絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア 作:ひよっこ召喚士
一時的とはいえ心操と休戦の協定を結んだ緑谷は少ない情報から相手の位置を考え、相手を捉えるために目立ってしまうのを承知で高い位置を取るために一気に腕を振るって上空に飛び出した。
「…見つけた!」
分かりやすい最上階に立つような真似はしないだろうと思い、屋上より少し下の階層を観察しているといくつか角が掠った後がある建物を見つけ、その周辺をよく目を凝らすと目的であった角取の姿がチラッとうつった。
「スマッシュ!!」
「ワァオ!?これは不味いですネ」
緑谷が浮かび上がったのを警戒して姿を隠していたがその観察眼でみごと辿り着かれてしまった。しかし、角取もこのまま終わるつもりはないようで一撃を躱すと外から壁を突き破って飛んでくる角の攻撃を繰り出した。
「『typhoon horn』!! 」
「『拡散型 デトロイトスマッシュ』!!」
緑谷は周囲から迫ってくる角を見て、力を抜いて、拳の力を収縮させずに放つことで攻撃によって生じる拳圧を拡散させて全ての角を弾いて見せた。建物を壊さない様に配慮したからか角を壊すには至らなかったが弾いた角は大きく離れていき、直ぐに攻撃には使えない。角を発射して操作しようにもすぐには難しいだろうと判断して緑谷が角取の懐に入ると、角取は姿勢を下げると迫って来た緑谷の方に頭を差し出した。
「私も必殺技自分でも考えたんですよ『headbutt horn shotgun』」
「ぐっ、おりゃぁあ!!」
角取は緑谷の身体に頭を打ち付けると同時に角を発射して緑谷の服をさらって緑谷を吹き飛ばした。そのまま続けて発射した角で緑谷にも攻撃が通る。しかし、直ぐに緑谷は勢いよく体を捻り、服を犠牲にする事になったが角の拘束から逃れた。
「トッテオキ?でしたのに簡単に対処されてしました。緑谷クン、上脱げちゃいましたね。でもとってもcoolですよ?」
「ははっ、ありがとう。拳藤さんも見せてない技があったのに油断して綺麗に喰らっちゃったよ」
「でも、緑谷クンを倒せてないですからね。角に乗って逃げても分が悪いですし、降参でーす!」
拘束時間がもう少し長ければ建物から飛び出してまたhideする予定だったんですけどね。と残念そうにつぶやく角取。その後でリタイアの宣言もしていたので本当に諦めたのだろう。
「目の前で緑谷クン、レベルの人と戦ってると外まで行っちゃった角を操作する暇が無かったです。見つかるのを前提にしてでも屋上に居るべきでしたね」
「それだと壁越しに攻撃とかも出来ないし、一長一短じゃない?」
「うう~ん、緑谷クンみたいに壁を壊した瞬間に気付いて対処されると一緒な気がします。空を飛ばして助走距離を用意した方が強い気もしまーす!まぁ、なんにせよ頑張ってくださいね!!」
『おおっと、ここで緑谷が角取を追い詰めて、角取はリタイアを宣言だ』
「遠距離主体の奴が近距離の権化のような奴に近づかれればああなるのも無理はない。一応脱出できるように後ろの扉や横の壁とかも見てたが追いつかれると判断したんだろうな」
『隠し技は上手く決まってただけに残念だぜ』
「どうしても近づかれると弱い個性ってのはある。それを逆に罠にして一撃を入れた角取は普通に上手かった。踏み込みを強くしたり、相手を逆に引き寄せたりする動作を入れればもっとあの技は強く出来るだろうな」
『緑谷が戦ってるのを見てる間に同じエリアで更に戦いが起こってるぜ』
「ん、あれは角取を追いかけてた麗日か、心操と出会って戦ってるようだが、やはり対策されると心操はやりにくいか」
緑谷が角取を見つけた頃には既に麗日もエリア内に到着していた。e5に到着したことに少し安堵していたが、他にも選手がいるハズであると警戒し、進んでいく。すると何やら破壊音と足音が耳に入ると確認するためにサッと跳び上がり、その相手に姿を捉えた。
「心操くんか……あれは角取ちゃんの……」
角を弾いたり避けながら進んでいる心操を見つけるが角に狙われてる所に突っ込めば自分まで狙われかねないと判断し、姿を見失わない様に追うだけにとどめていた。しかし、少し時間が経つと心操を追っていた角は制御を失い、その場に落ちた。
「……緑谷が角取を見つけたか」
(デクくんが居るんだ!)
「音的にあそこか、戦いが終わった瞬間に声を掛ければ、潰せるか?」
「……!」
麗日もこれが競技であり、上を目指すうえで恨みっこなしの戦いであると理解しているが、関わりが深く、思う所がある麗日は黙って居られなかった。静かに瓦礫を浮かせると心操のもとへと投げ飛ばした。
「あぶない!?麗日か……」
「………………奇襲してごめんね。角に教われてたみたいだけど角取ちゃん知らない?前のエリアから折って来てたんだけど逃げられちゃって」
「知らないな。それで『やる気か?』」
麗日は心操からの問いかけを聞くと口で答える事はせずに頷いて示した。明らかに疲弊している心操を狙うというのは悪くない選択である。これから先、戦いが続いていくであろう状況で集中させてくれない個性を持っている心操は誰にとっても厄介である。
「良い具合に投げやすい物が落ちてるね」
「おいおい、角取がいきなり操作し始めたらどうする気だ?」
「………………ん?デクくんが負けるわけないじゃん」
「俺の独り言きいてたな」
「まぁね」
『俺は早い、誰よりも』
麗日は瓦礫よりも投げやすいと言いながら鋭い角を心操に向かって投げつける。だがそれだけでなく角をバット代わりにして岩を撃ちだしたりもしている。大ぶりな物だと振りにくいが、丈夫で短い武器は非常に役に立っているようだ。
「『ホーンホームラン』!!」
「即興技でやられるほど弱くはない!」
「……………距離を取れれば十分、近づかれると厄介なのは知ってるからね。『流星群』!!」
「ぐっ、はぁあ!うっ」
弾いたり、避けたりしているが落ちてくる無数のガレキに対して集中すると横から飛んでくる攻撃を喰らい、そちらに対処してると上からの攻撃を捌ききれない。横道にそれて身を隠すのは悪手、機動力では負けており、時間を作れば相手はさらに飛ばす物を用意するだけなのだから。
「流石に相性が悪すぎる………俺はこれは嫌いなんだけどな」
珍しく弱音をもらす心操を意外な目で見る麗日、しかし続けていった言葉とこちらをじっと見つめる視線に何か嫌な予感が走る。だが何をする鎌で分かる訳がなく、心操はそっと口を開いた。
『お前は弱い、麗日、お前じゃ俺に勝てない』
『金の為だっけ?そんな物で俺の夢に勝てると思ってるのか』
『騎馬戦だってお前が居なくても別に問題は無かっただろ』
『個性で一方的に攻撃して、近づかれたら負けるからだろ』
『麗日お茶子、お前は弱い、お前はオレには勝てない』
遠いはずなのに近くで聞こえる様なふわふわとした感覚、唐突な分かりやすい声に呆然とし、まずいと思い耳を塞ぐがもう遅い。否定したいが否定する言葉は吐けない、そうなると声は相手に浸透するだけである。動きが鈍れば後は心操にはどうという事も無い。
『眠れ』
「あ、あぁ………………」
「これは嫌いなんだよ。否定を押し付けるなんてな」
暗示と洗脳を同時にかける事で相手は言葉に反応することは出来ない。麗日は呆然として動きを止める前に、相手の言葉を否定する前に、その場を離れなくてはいけなかった。
「ん、あ、喉も体も限界だな。こりゃ」
『おおっと、クラスメイト対決である麗日VS心操、勝者はヒプノシスボーイ心操だ!!なんで麗日は眠ったんだ?』
「相手に暗示をかけたんだろうな。あいつの暗示は手助けや教科だけじゃなく相手への妨害やデバフも出来る。声を出して否定すれば洗脳にも掛かっちまう。何をする気なのか考える前に逃げるか、別の音でかき消すかするべきだったな。咄嗟に防ごうと耳を塞いだのは悪手だ」
『両手が塞がって戦えるわけがないからな。にしても選手の声が聞こえないのが残念だな。どんな言葉で惑わしたのか興味深いぜ』
「都市エリアはまだぶつからないか…雪山が面白い事になってるな」
そう言って相澤が覗いた画面にはB組の宍田によって殴り飛ばされている爆豪の姿が大きく表示されていた。
次もたぶん短くなる。その次が長くなる。
次で爆豪、宍田とチーム対決+轟になる。
そして最後の戦いと表彰式で体育祭が終わる。
前回より予定している話数が増えてる事には突っ込まないでください。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。