轟沈しましたが悪運はあったようです(大井になりました)   作:Toygun

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5.宴会

 行って探索して戻ってで13時。妖精は小さいながら人間(艦娘)と移動速度はさして変わらなかったりするのがとんでもない。一応道沿いに道を避けて動いたので時間はかかったそうだ。探索中も敵影は見えず、ただし漂着物の調査のため再度行きたいとのことである。「宴会ダー」と複数が叫んでいるのだが、勘のいいのが艤装を移動させ始めているのでこっちも銃器の弾を抜いて端に寄せておく。ガバメントは弾入れっぱなしだったし、スプリングがヘタると困るし。なにより酒の席で酔って武器を持ち出す可能性がゼロとは言い難いので、事故・刃傷沙汰防止の観点からの武装解除である。昼間からの宴会はどうかというのはあるが、夜間に煌々と明かりを点けると銃撃爆撃待ちの最後の晩餐か?という話になってしまうので仕方ない。最後の襲撃から大分時間は経っていると思うが、呼び戻すような真似は御免こうむる。

 

 さて給湯室だが、居残り組が外部に複数本接続されたプロパンガスを確認したため、ガスコンロ自体は使用可能だと告げられた。また島全体の貯水タンクは破壊されたものの、この施設屋上に設置されたタンクは無事なので、少しの間は給湯器も使用できるとのこと。切れた配管からは高度差のおかげで水が漏れないにしても、なんか色々入って水がダメになっているのではと聞いてみると、水自体は濁りもなかったので切れた配管は塞ぎ、消耗品の中にあった塩素消毒剤を屋上のタンクにぶち込んだそうだ。常温で飲み水にするには大分薬臭い筈なので、現状はシャワーや食器洗い、それといい加減やった方がいい洗濯に使うことにして、飲み水は残存するペットボトルのミネラルウォーターとウォーターサーバーの予備ボトルの物でいいだろうと言われた。ペットボトルは脱出時を考えると数残して置きたいのでウォーターサーバーを電源なしのまま使うか?と思ったら電源なしの常温水モデルなので消耗品にあった殺菌ろ過フィルターと水のボトルを交換したそうだ。古いやつはバケツ類に出しきってランドリールームに置いてきたとか。

 

 食器やら洗ってケトルでお湯やら用意して、さっきまで休んでいた会議室に並べる。妖精たちもまあ適当に見た目はつまみ程度の非常食などを皿に出していく。多分酒は全部飲み切るだろう。見つかった燻製肉も大した量はないし傷む前に全部スライス、どこにあったのか竹串にアウトドア用のコンロ、金網に固形燃料とミニ焼肉かバーベキュー準備万端である。天井をふと見てスプリンクラー類がないのを見ると慌ててあると思われる消火器(給湯室にあった)を探し、会議室の隅に置いて皆で酒を注ぎ合った。

 

「それでは、諸般の事情により日もまだ高いものの、宴会とします。まずは」

 

軽巡というクラスにより押し付けられた挨拶だが、一度押し黙る。水を差したくはないが言わないのもおかしいだろう。

 

「まずは、もういない仲間のために、そして運良くか悪運強くか、今生きているわたしたちに」

 

あとは、そう

 

「明日のために戦い続ける誰かに」 

 

「乾杯」

 

「「「「「カンパーイ!」」」」

 

マグカップのワインを一気に流し込む。ビールよりは強い―そこまでは変質していなかったワインのアルコールで喉が熱を覚える。飲み干したカップを置いたところで複数人で妖精がボトルを運んで器用に次を注いでくれる。今度は少し口に含むと、酸味が強いうえに渋い。そのせいか赤ワインは妖精たちには不評で、缶ビールの消費が早い。電はというとガラスコップに半分ほど注いだワインを少し飲んでは顔をしかめている。変質して酸味が出てしまったのと運んだことで澱が広がってしまったか。ビールはビールで炭酸弱くなってるし喉越し(わたしには分からん)も良くないと何人かが言っている。一人がトコトコとダンボール箱の一つに向かうのを目撃し、摘み上げると輪に戻す。イソプロパノール入りは毒物だ、飲もうとするな!

 

 つまみにビスケットバーを齧りながらチビチビとやる。チョコレートバーは半分(2本)を残して開封し、切ったり砕いたりと小さな塊を口にする感じで皆で食べている。まあ妖精にとってはサイズ的に充分だ。残り2本はというと、わたしたちだけで島から出る時のために取っておくべきだと言われたので従っておく。運よく救助が来た場合はここに残して行っていいだろう。いや、救助に菓子類があったなら代わりにそっちを置いて行くべきで、これはやはり持って行くとするか。電も恐る恐る大きめの欠片に手を伸ばす。口にして甘さにちょっと笑顔になったところで後味に真顔になり、それから口をへの字に曲げ始めてもごもごと口を動かす。腹を決めたのかグラスを手にしたので、そのまま見ているのも意地が悪いかと思いティーポットにバッグを投入するとケトルのお湯を注ぐ。渋いことこの上ないワインでしかめっ面の電の前に空のカップを置くと、こだわりも何もない紅茶を注いだ。

 

「ありがとうなのです」

 

彼女はふーふーと冷ましながら一口含むと、

 

「金剛さんに怒られそうな紅茶です」

 

と言いながらまた笑った。金剛は紅茶にこだわりがあるという事か。そういえば作戦中にちょくちょくティータイムが欲しいと怪しい外国人のような喋りをしていたか?続いて妖精が集まって紅茶を要求してきたので、空き皿の上にそれぞれのカップを置かせる。直接注げとかサイズ的に無理だ。皿の上にこぼしつつもミニチュアのカップに紅茶を注ぐと、皆カップを手に残ったチョコレートバーの欠片に突撃していく。お残しはナシというのはいいのだが大丈夫か?皿の上に残った紅茶も、ビスケットバーに吸わせることで味気なさをどうにかする、という奴が出て思わず感心した。気付けばビールは品切れのようで、呑めりゃいいとばかりに妖精たちもワインにも手を出し始める。ついにはメインディッシュということになっている燻製肉のミニバーベキューが始まる。係の妖精が串に刺した肉をじっくりではなく軽く炙るように焼くと、各員に配っている。うち二人がそれぞれ焼けた肉を持つとこちらにトテトテとやってきた。

 

「ドウゾ」

 

礼を言ってわたしも電もそれを受け取る。妖精たちは戻って係から自分の分を受け取っていた。しばらくぶりの肉を口にすると、記憶の中にある肉類の味と重なるように旨みを感じられた。少しだけ元の肉が堅いか水分が抜け過ぎてしまっているような感じはあったが、肉は肉という味に一息つき、ついワインを呷ってしまったのが運の尽き。

 

「ウ゛ァ゛」

 

人外染みた声を上げる羽目になった。肉には赤ワインとかいった話もあったが流石にこれは違うだろう。横着もいいとこだが空になったマグカップに冷め始めた紅茶を注いで呷るともう一度一息つく。電に声をかけられたのでぬるいけど、と返事をして残りを彼女のカップに注ぎ終わる。肉を食べ終わったらしい先ほどの紅茶党?の妖精たちもまた来たので、鍋敷き代わりの皿の上からケトルを手に持つ―少し軽いし、冷め気味と判断する。

 

「お湯、沸かしてくるから待ってて」

 

 

 戻って来たら電がすっかり出来上がっていた、いやどういうことよ。「前」は多少は飲んでた自分でも飲みにくい代物をどうやって子供に勧めたうえで飲ませた。艦娘は一応成人扱いと本人及び妖精連中が強硬に主張したので仲間外れはどうかと思い従ったが、量飲ませるのは流石になぁ。少し離れて紅茶党の連中に状況を問うが首を縦に横にと振るばかりで要領を得ない。おまけに自分のカップにも紅茶を、といったところで横からワインを注がれる。宴会前は説教をしていた妖精(少尉殿らしい)と班長が抱えた瓶を置いて「マア飲メ」と揃って勧めてくるのでケトルを置くと、今度はこっちこいとばかりに床をバンバンと叩く電。いや火傷のひどかった右腕を雑に振るなって。

 

「ちょっと飲み過ぎじゃない」

 

「子供じゃないのれす」

 

「マア飲メ、ドウセコレデ看板ダ」

 

最後の一本も開いたところだった。少しくらい残しておいても良かったのではと少尉殿に問うが、「コノ状況デギンバイハマズイ」との返事。ギンバイ?と聞き返すと物資のちょろまかしで殴り合いになると艤装の運用効率が落ちるので、飲み切ってしまった方が良いと。そういうことなら仕方ないかとワインを呷るとこれも味はダメダメだった。左から寄りかかってきた電が「もっろ飲むのれす」とろれつの回らない様子で瓶を傾けるので慌ててマグカップを出す、いや注ぐ先は確認しようよ。右手でこっちの右肩に捕まっているのにずるずると姿勢が崩れていくので、仕方なく彼女の腰に左腕をまわして支える。胸部に軽く痛みが走るがもうその程度なので、彼女の包帯も明日には取っ払って平気そうだ。少し飲んでは残った酒を足されるの繰り返しになった上に、妖精が歌い始めた軍歌に電まで加わったのでアウェイ感マシマシである。妖精たちもペースが落ちているのか最後の一本がなかなか減らず、集中的に酒を注がれる。結局ほぼ残りの一本分を飲まされたところでお開きになった。電を含めて酔い潰れた人員(総数不明)多数の中、紅茶党や潰れなかった妖精が片付けに奔走する。正座で座ってしまった上に潰れた彼女をひざまくらで寝かせているので動きようがない。ここまでくると流石に気付いて酔い潰しの主犯たる少尉殿を睨む。

 

「マア、飲ンデ忘レルホウガイイコトモアル」

 

そう言うと彼は何人かの妖精に「歩哨ニ立テ」と命令してからどこかに行ってしまう。陰り気味の日に晒されながらそういう言い方はずるいわ、とわたしは愚痴をこぼした。

 

 

 片付けがほぼ終わりしばらく、会議室の時計の短針も6を指しているので午後6時になるかどうかというところだろう、薄暗いを通り越して大分暗い。起きているのも無駄なので寝る準備をしたいが、せめてお湯で体を拭くくらいはしたいところだ。妖精も同じ考えになったのかお湯を入れたバケツにタオルと、わたし達用らしい着替えを持って来てくれる。

 

「明日ニハ洗濯ト修理ヲシタイノデ制服ヲオ渡シクダサイ」

 

まともに起きそうにもない電も剥いて服を渡せとのご指示でした。妖精たちは気を遣ってか別の部屋にもお湯入りバケツを運んでいる。あっちは身体サイズ的に風呂に入れるのがうらやましい。仕方がないので彼らが退散すると、一緒に持ってきてくれていたライトを自分たちを照らすように転がし、電を脇に横たえて服を脱ぐ。途中彼女の手が何度かこっちのを掴んできて少しやり難かった。続けて彼女の服を引っぺがすのだが、今度はなすがままにされているのはどういうことか。あと制服の上を脱がしたら軽い金属音とともに切れたネックレスのチェーンっぽいものが出てきて、良く見たら襟の右側を弾が掠ったのか部分的に焦げている。首にかけていた何かのチェーンもそれで切られたようだ。どうしたって海上戦の最中ではもう海の底だ、考えるのを止めて全部脱がすと足を投げ出す感じでべたりと座り、電を背から抱えて自分の腹の辺りから下に重ねると、やや熱いお湯で濡らしたタオルで彼女の体を拭き始める。

 

 包帯類は避けて右手と下腕、左腕、少し躊躇したが脇と拭うと、板敷なので少し冷たいだろうが、今度は腰から上を左側におろしてひざの上に彼女の両脚(というかほぼ脛)を載せて足・脚から太ももへと複数回拭く。接触状態から一気に人肌の感触が消えたので彼女の手が腕やももを掴もうとしてきてはいたが。タオルが冷めてきたのでいったん右横に置いたバケツに放り込むと、電を一気に引き戻して横抱きから降ろしたみたいに肩から上を腿の上に置く。いちいちこっちの腹の方を向こうとするのを戻しながら絞ったタオルで顔と手探りで耳の後ろ側、首元などを拭く。そのまま際どい所まではいかない様に胴の前側を拭くと、今度は裏返してまた耳や首の後ろ、背中側と拭き、わたしの腿の上で下を向いた彼女が深呼吸したところで肘を落として終わりとする。

 

「いたいのれす」

 

「いちばんデリケートなところを嗅いだ上に深呼吸をするな!大体起きてるなら動け!」

 

途中途中で薄目を開けているものの、ほぼ脱力状態で酔いが残っているのだと無視していたが、最後のあれは流石に女として許しがたい。一応生前の男性的意識はあるが、ああいうことをされると大井というか艦娘側の意識にシームレスに移るので簡単に制裁方向で手を動かすようになる。電を剥いたのに罪悪感的なものもないのは艦娘生活約1年で雑魚寝上等損傷半裸当たり前で異性を見ているという感覚が行方不明になっているためだ。実質的に男性部分がほぼゼロで前世は男でしたとか告げても相手を混乱させるだけである。とはいえこうもこの子が寄って来るとなると、牽制にトランスジェンダー的な何かだと伝えるべきか?と考えるが、余計にこじれると頭の中で大井が返事をする感じがある。

 

「今度は電がお拭きするのです」

 

「いいから冷える前に服を着なさい」

 

不満とばかりにむー、と唸りながら着替えのシャツにブカブカのショーツを着る彼女を傍目に自分も体を拭く。脇やら胸の下とかも色々気になるので念入りに。自分の体なのだし先程のような所業を防止するため、人前では拭きたくない場所も少し念入りに拭くと大分冷めたお湯にタオルを放り込む。着替えを身に着ける前にわたしの脱いだ服を(まったく油断も隙もありゃしない)、彼女から取り上げると畳んでまとめ、シャツと緩いショーツと言うラフ極まりない服装でドアを少し開けて使ったバケツ類とともに待機していた妖精に渡した。異常ナシとか交代、の声を尻目にドアを閉め、背にひっついてくる彼女を引きずりながらカーテンを―カーテン開けっ放しだったと後悔しながら閉める。

 

「ほら、さっさと寝るわよ」

 

敷いたシーツ・毛布類に横になって毛布をかぶると手元に戻したライトを消した。こっちの腹まで腕を回した電が相変わらず背に引っ付いたままだ。わたしの髪で鼻を刺激されたのかクシュンと小さなくしゃみをする。彼女の腕を解くとぐるりと向きを変える。

 

「ほら、これでいいでしょ」

 

右腕で彼女の頭を抱える様に首元に引き寄せる。こっちを見上げる電を見てから目を閉じると、残る酔いのせいか一気に意識が落ちた。

 




 電のキャラ付け(性癖)がおかしくなっているが、描写自体はセーフのはず。寝落ちパターンと後出し多数のゆっるいサバイバル(笑)。事務用品室の茶菓子も記述後放置のままだし。書いてて女性の外見をしたキャラがいるのはイメージできているが、大井の姿が見えないのが感覚としてネック。
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