轟沈しましたが悪運はあったようです(大井になりました)   作:Toygun

20 / 22
19.回想

 砲声が響いた時、あまりにも遠すぎたのは覚えてる。戦艦級の一斉射撃で、彼女は沈んでいった。出撃前、他愛ないことを言い合ってたのに。余りにも呆気なかった。

 

『そうか…すまん』

 

提督は、ただそれだけしか言わなかった。采配の間違い?運が悪かった?何が出てくるかなんて、分かりようがない。龍驤が─そう龍驤がいた─龍驤が偵察を飛ばしたって、その後には何かが追加で出てきたりする。ああ、そうだ。間が悪かった。

 

 

 

 

『帰還したか。その、北上。すまん』

 

わたしらを出迎えて、わたしを見て、提督はそう言った。部屋に戻ったら、彼女がいた。分かってる、戦力補充は必要だって。

 

『よろしくお願いします!北上さん!』

『おはようございます!』

『流石です、北上さん!』

 

他の子がいなくなることも増えていた。うざい駆逐艦も、覚える前に居なくなることもあった。

 

『入渠しろ、北上』

 

大井っちは?

 

『大破したまま、お前を出せるわけがないだろう。大井が旗艦を代わってくれる』

 

『もう、中破のまま出撃とか人使いの荒いこと。それじゃ北上さん!資源持ってきますね!』

 

前のあの子みたいに、しつこく寄って来る彼女は、帰って来なかった。

 

 

 

 

『北上ハ、泣いていいネー』

 

泣く?なんでさ。

 

『フレンドが居なくなった、泣くのが当然デスネ』

 

そんなんじゃないよ、大井っちは。友達なんて、ここには。

 

 何人も、沈んだ。わたしは、沈まなかった。違う、沈ませてもらえなかった。

 

『入渠しろ、北上』

 

嫌だ。わたしだけ残るのはもう、ごめんだ。

 

『お前が、金剛が、龍驤がいなければもっと死ぬ』

 

駄目だよ、提督。わたしたちは『沈む』んだ。死ぬなんて言っちゃ駄目だ。

 

 

『すまん』

 

提督が出迎えた時、彼女がいた。

 

『初めまして』

 

ああ、初めましてだね。

 

『あの…あなたも、艦娘ですか?』

 

はは、なにそれ。変わってるね、大井っちは。

 

 

彼女が来てから、少しだけ変わった。

 

『大井、発射管はどうした』

 

『すみません、撃ち尽くしたので、叩き込みました』

 

『大井、その単装砲、何をした』

 

『近かったので、敵兵の顔面にぶち込みました』

 

『連装砲はどうした?』

 

『弾切れだったのを大井さんに持ってかれました』

 

『大井?』

 

『敵機に叩き付けました。ちゃんと持ってきましたよ?』

 

連装砲はぼろぼろだ。また発射管捨ててるし。

 

『むちゃくちゃやな、キミ』

 

『司令官!大井さんになんとか言ってください!碇を取られたのです!』

 

『無手じゃ流石に無理だし。あ、これ』

 

片側が折れた碇に、ぼろぼろの砲が幾つか。

 

『なんか分捕った武器使ってるのいたんで、ぶちのめして取り返しました』

 

『魚雷がないな』

 

また捨てたんだね。

 

消費は少し増えたけど、死ぬ子は少し減ったと思う。でもやっぱり死ぬ。あれ、みんなどうしたの?

 

『宿舎が燃えてしまいまして。工廠で雑魚寝ですよ』

 

『北上もこっち来るネー』

 

うん、膝借りるね。

 

『どうぞ、北上さん』

 

 

『北上、出撃しろ。ここに戻る必要はない』

 

なにそれ。

 

『第3も同様の侵攻を受けている。留まるのは無意味だ』

 

提督はどうするのさ。

 

『人は水の上を歩けん。すまんな、こんな無能で』

 

ああ、そうだね。二度も大井っちを見捨てさせたね。

 

 

 

『これ以上は無理。機関、停止ネ』

 

ごめん。

 

『悪いなぁ、ちょっーと龍驤さん、ついていけそうにないわ』

 

ごめん。

 

『あ』

 

水柱が彼女を包んで。

 

『逃げて』

 

…ごめん。

 

『あの』

 

うるさい。

 

『あの人が』

 

うるさい。

 

『大井さんが』

 

黙れ、お前とわたしをかばったんだぞ!

 

『ごめんなさい』

 

いいから黙ってろ!うざい!

 

 

 

 

人を一杯乗せた船が、襲われていた。

 

『ごめんなさいです。北上さん』

 

ばかやろう、お前、生き残っただろう!彼女の代わりに!

 

『だからなのです』

 

うざくてちっこいのは、独りで突っ込んでいった。

 

 

 

 

「大馬鹿野郎!」

 

まだ、暗かった。なんでか、わたしが真ん中だった。

 

「北上さん?」

 

右隣の大井っちが、わたしを呼ぶ。起こしちゃった。

 

「ごめん、ちょっとやな夢をね」

 

「まあ、あれだけうなされてればね。そういう日もあるよ」

 

なんだよ、「わたし」も起きちゃったか。

 

「で、誰が大馬鹿?」

 

「…電」

 

「ああ、うん納得」

 

「大井っちも」

 

「まあ、そうですね。わたしも、「わたし」も」

 

「金剛も、龍驤も。なにがついて行けないだよ。喰らいついてでもついて来てよ」

 

「提督もさ。水の上は無理とか、言ってないでさあ」

 

両側から、挟まれた。

 

「「わたし」はさ、もうちょっと素直になった方がいいね」

 

「今のままで、いいと思いますよ」

 

素直ってなにさ。

 

「そういう時はさ、「おいていかないで」って言うんだよ」

 

ああ、そっか。

 

「なんだ、わたしが置いていかれたんじゃん」

 

左から、「わたし」が身を寄せてきた。

 

「うん、そう。だからね、置いていったって泣くのはやめよ?」

 

「わたしは、北上さんを置いて行きません」

 

大井っちも、わたしの右腕を抱いてくれる。

 

「ありがと、二人とも」

 

「「どういたしまして」」

 

「わたし」が言葉を続ける。

 

「まだ暗いしさ、また眠ろう?」

 

うん、大丈夫だ。

 

 

 

 

しばらくして、囁かれた。

 

「「わたし」さ、眠れてないよね?」

 

「わたし」こそ、そうじゃん。やっぱり二日ぶっ続けはさ、やばかったよね。

 

「いまになってドキドキしてきた」

 

馬鹿やったら大井っち取られちゃうから、我慢しよ。

 

「あー、そうだねー」

 

今度こそ、わたしたちは眠った。

 

 

 

朝、目覚ましじゃなくて悲鳴で目が覚めた。

 

「あら?」

 

大井っちの顔が間近だ。悲鳴は真横で、うるさい。

 

「ど、どい、て!大井っち!」

 

「あ、すみません、北上さん」

 

寝ぼけて大井っちがわたしらの上に載っかってきたみたいで。「わたし」が怖がってわたしに抱きついてる。

 

「すみません、わたしも、寂しかったみたいです」

 

仕方ないよね。でもまあ、「わたし」は「大井恐怖症」だし、気を付けないと。

 

「そうなんですよねー。それを思うと、ずいぶん悔しくって」

 

悔しい?

 

「北上さんの初めてを、好きに喰い散らかした大井がいるかと思うと」

 

ああ、抱かれた身からすると、そりゃ悔しいや。

 

「でしょう?挙げ句置き土産でこれですよ」

 

うん、とっちめたくなってきた。

 

「この分ですと、今日はお預けっぽいですし」

 

「そうなりそうだけど、ゆっくりやろうか」




 電-3より先にこっちが出来たので投稿。元タウイタウイ第4の北上の背景概略ってとこで。あらすじにもある通り、戦況からくる実質的ブラック。スカイクロラのパロディと、「大馬鹿野郎」はやっぱアーカードからかな、意味は全く違うけど。

 元タウイタウイ第3の電の行動、こう見るとひどいわ。「自分の番」と勝手に突っ走ったけど、描写なしの長門と大和、直近の金剛龍驤大井の行動からすると、学習の成果じゃん、てなる。最初「電が沈んだよ」の一文しかなかったキャラなのに。

 エロだ、悲劇の合間にエロを入れるんだってなるわ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。