絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア 作:ひよっこ召喚士
去年から引き続きご覧になってくれている方々、今年になって見つけてくれた方も拙い作品でございますがどうぞ温かい目で見守っていただけると幸いです。
長期戦になる可能性を考慮し、最低限の個性の使用だけで移動を進める轟。もっとも外側のエリア、それも角に位置するh1エリアからとりあえず真っすぐ中央を目指し、草原であるg2エリアへと入った。
「平原か……さっきまでの岩肌の坂道じゃ無理だが『氷線刃靴』」
真っすぐに氷の線を作り出すと靴にも氷の刃を生み出し、その上を滑るように進みだした。抵抗なくどんどんスピードを上げてエリアの半分を進んだ頃、氷の上に轟が載った瞬間に氷ごと地面が歪み、バランスを崩して氷から足を落とす。
「足をとられたな!!」
「敵か」
現れたのはB組の骨抜柔造だった。柔化と言う触れた物を柔らかくする個性の彼は、内側へ早く向かう為、そして他の選手に見つからない様に柔らかくした地面の中を泳ぎ移動していたが、全身運動である泳ぎで体力の消耗が大きく、一つ内側のエリアに入ったので地上へ出て少し休んでいた。そこに氷の線が作られたのを発見し待ち伏せすることにした。
「喰らえ『マッドショット』」
一時的とはいえ沼のようになった地面に足を捕らわれた轟に追い打ちの様に柔らかくした土を投げつける。そして足元に注意しながら轟の近くへ近づき地面に手を伸ばす。
「柔らかいのは一部だけか、なら『氷熱炎迅』『氷戦場』」
もう一度触れる事で元の状態に戻せる事を利用し地面の中に轟を埋めようとした骨抜、しかし轟は相手の個性の範囲を把握すると柔らかくなっていた地面から炎の勢いを利用して飛び出すと周囲の地面を覆う様に氷のフィールドを作り上げた。
「閉じ込められなかったか、そう言えばあんんた飛べるんだったな。とりあえずその氷も柔らかくしてやるよ」
相手が飛べるという事は地面を柔らかくしても逃げられる可能性が高い、だがとりあえずは氷を柔らかくして置けば相手は飛ばざるを得ないし、一度跳べば迂闊に降りてこれないだろうと足元の氷に触れる。だが少し先にいる轟は地面に沈む事も、飛ぶ事もしなかった。
「発動したはずなんだけどおかしいな」
「触って発動するタイプだろ?切り離せば関係ない」
轟は自分の居る場所と相手の居る場所の氷を真ん中で割る事で個性の範囲から抜け出していた。そしてそのまま新しい足場を作りながら真っすぐに向かっていく。
「『氷現』」
「はあぁぁぁ!!」
氷で形を作り出す技で武器を生み出す『氷現』、それを用いて攻撃範囲を伸ばすと思いきり腕を振るって最高速で攻撃を叩きこんだ。しかし、事前に足元を柔化していた骨抜は素早く体を沈ませ、地面を潜り泳ぐことで攻撃から逃れた。
「潜ったまま何処まで行けるか?『氷戦場』」
広範囲に氷を広げて地面に蓋をする。氷の範囲外まで逃れるのであればそれはそれで追いかけるのを止めて進んでも良い。氷を柔らかくして出てくればそこを狙い撃つ。そう思っていたがそれなりに時間が経過している。逃げたのだろうかと思考を巡らせた瞬間、轟の足元がいきなり柔化し、骨抜が飛び出した。
「喰らえ!!っ!?」
「ぐっ!?『氷現』」
柔らかくした地面や氷を飛び出した勢いで体に纏って一時的な鎧代わりにして骨抜が捨て身で殴りかかる。轟は思いがけない攻撃に動揺するが氷で盾を作り出してなんとか防ぐ。しかし、衝撃を完全に逃がせず少し後ろにとばされた。
体勢を崩したのであれば攻めるチャンスだが長時間潜っていた骨抜は少し息が切れていた。どちらもすぐに動きだせる状態ではない。不安定な足場に飛ばされた轟と体力の消耗が激しい骨抜と状況は現状は互角だった。そこにもう一人の攻撃が轟に目掛けて振り下ろされた。
「喰らえ!!」
気づかれない様に骨抜が柔らかくした地面の中を進んだ体の一部が飛び出して攻撃を仕掛けようとする。咄嗟に動く事のかなわない轟と完全な奇襲、観戦していた人々は思わずうおぉお!!と叫びをあげた。しかし、戦場では仲間の一人も大きく声を上げていた。
「ダメだ!!下がれ!!」
「えっ、きゃっ、熱い!!??」
飛び出した手足が轟に触れようとした瞬間、その周囲を覆っていた熱にさらされダメージを負ってしまった。奇襲は失敗し、声の出所からもう一人が潜んでいる場所もばれてしまった。
「長い間潜ってたわけじゃなくて遠くで一度浮上してたのか、気付かなかったし危なかった」
「逃げた先で偶然出会って協力してくれたんだが、取蔭大丈夫か?」
「うん、手足が少し熱いけどまだ戦える」
骨抜はずっと地面の下に居た訳じゃなく、大きく離れた場所まで逃げていたのだ。そこで偶然このエリアを横断しようとしていた同じクラスの取蔭に出会い、協力体制を得る事に成功した。2段階に分けた奇襲は轟の隙を完全についていたはずだった。
「そっちは緑谷と組んでた体を飛ばす奴か?生憎だが熱気で周囲は覆ってる。奇襲するなら熱気を払うか、熱いと感じる前に通り抜けるか、覚悟して飛び込むかだな」
「さっき俺が奇襲した時も一瞬熱を感じた。氷や地面を纏ってたから耐えれたけどな。それにしてもその割には周囲の氷が溶けてないが?」
「足元から冷気を流しているからな。そう簡単にさとられることは無い」
会話している間も骨抜は柔らかくした氷を取蔭に渡して応急処置をする。自身や取蔭の身体にも少し氷や土をつける事で攻撃の準備もした。その間に轟は柔化された地面から抜け出し、骨抜は呼吸を整えた。2対1と状況は変わったが互いにまた0からスタートになる。だが、轟は数的不利を覆すために大きく動いた。
「さっき少し飛んで分かったがここの隣はハザードエリアだった」
「それがどうかしたのか」
「この距離なら操作すれば呼び込む事も可能だ」
「っ!?取蔭潜るぞ」
「あっ、ちょっと!?」
「遅い!!堕ちろ『
氷と炎を操作し、大きな気流を作り出して隣のf2、ハザードエリアとなっている山火事の火を丸々持って来ると一気に地面に向けた撃ち下ろした。無論、相手が地面に潜る事も考慮の上で放ったそれは相手を炎や熱で傷つける事無く、衝撃で地面ごと吹き飛ばし2人を昏倒させた。
「大雑把だが威力は十分か……溜めれば地面を溶かす事も出来そうだ」
『あれヤバくねぇか?隣のエリアの炎を持って来たって事はあらかじめ燃やして置けばあの威力を遠くから連発も出来るんじゃねえか?』
「多少なら出来るだろうが、少し息が上がってる。さっきまでの戦闘と比べて炎と氷のバランスが取れていないようだ。連発したら熱で体が壊れて倒れる方が早い、基本的には一発限りの大技だろう」
『だとしてもあの威力と範囲はスゲェな。咄嗟のコンビで何度も轟へ攻撃を入れようと奮闘した骨抜と取蔭もナイスだぜ!!』
「骨抜は状況判断と咄嗟の動きが良く出来ていた。取蔭との咄嗟のコンビネーションも中々だった。轟については弱点がだいぶ減ったが乱戦になると個性の調整と相手への対処を同時にやって行かないといけないのが課題だな。まだ一部動きが悪い」
すぐに脱落した物間と違い、奮闘して見せたB組の生徒への関心が高まり、観客たちも熱中した戦いだった。倒れた2人は直ぐに回収され、念のため保健室へ送られた。勝ちをもぎ取った轟は体を冷やしながらゆっくりと内側へと進みだした。
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舞台はf7、都市エリア。時間設定が夕暮れになっており、場所によっては眩しかったり、暗かったりと光の下限に翻弄されやすい時間帯。立ち並んだビルの隙間を抜けていく2人の選手が出会い、咄嗟に拳をぶつけ合い距離を取った。夕焼けの光が妙に眩しく、咄嗟に開いてを認識できなかったが構えて向かい合うと互いに直ぐに気づいた。
「拳藤さんだよね?大きな拳の」
「うわっ、緑谷かっ!?あたしも運が無いな。最初からこんな強敵を引くとか」
互いに共に訓練した者同士で手の内は大体知って居る。特に緑谷は個性の考察力が高いので話し合いなどの場によく参加していたため、個性の長所と短所をしっかりと把握していた。対する拳藤は緑谷のポテンシャルをよく知っており、自分の運の悪さに笑いながらも拳を構えた。
「出会わなかった事にして分かれたりとかはしないよね?」
「ごめん、僕もちょっと事情があって、『ここに来た!!』って示す必要があるんだ」
「だよねぇ。言ってみただけだし、私もまぁまどろっこしいのは嫌いだし、分かりやすい方が良いか……」
オールマイトの弟子と言う立場である緑谷、恵まれた仲間と思いがけないヴィランとの遭遇を経て、その力の習熟具合は歴代でもかなりの速さとなっている。だからこそこの雄英体育祭で今の僕の力を見せつけたいと考えていた。
「「いざ勝負!!」」
緑谷はスピードもパワーも優れているが、出しすぎると自身の身体を壊す事になる。そのためフルカウルを使い、全身を強化しての殴り合いから開始する。対する拳藤はあえて路地に入り込み、緑谷の動きを封じようと動いた。
「『スマッシュ』!!」
「『双大拳・守』!!」
壊れない範囲でスマッシュを放つ緑谷、狭い路地であるため向かってくる方向が分かっている拳藤は巨大化させた拳を組むと防御の姿勢を取りその衝撃を受け止めてみせた。緑谷は正面からの攻撃は受け止められると判断するとビルの壁を蹴って後ろに回り込もうとする。
「『双大拳・打』!!」
「くっ、危ない!?」
拳藤は手を一度小さくして素早く振り返ると拳を解き、掌で打ち付ける様に両腕を振るった。緑谷の軌道が分かりやすい様に狭い場所では拳藤の拳の軌道も読まれやすく、超スピードで緑谷は距離を取って避けた。緑谷は路地ではいたちごっこが続くだけだと判断し、攻撃をビルへと向ける。
「『スマッシュ』!!」
「うおっと、そう来たか……」
周囲のビルを壊し戦場を広くした。それだけでなく落ちて来た瓦礫をとばし、他の路地に入れないようにもしている。生憎と拳藤には移動を助ける様な力はなく、瓦礫を乗り越えようとすれば格好の的になるだろう。そして瓦礫から逃れた拳藤を目掛けて緑谷が攻撃をしかける。
「『スマッシュ』」
「『双大拳・守』」
最初と同じく緑谷が攻撃し、拳藤が守りの姿勢をとった。仕切り直しになるだろうと思われたその時、拳藤が拳の形を変えないまま、突進してくる緑谷に対して拳を振り抜き、カウンターを入れた。
「がっ!?ええ、あの手の組み方は防御だったよね?」
「そう、だから威力は弱いけど騙されてくれたから綺麗に一撃入れることが出来た。『双大拳・転』、違う形から攻撃に転じるだけの小細工だよ」
状況に応じて拳の合わせ方や動かし方を変えて必要な力を伸ばした拳藤の新しい『双大拳』、その組み方をあえて無視しての攻撃、騙し討ちの様な攻撃は見事に緑谷に叩き込まれた。拳藤本人が言う通り適した形でない為に威力は弱いが、これで組み方だけでなく拳藤の動きに警戒する必要が出てくる。
「言うてダメージは無いでしょ?それにもっと本気出しなよ緑谷、そこまで甘くないよ私は」
「……うん、そうだよね。これは僕が悪い、ごめんね。一緒に特訓したんだ……僕も全力でいく」
力を温存する気満々の緑谷の動き、それによって戦闘が成り立っている。そこを突いて行けば勝ちの芽もわずかだが存在していると拳藤は思っていたが、それ以上に緑谷にその気が無くても手を抜かれて戦っている事に少しイラつきもあった。緑谷も拳藤の言葉に気付き、自分の非を認めると限界を超えた力を巡らせる。
「『フルカウル・オーバードライブ5』」
今の緑谷が負担なく出せる全力のフルカウルより5%多く出力を出した状態、たった5%と思うかもしれないがワン・フォー・オールの力の5%だ。一気に壊れることはなくともじわじわと緑谷が身体が軋んでいく様な間買うを覚える。
「バチバチ言ってるねぇ。一撃で決めようかその方が良い。私も全力で行く『対大拳・守破離』!!」
2つの拳を合わせるのではなく、対を成すように左右に構える。どちらも片手で組める印を結んで力を込めている。守り、破り、突き離す、どの動きにも対応することが出来る。決められた形を習得し、新たな形に組み直した拳藤の新しいスタイルだ。
互いに視線をぶつけると何の合図も無いのに同時に飛び出した。一点に集中させた緑谷の一撃、対を成す拳を連続で動かし、受け止め、受け流し、撃ち抜かんと拳藤も喰らい付く。
「「うおおおおおお!!」」
ぶつかり合った両者の拳は凄まじい衝撃を生み、周囲のガレキが砂埃をまき散らし、観戦客たちが見ているカメラの映像からも隠れて見えなくなる。そして煙が晴れた際に両者が距離を保って立っていた。
「はぁ、はぁ、やっぱ敵わないねぇ。ナイスファイト緑谷!!」
「はぁ、僕もだいぶ疲れたよ。ナイスファイト、拳藤さん!!」
そう言うと拳藤はゆっくりと身体を倒した。意識はまだあるが体力を使い切り、ダメージもだいぶ蓄積している。これ以上戦闘行為なんてのは出来そうにない。
「私の分も頑張ってくれると嬉しいけど、無茶はしないでよ」
「うん、それじゃ。行って来る」
倒された拳藤が倒した緑谷に思いを渡して見送る。緑谷は疲労を回復させることを意識しつつエリアの奥へと走って行った。
「B組拳藤リタイアします!!」
「良い!!良いわ!!熱いぶつかり合い、特訓共にした者同士の友情、それも違うクラスの男女間での…………最高に良い物を見せてもらったわ!!」
『うおお、ミッドナイトの的にドンピシャだったみたいだな。それにしても二人のぶつかり合いは凄かったな。イレイザー』
「強化系である緑谷に喰らい付くだけの根性と技術、B組の生徒も粒ぞろいだな。A組もうかうかしてると抜かされるぞ。緑谷は何かを掴めたのは良いが考えすぎる癖をどうにかした方が良いな。拳藤が提案して無ければ全力を出さずに負けてた可能性も十分あった。拳藤に感謝するべきだなあいつは」
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b7、そこは交通エリア称されたエリア。電車が走る線路、車やバスが走る道路、そう言ったものが集まっているエリアだ。普通の住宅地や都市エリアと比べて建物は少ないが高速道路なども入り乱れ、立体的なエリアだ。もちろん車やバスなども配置されている。
「意外と早く出会う羽目になったね」
「はっ、タイミングなんかどうでも良い、死ねぇぇぇ!!!!」
プリズムによるエネルギー消失で爆発を防ぐ山稜、構わず連続で攻撃を放ち続ける爆豪、そのやり取りは道路の上を互いに走りながら行われている。かれこれ数分間、一切止むことなく爆発と消失が繰り返される。
「お前は万能に見せかけてるが完璧な個性なんてある訳がねぇ!!」
「いきなり、どうしたんだ?」
爆発を続けながら話しかけてくる爆豪、山稜も爆豪が何を言いたいのか疑問に思い受け答えを返す。揺さぶるためなのか、それとも別の意味があるのか分からないが山稜は面白そうな表情だ。
「襲撃の時にプリズムが受けた攻撃がお前に返っていた。お前の守りには許容限界がある!!」
「なるほど、ねぇ。今の状態を見るに話は変わってくるんじゃないか?」
現に君の攻撃の全てを防いでいるじゃないかと演技臭さを隠さず両手を広げて挑発して見せた。それに対して爆豪も鼻で笑って返した。
「吸収した場合と消した場合で前提が違うだけだろうが。消した攻撃はお前は利用できない。攻撃手段にも欠けてるんだよ手前の個性は」
「ならこうしたらどうかな」
山稜は放たれた爆発をプリズムで囲うと爆豪の後ろにもプリズムを生み出して爆発を返した。爆豪はそれに気づくとすぐ後ろのプリズムに向けて爆発を放った。山稜は平静を保ちながらも内心慌ててプリズムを消去した。
「よく対処できたね」
「移動用のプリズムに防御力はねぇ。USJで色つきのプリズムで作った理由を聞いた時、攻撃されない様にって言ってたよな?それとまた別の大きなプリズムで一帯を囲んでたのは場所を把握するため、何もない今なら転移できるのは目に見える場所だけだろ。不意打ちなら後ろからが鉄板だボケ」
「簡単すぎたってわけか」
頬をかいたりしてしまったなぁと形だけでも失敗した雰囲気を出す山稜、それは余裕ではなく大きな失敗を隠すための張りぼてだ。
「余裕ぶってるがプリズムを展開するには頭使ってんだろ。防御とは別に疲労は思いきり溜まってんだろ」
「個性を使って疲れるのは当たり前で、君も同じだろ。というよりいい加減私の弱点を喋りまくるのは止めてくれないかな。全国放送だよコレ」
「音まで拾えてるわけねえだろ」
「読唇術の個性持ちと技術持ってる人いたらどうするのさ?」
「そんなとこまで配慮できるか!!喰らえ」
「……よし、やっぱ光だったか」
爆豪が放ったのは『閃光弾』だったが予測していた山稜は難なく光を吸収して見せた。その様子を見て爆豪はチッと舌打ちをして攻撃を再開した。
「欠片を消したって事は吸収と消失は同時に出来ねぇみたいだな。いや、自分のエリアを作って無いと出来ないって所か」
「単純に見えて本当に頭良いよねぇ。動きながら展開するのは難しいから一つずつ丁寧に対処するしかないんだよ。ケホッ、ごほっ、ああもう『プリズム』」
足元に見えないプリズムを作って移動を妨害しようとしても爆発で出来た煙の流れで障害物を見抜いて避けたり、壊したりしている。山稜は煙の多さに参っており、酸素を確保するために別のプリズムを作って展開した。
「煙を吸い込んだり、酸欠になりかけるって事は吸収した物の副産物は防げねぇ。爆発の熱と火を吸い込んでも髪が風にあおられてるよな」
「視界を塞いでんのかと思ったらそう言う事か、絡めても使って面倒すぎるね」
「もっとやってやるよ『攻城砲』」
足場であった高速道路の柱を爆破して共に落ちていく、爆豪は爆発を利用して飛び、山稜はプリズムを足場に降り立つ。その足場に爆発を当てて山稜のバランスを崩させた。山稜はすぐに体制を直し、下の地面まで降りた。
「プリズムに当てなければ防がれねぇし、瓦礫とかを落下を防ぐには別のプリズムが必要だろ。そしてそのプリズムは他の攻撃は防げない」
「特化させた方が消耗が少ないからね。複合型だと直ぐ疲れるし、限界も早いしね」
降り立って向かい合う二人、一方的に攻め続けている爆豪に注目が集まっている。しかし、あれだけの猛攻を受けて未だに傷一つ付けていない山稜も負けずに注目を集めている。
「それで?」
「あ?」
「それがどうしたって言うんだ?私の個性の特徴を見抜いた。それは賞賛に値するし、拍手を上げても良い。だけどその程度で私は揺らがない。手を変え、技を変え、私を驚かせた。しかし、あくまでも君の攻撃手段は火と熱、光に物理、それぐらいでしかない。右手と左手で2つ同時に打てるとして組み合わせは6通りかな。細かい煙とかそう言った要素は走り続ければ無視できしね。それぐらいであれば何の問題も無い。私は全てを守る!その為に力を研ぎ澄ませた。種が割れた程度で勝った気になるなよ?」
「上等だぁチビ女!!手前の防御を貫く一撃でぶっ殺してやるよ!!」
『すげぇなあいつら。出会ってからずっと戦い続けてやがる。その間一度も立ち止まって無いし、ちゃんと中央へ移動してるぜ』
「互いに本気で戦ってるみたいだが全力では無いだろ。どちらも後のことを考えられる。山稜の個性の習熟度はプロヒーローと比べてもそん色ない。爆豪は戦闘のセンスで抜きんでている。集中力が切れるか横やりが入らねえ限り、続くだろうな」
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G5、そのエリアは都市エリアではあるがハザードエリアでもあり、その都市の景観はだいぶ破壊されていた。地震による揺れが時々不規則に遅い、地割れやビルの転倒、あちこちでの小火災、更には時間帯は夜と厳しい環境であった。
3方向からそれぞれ理由を抱えた選手が集まろうとしていた。1人はただ真っすぐ中央を目指すため、もう一人はg4、ハザード化したことにより砂漠と化した乾燥地帯を避けるため、もう一人はg6、遮蔽物の無い晴天の荒野を進むのを避けるため。
それぞれに理由があったが3人の選手が同時に同じエリアで出会うと言うまさかの事態に全員が動き出せずにらみ合いが起こっていた。
「うわっ、まさか2人同時に出会うなんてなぁ……」
「ワァオ、こういう状況サンスクミって言うんでしタッケ?」
「これも試練か、となれば栄光の為、いざ尋常に!!」
A組の麗日と常闇、そしてB組の角取、全員が特訓に参加している。そして全員が互いをしっかりと敵と認識している様で他のエリアの様な共闘や協力は見られそうにない。
「『
それぞれが別方向でアドヴァンテージを持っている。まず第一に火災の光があるが夜の闇によって個性の強化されている常闇、ある程度の光源もあるためむしろ暴走の心配をしなくていい分、存分に力を振るう事が出来るだろう。空も少しは飛べるが上にあがると遮るものが亡くなり隣のエリアの明かりに照らされかねないので多用は出来ない。
「『彗星ホームラン』!!『流星群』!!『
次に麗日、地震によってあちこちに瓦礫や倒壊した建物などの障害物があり、それらを浮かして利用すれば防御にも攻撃にも転用できる。自身を浮かせることで足場を多少は無視できると言った地形での利点は一番大きいだろう。
「『エレクトリカルホーン』!!」
最後に角取、角をとばすと言う遠距離攻撃、麗日も物を投げつける事が出来るが無重力を利用している為に直線的で読みやすい。足場が悪く距離を縮めにくい中で遠距離攻撃を自由に操れると言うのはかなりのアドヴァンテージだと言える。
力が強いが基本的には近距離から中距離の常闇、少し酔うが地形を無視でき、瓦礫で防御や単純な遠距離攻撃の麗日、遠距離攻撃で自由に攻撃できる角取、誰もが自分の強みを生かして攻勢に出るしかない。
常闇が黒影を纏い身体能力を強化して地割れを跳び越えながら距離を詰めようと図った。麗日が邪魔をしようと瓦礫を進行方向に放つ、角取は角を次々に打ち出し、二人を同時に攻撃する。
常闇は2人からの攻撃を対処に追われ中々近づくことが出来ない、麗日は角取の攻撃を防ぐために瓦礫を放ったり、振り回すと攻撃に回す分が減る。角取は攻撃に専念しているが決め手に欠けている。いたちごっこを繰り返しながら互いに出し抜くための方法を考え始めた。
常闇は危険を覚悟で壊れかけているビルに入り込んで姿を隠す動きに切り替えた。角取は中まで追跡して攻撃は出来ず、目に見える範囲の麗日に攻撃を集中させる。
麗日は攻撃から離れるために自身を一端無重力化させると大きく地面を蹴ってまだ無事な高いビルの屋上に着地する。角取は追いかけることが出来ず、目測で攻撃するのは厳しいと判断し、一度角を手元に戻した。
全員が近づくのでなく一度距離を取る事を決断し、麗日、角取は姿を完全に見失った常闇の方に注意を払う。常闇は音を出さない様に静かに近づき攻撃を仕掛ける。攻撃を仕掛けられたのは麗日だった。踏み込む音に反応して目を向けると既に攻撃はすぐそこに迫っている。
麗日は攻撃を避ける様に屋上から飛び降り、もう一度自身を無重力化させて別のビルへと転がり込んだ。角取もそのやり取りを見ており、追いかけようと飛行態勢で飛び降りた常闇に全ての角を飛ばした。常闇は連続で攻撃してくる角を破壊すると難なく麗日を追いかけた。
常闇からしてみれば角の対処はそう難しくない。だが圧倒的な質量である瓦礫などを連続で飛ばされると流石に対処は難しい。なので先に麗日をどうにかすることに専念したようだ。麗日も何故こちらを攻撃してきたかは考えており、角取も角を脅威と見ていない様子から推測していた。
三竦みの状態であるから成り立っているが正直この二人を相手に角取が戦うのは厳しい。角はどちらにも対処されてしまうのに対し、角取では防御の手段も乏しく、近寄られれば終わりである。特訓で扱える角の本数、操作性、貫通力、それぞれが大幅にアップしたがそれでも難しい。黒影の防御は硬く、隙が無い。麗日ならばまだ瓦礫の壁を避ければ可能性があるが、それで麗日が倒されれば次は自分である。
常闇は少し焦りもあった。麗日はどちらに対しても有効な攻撃を持っている。黒影を纏っても麗日の攻撃は防ぎきれない。そして黒影が無ければ角取の攻撃を防ぎきれないので黒影を放つのは危険であるため出来ない。強制的に近距離戦を強いられている。
麗日を先に狙わず角取を倒せば良いんじゃないかと思うが、その時を纏めて攻撃されればひとたまりもない。ならば黒影を纏い、角取を無視して麗日を目指した方が良い。角取も角の攻撃が効かないとなれば麗日を狙う可能性もあるので後回しで良い。
麗日は逃げているだけではいずれ距離を詰められると判断し逆に攻勢に出る事を決断する。生半可な攻撃では避けられてしまうのは理解している。そのため『無重力』の限界を超えて巨大な物体を撃ちだした。
「『惑星ホームラン』!!」
倒壊したビルやお店などを丸ごと撃ち放つ。それは大規模すぎる質量攻撃、追いかけている最中だった常闇は迫りくるビルを避け切れずに衝撃をそのままに別のビルに衝突した。黒影が大きな怪我は防いだが衝撃で気絶した常闇は戦闘不能となった。
続いて遠くに見える角が浮いている場所に攻撃すると角を破壊し、人影にも攻撃が当たった。麗日は確認の為に降りるとそこに合ったのは壊れた角と洋服だけだった。角取は麗日の攻撃をみた段階で逃げる準備をし、角でお店で拾った洋服を浮かせて囮にして先に逃げていた。
「逃げるがかちデ~ス」
『なんとも激動といった感じの戦いだったな』
「常闇は少し精神面と戦略性をもう少し鍛えた方が良さそうだな。麗日は思い切りが良く、覚悟が決まってるが被災地とはいえ壊しすぎだな。角取も引き際をしっかり考えられているのは良いが訓練した割に決め手が少なすぎるな」
『とはいえ角取が先行する形でエリアを抜けたぜ。麗日は少し吐き気に悩まされてるが少し休めばまだ戦えそうだな』
「そろそろ時間だな」
『だな。第一エリア収縮だ。外側が削れたぜ。段々とエリア収縮までの時間は短くなっていくから、まだ安心できない奴もいるから急げよ!!』
訓練に参加していない組も善戦出来ていますが、2対1であしらう轟。氷と熱のバランス管理にまだ追われているが細かい操作も大技も自由自在です。
拳藤の戦い方と言うか技名はスマブラのキャラを参考にしています。
緑谷はスマッシュとしか叫んでないのは作者の手抜きではなく、緑谷が自然と体力を残そうも動いていた事と同じで特殊な技を使わないようにしただけです。
爆豪はやはり賢さでも優れてるイメージ、そして多少柔らかくなったとはいえ、負けていたと言う事を意識して山稜に対しては少し敵対的。
山稜は防ぐだけであればいくらでも防げるけど、攻撃手段は乏しい。どうなってもいいロボット相手であればいくらでもやりようはあるが対人用の技は少ない。貯めているエネルギーはこれまでの競技である程度消費してしまっている。
常闇はフィールドが適しているから問題ないが個性の制御はまだ完璧ではなく、纏って動く事ができるようになって強化はされてるが自分の動き、技術自体もまだ拙い。
麗日も大技となると物を利用しないと出来ない。自身を浮かせて動くなどが以前より出来るようになってるので取れる手段は増えている。
角取は他が強化されるとどうしても勝ちにくくなってしまった。角の大幅強化が軒並み潰されていて訓練参加してる割には不憫な扱い。だけどその場を見る力はある。
こんな感じですかね。さてさて、これで一通りの出場者が戦いを行いました。ステージも狭まり、次からはもっと入り乱れた戦いになるはずです。そのため視点を絞って書くことになると思います。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。