絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア   作:ひよっこ召喚士

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久しぶりの投稿です。年越してからの投稿頻度が落ちているのは少し問題ですね。待っててくれた方々に多大なるお詫びを申し上げます。

という事で本編どうぞ。



26 雄英体育祭⑪

 あちらこちらで戦闘が巻き起こり、一秒ごとに繰り広げられる攻防の数々、それらは会場だけでなくテレビでそれを見ている者すべてを魅了していた。その戦いも次の局面へと移る時がやってきた。

 

『エリアがまた収縮したぜ。エリアで脱落した奴は居ないが、殆どの選手が中央に集まりつつあるぜ』

「単独で動いてる奴もいれば組んでる奴も居る…中央に来てどう動き出すか」

『さあて、ここいら辺でまだ残っている将来有望な選手たちを集まりつつあるエリアと共にもう一度紹介していくぜ』

 

 そう言ってプレゼントマイクが何やら手元のボタンを押すとモニターの映像が変わり、生徒の顔がアップで移り始めた。

 

『ミッドナイト好みのバトルを繰り広げ、見事に勝ち抜いたスーパーパワーボーイ緑谷出久!!全身からあふれ出るパワーは自らも傷つける諸刃の剣か!?熱い思いを胸に走り続けるぜ!!』

 

 出久の説明が終わるとそのまま直ぐに違う選手が映し出された。それは先ほど三つ巴の勝負をそっと抜け出したB組の生徒であったが何人かのプロヒーローと勘の鋭い観客は何かに気付いた。

 

『角で全てをデストロイ!!B組の所属、アメリカからの留学生ガール、角取ポニー!!障害を打ち砕くその角と戦局を見極めるその瞳で見事に中央までやってきた!!』

 

 またすぐに切り替わった画面、息継ぎもほどほどに次々と紹介していくプレゼントマイク。三人目となると気付いた者も多くなってきた。

 

『言葉巧みに敵を操るヒプノシスボーイ、心操人使!!他人だけでなく自分も高める言霊使いが第三種目を勝ち抜いてきたぜ!!』

 

 また画面が変わったかと思うと凄い音が鳴り響き、映し出されていた映像の場所で何やら土煙が舞っていた。それを見たプレゼントマイクは「あちゃぁ」と口に出しながらもすぐに画面を切り替えた。

 

『そして、その三人が中央エリアの一つ、e5、住宅地エリアに集合だ!!最終エリアまで生き残った猛者たちのバトルが今開始しだ!!さらにこのエリアにはもう一人近づいている選手もいるぜ!!』

 

 もう一度だけ切り替わった画面に表示されてるのは三つ巴の戦いで勝利を手にしたA組の選手だ。先に到着している角取を追いかける様なルートでe5に接近中。

 

『可愛いだけじゃない無重力ガール、麗日お茶子!!その足取りも軽やかに、攻撃方法は超物理!!一つの戦いを征したスーパーガールだぜ!!』

「他にもあちこちで選手が合流しそうになっている。e5が一番先に集まったが、次にc6も三人程集まりそうだな。他の所はチームが崩れでもしない限り直ぐに激突は無いだろう」

『ぶつかったらそっちの紹介もするか。とりあえずはe5に注目だ!!』

 

 


 

 最初に出会ったのは緑谷と心操だった。その姿を確認した瞬間に緑谷は口を閉じて攻撃を開始した。心操は内心で焦りながらも自身の強化を強めて大きく避ける。そして緑谷が反応しそうな言葉をいくつも考えながら緑谷との間合いを測り続ける。

 

『無言で攻撃とかヒーローらしくないんじゃないか?』

「………………………………あーあー、独り言だけど騙し討ちもヒーローらしくは無いでしょ」

「訓練中に伝えた効果時間の倍も空けて喋りやがって、訓練中に騙した意味がないだろうが」

 

 その個性が左右されるまでの時間と言うのは当然存在する。そうでないと誰かに意図的に質問し、その場で答えず後で答えて洗脳にかかるなんて言うおかしな事態になってしまう。その効果時間を偽って訓練していたが緑谷は伝えられた時間以上に間を開けて喋り、なおかつ心操ではなく他の人に伝えるつもりで虚空に向けて喋った。これでは個性が通りはしない。

 

「小手先の技通じないってのは厄介だな。ここで『負けれないんだ。俺は強いぞ』?」

「『フルオーバー・デラウェアスマッシュ』!!」

「ぐッ、おおおおお!!」

 

 ワンフォーオールの力の100%を指込めて放ったデコピン、それは強烈な衝撃波となって心操を襲う。咄嗟に身体を後ろに飛ばして威力を軽減しても意識が飛びそうになるが、流石の精神力で持ちこたえそのまま綺麗に着地を決めると離れた距離を急いで詰めて緑谷と殴り合える距離まで近づいた。

 

「くっ、『オクラホマスマッシュ』!!」

「近づけば腕を振りにくいだろ?オールマイトの技を模倣した物が多いから動きも読みやすい!!『イミテーション・マーシャルアーツ』!!」

「ゲホッ、この…!?『ニューハンプシャースマッシュ』!!」

「なっ!?」

 

 近接戦闘での殴り合いになると互いに攻撃を喰らうが緑谷は大きく振りかぶる事が出来ず的確に攻撃を入れにくくなり、戦況は拮抗していた。緑谷が反撃しようと一撃貰うのを覚悟してカウンターで入れようとした瞬間、二人を目掛けて飛来して来た角を避けようと咄嗟に移動技に切り替えた。心操も驚きながらも回避行動に移ったが二人はそれなりに傷を負ってしまった。

 

「流石にこれ以上エスケープする場所も無いですね。今がファイトの時です」

 

 その攻撃は中央エリアにやってきた直後に二人の姿を確認して仕掛けた角取によるものだった。建物などを利用して飛ばした角、空高くに飛ばしてから落とした角、そして地中を掘り進めた角、全方位からの攻撃は二人に対してそれなりのダメージを与える事に成功した。そしてバラバラな方向から攻撃したことでまだ居場所が割れていないと言うアドヴァンテージを活かして戦いを始めた。何処からの攻撃か分からない二人は戦いを一時的にやめて距離を取っている。心操が口を開くよりも先に緑谷が提案を持ちかけた。

 

「先に角の対処をするってのはどうかな?」

「共倒れするよりマシだろう」

 

 とは言っても先ほどまで戦っていた相手と隣り合って戦うのもおかしな話だろと言う思いから二人は自然と手分けして角の主である角取を探すために分かれた。その間にも角が襲い掛かってくるが、規則性は感じられず縦横無尽に飛び回る。

 

「操れるとは言ってもこれだけ正確に襲ってくるって事はどこかでこちらの様子を見てるはず、少し離れた心操君もまだ襲われてるみたいだし、となるとある程度高所に位置どっている可能性が高い。そうなると考えられるのはマンションのどれか……」

 


 

『戦いを一時中断して角取を探し出したぜ二人とも』

「現状で警戒しなくちゃいけないのはアイツだからな。緑谷は角の破壊も出来るが一方的に削られるのは避けたいはずだ。心操は避けたり弾いたりは出来るが体力を削られたら終わりだ。休戦の判断は悪くない」

『っと、そんな風に話してる内にc6でも動きがあったぜ』

 

 そう言って表示された画面には吹雪いている雪の映像が流れている。そんな極寒の山の中でも変わらずに攻撃を仕掛け合っている二人の選手。

 

『才能あふれる爆発ボーイ、爆豪勝己!!入試1位に対して一歩も引かずに戦い続け、多くの技を操るその姿は見ものだぜ!!第三種目で大きな花火を咲かせることが出来るのか!!』

 

『そして対するは入試1位にしてこれまでの競技でも観客を驚かせてきたバリアガール、山稜瞳空!!その守りの力と操るエネルギーは留まるところを知らねえ!!』

 

『そして、ここには一人の生徒が潜んでいた。自身の個性の特性を活かして戦い、野生をその身に宿す、宍田獣郎太。強化されるパワーと五感でどんな敵も吹き飛ばしてみせろ!!』

 

「雪山と言う環境に移れば嫌でも戦況に変化が起きる。宍田が加わる事でどうなるかも見ものだな」

 


 

 

「へぇ、これはなかなかいいフィールドだね。爆豪?」

「ちっ、分かって言ってるだろテメェ!!」

 

 爆発性のある汗を利用して戦う爆豪にとってこの極寒の地は個性が使いにくくてたまらないマイナスフィールドである。逆に山稜にとっては冷気もエネルギーとして回収できるため運動に支障はなく、吹雪に紛れて仕込みをし易いので戦いやすい場となっている。

 

 爆発を連発させ、体温を維持しようとするが周囲の空気が容赦なく熱を奪い、小さな爆発では到底難しい。大きな爆発を連発させれば疲労やダメージの方が大きくなる。走り続けているため、まだどうにかなっているが上手く機能しなくなるのも時間の問題である。

 

「……チッ、このままじゃアイツの良い的だ。だが逃げる?オレが?…………」

 

 自身の不利な状況をその頭で理解してしまっている。しかし、未だに持ち続けているプライドが逃げると言うその場だけとはいえ負けを認めるかのような行動をとる事を許せずにいた。

 

 そんな爆豪の心境を理解してかにやにやと意地の悪い笑みを浮かべていた山稜は爆豪の攻撃が弱まった事により色々と準備を進めていた。冷気の回収や体力の回復などの他に目の前で手がいっぱいで出来ていなかった索敵も範囲を広げ、敵を見つけた。

 

「爆豪、先に行くね」

「はぁ!?なに言ってんだ!!」

「それと、いつまで隠れてる気?『強制アトラクト』」

「なな!?バレてましたか」

「なっ、テメェはB組の!!」

 

 爆豪と山稜の戦いの様子を見守っており、可能であれば漁夫の利を得ようとしていた宍田。その存在に気付いた山稜は宍田を足止めに残して先に中央へと足を進める事にした。爆豪が負けを認める様な行為を嫌う事を考え敵を用意し、道を塞ぐおまけつきだ。

 

「チビ女!!逃げる気かぁ!!てめぇも邪魔だどけ『徹甲弾(A・Pショット)』」

「くっ、爆豪氏と戦うつもりはまだなかったんですがそうも言ってられませんね『ガオンアヴァリシャス』」

 


 

『山稜の奴、爆豪と宍田をぶつけて一人で最終エリアに突入だ!!』

「爆豪のプライドから逃走しないと踏み、爆豪の弱体化と宍田の地形からくるアドヴァンテージを即座に判断してやってるな」

『逃走と言っても敗走と違い、敵同士をぶつけるというしっかりとした戦略性のある撤退だ』

「逃げる道も一人だけが通れる様な場所を通るか作っている。自然にやってるが結構な技だ。あれでは追いかけようとすれば必ず相手とぶつかる。まだ始まって居ないが収縮されれば次で最終エリア、中央以外の方へ逃げるのはリスクが高い」

『おっと、最後にもうひとエリア選手が集まってる場所があるぜ。エリアe4、最初から中央エリアに集まっていた峰田、泡瀬、庄田のラッキーチームと凄いバトルを見せた上鳴、塩崎とそれを止めた発目を含めたチーム。それぞれ便宜上峰田チームと発目チームと言うか。発目チームもチームを組んでからは一度も戦闘することなく中央にきたある意味ラッキーチームだな』

「人数は一緒だが罠を仕掛け、地形も把握できている峰田のチームの方が有利だろうが、純粋な戦闘では上鳴と塩崎の方が上だろう。そして発目はアイテムの持ち込みがあるから何をするか分からないのが相手には怖いだろうな……それで紹介はもうしないのか?」

『せっかくのチームだからチームとして紹介しようと思ってんだよ。くっつく、合わせる、吹っ飛ばす!!罠にまみれた都市を構築、油断した奴から持ってくぜ峰田チーム!!対するは防御不可避の電撃に、攻防一体技ある蔓遣い、オリジナルぶっ壊れアイテム、何が起こるか分からないビックリ箱だぜ発目チーム!!さて、これだけの人数が集まるのもチーム戦と言うのも第三種目では初めてだぜ。どんなバトルになるのか期待が高まるぜ!!』

 


 

 e4、都市エリアの夜であり、照明システムにより明かりの無い場所では少し先も見えにくいこの場所。そこに足を踏み入れた発目チーム、中央までの道のりを共にした彼らは取り決めに従い別れようとしていた。

 

「では中央エリアまでたどり着きましたのでここで別れましょう」

「ああ、互いに感知できない範囲まで移動するまで不干渉、そこまで入り組んでる都市でもないから10分もあればいけるだろう」

「うーん、残念です。私のベイビーたちが協力して使われる所を見せたかったのですが」

「敵とは会わなかったからな」

「運が良かったのですから嘆く必要はないでしょう。最後まで残れば貴女のベイビーとやらも多くの目に触れるでしょう」

「運が良かったら最初にたどり着いた最終エリアがハザードだったりしないと思うけどな。発目のアイテムが無けりゃ辛かったぜアレ」

「ふっふっふ、そうでしょうとも!!私の可愛いベイビーであれば数メートルクラスの積雪であろうと楽々進めます。付属のヒートマシンを使えば使用者もぬくぬくです」

「暴走で私の蔓を焼きかけなければ手放しで褒めれたんですけどね」

「それ以前にいくらハザードとは言え数メートル規模の積雪を用意する学校も学校だよな。それに対応するアイテムを作ってる発目もやべーけどよ」

 

 初めのうちは互いに牽制する姿も見られたが発目のアイテムで互いに苦労する姿を見ている内に警戒する気が亡くなった上鳴と塩崎。暴走するが悪気は欠片も無い発目に対しても怒りより諦めが勝り、なんやかんやでいいチームだった。こっから先は真剣な勝負だと気持ちを引き締めてその場から歩き出したその瞬間、路地の方から車やガレキなどが山の様に吹っ飛んでくる姿が見えた。

 

「ぐっ、『局所帯電・反発(リペル)』」

「危ない『キリストのゆりかご(シュトーレン)』」

「上鳴さん電気借りますよ。『即席簡易電磁砲』!!」

 

 前方に大きく電撃を撃ち放ちどうにか車を弾こうとするが数が数で全てを裁き切れずにいると横から蔓が飛んできてドーム状に覆い、上からの落下物を防ぎ、それでもまだ向かってくる物を発目が電気を纏っている上鳴も両腕にコードを巻き付けると物凄い勢いで筒から弾が飛んでいき、車などを吹き飛ばした。

 

「何かがこのエリアに居るのは間違い無さそうだな。それと悪ぃな助けてもらって、干渉無しっていって別れた直後なのに」

「咄嗟に手が出ましたね。ここまで組んで来たから癖になったんでしょうか」

「それにしてもどういう仕組みで飛ばしたんでしょうか?路地の方にズームしましたが特別な機構は無さそうです。おそらく個性によるものだと思いますが」

「大きい瓦礫や車の塊にモギモギがくっついてる。これを用意したのは峰田だな。だがくっつけるだけで勢いよく弾いたりは出来ないはずだ」

「庄田さんではないでしょうか、衝撃の解除で吹き飛ばしたのかと」

「んん?この瓦礫、よく見ると接合部分がありますよ。ほらここ」

「接合って言うとたしかB組の」

「泡瀬さんも一枚かんでいる様ですね」

 

 これだけの規模の罠が仕掛けられていると言う点、そしてそれらが明らかに複数人の手によって仕掛けられていると言う情報からその場の三人は少し思案すると顔を見合わせ、ふと笑った。

 

「もういっちょチームアップと行くか?」

「そうですね。ではこの推定3人のチームを倒すまででどうでしょうか?」

「良いですねぇ!!ようやく私の可愛いベイビーたちが日の目を浴びますよ!!」

 

 


 

「誰かが罠に引っかかったみたいだが、どうだ?」

「ダメだ対処された。それに向こうもどうやら手を組んでるみたい。複数の影が薄っすら見える」

「罠で疲弊するのは待つが、相手が誰か分かんねぇと対策も出来ないからな。少ししたらオレが行ってくる。庄田、撤退の時は頼むぞ」

 

 


 

『バチバチの戦闘とはならないがスゲー攻防だったな』

「峰田チームの手によって早くから準備されていたフィールドと早くから組んでいて即席とは思えないコンビネーションで対処した発目チーム、待ち構える側と挑戦者と言うバトルロワイヤルとは思えない戦いになったがこれはこれでいい経験になりそうだ」

『だけどよイレイザー、あの罠のレベルおかしくねぇか?直撃してたらケガじゃ済まない気がするんだけど』

「あいつ等ならなんとか出来るだろ。飛んでくる物の大きさや重さで圧倒されてたが速度自体はそうでもない、全部まともに受け止める様な事でもしない限り重症にはならんだろ」

『そうか、それとこのエリアには魅せる氷炎使い、自然が遣わす力の化身、轟焦凍も来るぜ!!』

「どのタイミングで来るかだが、こっちも乱戦不可避だな」

 

 




次で戦いの場面を全部書いて、生き残った組で最後の戦い。誰が残るかは実は書いてる途中で何度か変更してるんですよね。みなさんも良ければ予想してみてください。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。

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