟そば、することもなく散歩をしている状況だった。
「まーたこの子は人様の匂いを嗅いで」
「うちの大井は逆にこれが好きとか言いやがるんだよなぁ」
電は煙草がダメのようだが、もう一人の「わたし」は好きらしい、って。
「ちょっと天龍さん、あんまりそういうの、この子の前で言わないでもらえます?」
あんまり聞きたくないけど、この人、あっちの大井と寝てる?
「その程度で安心できるならいいんじゃね?」
ぽんぽんとこっちよりも豊かな胸をたたく天龍。
「その程度で済まないから言ってるんですよ」
この間は加賀さんや榛名さんに突っ込んでいって猫のように首から摘み上げられていたし、ほんとわたしで止まってるうちで留めたい。流石にあそこまでしたらわたしとしても逃がしたくはないし。やっぱり男がいいと言うなら身を引くのも仕方ないが、あれだけ人の唇を弄んでおいて、他の女に目移りされると腹が立つ。まあ自分からしていないというのは卑怯なやり方だと思うが、電の見た目でわたしから手を出すのもなんというか、わたしのタガがどこへ外れるか分からなくて怖い。
「んー、そういうことならなぁ。ああ、もう一人のオレにはやるなよ、あっちは確実に拳落としてくるからな」
電に対して注意にならない注意をする彼女に、追加で文句を言うが、
「そうは言ってもオレから言ってもというのもあるし、ここの特殊事情を考えてもあまり強くは言えねえしな。やっちゃいけない相手にはやるなまでしか」
と言ったところで言葉を止める。
「加賀と榛名、鳳翔さん、もう一人の大井、あとゴーヤにはやるな。特に加賀と榛名はパニくって暴れると厄介だしな」
「この子、加賀さんと榛名さんに突っ込んでったんだけど」
「あの二人は頼むから止めてくれ、どこで暴発するか…ああ、それで」
思い当たる節でもあったのか遠い目をする天龍。興味がないと言えば嘘になるが聞きたくない話な気がする。
「いっそわたしが丸々抱え込んだ方がいい?」
「なんだよ、手を出してたんじゃないのかよ」
「あのさ、色々好きにはさせてるけど、電にわたしから手を出したら完全にアウトじゃない?」
「ああ、うん。外見じゃそうなるか」
「あとね、たまにされる呼び方からすると」
「ダメです、言っちゃダメなのです!」
「…何て呼ばれるか言わないけど、それからすると絶対にわたしから手を出すのはダメって感じなのよね。電の方もこの子の事をそう呼んでもいいとか言ってくれたけどさ」
真っ赤な顔の電に名詞を出すのは止めたが、この天龍ならもう気付いてると思う。
「大体分かるがよ、随分と甘えさせてんだな。それとお前が甘えるとガチでやばくね?」
「だからわたしからは手を…ちょっと何よ」
後ろから電に抱き着かれる。服越しだがさわさわと両手がお腹のあたりを行ったり来たりしていて、これは制裁案件だろうとの意識が出てくる。
「電にもっと甘えていいのですよ?あと手を出してくれないのはずるいのです」
この馬鹿、という感想しか出ない。
「わたしがずるいのは分かり切った事でしょうが。あとさ、あんた若いを通り越してまだ幼いの範囲なんだから、わたしみたいな半端者の相手なんかしてないで、男相手の誘い方とか今のうちに覚えときなさいって」
「それこそ今から覚えるのが危ないのです。「提督」に「きずもの」にしてもらった方が安泰なのです」
「あー、ダメだこれ。ガチで極まってんぞ」
電の物言いに、天龍が頭を押さえて聞きたくないことを口にした。
「事故が起きない内にお前がしてやれ」
「事故って何よ」
「どっちかがぽっと出にパクッといかれて余計拗れるやつ」
艦娘しかいないのにNTRと申すか。
「所属人員の半分がろくでもない所から異動してきた連中で、まともに愛されたい、愛したいって奴等だぞ」
「愛されたいけど満たされない、てガキ放置したら、トチ狂う奴が出ねえとも限らねえ」
「だからよ、丸飲みにしちまえ。そんな顔でオレを睨んでねえでさ」
そういうと天龍はわたしに寄って、わたしの目元を指で拭う。
「娘に手を出す「おかーさん」がいるか!」
きっとへの字に曲がったままの口から、どうにか絞り出した言葉は、所詮はやせ我慢。
「娘でも妹でもねえ。お前を欲しがってるそいつはな、ただもう一回会いたい、て思ってた奴らの塊の一つだ。親子ごっこは「ごっこ」に留めとけ」
-そいつはお前の命令ひとつで、どこにだって飛び込んで行くんだぜ
そういうと天龍は本棟内に歩いて行ってしまった。
「電は、言いましたよ。大井さんを一人にしないって」
背中の電の言葉に、何も答えられなかった。
後書き
表のこっちでおかーさん言うてるけど裏を追加したんで。流石にブチ切れ案件発生したという事でその辺の態度豹変はご容赦を。大分感覚で書いてますのでそういう矛盾と豹変は今後も発生しそうだけど。