轟沈しましたが悪運はあったようです(大井になりました)   作:Toygun

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6.増強

 朝ちゅんとは言わんが寝返りで普通に仰向けになったわたしの上で、ちょいとサイズ感ある胸に顔を埋める彼女の将来に不安を覚える。妙にこっち側的な性格のピンク髪の駆逐艦に揉まれたりと女同士でも過激寄りスキンシップを呼び寄せる胸だ。北上さんもちょくちょく「大人気だね、胸が」とからかってきた。はあ、と返事のしようもなく相槌を打っていたが、「北上さんがお望みでしたら」と胸を差し出すのが大体の大井だと他の同僚に言われ、解せぬと思わず呟いたものだ。そういう無反応か逆パターンの受け答えのためか、待機中に膝貸してーと北上さんが来ることもしばしば。ちょーっとごめんと後ろから抱き着いてくるときに胸を揉んだりはしないので北上さんマジ紳士(違う)。遠征後に多かったと思うから色々いっぱいいっぱいだったんだと思う。つらい。

 

 上に乗られても肋骨が痛むとかなさそうなので多分ほぼ完治なんだとは思う。まだ暗いが微妙に視界が確保できている感じがあるのでそろそろ夜が明ける頃だろうか。しかし制服は洗濯と修理で手元にないので着るものがない。どうせ妖精とこの子しかいないのでそのまま出歩いてもいいが(良くない)、引っ付いてくるだろうから適当に腰の部分を詰めないと二人ともショーツがずり落ちる。いっそ水着があればと思う、せっかくリゾート施設にいるのに。やっぱりつらい。

 

 何となく変な思考に覚えがあるので思い出そうとすると眼鏡童貞人間の心情描写が思い当たる。突っ込まれる側で突っ込まれたことがないので同類扱いでいいと思うが変態淑女とか言われる大井種だそうなのであっちより風評被害がひどいです。匂いフェチの小学生が付きまとっていて艤装がないので、押さえ込まれてすーはーされるかもと思うと大した自覚はないものの乙女としては非常に心外極まりなく、現在進行形で鼻先を擦りつけてるこの子をどうしたものかと思案中です。再教育必須な小学生で艦種(軽巡>駆逐)的にも小さい相手を「お前のぎそーねーから。こいつ戦力な」とか燃料鋼材吐き出すレベルでつらいです。げーげー吐いてた北上さん並につらいです。ああ、うざいってそういう・・・ツンデレですね、北上さん。

 

 

 シャツの裾に手を差し込まれたところでゲンコを落とした。

 

「いたいのれす」

 

「直揉みか!直揉みがしたいんか!」

 

乙女とかそういうのが吹っ飛んで親父と化す。

 

「いえ、長門さんみたいに胸枕させてほしいのです」

 

「よし、そのナガト殴る」

 

どこぞのモジャモジャ頭で髭のエスパーだった筈だ。ESPジャマーと光子魚雷装備でカチこんだる!銀河皇帝(初代)だろうと殴る(だから違う)。それとも最新鋭の対人コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースだったか?どっちも枕になる胸ねーじゃねーか!(膝枕は可)

 

 

 はーっとため息をついて彼女の首に手を回す。

 

「心細いのは分かるから、時間まではこうしておいてあげるわ」

 

あと女同士でもセクハラはやめておけ、と注意しておく。北上さん(こっちが生前ならやっぱりアウト)とかもっと上の体格の方々相手なら百合の向こう側に行くのも悪くはないが、駆逐艦級とか相手は食指も動かんし(食指が動こうがやってはいけない)、お巡りさんこっちです、からの「だから大井は」コンボで社会的評判轟沈になるのでご勘弁願いたい。「許可」を出したのが打撃になったのかくぐもった声が聞こえて胸周りの水気が増したのは正直誤算だった。「少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ」のキャッチコピーは覚えているが、砲に魚雷と装甲に強化したから小さな幸せはボッシュートではこうもなろう。ただまあ返事はしないでおくが、おかーさんはやめて。その術はオレに効く、資材吐くわ。

 

 多分ハイライトが消えた目で吐き気を我慢しながら電をよしよしとあやしていたら、夜は完全に明けたらしい。彼女は泣き疲れたのかまた眠ってしまったが。なんか心にもないことを口走っていたとは思う。この状況で心から大丈夫とか言えるわけないしー。でもこの子が頑張ってるのは確かだから、あんたはよく頑張ってる、は本心。だからおかーさん、おかーさんって泣くのだけはやめて、心が即死するから!大丈夫、致命傷だの域だから!

 

 キイッと少しの軋みだけさせてドアから伝令、と小声で妖精が入って来る。目だけそちらに向けると静かに、と人差し指だけでサインを出す。

 

「艤装服ノ修理ト並行シ、物資ノ捜索ヲ行イマス。海底モ出来ル範囲デ捜索シマスノデ、発見時ニハ大井殿ニ回収ヲオ願イシタク」

 

小声での要請に手でOKとサインを出す。パワー面では艤装を装備した方が強いが、稼働状態だと底に沈めないしな。そうするとシャワーは作業終了までお預けだな。シャワー浴びてから海水をまた浴びるとか水の消費量増やすだけだし。

 

 

 

 正午、電の包帯を全部引っぺがしてからの食事兼報告会となった。頭の傷と右脇腹の貫通創はきれいに消えていたが、腕の火傷部分と右脇腹の抉れた痕はやや色違いと部分蚯蚓腫れみたいな状態になっていて痛々しい。こっちの破片とかでの細かい切り傷痕はノーカウントで結構だ。まともな鎮守府設備でならきれいさっぱり直せるだろうとは少尉殿の言。妖精が入れてくれた紅茶を飲み、事務用品置き場で見つかった缶のクッキー(未開封だったが開封した段階で湿気気味)を食事とする。昨日は自分がやったのに今日やってないのは電が左に引っ付いて離れてくれないためである、ガチで不味ったかもしれん。

 

「ドックノ中型ボートハ甲板ガ燃エタダケ、燃料モアルカラ動ク」

 

甲板にあった焼死体は埋葬済みだとか。回収してもこっちが沈めば一緒に海の藻屑だし。サバイバルキットは一応補充済み、途中で捨ててしまうとしても電の燃料を節約できるので少なくとも電は本土まで行ける。

 

「艤装ハナカッタガ砲ト機銃ガ沈ンデル。回収シタイ」

 

ガチで「艦娘担当官」やるか。最悪電だけになること考えると機銃も直せたら電に持たせよう。砲一個持ってボートの上から囮かな。

 

「魚雷発射管自体ハ無理ダガ同装備ノ取付ケ基部ト防盾ハデッチアゲタ」

 

分かってるじゃないか、これで最悪居残りが出来る。海上を歩くだけの装甲砲撃歩兵でも対応を強要させられればお釣りがくるわ。あと、これとばかりにM16系ライフルとタクティカルベストをどかっと置かれる。ダメになった奴を予備マガジン込みで直したそうだ。いるとは思えないが海賊、及び途中でどこかに寄港した場合の小勢力軍閥・野盗対策にはこちらの方がいいだろうとのこと。ショットガンは後の者のために置いて行くか。

 

 

 

 艤装から引っ張り出したミニチュアボートで、問題のポイント海上を妖精達が教えてくれる。着ていると邪魔になるので砂浜で全部脱ぐと、波打ち際からそこまで歩いて行く。感覚としてはこれでも燃料をごくわずかに消費している感じはある。さて、問題のポイントだ。水深約3mの海底に主砲が落ちているそうで、顔を浸けて一度底を確認するとそれっぽいものが見える。電は砂浜奥の木々の間で服以外の艤装を装備して待機しているので、緊急事態発生時には新造した碇を打ち込んで引き上げてくれる。だから完全に脱力して「沈んで」も大丈夫だ。そもそも大井を含む球磨型の吃水は4.8m、3mなら潜っても沈んだことにならない(百歩譲っても座礁)。一気に体が沈むと底に足が着く。連装砲らしいそれを手に意識を変えると立った状態で水面まで浮上した。砂浜までボートも引いて取って返すと数人の妖精が砲塔を受け取ってすぐにドックの方へ行ってしまう。こちらも次のポイントに移動だ。

 

 ボート類が座礁・沈没している入江から200mほど、水深が20m前後になっているらしい。20mともなると球磨型はマストの一部を除いて水面下の筈だ。距離も人体基準で考えるとそこそこある上に入江のエリアは岩場の影か倉庫、あとはヨットくらいしか地上側も隠れるところがない。そこで電に曳航してもらった上で彼女のアンカーにロープで体を括りつけて潜ることにする。今来ている中で一番泳ぎが上手いという妖精もスタッフとしてつけてもらった。推測通りだと水深10mを超えた当たりで問題が生じ始めると思う。ポイントに到着すると、引き上げタイミングの合図は随伴の妖精に任せて沈み始める。先程同様立ったままで今度はゆっくりと、目標物の方向を示してもらいながら沈み続ける。

 

 予想通り半分くらいの深さで息苦しさが一気に増した。艦の底から甲板上部前後まで丸々沈んだ程度の深さだ。傾いているだけなら何とかなるかもしれないがそうでないなら絶望状態だろう。さらに沈んでもう少し、というところで口をぶはっと開いてしまい、多数の泡が漏れる。機銃は見えているしあとは掴むだけの様に思えるが苦しいもうやめたい嫌だイヤダと多数の声がどこかから聞こえて体が逃げ出そうと余計な動きをする。底についた時にはいつの間にかうつ伏せで背のアンカーに潰されるかのように機銃の上に被さっていた。でも抱え込めた。小さい体が私の周りを少し行き来すると首に何かがかかる感触がする。恐ろしく眠さを感じながら眼の下辺りを何かでつつかれて薄目を開けると、浮遊感とともに体が底から離れていく。腕から力が抜けて抱えた物が離れるが、手を伸ばしたところでいきなり首に荷重がかかり、それもそれ以上離れずに一緒に登っていく。周囲が明るくなってきて再度機銃を抱えると、ミニチュアの機銃にこれまた同スケールっぽいワイヤーが括りつけてあって、機銃に取り付いた随伴の妖精が親指を立てる。助かったわ、言おうとしたが漏れる泡もなく口が動くだけで、水面上がった直後には揺れる海上で水を吐き続けた。曳航どころではなくほぼ背負われて陸地か施設かに戻ったようで記憶も飛び飛びで、まだ日も高いの筈なのに寒い暗い怖いと呟き続ける自分に気付く。意識はあるレベルで起きたはずなのに寒さで体を丸めると急に暗くなるが、温かくて柔らかいものがわたしを覆うのを感じて、そのまままた眠ってしまったらしい。

 

 

 また目を覚ます。やっぱり眠り方がまずい。極度の疲労か飲酒、それと「何か」で意識を落とされるように自分以外の要因で思考が飛んでいる気がする。さて、今わたしは何に抱きついているのか。両腕は横に眠る彼女の背の中頃に回しているようだし、丸め込んだ体の両脚は太ももの付け根を擦りつけるように電の両脚、主にすねから足を際どいレベルでかにばさみにしている。柔らかいおなかに顔をつけというか絡められた彼女の腕で頭を抱えられていて、お巡りさんを呼ばれると申し開きも出来そうにない状態です。抗弁できそうなのはこっちも外見未成年ということくらいだが、電は13歳未満だろうからわたしは最低でも非行で補導対象になりそうです。当然―いや少なくともマッパなのははわたしだけだった筈だ、何故脱いだ。

 

 まずい状況を打破しようとして両脚をそろそろと解く。それでも小さい子の腹の上で泣くみたいな、みっともない状況なので身を離そうとしたところで一気にぶり返した。離れようとした腕はいきなり締め付けるような強さで柔らかい肢体を抱え込んで離さず、鼻や口が塞がるのもお構いなしにおなかに顔をうずめては、息をするために離れようとし、再度腹に喰いつくように密着する。離れる・しがみつくを同時に行おうとするかのようにちぐはぐな動作で唸りながら、暴れる一歩手前でまた頭を抱かれた。

 

「大丈夫なのです」

 

「ご、ごめ、ごめん。すぐ」

 

すぐはなれる、と言おうとしてまた寒さがぶり返し、口を塞がれているかのように閉じたままで悲鳴を上げてしがみつく。温かい手が後頭部を撫でてくれて少しだけ安心したのに背中が寒くてすぐに怖くなる。解いたはずの足をまた絡めているのが分かるがそれ以上何もできなくて何かわめいた気がする。

 

「大丈夫なのです、もう陸なのです」

 

頷いたと思う。

 

「水の底ではないのです。大井さんはここにいるのです」

 

唸るように返事をしたはずだ。

 

「大井さんはとっても頑張りましたから、もう大丈夫なのです」

 

それでも怖くて全力でしがみついてた。

 

「もうこわくないのです。電も一緒にいますから。ここは暖かくて明るいのです」

 

ほうらこわくない、こわくないと頭を撫でられて、それでも怖くて泣いて、泣いて、そっから先は覚えていない。

 




 ドリフオマージュつーかパクリというか大井が思考でしゃべってる時点でただのネタバレ芸みたいな何か。艦スリンガーガールはガンスリ本家もやったネタだし闇深。ハッピーエンドにはするから許せ。それと長門に罪をおっ被せることにしたが私は謝らない。長門だとトレーニング後とかに駆逐艦級に突撃されてもそのまま許しちゃいそうだし。ながもんでなくても「まあ待て、シャワーくらい浴びさせろ」と言いながらシャワールームまで肩車で「ほうら大戦艦だぞ」とか清霜にやって大戦艦病を拗らせさせる気がするし。

 そして繰り返しの意識飛びオチ。性描写はないが、絵面はガチでやばいぞ!憲兵さん呼べば多分来る。午前にママの振りをした転生大井が午後にはお返しとばかりに電にいい子いい子されて眠りました、まる。なおキャラの行動をシミュレートすると電がいい子いい子しなかったら恐怖の反動でR18してるはずだわこれ。
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