絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア   作:ひよっこ召喚士

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実は活動報告でお知らせしているのですが、パソコンが壊れていて現在いつもどおりの執筆が出来ておりません。これも途中からはスマホで書きました。直るか、新しいのを買うかも決まってない状態なのでいつになるか分かりませんが、しばらくの間は投稿がこれまで以上に遅くなりそうです。


28 雄英体育祭⑬

 

 雪と風によっていやでも体温が低下していくのを感じる爆豪。爆発させることで何とか維持しているがそれでもギリギリな状態で宍田と真正面からやりあうのは分が悪かった。

 

(コイツは此処に潜んでこの地形になれてんのも面倒くせぇ……ただでさえ無駄に消耗してんだ。アレは使えねぇな)

 

 殴り飛ばされながらこの場をどう対処するのかを考える。普段の爆発は使い物にならない、奥の手は此処では切れない、真正面からの殴り合いでは不利、となれば後は罠に嵌めるぐらいしかねぇかと自分の力の無さ苛立ちながら真っ白な雪に向けて口の中の血を吐き出した。

 

「『発煙弾(スモーク・グレネード)』」

「この吹雪の中で姿を隠せると思うのですか!!」

 

 爆発によって視界を遮るような薄暗い煙を生み出すが絶えずに拭き続ける雪を舞いあげる様な風で身体を隠すようなことはできるはずがなく、宍田は煙の隙間から見える爆豪につかみかかる様な形で更に迫った。

 

「はっ!燃えろ『蒼煙』!!」

「ぐっ!?煙の中で燃やし…ゲホッ、ゲホッ!?ゴホッ、ゲホッ!!??」

 

 燃焼反応を起こした後に残る煙の中では強い爆発を起こせるわけがないと考えていたが次の瞬間に煙の中に蒼い炎が走ってそのまま宍田の身体を燃やした。炎を喰らい驚いて開けていた口からいくらか煙を吸い込んでしまったようでむせ込み、身体を動かしにくくなる。

 

「はぁはぁ、これは毒?」

「一部だけ燃やしきって無かっただけだ。ああ、吸い込みすぎるなよ二酸化炭素だけでなく、極めて有毒な一酸化炭素も混じってるからな。一気に吸い込んで気絶しなかったのに驚いたくらいだ。頭も痛いし、気持ち悪いはずだぜ?」

「咄嗟に吐き出してみましたが正直辛いですな。でもこれ位で止まるほど弱くもないですぞ!!」

 

 そう言って見せるが先ほどまでと違い呼吸がし辛そうな様子が傍から見てとれる。ここは吹雪いている山という特殊な環境であり、寒さに強い宍田もやや低酸素な状態で有害な気体を吸い込んだダメージは大きい。

 

「それに爆豪しも何やら血を流しているようですからな」

「それこそどうした!!こんくれぇ受け入れ済みだ!!」

 

 爆豪も煙の中に居たために自分で繰り出した攻撃の余波を受けてしまっている。気体は吸い込んでおらず、耐性がある分宍田ほどではないが炎で少し焼けただれた場所から血がにじみ出ている。宍田の動きが悪くなってこれでイーブンとは決して言えそうにない。

 

「『ガオンレイジ』!!」

「近づかせるか!!『徹甲弾機関銃(A・P・ショット・オートカノン)』!!」

 

 近づいて更に攻撃を加えようとする宍田に対して近寄らせまいと爆発の威力を少しでも上げる様にしたうえで攻撃の数を増やす事で対応する。連続で爆発させている間にもぽたりぽたりと血が流れているのが見える。

 

「貧血になる前に終わらせましょう。『ガオンアヴァリシャス』!!」

 

 獣の力を込め、目の前の敵を倒さんと放たれる薙ぎ払う動作の攻撃。戦闘の影響で踏み固まった雪を見極めて一気に近づいて見せた。絶体絶命と思われた爆豪はニヤリと笑って見せた。

 

「動けないから来てくれて助かったぜ。歯ぁ食いしばれよ?『爆熱地雷』!!」

 

 諦めたかのように静かに量の腕を下げるとそのまま足元の雪に向かって爆破を放った。弱い爆発で宍田どころか雪さえも吹き飛ばせない様な小さな爆発であったが、その爆発の火と熱が雪に触れた瞬間に爆豪と宍田を巻き込んで大爆発を起こした。

 

「あー、クソッ!?耳がイカレやがったか…まぁいいコイツは倒せた。血も流しすぎたがまだ戦える!!」

 

 直近で思いがけない高威力の爆発を喰らった宍田は見事に目を回し、耳からは血を流しながら倒れていた。爆豪も耳を傷めたのと少しふらつくがまだ動ける様でとうに見えなくなった山稜を追いかけるべく、雪山を降りて行った。

 


 

『もうダメかと思われたが、まさかの大逆転!!スーパーデンジャラスボーイ、爆豪勝己が自らを巻き込んだ大爆発で見事勝利をもぎ取った!!』

 

「やり方が上手いな。爆豪は腕から流れる血に、手から出る爆発性の汗を混ぜ込んで下の雪に垂らして溜めてた。血をたらした雪を見て思いついたのか、自分を巻き込んだ攻撃をしたのもわざとでそこから全部が仕込みだったんだろう」

 

『なるほど、汗だけであれば自身もどれくらい溜まってるか分かりにくいうえに気付かれる可能性があるからな。汗入りの血を溜めて疑似的な爆弾を作って相手が来たところをドカンか!!』

 

「ああ、ある程度垂らした後は攻撃で暴発しない様に爆発の範囲を狭める様に手で押さえる攻撃を選んでたみたいだしな」

 

『罠にかかる前に自爆したら意味ねぇからな。にしても賢すぎるぜ』

 

「先に逃げていた山稜はd5に向かったようだがまだ八百万に仕掛けていないみだいだな。あいつは感知も出来るから居るのは分かってるはずだが、回復を優先させたのかそれとも爆豪を先にぶつけるつもりなのか、爆豪もあの状態ですぐに戦うようなことはしないだろう。動くとすれば八百万から仕掛けた時だろうな」

 

『おっ、e4も面白い事になってんな』

 

 


 

 都市エリアの夜、その闇に紛れる様に仕掛けられた罠の数々、それを避けたり壊しながら進んでいく発目チーム。だがエリアの中央に向かうにつれてその顔には余裕がなくなってきている。

 

「あいつら好き勝手やり過ぎだろ!?」

「喋ってないで電気をください!アレヤバいですよ!!」

「蔓で足止めします!!」

 

 闇雲に探すわけにはいかず、在り来たりではあったがエリアの中心部を目指して進んでいたが、中心に近づくほどに罠の数が増え、その規模も大きくなってきていた。最初に焦った瓦礫や車が吹っ飛んでくるのなんて可愛いものだった。

 

 規模が大きくなってくると罠同士が連動しており、四方八方から何かしらが飛んできたり、逃げ道を塞ぐように火が上がったり、爆発するなど当たり前。今となってはビルが丸ごと崩れてくるような仕掛けが平然と存在し、その対処に追われている。

 

「周りのビルもボロボロです。今のうちに破壊するか、逃げ道を確保してください!!」

「今やる!!発目!これを何処にぶっ放すんだ!?」

「そのままぶち抜ける威力のはずですので一気にど真ん中をいってください。通電後、30秒で爆破します!!」

「『局所帯電』、行っけぇ!!」

 

 上鳴は発目から受け取った機械仕掛けの砲筒に一気に電気を流すと仕掛けが稼働し、始めに電磁力の力で内部の弾が射出された。弾にも磁力が在る様で周囲の鉄を集め、肥大化しながら目標物に突き進み、着弾する。そしてその次の瞬間には周りにくっついていた鉄を飛散させながら大爆発を起こした。

 

「マグネティックボムとでも名付けましょうかね?誤作動して手元で爆発しなくてよかったです」

「安全性ぐらい確保しといてくれよ」

「いやぁ、万が一の場合は砲筒の方上鳴さんの『反発』で射出すれば行けるかなと思いまして、まぁ無事成功したから良いじゃないですか」

「そろそろ一度補給した方が良いと思うのですが、ここは暗いのでせめて水だけでも私は欲しいです。お二方はどうしますか?」

「俺も電気がヤバいかもな。自分で作る分だけじゃ賄えきれねぇな」

「私のベイビーも減ってきましたね。出来れば機材とかの置いてある場所を見つけたいです」

 

 そうは言っても罠が発動しているという事は連動している部分やワイヤーなどの簡易的な仕掛けもあるが遠隔で個性を操作しているのは間違いない。おそらくこちらの様子を見ている存在がいる。

 

「目ェ瞑っとけよ。その後ダッシュだ。3,2,1,『雷光』!!」

 

 残り少ない電気を腕ではなく、指先に集めると一気に解放し、周囲を照らすだけではなく、直視すれば目を焼き、一時的に動けなくさせるほどの暴力的な光が迸った。

 

 


 

 

「あー、ちくしょう。やられた見失った」

『こっちが仕掛けたカメラの方も完全に電気ショックで壊れてるな』

『個性無しで仕掛けた罠に引っかかってくれない限りは特定できそうにないか』

「ある程度消耗させては居るはずだし、あの短時間で遠くに行くのは無理だ。集合して準備が整う前に仕掛けた方が良いだろ。たしか詳しい地図に店とか載ってたか?」

『ああ、うん。商業ビルとかの内部までは分からないけど、だいたいの区分はあるよ』

「工具や電化製品とかを売ってそうな場所をピックアップしてくれ、きっとそこに居る」

 

 


 

 峰田が予想した通り、発目チームの三人はホームセンターの一角に隠れて休息をとっていた。軽く胃に物を入れたり、水分補給も行い。後は各自で戦いの準備を整えている。

 

「店を見つけたおかげで部品に困らなくはなりましたね。それにサポートアイテム作りの設備と比べると弱いですが手持ちの道具よりはマシですね。そっちはどうですか?」

 

「おかげさまで、この疑似太陽光でしたか?本物と比べると流石に劣りますがそれなりに回復できそうです」

 

 そう言いながら薄っすらと光を放ち、水を滴らせているスタンド型の器具と自身の蔓に視線を送る。そして状態を確認すると改めて発目の力に感嘆する。

 

「ふっふーん、少ない材料でLEDいじくるのは大変でしたよ。専用の機材があれば波長を調節して太陽光よりもその蔓に適した光をいつでも浴びれるようになるベイビーも作れるんですがね。長時間は無理ですが首輪型で光と水を補給できるアイテムももうすぐできますよ」

 

「いえ、夜の環境でどうしようかと思ってたので十分ありがたいです。それにしても首輪ですか…せめてチョーカー型と言って欲しいんですが」

 

 サポートアイテムだと分かっているし、同性からとは言え堂々と首輪をつけられるという状況はどう表現したらいいか分からないが複雑な心境である。

 

「いえ、ここだと小型化にも限界がありチョーカーと呼ぶには少々ごつ過ぎるので、難しいですね。他にも足りないものもありますし、細かい調節が出来ないので蔓には良いですが人体の方に悪影響が出かねないので出力を絞るしか無かったりするんですよねぇ」

 

 そんな風に愚痴をこぼしながらも楽しそうに発明をしていく発目の様子を見て感謝しながらも苦笑を隠せない塩崎、そして準備を進めている間に先にアイテムを渡していた上鳴が戻って来た。

 

「ああ、実際の太陽光だって紫外線とか危ないもんな。ところで一通り作って貰ったもんは試したが如何せん燃費が悪くないか?このヒートナックルはマシだけど冷却が弱い。排熱時も危なかったが何より連発すると俺の腕が焼けるかと思ったぞ」

 

 いくつか渡されたアイテムの中にはそれこそ一回放てればおしまいと言った燃費の悪い物もあり、これではこのサバイバル環境で必要となる継戦能力が足りない。他にも使えはするが弱かったり、逆に自身に被害が出かねなかったりとやはり細かい調整で難が出ていた。

 

「熱への変換は分かりやすいんですけどねぇ。電気ストーブや冷凍庫とかから流用しやすいですし、威力も出しやすいんですが……そうだ!A組にたしか炎と氷を扱う人が居ましたよね。それと同じで連結した機構を作って交互に使えば今だけ使うには良いですかね

 

「疑似的な轟か…威力の差がでかいしネタが割れたら対処されそうだけど使い捨てになるよりマシか」

 

 どう考えても轟の個性と比べたら出力で劣る。初見であれば予想外な攻撃として驚かせることが出来るかもしれないが、轟を相手に訓練だってしてきたのだから対策は簡単にされてしまう。だが、一発しか使えない重りとなるよりはいい考えだろうと割り切る。

 

「それと他の武器用に小型の発電機でも用意しますか?流石に大きくなりますけど、背負える程度に抑えますよ?」

 

「他のエリアに移動しないといけない場面もあるかもしれないし、電気を確保する手段は持っとくべきか……それに回復を待ってくれない状況も在り得るからなぁ。とは言っても流石に発電機は動くのに邪魔だぜ?」

 

 発目の提案は悪くはない、戦いにおいて補充と言うのはかなり重要である。しかし、どれだけ小型化できるかは上鳴には分からないがどれだけ小さくても荷物を詰め込んだリュックより重たくなるだろう。それを庇いながら戦うようなことは戦況が激しくなっていけば不可能である。

 

「それならバッテリーにしますか。回復回数に上限は出来ますが発電機より一瞬で電力を確保しやすいですし、腕や足につけるようにして、使用した物を落とすようにすれば回復後に動き方を変える事も出来るでしょう。内部に爆破機構でも取り付けますか?」

 

「いや、今は変に凝ったものはやめとく、回復優先で頼む。凝ってるのは貰った武器だけで今は精一杯だ」

 

 渡された武器の中には複数の効果を詰め込んだ物があり、それと併用して使っていくとなると碌に練習も出来ていない状況では頭をこんがらがせるだけである。

 

「了解しました。もう時間も無いですし、作れるだけ作っちゃいますよ!!」

 

 エリアの収縮は3人も確認している。最終エリアに到着し、直接ではないが他の選手と争っている現状からも分かるように、これより後で準備をする時間を取る事は出来ない。ある意味ここが発目の最後の見せ場とも言えるため、いつも以上に張り切っている。そうして、ある程度の準備が整ってきたところで、なにやら違和感を感じ、視線を自分たちがいる店の外へと向けた。

 

「ん、あれは?ちょっ!?みなさん敵襲です!!」

 

 個性”ズーム”を持つ発目は5キロ先の物でもくっきりと見る事が出来、照準を合わせられる。闇の中で何かが動いているのをその眼が捕らえた。自分用にこのエリアに合わせて作った暗視ゴーグルを慌てて装着するとこちらへ向かってきている姿までしっかり見抜いた。

 

「向こうも全員が武器を持ってる。一人が物凄いスピードで飛び跳ねて来てるから先に撃つよ」

 

 照準を簡単に合わせられる能力は遠距離攻撃武器との相性がとても良い、向こうが攻めてくる状況であれば当たる確率は格段にあがる。自身の眼で相手に銃身を合わせ上鳴の電撃を込めた弾丸を射出した。一発目は避けられた様で続けて二発目も撃つが個性を用いた移動でこれまたかわされる。

 

「エネルギー不足が痛いですが、貴方の移動方法は上鳴さんが教えてくれてます。三度目は無いです!!」

 

 複数のモギモギが投げられており、どこに飛ぶのか分からない様にしているがズームによってモギモギの投げられる先を正確に予想している発目は確実に使われないモギモギを除外し、これまでの軌道から跳べる飛距離を推測し、さらに峰田の移動先を絞る。そして最後は勘に任せて相手が跳ぶより先に銃身を向けて放った。

 

「当たったか!!」

「いえ、動きは止めれましたが直撃は防がれました。咄嗟に手元にあのモギモギでしたっけ?それで銃弾を受け止めた様です。おそらく衝撃は伝わってるので右手はしばらく使えないとは思いますが、厄介ですね」

「いやそれで十分だ。罠で誤魔化してるが、あいつらは近づかせると不味い。拘束系の個性は戦闘不能扱いにするのが簡単だからな」

 

 罠を仕掛けまくっているというのは陣地を守り、敵を近づかせない様にする行動に思えるかもしれないが今回の場合は違う。あれらは敵を疲弊させるのが目的であり、弱った所を個性で行動不能にするのが向こうのやり方だと上鳴は踏んでいた。

 

「庄田さんも強い事に変わりありませんが、この競技のルール上、泡瀬さんが厄介ですね。峰田さんが正面から来てるという事は庄田さんと一緒に奇襲狙いか」

「そう読ませて隙を作った所をあちらの方がと言った可能性もありますよ」

「どちらにせよ二人に捕まらないように気を付けるしかねぇな。崩す役が庄田だろうがな。」

 

 


 

「悪いまた止められた」

 

 さっきの見張りでも誤り逃走を許してしまった。今回も避け切れると踏んでいたのだが動きを止められてしまった。サポート科である事は分かっていたが個性まで把握していなかった。この状況で的確に狙えるとなるとそう言った個性を持ってるのだろうと峰田は痺れた右手を気にせずに目の前の状況に集中する。

 

『あれを防げてる時点で十分だと思うけどね』

 

『それにそこからなら届くだろ?』

 

 そう、不用意にただ近づこうと思ったわけではない。もちろん、そのまま近づけるのであれば一気に拘束まで持っていける自信はあったがこのような状況になった時の事を考えて準備はしてあった。

 

「ああ、念のため多めに準備して正解だったぜ。行くぜ合わせ技『ミネタビーズ5節(ミネタビーズファイブジョイント)インパクトロケット解放(ファイア)』!!」

 

解放(ファイア)!!』

 

 もぎもぎをくっつけただけのそれを懐から取り出すと動く左手で大きく振りかぶて投げる。距離が離れているのでそれだけで届くわけがないが連結したもぎもぎそれぞれの込められた衝撃が解放される事で急加速して発目チームに飛んでいく。先ほどまで発目が撃っていた銃の弾速に勝るほどの速度を出していたが如何せん距離が開いており、物が大きかったためにそれは簡単に避けられた。

 

「今だ!!」

 

解放(ファイア)!!』

 

 推進力とは別に仕掛けていた衝撃を解き放つと相手の足元に到着していたモギモギが周囲に飛び散るように壊れて発目チームを襲った。

 


 

「おい、発目!大丈夫か!?」

「幸い攻撃力は無いようです。足は封じられましたし、背中にもくっついてるので倒れたら終わりですね。ですがまだ手は使えるのでサポートは出来そうです」

 

 ズームで倒れた峰田の挙動を随時確認していた発目は何やら連絡を取り合っている事に気付き、攻撃が届いた後に合図を出してるのを見て咄嗟に二人を庇い、全滅を避ける事が出来た。それでも発目の片足をモギモギが覆われてその場から動けなくなっている。

 

「う~ん、これどうにか取り外せないですかね?」

「もぎもぎに触れるのは止めとけ、アイツが言うには調子が良ければ三日はくっつき続ける粘着力だ」

「えっ、体育祭終わっても私このままですか!?」

 

 流石に帰る事も出来ずにこの場に設置され続けるのは発目も答えるようで、少し動揺している。しかし、足元のモギモギへと向ける視線はそれがどういう物なのかとじっと解析するかのような目であった。

 

「いや、流石に調整してるだろうが2,3時間は覚悟しといた方が良いだろうよ。にしても厄介なもの準備してたな。だが追撃は無いし、不意打ちの為に身体に隠すために一発しか持ってなかったんだろ。アレは峰田以外には持てないから他に作っててもすぐには使えないだろう」

 

 モギモギは峰田以外にはかなり強制的にくっつく、それ故にモギモギで作られた武器となると峰田が持ち運びから何までやらないといけないので使用する状況は限られるだろうと仮説を伝える。

 

「布とかで覆って他の人が運ぶ可能性は?」

「それだと最後の爆破が意味なくなるんじゃねぇかな。アイツのモギモギも無限に使える訳じゃないから無駄遣いはしたくないだろ。まぁ今いったみたいに布一枚でも挿めれば防げるから適当な物を持って前に出るとするか。このまま押し込められればじり貧だ」

 

 モギモギの特徴を知っていたがこれほど遠距離から仕掛けるとは思っていなかったので警戒できていなかったが、このような攻撃方法があるのであれば視界を遮る事になっても咄嗟に防ぐ手段は持っていた方が良いだろう。

 

「そうですね。私は蔓で防げば逆に利用できるかもしれませんのでそれを狙ってみます。発目さんもお気をつけて」

「わざわざ動けないのを狙ってくるとは思えないけど、何かあっても時間稼ぎくらい任せてください!!なんなら相手を道連れにして負担を減らしてやりますよ。ですから気にせずにお二方は戦って下さい!!」

 

 上鳴と塩崎は動けなくなった発目がアイテムを取れる様に手を伸ばせば届く距離にアイテムを寄せてから戦闘に向かって行った。

 


 

 罠の攻略だけでなくようやく始まった派手な戦いに会場は湧いていた。緻密に建てられた作戦で戦いを有利に進める峰田チームとアイテムやサポートのもとで戦う発目チーム。

 

『電気を用いた武装をした上鳴と光と水を補給しながら戦える塩崎、クラスも科も超えた力で敵の策略を打ち破れるか!!』

「簡単に言えば生身の人間と武装した人間とどっちが強いかって話だ。発目もサポートは出来るが前面に出るタイプじゃない。峰田は上手くやってるが現状で得たのは数の優位だけだ。個性は割れてるがアイテムは中身が割れることはない。他がまだ距離を取ってるのはどんでん返しを喰らわない様にだな」

『だが、ドンパチが続くのはそれはそれで不味いぜ。A組の実力者が一人、轟焦凍がエリアの中にもう入ってるぜ』

()()()()()()()()()……最初の授業に状況は似ている。見つけたら今度は油断せずに対応するだろう」

 

 


 

「壊れた跡に、これは罠の類か……誰かが戦ったのか。それともまだ戦ってるのか?」

 

 中央エリアにやって来た轟は既に大技を出した際の疲労は回復しており万全な状態であった。しかし、ハザードエリアとはまた違った壊れ方をしている都市を見て状況を判断しようとしていた。

 

「凍らせて索敵するには広すぎるか……とりあえず壊れている方向に向かえば何かあるだろう」

 

 発目たちが一度通った比較的安全な道を進んでいく轟、残った罠も瞬時に焼き切るか凍らせて機能を停止させて、悠々と道を歩いて行く。戦いの音を拾える場所にたどり着くまでの時間はそう長くはかからないだろう。

 

 


 

「いつもと違う意味でいやらしい真似ばっかりしてくれるじゃないか峰田!!『迅雷』!!」

「それがおれのやり方だぁ!!『グレープラッシュ』からの『グレープピンボール』!!」

 

 電気を利用して素早く近づく上鳴とそれを遮るようにもぎもぎを展開する峰田。モギモギを展開した後に設置されたモギモギにモギモギをぶつけて弾いている。簡単に見えるが設置場所や角度などを考えなければ機能しない技である。視覚外から飛んでくるモギモギを避けるのに動くとその間に峰田が距離を取りいたちごっこが続いている。

 

(距離を取ってるのか?塩崎の方に二人向かってるのが見えた。タイマンに持ち込むにしても塩崎と俺を離すのは意味がないだろ?)

 

 上鳴の扱う電気というのは対処が難しい個性である。威力が高く、素早い、目でとらえることは出来ない攻撃。防ごうと思えば専用の道具が必要になる。こういった戦いの場であればむしろ味方への被害を考慮して動く必要がある位なのだ。

 

また罠か……だが逃げるのは違うし、乗っかってやる義理もねぇ!!一気に倒してやるよ『局所帯電』『前面放電(フロントディスチャージ)』!!」

「そうくるよなぁ!」

「っ!?なんで耐えれた?」

「おいおい、敵が教えてくれるわけないだろぉ?……少し痺れたがどうにか耐えれたぜ

 

 峰田が高威力の電気攻撃を耐えれたのには泡瀬が持つ触れた物同士を分子レベルでくっつける個性『溶接』が関わっていた。上鳴がいる事を知った峰田はその対策にそれなりに時間をかけた。まともに喰らえば一発でアウトになる力に対して真っ当な危機感を抱いていた。

 

 服や体の表面に絶縁体をくっつけたり、電気を身体に伝わらせない様に地面に流す道を用意していた。それでも至近距離での放電を喰らい余波で少し麻痺して感覚の薄い部分も出ているが無理やり動かし、回復するのを待って誤魔化した。

 

 上鳴は罠にはまっている間に対策を練られていたと考え、電気をそのまま用いても意味ないと直ぐに切り替えた。発目から渡された武装は4つ。先ほどの熱拳(ヒートナックル)と冷拳《フリーズナックル》がセットで1つ。

 

「(1つは電撃用の補助アイテムだから使えねぇ。もう1つは防御よりだし、ナックルは近づかねぇと意味が無い)こんなに早く使う事になるとはなぁ『雷鉄蛇』」

「うお!?なんだよソレ!?」

 

 意表を突く様に上鳴の右腕の袖から飛び出たソレは先ほどまで峰田が居た場所を貫く様に真っすぐに伸びていた。その名の通り鉄、機械仕掛けの蛇のようなソレは曲がったり、伸びたりと感触を確かめる様に宙を動いている。

 

【良いですか『雷鉄蛇』は小さなパーツを繋ぎ合わせて作られています。関節部分は球体にしてあるのである程度の角度までは曲げられるはずです。細かい電気の操作は出来ましたよね?出来る前提で進めますよ?まずここにスイッチ部分があります。此処を切り替える事で伸ばすか曲げるかを切り替えられます。電流を流す事で切り替え可能です。次に曲げる方向ですが、それぞれの指で対応します。正面から手前に加えて上下左右から中央に向けての5タイプです。速すぎても扱いにくいので抵抗を加えて0.1秒ごとに手前から奥に指示が出されます。リセットする時はスイッチを入れ直してください。もちろん同時に指示を出せば斜め方向にも可能ですが右と左、上と下などの相反する指示は出さないでくださいね。三方向も無理ですから注意してください。配線が焼き切れて壊れますからね】

 

(慣れてないアイテムにそこまで気は配れねぇよ!戦闘中じゃ大まかに指示出すので精一杯だぜ)

 

 素早く情報を入力することで貫いたり、薙ぎ払ったり、絡めて掴めたりと多芸な事が出来るだろうが、目の前の相手に集中しなくてはいけない状況ではそこまで複雑な指示は出せない。

 

「あのやおよろっぱいに匹敵するサポート科の発明品かよ。せっかくだけど封じさせてもらうぜ!!」

 

 騎馬戦の時に確認したプロポーションを思い出し、嫌らしい笑みを浮かべながらモギモギを正確に伸びた『雷鉄蛇』に投げつける峰田。上鳴は焦るでもなく、むしろ伸ばしたソレを用いてモギモギを弾いて見せた。

 

「はぁ!?なんでくっつかねーんだよ!!」

「そういう仕様なんだよ!!」

 

 その仕様というのは表面の特殊な塗装処理である。モギモギの粘着力は脅威であるがくっついた場所だけを剥がせれば問題は無い。塗装はそう厚くは出来ないので同じ場所にモギモギをくっつけ続ければいつかは封じられるだろうが、一瞬の攻防では流石に仕組みを理解できなかった峰田はモギモギでの対処を諦めた。

 

 適当に投げても武器で弾かれるので峰田は両腕を使ってタイミングをずらして投げて身体の方を狙い続ける。しかし、片方を弾き、もう片方を避ける事で上鳴は問題なく峰田との距離を詰めつつあった。あと一歩で峰田に攻撃が届くかと思った所で足元を揺する大きな揺れに襲われた。

 

 

「最初に俺が仕掛けにいってた時にあいつらに仕込んで貰ってたんだよ!!」

「なっ!?」

 

 建物の床に同時に入った大きな衝撃は戦っていた二人の周辺を陥没させ、そのまま下の階層へと落下を開始していた。崩れていく床に驚きつつも『雷鉄蛇』を落ちていく床に突き刺す事で何とか体のバランスを保っている。そこを狙う様に鋭いモギモギが飛んでくると上鳴はもう一つの武装を取り出して放った。

 

「『アシストバレット』!!」

 

 弾丸自体に様々な効果が含まれており、電気を貯めこんで刺さると同時に放出したり、弾丸が当たった場所を避雷針の原理で長距離まで電撃を届けたり、ため込んだ電撃をその場で放出し続けたり、他にも種類はあるがそう言ったギミック付きの弾丸が込められた銃がバッテリーへの特殊効果を断る理由にもなったもう一つの武装である。

 

 峰田自身に電撃は効きそうにないので使わずにいたが、衝撃を加えてモギモギの軌道を逸らすくらいは出来るだろうと空いている方の手で普通の弾丸より大きめの弾を撃ち出し、迎撃する。何個かは撃ち落とす事が出来たが動けない状況下で連続で投げられて何個かくっつき、銃も封じられてしまった。

 

 その隙を逃さなかった峰田はモギモギによって超加速するとそのままの勢いで上鳴に突っ込んでいった。電撃は防げる、相手はその場から動けない、武器は封じた。これで勝ったと確信していた。その次の瞬間、上鳴の左の腕から見慣れた機械が鋭く峰田に伸び、絡みついた。

 

「悪いな『雷鉄蛇』は両腕で1セットなんだよ。そして、何かで防いでたみたいだが、どっかしら流れる場所はあるよな?安心しろ強い電気は流さねぇ、身体が麻痺するまで直接流し込み続けるだけだ『雷伝導』!!」

「ぐぅ、はっ、効かないぜ……くっ」

 

 普通であれば喰らった時点で気絶してもおかしくない電撃で意識があり、しっかりと話せている。抜け出そうともがいて入るが鉄製の機械の力はかなりの物で峰田が全力で暴れてもびくりともしない。

 

「その割には痺れてるよな?さっきも動きが鈍かったし、完璧じゃねぇなら効くまでやるだけだ。電気切れは心配するな。発目がバッテリーまで用意してくれてるからよ」

「う、うぅうう、ちくしょおおおお!!ああああぁぁあっぁあ!!??」

 

 それから峰田は『雷鉄蛇』で動きを封じられたまま、無駄に耐性があるために長時間電流にさらされ、指の一本も動かせなくなってから解放された。

 

「フロアごと壊して攻撃なんておおがかりなことしやがって、どっか上がれる場所探して向かわねぇとな」

 

 一息つく暇もないと愚痴をこぼしながらも上鳴は指先一つ動かせなくなった峰田を放置して、その場から駆け出して行った。

 


 

 残された上階では戦闘不能に近い発目を倒しに向かわず、自由に動ける塩崎を警戒して数の有利を活かして戦いを展開していた。

 

「二人がかりですか?いささか臆病すぎるのではありませんか?」

 

「いやいや、塩崎が相手だからな」

「それに一応2対2には変わりはないみたいだし、な!!っと…あぶないあぶない」

 

 動けなくなっているとはいえ作ったアイテムを活用しての援護を発目は行っている。だが、ときおり飛んでくる攻撃も分かって居れば避ける事くらいは出来る。なんなら戦いに合わせて作った武器は峰田チームにもあり、衝撃が込められた武器を上手く振り回して攻撃と防御に上手く使っている。

 

「見た目は継ぎ接ぎですが厄介な武器ですね。泡瀬さんが溶接して作られたんでしょう。衝撃の解放を利用した振り回しに、攻撃の緩和……だけと思うのは危険ですかね」

 

油断はしてくれないか……俺が連続で仕掛けるから

わかってる。俺が蔓以外の部分を溶接する

 

 相手に聴こえない様に小さな声で作戦を告げると、タイミングを図り、相方とほぼ同じタイミングで塩崎に飛びかかった。

 

「『インパクトストック解放』『インパクト・カタパルト』!!」

「速いですが近付かせなければ良いだけです『キリストのゆりかご』!!」

 

 衝撃を利用しての急激な接近であるが自身を中心に展開したドームによって簡易的な防御の姿勢をとる。そしてドームの隙間から相手の姿を確認すると別の蔓を伸ばして逆に攻撃に転じる。

 

「『聖騎士(パラディン)』『信仰の盾(フェイスズシールド)』『寵愛の剣(フェイヴァズソード)』」

 

 蔓を操作して人形の様なものを作り上げるとそれらに切り離した蔓で出来た剣と盾を持たせ、そのまま近くに居る庄田に攻撃させた。蔓で出来ているために殺傷力こそ低いがその重量と編み込まれた蔓の強度はそれなりに脅威であり、庄田は避けたり、衝撃を加える事でどうにか攻撃をそらしていた。

 

「そう簡単に近づかせてくれないか」

「なら、これだ!!」

 

 泡瀬はなにやら小さな破片よ様な物を取り出すと、蔓に触れた瞬間にそれを中に埋め込むように溶接した。そして離れると「解放」という庄田の声と共に『聖騎士』やその他の襲いかかっていた蔓が弾けとんだ。

 

「今だ!!」

 

 空いた穴を逃さまいと駆け寄る泡瀬、近付いて触れることが出来ればそのまま拘束することが出来る。その考えは正しいが、彼の足よりも蔓の再生の方が早く、ドームに辿り着くことさえできず、『聖騎士』に捕らえられた。

 

「まずは一人…」

「がぁッ?!」

「泡瀬!!これでも喰らえ!!」

 

 庄田は何を思ったのか手に持っていた武器をただ真っ直ぐに投げた。捕らえられた泡瀬を助けるように投げつけられたそれを、蔓で防ごうと動かす。先程までの攻撃であれば当たったとしても『聖騎士』を壊される事は無いが念には念を入れての行動であった。

 

 そう、相手を一人捕らえたがそこに油断はなく、防御の姿勢までとっていた。だからこそ、その攻撃が前に出した蔓をすり抜け、『聖騎士』をすり抜け、自身を覆っていたドームまでもすり抜けるなんて想像はしていなかった。

 

「きゃあ!?」

 

 咄嗟に避けようと動こうともしたが、ぎちぎちに固められた陣地が逆に動きを阻害し、目の前に腕を出して衝撃に備える事しか出来なかった。

 

 泡瀬の個性である『溶接』は触れた物同士を分子レベルでくっつける。その特性を利用して、分子の隙間を通して、攻撃を透過させた。

 

 蔓には自身が捕まっており、確実に触れている。そして、武器とは細い線でしっかりと繋がっていたのだ。一時的とはいえ動揺し、操作を失った『聖騎士』から泡瀬も抜け出し、ドームを破壊して武器を手にして詰め寄った。

 

「流石に強かったけどこれでチェックメイトかな?」

 

 塩崎は衝撃で朦朧としている意識の中でどうにか蔓を切り離して迎撃しようとした。外側からも必死な援護なのか連続で銃弾が撃ち込まれているが切り離されたドームによって阻まれている。

 

「くっ!?」

「降参はしてくれないよな?悪いが地面と溶接して拘束させてもらう」

 

 動けずにいる塩崎に警戒はしたままゆっくりと近づいて行く泡瀬、これ以上は無理かと諦め、悔しそうに眼を瞑りながら苦悶の声をあげる塩崎。その首元に取りつけられていたアイテムにいきなりカキン!!という音が響くと近づいていた泡瀬や庄田を包み込む激しい光が周囲を照らした。

 

「『疑似・過負荷(オーバーロード)』油断大敵ですよ!!今です塩崎さん!!」

「ええ

 

 ここに居るはずがない声に驚きながら助けられたことを把握すると目の前の二人が動けない状況を逃すことなく、あふれ出ている光を吸収して蔓に力を集中させるとそのまま束ねて貫くかのような無数の攻撃を喰らわせ、そのまま拘束するように雁字搦めに蔓を巻き付ける。

 

「はぁ、はぁ、勝てました。初目さんありがとうございます」

「いえいえ、むしろ先ほどまで任せっきりになってしまい申し訳ありません。咄嗟に首輪の配線に電気弾を当てて首輪を暴走させましたが、上手くいって良かったです」

 

 見事にやられた二人は何故掴まっていたはずの発目がいたのかと不思議に思い、初目が居たはずの方向に目を向ける。すると薄っすらと人型の影は見えたが、しかしそれはよく目を凝らして見ると、それは発目が用意したなんてことない張りぼてに布を被せた物であった。

 

「さっきの床の崩落と一緒に照明もだいぶ落ちましたからね〜暗がりで戦闘中だと気付けないでしょう。ちなみに時折あった援護は私のベイビーによる自動装置ですよ。センサー式での判別システムまでは無理でしたが塩崎さんが拘束されてたので大丈夫と思いましてね。当たらなくてよかったす」

 

 後は気付かれないように移動して奇襲を仕掛けただけのことである。それによって一気に形勢は逆転した。しかし、ドームの中に現れた発目の姿を見た者は一様に見を見開き、発目のある一点を見つめていた。

 

「そこまでやるのか…?!」

「お、お前?!その足?!」

 

「発目さん、貴女!!」

 

 発目はモギモギによって拘束されていたはずである。しかし、ここまでこれている。その矛盾の答えは皮膚がなく、血に塗れた痛々しい足が物語っていた。

 

「いやぁ~麻痺させながらやりましたが、流石に皮膚を剥がすと痛いですね。空気に触れるだけでも激痛ですよ」

 

 ニコニコと笑っているがその頬は少しばかり引きつっております、痛みを堪えているせいか声も少し震えている。それでも、動けないだろうという認識を打ち破って勝利をもたらしたのだ。

 

「まったく、無茶をし過ぎですよ。治療したいところですが、お二人はまだ戦う気はありますか?」

 

 身動きを封じているがまだ意識はある。衝撃を込めたり、溶接を利用すれば時間をかけて拘束を外す可能性があるのであれば気を抜くことは出来ない。

 

「流石にそこまでやられて負けを認めないなんて言えないよ」

「峰田からの通信も途絶えたしな。降参だよ」

 

 その答えを聞きようやく緊張を解く事が出来た。辛勝であったが確かに手にした勝利に喜び、互いにボロボロすぎる姿であったが塩崎と発目は見つめ合うとおもむろに手を挙げてハイタッチをして笑いあった。

 

「はぁ、確実にリカバリーガールからのお説教がありますよ」

「それは怖いですが、私のベイビーを出来る限り輝かせるためですから」

 

 先ほどの二人と一緒にリタイアして回収されれば治療を受けれると伝えたがギリギリまでベイビーの調整をしてからリタイアしますという発目の意思を尊重しての行動である。そして治療をしていると少し経つと峰田を倒した上鳴もどうにかフロアを上がって来た。

 

「お前!?その足はどうしたんだ!!??」

「はは、動けなかったので剥がしました!!」

「バカか!?なにやってんの!?」

 

 発目の様子にとても驚いていたがお互いに勝利をしたことを報告して笑いあった。大会の運営側も考えていなかった即席チーム同士の戦いは発目チームの勝利という形で会場を盛り上がらせ、そして休ませること無く近づいている脅威に観客は同情した視線を送っていた。

 


 

 その時が訪れたのはあまりにも突然すぎた。戦いを終えて休息を取り、アイテム…発目の言うところのベイビーの調整が進められていた穏やかな時間を一瞬で壊したのは建物全体を覆う冷気と仲間の絶叫であった。

 

「…あぁああああああ!!??」

 

 建物全体が冷やされると同時にその場に居る全員を捕えようと氷が襲い掛かった。塩崎は蔓で跳び上がり、上鳴はヒートナックルで溶かして逃れた。しかし、足の皮膚の大部分が剥がれ落ちている発目は素早く動く事も出来ず捕まってしまった。短時間で皮膚が治る訳もなく、簡単な拘束のための氷でさえも彼女にとっては拷問に近い痛みとなってしまった。

 

「クッ…!?『ショックスパーク』!!」

 

 耐えきれない、もとよりこれ以上戦うことは出来ない。上鳴はこれ以上苦しまないようにと判断すると発目に電撃を流し、素早く気絶させることで守った。

 

「……足を怪我していたのか、それは悪いことをしたみたいだな。傷自体は冷やしておいた方が良さそうだが、密着していれば悪化する」

 

 そう言うと、上鳴達に少し待つように伝え、発目をみながらもう一度個性を使って怪我を保護するように氷を整え、巻き込まれないように端へと寄せた。元々リタイアする予定であったが受けるつもりの無かった攻撃でのダメージが酷くない事を二人は祈り、目の前の轟と相対する。

 

「……氷・炎なんて()と相性悪すぎだと思うがいけるか?」

「……たとえ瓦礫()をぶつけたとしてもびくともしなそうですが、やるしかないでしょう?」

 

 発目を巻き込むようなことは出来ないと場所を移す提案が自然と互いから出た。両者ともそれを拒否する理由は無かった。いや、上鳴たちは轟の個性の威力を考え、一瞬だが枷として使えるのではないかとも思ったが万が一を考えると自然にその案は掻き消えた。

 

「そう言えばこれって2対1で良いのか?」

「ああ、言われてみれば既にチームを組む理由は在りませんでしたね。でもまぁ、良いのではありませんか?」

「……そうだなぁ……こういうのも悪くないか」

 

 敵がチームであったから延長されたチームアップであった。敵チームを倒した今では二人が一緒に戦う理由は存在していなかった。だが、自然と共に戦う気であったことがなんとも可笑しかった。

 

「まぁ、発目をやってくれた仕返しで良いんじゃないか?」

「そうですね。では条件は発目さんに託された物を思い切り振るうで行きましょう」

 

 この場に居ないが発目の力は確かに上鳴と塩崎を助けている。なんともくさいセリフを吐いている互いに自然と笑みがこぼれて自身が湧いてきた。

 

「話し合いは終わったか?」

「ああ!!」「ええ!!」

 

 十分に先ほどまでいたビルから離れる事は出来た。むしろ隣のエリアに差し掛かるのではないかというくらいの距離は歩いただろう。これで互いに気兼ねなく個性(ちから)を振るう事が出来る。

 

 

「出し惜しみはしない『氷河時代(アイスエイジ)』!!」

「それは同じだよ『雷神の一撃(サンダーオブトール)』!!」

「負けてられません、『神判・天罰の輝き(ジャッジメントシャイン)』!!」」

 

 周囲を巻き込みかねない強力な攻撃同士のぶつかり合いは止むことはなく、都市中に響き渡っていく。新たな敵を呼び寄せるように、戦いの音は鳴りやまない。

 

 


 

 爆豪から上手く逃げ、d5商業エリアに潜んでいた山稜は別のエリアであっても響いてきた音を不思議に思い、目を閉じて集中するとそっと探索範囲を広げる。そして、誰がどこで戦っているのか確認した。

 

「向こうが始まってるのか……ならこっちもそろそろ動かないと不味いかな?」

 

 戦いを始めるにはタイミングというのがある。相手が不利な時に仕掛けるとか、他からのちょっかいが少ない時に始めるとかは特に大事である。今のタイミングであれば問題はないだろうというのと、今動かなければ先が辛くなると重かった腰を上げた。

 

「爆豪も追いかけてきてるしどうだろうな」

 

 八百万が潜んでいたことは知っていたし、個性の事を考えれば時間をかけて武装を強化されているはずである。

 

 外からの持ち込みがサポート科を除き、禁止の中で自由に作られた道具と言うのは有効的でもある。相手になくて自分にだけあるものというのはそのままアドヴァンテージに繋がる。

 

「出来れば貰いたいところだけど厳しいだろうな」

 

 本来の山稜の戦い方に個性を使って必要な物を取り寄せたりすることがある。この戦いの中でも自分の位置や瓦礫などを転送したりはしてきたが、持ち込みが禁止だとあまり使い勝手は良くない。

 

 ただの瓦礫を落とすのと、専用の武器を落とすのでは後者の方が強い。ちゃちな石ころではダメージにならないし、大きな岩を運べば気付かれやすく、また消耗も大きいなどの欠点も目立つ。

 

 その点、八百万が扱うアイテムは八百万でも扱えるサイズと重量であり、耐久性などにも優れている。これを獲得できれば一つの仕掛けとして十分に作用する。

 

 問題があるとすれば、そのアイテムを消耗させずに八百万を戦闘不能にしなければいけないという点だ。倒すだけなら手段は色々あるが戦わずに無力化できるほど相手も弱くない。

 

 それ以外にも融合してると貰えない可能性もある。戦闘終了時点で個性の使用などは原則禁止となる。八百万にくっついてる武装はその時点で使用不可になってしまう。

 

「ガスや電気でエネルギーの確保が出来ただけまだマシだけど、爆豪のせいでカツカツだからなぁ」

 

 下手に手を出せば逆にやられてしまう可能性も全然ある。あれで爆豪は切れやすいのと冷気に弱いのを除けば目立つ弱点はない。

 

 エネルギーを外からの補給でしか得られない山稜からしてみれば、ポンポン爆発を発生される爆豪や熱を自由に操れる轟、いつでも発電出来る上鳴などは羨ましく思える対象である。

 

 体力以外の消耗も考えないといけないという点では山稜と八百万は似ている部分があるとも言える。補給が安定しない現状の動き方としては互いに消耗をさけた短期決戦が望ましい。

 

 戦わないのであれば逆にどこまでも隠れて戦闘をしないと言う消極的な動き方が良い。だから八百万も山稜も潜み続けているのだ。

 

「今すぐに仕掛けて間に休憩を挟んで決戦に臨むか、ギリギリまで潜んで連戦に挑むか」

 

 最後の戦いを前にして山稜は訓練の際に学んだ自身の勘を信じることにした。

 


 

 

「なるほど…動かないか」

『何処も戦闘が激化していく中でこのエリアの選手は消極的だぜ』

「まぁ、爆豪は怪我も酷く、八百万と山稜は消耗の激しいタイプの個性だ。待ちに徹するのはこの状況ならありだ。機をうかがうのと諦めるのは別だ」

『e5の緑谷と心操も今は動きがないしな。絶賛戦闘中なのはe4の轟、塩崎、上鳴の所だけだな』

「まぁ、このまま潜み続けるわけにもいかないがな」

『動きがなきゃ出会う事も無いからな!!最後は一定時間ごとに指定されたエリアに移動してもらうぜ!!嫌でも動かなければいけないから新たに戦闘が起こるか、戦闘に動きが見られるだろうよ』

「狭くなれば場外に飛ばしたりする戦法も取れるようになる。他にも移動中の戦闘で間に合わずにアウトになる可能性もある。最後までどう転ぶかはわからないぞ」

『それでは肝心の移動先を決めるぜ。抽選の結果、選ばれたのはここだぁ!!エリアe5!緑谷と心操はラッキーだな』

 

 




間違えて自分用の設定集を投稿しかけた。危ない危ない、洒落にならないミスをやらかす所だった。ネタバレどころじゃ無いから本当に焦った。パソコンと操作が違うからやりにくい、前書きや後書きを書くにも時間を使うし、本当に面倒。

さて、覚悟決まりまくりのリーダー?の手によってチーム戦を勝利した発目チーム。一番始めに考えてたネタだと、もぎもぎを取るために体操服を脱いで戦うと言うR方面のネタだったんだけど、別の方向でR方面になりそうです。

勝利した発目チームを休ませないように現れた轟、不意打ちで負傷した発目の敵討ちをするかのように手を組んだまま立ち向かう上鳴と塩崎。エリア移動をせざるを得ないがその状況でどう動くか。

そして山稜、爆豪、八百万のエリア。本当は三つ巴の戦いにする予定だったんだけど。気づいたら変えてた。その場の気分で変更する癖が私の執筆の遅さを助長している気がする。

さて、次で最後に出来ると思いますが、キャラが入り乱れてるのでこれまた長くなりそう。というか予定だと今回は短めの筈なのに気づいたらこんなに書いてた。

もう後書きで次回の投稿について言及しない方が良いのでは無いだろうか?だけどこれ以上の変更をしないと言う最後の決意表明として、次で戦闘終わり、余裕があれば閉会式まで書くと言っておこう。…守れるからわかんないけどね。

と今回はこれぐらいでいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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