轟沈しましたが悪運はあったようです(大井になりました)   作:Toygun

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16.後日談4 風呂

 ここ、離島ってこと以外は条件いい?午後4時、個人的には大分早い時間に大浴場を電と二人占めにする。ゆっくりと大きな湯船でくつろいでいると、体を洗い終わった電が犬かきのような動きで寄ってきた。

 

「いい加減しつこいわよ」

 

あごを胸に割り込ませるように、電が抱き着いてわたしの顔を見上げている。この間からはタガだけでなくネジが粗方外れて、わたしに甘えてくる。代わりに北上さん相手には犬の様に威嚇している始末だが。

 

「よう、邪魔するぜ」

 

電の好きにさせていたら、ここの責任者の天龍が入ってきた。ふと彼女が視線をこちらに向けると、まあそうなるか、と呟く。

 

「そもそもえらく懐かれてる感じはあったが、焚き付けすぎたか?で、首尾はどうよ」

 

「その下品な物言いをやムゥ」

 

いきなり真正面に浮き上がった電に唇をふさがれる。首に回された腕でがっちり貼り付かれたため、慌てて抱えて湯船から上がる。

 

「さむいのです」

 

いきなり温度差に、電が唇を離して文句を言うが、

 

「共同浴場の湯船で仕掛けるな!お湯が汚れるでしょうが!」

 

「汚れるのです?」

 

「わたし、そんな薄情に見える?愛しいあんたの口づけで、濡れないような鈍感扱いはちょっと傷つくわ」

 

「うぇ、あの、大井さ「電とだから濡れてお湯が汚れちゃうのよ?」」

 

にまにまと笑いながら畳み掛けた。がっちり抱えたままの電の体がぬくい。抱き心地はジャストフィットなのだが、ベッドだと人間湯タンポにとどまってくれないのがなぁ(ここの気候だと暑いのもあるし)。

 

「浴場で欲情するのも節度を守ってくれりゃ目をつぶるが、湯船は不許可だな」

 

「それ、いいの?」

 

電を抱えて天龍の隣に腰を下ろすと、会話を続ける。湯冷めは嫌なので少しお湯を浴びながら。

 

「おおっぴらにやられても困るが、勤務以外で時間外だと、まあそういうことだよな。じゃれ合いくらいは黙認する具合だ」

 

「自分もその中に入っていると」

 

この間の鳳翔さんとの会話で、少し注視してたがこのアマ、色んな艦娘とまあ「深い仲」になってる。筆頭で加賀と榛名、水着でうろつく潜水艦勢、いきなり飛びつく島風に、生真面目に見えて急に服のすそを掴んでる吹雪、変に目つきの悪い最初にあった方の吹雪、時折どなってる瑞鶴に、ガチで壁ドン決めてた龍田。きっついのが「北上さんたち」と乳繰り合ってる筈の(もう一人の)わたしと、わたしの知ってる方の北上さんまでがこの天龍に色目を使っているように見えることだ。

 

「良く見てんなぁ」

 

ついつい指折り数えてしまったら、大体近い数だと同義の返事をされてしまった。

 

「まあたいしたことじゃねえよ。おままごとみたいな・・・みたいな・・・ああ、一部違うか」

 

レズハーレムと申すか。

 

「今から転属頼んでも手遅れだし…この子の矯正は無理っぽいしなぁ」

 

なんというか、わたしが人恋しくなりすぎてるというのもある。

 

「教育にわりいのは認めるけどよ、申請されても通らねえぞ」

 

どっちにせよここが避難所だから、ここから先に避難させる先などないとのことだ。

 

「こっから異動だともう大丈夫ですって意味になっちまう。経過観察のお前らがそうなるわけねえし、異動出来たらまた問答無用で戦争に飛び込むだけだ」

 

それが仕事であるのは確かだけどな、ここならまだ融通が利くぜ、と彼女は言葉を続ける。

 

「ここなら、大井さんといられます?」

 

電の問いに天龍はおう、と答えた。体を洗い終わったのか、天龍は湯船の方に歩いて行く。

 

「だからしばらくは安心してな。わかったら、湯冷めしないうちに部屋に戻れ」

 

 

 

 

 

宿舎にて。明確な区切りがある訳ではなく、艦娘同士の関係性で大体部屋が決まるのが小規模鎮守府では多い。敷地の関係上色々と変則的に作られたここの宿舎で、二人の北上、先任の大井は大部屋を三人で割り当てられていた。

 

「ねー、わたし」

 

「なにさ」

 

先日の錯乱騒ぎで診察後、半謹慎に近い北上に、もう一人の北上(半男性艦娘)が声をかける。少し楽しそうな表情を浮かべていて、大井としては良くない感じを受けた。前に北上が二人してあんな顔をしていたときは、ノンストップで愛されて腰が抜けて出撃も出来なかった。緩い天龍の雷が落ちる程である。

 

「あっちの大井っちさあ、落として来ようか?」

 

声を掛けられて、ぐりんと音がしそうなくらいに急に北上がそちらを向く。

 

「何のつもり」

 

「そりゃこっちの台詞だよ。欲しいのに我慢してるの丸分かりだし」

 

「北上さん…」

 

不安になって大井は、二人の座るベッドに上がると間にはいる。双方の裾を掴む大井を一瞥すると、計画を持ち掛けた北上(男)が問いを続けた。

 

「わたしさ、まだ言ってないこと、あるでしょ」

 

「北上さん?」

 

二人の問いに、鬱々とした表情で通常の北上は先延ばしの返事をする。

 

「ごめん、今さら思い出したことだけど、今は」

 

「うん、それは待つよ。だから当たりをつける程度にする」

 

答えたくない、そんな返答は分かっていたように北上(男)は自重はする、と宣言した。

 

「北上さん、わたしじゃ足りませんか」

 

「…ごめん、不安がらせちゃったか」

 

北上(男)は大井にやさしく口づけをすると、言葉を紡ぐ。

 

「「わたし」の未練を放っておくのも薄情だしねー」

 

あくまで自分たち3人のためと言うスタンス、かと思いきや。

 

「あとは二人目もまともな大井っちでさ、あわよくばって下心もあるかな」

 

「あっちのわたしで遊びたいと?」

 

大井も言葉がきつくなるし、気分が沈んでる方の北上も、ぎろりとお軽い方の自身をにらむ。

 

「遊びでいいならここに来てないよ。こっちに引き込めたら楽しそうじゃん」

 

「立て続けに当たりを引いた感じだし、ちょっとだけ欲張ってみたいかなって」

 

影を含んだ北上(男)の表情に、二人は睨むのをやめる。女性-大井経験のひどかった北上なのだ、色々ひどい経験をしてきた他の二人も、その心情をある程度理解した、が。

 

「無理やりは当然だめとして、抜け駆けも無しだよ」

 

「そりゃあね」

 

「どうだかね」

 

「ちょっと、わたしってそんなに信用ない?」

 

「今のわたしを見りゃ信用できるわけないじゃん」

 

「あー、自分を信じられないからわたしも信用に値しないって重症じゃん」

 

「沈んだ大井っちを全部ごちゃ混ぜにしてたんだよ。あの大井っちをわたしたちとごっちゃにして先走らない自信ある?」

 

「…ごめん、他の子にされた意地悪を全部返したいって今思った」

 

どうやら北上(男)も、逸物以外に腹に一物あることに自分で気付いたようだ。ここで大井が口を挟む。

 

「あの、搾っちゃえばいいんじゃないですか」

 

普段はあまり下品な言い回しをしない大井が、急にそんな発言をしたのである、当然ながら、

 

「あ、ごめん、落としに行くどころじゃなくなった」

 

前を押さえて北上(男)がそう口にする。

 

「悪さ出来ない程度に搾り取れば、まあ抜け駆けは出来ないかー」

 

「だから二人して普段しないような言い方やめてよ!ほんと動けなくなるから!」

 

二人の美少女にご奉仕宣言されたわけで、モノがついてる北上としては動けなくなるのも当然だった。

 

「時間も時間だし、全部飲んじゃった方がいいか」

 

「北上さん、体力ありますから、多分お風呂の途中でもしてあげないとダメそうですよね」

 

「もしかしてわたし言葉責めされてる?!」

 

馬鹿を言い出した罰だとばかりに、北上(男)は二人にジト目で見られるのだった。ただし、「あわよくば家族が増えるよ、やったね」計画は始動したらしい。




 同艦娘ものばかり書いているとこういうシーンで書き手的に自爆同然になる。北上(男)と書いてますが、ほぼ女性的特徴のところで特定部だけ男性になってる「理想的なシーメール」というキャラです。見た目女性なので、女性に声をかけてもあまり相手にされなくて戦後苦労しそうなタイプ。
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