轟沈しましたが悪運はあったようです(大井になりました) 作:Toygun
砲声が響いた時、あまりにも遠すぎたのは覚えてる。戦艦級の一斉射撃で、彼女は沈んでいった。出撃前、他愛ないことを言い合ってたのに。余りにも呆気なかった。
『そうか…すまん』
提督は、ただそれだけしか言わなかった。采配の間違い?運が悪かった?何が出てくるかなんて、分かりようがない。龍驤が─そう龍驤がいた─龍驤が偵察を飛ばしたって、その後には何かが追加で出てきたりする。ああ、そうだ。間が悪かった。
『帰還したか。その、北上。すまん』
わたしらを出迎えて、わたしを見て、提督はそう言った。部屋に戻ったら、彼女がいた。分かってる、戦力補充は必要だって。
『よろしくお願いします!北上さん!』
『おはようございます!』
『流石です、北上さん!』
他の子がいなくなることも増えていた。うざい駆逐艦も、覚える前に居なくなることもあった。
『入渠しろ、北上』
大井っちは?
『大破したまま、お前を出せるわけがないだろう。大井が旗艦を代わってくれる』
『もう、中破のまま出撃とか人使いの荒いこと。それじゃ北上さん!資源持ってきますね!』
前のあの子みたいに、しつこく寄って来る彼女は、帰って来なかった。
『北上ハ、泣いていいネー』
泣く?なんでさ。
『フレンドが居なくなった、泣くのが当然デスネ』
そんなんじゃないよ、大井っちは。友達なんて、ここには。
何人も、沈んだ。わたしは、沈まなかった。違う、沈ませてもらえなかった。
『入渠しろ、北上』
嫌だ。わたしだけ残るのはもう、ごめんだ。
『お前が、金剛が、龍驤がいなければもっと死ぬ』
駄目だよ、提督。わたしたちは『沈む』んだ。死ぬなんて言っちゃ駄目だ。
『すまん』
提督が出迎えた時、彼女がいた。
『初めまして』
ああ、初めましてだね。
『あの…あなたも、艦娘ですか?』
はは、なにそれ。変わってるね、大井っちは。
彼女が来てから、少しだけ変わった。
『大井、発射管はどうした』
『すみません、撃ち尽くしたので、叩き込みました』
『大井、その単装砲、何をした』
『近かったので、敵兵の顔面にぶち込みました』
『連装砲はどうした?』
『弾切れだったのを大井さんに持ってかれました』
『大井?』
『敵機に叩き付けました。ちゃんと持ってきましたよ?』
連装砲はぼろぼろだ。また発射管捨ててるし。
『むちゃくちゃやな、キミ』
『司令官!大井さんになんとか言ってください!碇を取られたのです!』
『無手じゃ流石に無理だし。あ、これ』
片側が折れた碇に、ぼろぼろの砲が幾つか。
『なんか分捕った武器使ってるのいたんで、ぶちのめして取り返しました』
『魚雷がないな』
また捨てたんだね。
消費は少し増えたけど、死ぬ子は少し減ったと思う。でもやっぱり死ぬ。あれ、みんなどうしたの?
『宿舎が燃えてしまいまして。工廠で雑魚寝ですよ』
『北上もこっち来るネー』
うん、膝借りるね。
『どうぞ、北上さん』
『北上、出撃しろ。ここに戻る必要はない』
なにそれ。
『第3も同様の侵攻を受けている。留まるのは無意味だ』
提督はどうするのさ。
『人は水の上を歩けん。すまんな、こんな無能で』
ああ、そうだね。二度も大井っちを見捨てさせたね。
『これ以上は無理。機関、停止ネ』
ごめん。
『悪いなぁ、ちょっーと龍驤さん、ついていけそうにないわ』
ごめん。
『あ』
水柱が彼女を包んで。
『逃げて』
…ごめん。
『あの』
うるさい。
『あの人が』
うるさい。
『大井さんが』
黙れ、お前とわたしをかばったんだぞ!
『ごめんなさい』
いいから黙ってろ!うざい!
人を一杯乗せた船が、襲われていた。
『ごめんなさいです。北上さん』
ばかやろう、お前、生き残っただろう!彼女の代わりに!
『だからなのです』
うざくてちっこいのは、独りで突っ込んでいった。
「大馬鹿野郎!」
まだ、暗かった。なんでか、わたしが真ん中だった。
「北上さん?」
右隣の大井っちが、わたしを呼ぶ。起こしちゃった。
「ごめん、ちょっとやな夢をね」
「まあ、あれだけうなされてればね。そういう日もあるよ」
なんだよ、「わたし」も起きちゃったか。
「で、誰が大馬鹿?」
「…電」
「ああ、うん納得」
「大井っちも」
「まあ、そうですね。わたしも、「わたし」も」
「金剛も、龍驤も。なにがついて行けないだよ。喰らいついてでもついて来てよ」
「提督もさ。水の上は無理とか、言ってないでさあ」
両側から、挟まれた。
「「わたし」はさ、もうちょっと素直になった方がいいね」
「今のままで、いいと思いますよ」
素直ってなにさ。
「そういう時はさ、「おいていかないで」って言うんだよ」
ああ、そっか。
「なんだ、わたしが置いていかれたんじゃん」
左から、「わたし」が身を寄せてきた。
「うん、そう。だからね、置いていったって泣くのはやめよ?」
「わたしは、北上さんを置いて行きません」
大井っちも、わたしの右腕を抱いてくれる。
「ありがと、二人とも」
「「どういたしまして」」
「わたし」が言葉を続ける。
「まだ暗いしさ、また眠ろう?」
うん、大丈夫だ。
しばらくして、囁かれた。
「「わたし」さ、眠れてないよね?」
「わたし」こそ、そうじゃん。やっぱり二日ぶっ続けはさ、やばかったよね。
「いまになってドキドキしてきた」
馬鹿やったら大井っち取られちゃうから、我慢しよ。
「あー、そうだねー」
今度こそ、わたしたちは眠った。
朝、目覚ましじゃなくて悲鳴で目が覚めた。
「あら?」
大井っちの顔が間近だ。悲鳴は真横で、うるさい。
「ど、どい、て!大井っち!」
「あ、すみません、北上さん」
寝ぼけて大井っちがわたしらの上に載っかってきたみたいで。「わたし」が怖がってわたしに抱きついてる。
「すみません、わたしも、寂しかったみたいです」
仕方ないよね。でもまあ、「わたし」は「大井恐怖症」だし、気を付けないと。
「そうなんですよねー。それを思うと、ずいぶん悔しくって」
悔しい?
「北上さんの初めてを、好きに喰い散らかした大井がいるかと思うと」
ああ、抱かれた身からすると、そりゃ悔しいや。
「でしょう?挙げ句置き土産でこれですよ」
うん、とっちめたくなってきた。
「この分ですと、今日はお預けっぽいですし」
「そうなりそうだけど、ゆっくりやろうか」
電-3より先にこっちが出来たので投稿。元タウイタウイ第4の北上の背景概略ってとこで。あらすじにもある通り、戦況からくる実質的ブラック。スカイクロラのパロディと、「大馬鹿野郎」はやっぱアーカードからかな、意味は全く違うけど。
元タウイタウイ第3の電の行動、こう見るとひどいわ。「自分の番」と勝手に突っ走ったけど、描写なしの長門と大和、直近の金剛龍驤大井の行動からすると、学習の成果じゃん、てなる。最初「電が沈んだよ」の一文しかなかったキャラなのに。
エロだ、悲劇の合間にエロを入れるんだってなるわ