「インテレオン!戦闘不能!エースバーンの勝ち!よって勝者チャンピオンユウリ!!!」
目の前でインテレオンを抱えながら涙を流す少年が目に写る。あーあ、君もダメだったか。
ポケモンバトルというものは必ず運が絡んでくる。急所に当たったり、麻痺してしまったり、そもそも技が当たらなかったりといった具合に。ただ私の場合は違う。必ず運が有利に働く。私だって旅の始めはすごく嬉しかった。初陣だって勝てた。毎日のようにポケモンバトルを見ていた
結局誰にも負けなかった。
お前だってチャンピオンになりたかったんだろ?立派な動機だ。───────違う。私はホップにあてられて旅に出ただけだ。
チャンピオンになっても私は負けなかった。世間の熱狂と対照的に心は冷えていった。いつしか笑顔がなくなった。この様じゃ、マリィのこと言えないや。なんて。
いつしか私の同期は夢を追い始めた。あるものは研究に、あるものはジムリーダーに、あるものは町起こしに、あるものはガラルの発展を目指して。私だけなにもなかった。やりたいことも情熱も。
「速報です。チャンピオンのユウリさんが行方不明になりました。リーグ運営側の証言では──────────」
私のポケモンは次第に目から輝きを失っていった。私の運は想像以上に残酷だった。私から今度は仲間を奪い取るつもりらしい。私はそんな仲間を見たくなくて、モンスターボールを壊して走った。誰も追って来なかった。
我武者羅に走って走って走って、気が付けば
どうせポケモンも持っていない。自棄になって森を進んだ。もう帰れなくても構わない。運の化け物が頂点にいるより才能のある誰かがチャンピオンになるほうがよっぽどいい。そんな自虐で苦笑を溢しながら歩いていく。すると霧が濃くなっていった。これじゃあ本当にあの時じゃないか。──────────暗転。
目が覚めると泉の前にいた。霧が晴れている。それに祭壇のような彫刻がある。こんなところ誰も来ないはずなのに。不思議に思って祭壇に近づく。奥か遠吠えが聞こえた。鞄の中の古い剣が震える。はっとして正面を見た。泉の向かいに青い体毛を靡かせて佇むポケモンが見えた。
なんだよお前、私を嗤いに来たのか。王のように成れなかった私を。
久しぶりだった。感情を見せたのが。いいようのない怒りが溢れだした。そのままにヤツを睨み付ける。ポケモンはこちらを静かに見つめていた。何かを見透かしているような……
なっなんだよ。お前。なんなんだよ!
今度は狼狽えながら後退りする。
コトッ
踵がなにかを蹴った。ドリームボールだ。
ボールは全部壊してきたはずだ。と思いながら拾おうとする。そのときポケモンはボールをふと見たかと思うと私に視線を合わせ、飛び込んできた。
なっ!
思わず転けてしまう。衝撃と砂煙で思わず目を閉じた。
私もここまでか。
そう思って自分の負けを悟った。
ポケモンバトルですらない。それでも旅の中で初めて負けた瞬間だった。
私が負けた……?
自分の中でなにかが崩れた音がした。
負けは自分の希望だ。希望を掴んだのだ。こんなところで死んでいられない。
もう一度ポケモンを睨み付ける。今度は輝いた目で。生きたいと。
永い永い時だった。それでいて一瞬の出来事だった。
力を振り絞って立ち上がる。ボールを構える。
そして──────────
「ユウリ!ここにいたのか!探したぞ!」
私を呼ぶ声が聞こえる。
「ホップ、ポケモンバトルしよう。」
初陣のときのように輝かに、いつしか失っていた情熱を胸に
「勝負だ!ホップ!いけっ!ザシアン!!!」
なにも言わずにボールを構えてくれた。
ただ、このバトルに化け物みたいな運なんてなかった。
ただひたすらに自らの技量と采配を信じる。二人のポケモントレーナーがあった。
ユウリの性格をムゲン団の世界線に寄せたイメージでとってもらえれば
一番離反しそうな子で救いたかった
ザシアンは旅の始めのキラキラしたユウリと虚無ったユウリの両方を見ているはず……
ならなにか思うところがあってもおかしくないなって