絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア 作:ひよっこ召喚士
エリアの移動が通告された選手達は会場の一部である町並みや建物の中に存在する時計を目にし、自分のいる位置と示されたエリアとの距離を確かめる。
離れていてもエリア一つ分よりも移動距離は短い。よほどのんびりと進まない限りは脱落の心配は無いが、狙われるリスクを考えると動き出しは慎重になる。
「飯田さんのいない現状、地上における移動手段で脅威なのは緑谷さんぐらいですが、動きを封じるのは山稜さん、上鳴さん、峰田さんと出来そうな人が多い」
創造物を用いて行う移動は音がどうしても出るために居場所がバレてしまうのは確実。地上を進むのであればギリギリまで隠れ続ける方が良い。
「明確に探知できるのは山稜さんだけですが、雪山に居たのは見えましたし、おそらく近いでしょうが動くなら今すぐ行動しなくてはいけませんね」
雪山の方に宍田が逃げたので気にしていたら爆豪の爆発と山稜の姿までは捉えていた。それ故に周囲にはかなり警戒する必要がある。
当然、隠れながら進もうと思えば時間はかかる。端から端まで動くわけではないので猶予はあるが、間に合わずに脱落は避けたい。
「行きましょう」
Aと訓練に参加するBの生徒の多くから脅威的だと判断されている山稜。序盤からの激突で消耗は激しいが、周囲の探査を続けていたために面白い動きに気付いた。
「なるほど、地下を進むのか…確かに見つかりにくいがリスクもあるだろうに、大胆なことをするなあ」
進み方こそ隠れてコソコソとしているが賭けとも言えるその行動に山稜は感嘆した。山稜にも気付かれず移動するならプリズムの透明化があると思うかもしれない。
だが周囲に合わせて屈折率を変える必要があるあれは、探知範囲ではなく、視界の範囲でしか使えない上に、邪魔をするものが多い。
エリアの光で目ざといやつは作った瞬間の光のゆらめきで見つけるだろうし、戦いの影響で舞っている砂埃や煙の影響で大きなものは形が見えやすい。
「つくづく種が割れると使いにくい」
爆豪の剣幕からして諦めることはないだろうし、移動中に戦いになれば最後まで残れる可能性はかなり低くなる。
「便乗させてもらうのが一番だね」
「地下を創造の応用で掘り進めるてるのか…位置情報で予想は出来るが流石にカメラは入れん。観戦されてることを忘れてるんじゃないだろうな」
流石に監視カメラもドローンも家の中から地下へと新たに掘り進められたトンネルの中までは追いかけることは出来ないようで、八百万を映す映像はなくなってしまった。
『いやいや、映りはなくなったが機転が利いててスゲーだろ?気づかれずに道を作れるなら、拠点制圧とかにも有用だしな!!』
「敵に気づかれる可能性と消耗を考えてだろうが、今回に限っては道を崩すべきだったな。敵にも利用されるのはまずい…あいつは山稜が後ろからついてきてるのに気付けていない」
探知で地下を進んでいる事に気付いた山稜はちょうど良いと言わんばかりに八百万にバレない様に少し後ろをついて歩いている。
相澤先生は厳しい意見を言うが山稜は地上と比べてバレにくいと考え、自身を覆って姿を消しているので見つかる可能性はかなり低いだろう。
『暗がりで音も姿も消えられたら無理も無いと思うけどなぁ。だが地上の爆豪からしたらラッキーだな!!』
「本人は気付いてないから警戒しながら進むことになるが、戦闘に巻き込まれないから必然的に消耗は少ない。ある程度回復して最終戦に臨めるだろうな」
不必要な警戒と思うかもしれないが、戦場にいる本人からしたら当たり前な行動であり、油断することなく的確に動いている爆豪に感心する観戦者も多いくらいだ。
『逆にe4の選手たちはこの調子で戦えば移動に間に合うかも怪しいな』
「全員が戦闘も含めて動き続けていたから消耗具合で言えば一番厳しいか」
『エリア移動しなくても良い緑谷は場所は移したが動いてないな。だが、心操は不思議な動き方をしてるよな』
他のエリアと接する境界線の近くまであえて移動している。迎え撃つために動いてるとも取れるが、真正面からの戦いには、向かないタイプの心操の動き方としてはおかしさの方が目立つ。
「考えがあるのか、それとも何か想いがあるのかはわからないが無駄にはならないだろ」
年に1回、高校生活全部で3回しかないこの特別な行事、何をしようとその経験はきっと糧になるはずだと合理的ではない動きに合理性を見出して見守った。
比較的高めの建物に登り、他の選手が来るであろう方向を確認する心操。
「遠くに見えるのは電気と氷に炎、それにここからは見えないが街なかに蔓の残骸、こっちじゃない。来るとしたら向こう側か……チッ、面倒な奴と目があったな」
まだまだ遠いが、こちらのエリアへと周囲を警戒しながら進んでいるクラスメイトの姿を見つけてしまった。距離が離れているが互いに気付いてしまったのは確かだろう。
「飛んでこないのか?リスクは考えるが戦いを渋る奴じゃないだろうに……狙ってる奴がいるのか、緑谷はここにいたし、轟が向こうにいるなら……
想像でしかないが確率は高いだろうと考えを纏めながら建物を降りていく。
「こっちから来てたな」
爆豪が来た方向を確認し、進んでいく。向こうが来ないのであればと言わんばかりに真っ直ぐと向かっていく。向こうがエリア内に入ろうとしている以上、進む道は限られております、必然的に出会うことになる。
「あぁ!?なに向かってきてんだ?やる気ならこっちもヤルぞ?」
「瞳空の奴と戦ったか?向こうに誰が居た?」
「……………ハッ、教えてやる必要はねぇだろ?」
心操の個性の対策は殆ど全員がしており、爆豪ももちろん防いでいる。そして、心操の問いかけに対し、至極当然の返答を返した。
「緑谷と轟、ついでに上鳴と塩崎の場所を代わりに教えると言ったら?」
「……………取引になると思ってんのか?倒して聞き出せばいいだけだろう」
他の選手に見つかることを警戒しているのかよく使う威嚇のような爆発は起こしていないが腕をこちらに向けている。
口の動きに注意しているようで、心操は視線に気付くと口を開くフリをしながら適当に石を投げて注意をそらして爆豪との距離を詰め、そして爆豪の腕を掴み、それを自身の首に押し当てた。
「…………『俺相手に随分弱気だな?』『不安でもあるのか?』」
「何してんだテメェ!?」
「この距離で使えば俺は無事じゃすまないだろうな。閃光を起こしても手を放さないし、単純な体術で負ける気はない。お前の個性は上鳴の電気と違ってどんだけ弱くしても殺傷力はある。
「………………チッ、あのチビ女は見かけた。それと倒されてなければ八百万がいる。山の中であいつの弾薬を見つけた」
「そうか、緑谷はこのエリアの向こうのビルの上で少し前まで角取と戦っていた。轟、上鳴、塩崎は向こうの都市エリアで戦ってる最中だ」
「そうかよ…」
爆豪は何をしたいのかわからない心操を睨みながらも教えられた情報の正誤を含めて考えながらその場で戦う事はなくエリア内に入っていった。
「バイクの音はしねぇからな。八百万は倒されたか、それとも隠れながら進んでるか……」
隠して暗示をかけることが出来たからどうにか聞き出せたが冷静だったらどうなっていたかと思いを馳せながら目的地へと駆け出した。
地下を進んでいく八百万、新しく作るものはそんなにないために消耗は少なめだが、移動距離を考えると馬鹿にできない。
それに加えてどれ位進んでいるのかまではわからないのである程度進んだら確認するために上に行く必要がある。酸素を確保するためにも必要な行動だが場所やタイミングを間違えれば一気に不利になるために慎重に行動している。
「エリア内には入れたようですね。ここは住宅地でしょうか?塀で隠れた敷地内に出れて運が良かったみたいですね」
「『そう思うか?』」
「ッ!……くっ!?」
顔を出して自身の位置を確認していると突然声をかけられ、混乱しつつも口を閉じることに成功したが、そのまま身動きを封じられ、首に腕を回された。
「悪いな…『眠れ、眠れ、眠れ、眠れ』」
首を絞められ、酸素が減ってきて意識が薄れてきているところに流れてきた個性の載った催眠は問答無用で八百万を落とした。
「音をたてない乗り物を利用する可能性も考えたが、途中で攻撃を受けたらアウトだ。ならば隠れながら進むだろうが慎重な八百万ならばと当たりをつけれた……それで居るだろ?瞳空……」
八百万が抜け出してきた穴の中をじっと見つめていると、降参と言わんばかりに手を上げて出てきた。
「へぇ、私が居ることまで予想してたんだ?」
「消耗を避けたいのは一緒だ。探知が出来る瞳空なら、誰かの
「形振り構わないで……そんなに会いたかった?」
戦わせることもなく八百万を倒し、敵である爆豪を脅してでも情報を訊き出し、そして対面した。
「そうだな……お前とは一度ちゃんとした場で競い合いたかった」
「奇遇だね。私も心操なら残ってると思ってたよ」
心操と山稜はお互いに笑みを浮かべ、同時に動き出した。自身の強化に全力を使う心操と残ったエネルギーを惜しまずに迎え撃つ山稜の戦いが始まった。
『謎の行動を繰り返していた心操!!八百万を素早く倒すと隠れていた山稜を見つけて戦闘を開始だぁ!!』
「爆豪から情報を訊き出したのか……おそらく元々山稜と戦う気だったんだろう」
その理由まではわからないがそのために爆豪に対してあれだけの行動をした事から覚悟の強さは伝わるものだった。
『利用された爆豪だがあまり動いてないのな。心操が離れて、角取を倒した緑谷も綺麗に浮いてる』
「爆豪も何か聞いてたみたいだがどう動く気なのか。それと、エリア外で戦ってる3人がどうなるか次第なところもあるな」
エリアの移動先が提示されてからも都市エリアで戦闘を繰り広げている三人に移動は見られない。そんな余裕がないというのが正しい所ではあるが、戦いを開始した場所から殆ど動いてないのは確かである。
戦闘風景こそ轟が常に攻勢に出ているために有利に見えるが、互いにフォローしあって上手く攻撃を受け流し、小さな反撃を繰り返している。
炎の攻撃はあえて燃えやすい蔓を敷くことで導線とすることで逸らすのに使ったり、氷の攻撃を発目の残した
対する轟も合間をねって飛んでくる電撃や蔓、弾丸などのサポートアイテムも氷の壁を自由に作り出して問題なく防いでいる。雷鉄蛇の攻撃には驚いていたが、氷で取り込み、片方だけだが完全に封じる事にも成功している。
互いに集中して隙をつくらないように動き続ける戦闘は消耗が激しいが、時間が過ぎていく程に焦りも増していき、さらに戦闘は激化されていった。
「『氷乱』」
街が氷に包まれ、その氷から無数に棘や刃などが生成される。氷に侵食されていくかのような光景、これで決める気なのか自身への影響も気にせずに冷気の漂うフィールドを作り上げていく。
「とけたそばから凍っていく……くっ、『熱拳』!!駄目だとかした時に出る蒸気まで巻き込んでくるぜ」
「切り離した蔓で防いでも時間稼ぎにもなりませんね。冷気のせいでこれ以上、水の補給も出来そうに無いですし、私が満足に個性を使えるのはあと少しですね」
上鳴と塩崎の事を逃さまいとこちらをじっと見据えて氷の操作を続ける轟。操作のために必要なのかその場から動いておらず、また火を出していないために服の端が自然と凍ってきている。
「上鳴さん、轟さんにも攻撃の影響がはっきり出てきてます。仕掛けましょう」
「一気に近づこうにも少し距離がある。あいつのフィールド内に入れば周囲から氷に襲われて固められるのが分かってるだろ?」
強力な個性であるために轟にも影響は生じている。それでも熱系の個性をもたない者よりも耐性はある。同じ場に臨めば限界が来るのは二人の方が早い。
「私達のチームアップの理由は?」
「発目の仕返しと発目のアイテムを代わりに見せつける事だ」
「ならばどちらか一人でもエリアに向かうべきです。もう戦いを始めてかなりの時間が経ってます。移動するなら相手の意表を突くにも今がチャンスです」
冷拳とバッテリーを一つお借りしても?と当たり前の様に問いかける塩崎。同じヒーロー志望とはいえ女性一人残して戦いから逃げる事は上鳴も認められないとごねる。
「私用のアイテムは内部の水が凍結して壊れています。継戦能力の低い私より、
「…………作戦は?」
不承不承と言った心情に変わりはないが、覚悟を決めた上鳴は気づかれないように静かに語る塩崎の声に耳を傾けた。
「……そろそろ距離を詰めるか」
氷による探知があるとはいえ、直接目で見える範囲のほうが細かい操作が可能である。距離を離されすぎて、指定エリアに逃げ込まれても面倒になる。冷気の使いすぎで冷えた身体を暖めるためにも腕を地面から離そうとしたその時、急に動き方を変えたのを捉え、取りやめる。
勝負を決めに来たのかと相手の動きに注視はするが、そもそも相手に動かせないのが一番だと相手の周囲を覆っていく様に氷を展開し直す。
氷に覆われているために足を取られやすいので素早く動けない所を覆われたのは厳しそうに見えたが上鳴が氷で冷やされるのを考慮して熱拳で自身の拳が焼けるくらいまで高めた一撃で破った。
壊された所から即座に氷を形成し直すがその間には隙間を通り抜けていく二人、その直後に二重目の氷の壁が飲み込んだ。
「…………」
氷を壊す音が聞こえず、氷で何かを包み込んだのを確認する。拘束出来たのであれば氷を厚くすれば脱出は難しいだろうと氷の壁を塊に変えていく。
数秒が経過しても動きが無いのを確認するとエリア移動を急ごうと踵を返すと光の位置を確認して走り出した。
「ッ!?」
次の瞬間、地面から無数の蔓が飛び出して轟の周囲を覆った。氷を突き破ったソレを咄嗟に凍らせようと冷気を再び強めるが、その前に蔓が轟の周囲を囲い込んだ。
水分を含む蔓は凍りやすく、強めた冷気によって轟は逆に閉じ込められる形となった。周りの氷を溶かすことになるが炎を出して脱出しようとした所で地面の下からさらに蔓が追加され、轟のものとは違う冷気が襲いかかった。
「火が保てねぇ……凍らせすぎたか……」
轟は冷気が出始めたのと同時に片方が拘束から抜け出したのを確認した。だがもう一人はその場から動いている様に感じられない。
「時間稼ぎか?!」
明らかに捨て身での行動に狙いはエリア移動を防ぐことによる脱落だと気付き、無理やり周囲の凍った蔓を排除しようと炎を灯す。
炎を使うことで氷を使い続けていた身体を暖めることはできるが、凍った蔓はもやしにくく、気温のかなり低い場所で可燃物も少ない狭い空間で無理やり火をつけているので消耗は大きい。
瞬間的に大火力で吹き飛ばせばとも思えるが冷えに冷えた空気を急激に熱した際の膨張を考えると危険になる。周りの蔓と氷の壁が壊れ、空気が流れ込めば自身を巻き込んで吹き飛ぶことになる。
「呼吸もこのままじゃきついか……少し体は暖まった。先に相手を潰す!!」
轟は炎を消すと冷気や蔓が吹き出ている穴に逆に冷気を流し返し始めた。邪魔が大きくて外側の氷は操れないし、内側からでは勢いが足りない。
それでも相手の邪魔がなくなれば脱出の目も見えてくる。個性を持ってる事で得ている耐性を考えて耐久戦に挑んだ。
『轟が蔓に囲まれたと思ったら氷に捕まった上鳴が飛び出したぁ!!そうして一気に氷の範囲から抜け出してエリアを目指し始めたぞ?!』
「装備がさっきまでと違うな……預けたんだとしたら行動からして塩崎が上鳴を逃がそうとしているのか?」
上鳴は拳に着けていたナックルダスターの1つがなくなっている。鉄製の鞭のような武具は相手に取られていたのが確認できたが、あちらは壊れていなかったはずだと考察を述べる。
『何をしているのかわからないが塩崎と轟は動きがないぜ』
「どちらも数値を見ると呼吸が荒くなってるし、体温の低下も激しい」
元から3人の戦闘が激しくなるにつれてバイタルを示す数値が乱れていたが、さらに体温が低下するとなると危険な状態になる。
『エリア移動の時間制限もどんどん近づいてるぜ!!上鳴はこのペースなら間に合うだろうが、残った二人はもう無理じゃねぇか?』
「移動手段がある轟が勝てば間に合うだろうが、塩崎は何かを見つけられない限りは無理だろうな」
塩崎のアイテムは首に着けられたものだけだが、それも壊れており、消耗が激しい中で蔓を用いた移動すらも厳しい。
『あー、ボロボロだが都市エリアだからなぁ。車にバイクも私有地だから運転できるなら無免許でも使えるし、自転車でも急げば間に合うかもな』
「まぁ、どちらにせよ塩崎はここまでみたいだな。意識レベル規定まで低下、強制リタイアだ」
その宣言と共に既にエリア外となった場所から救急部隊が戦っていた場所に向かいだした。残っていた最後のB組の脱落に落胆の声が少し響いていた。
轟は相手からの冷気が収まり、蔓を壊すと自身の身体を暖めながら相手の姿を見ていた。ガチガチに冷え切った身体を支える様に持っているナックルダスターの類を手に取り、相手の身体を氷から離して保護する。
「こいつはサポート科の奴が作ったアイテムか……」
バッテリーと無理やり繋いでかなりの冷気を生み出している。地面に伸ばした蔓とそれによって出来た穴から冷気を送り込んでいたようだが、アイテムと密接しての使用のせいで一部は凍傷を起こしている。
「急ぐか……」
近くに少しでもマシになるようにと火を用意すると、逃した相手である上鳴の後を追うようにエリアへと移動を開始した。
『塩崎も中々に頑張ってたが流石に相性が悪いか〜』
「だが目標は達成している。上鳴がエリア移動するだけの時間は十分に稼いだ」
『まぁな!!第3種目での行動全てがパフォーマンスであり、評価対象!!仲間のために戦い抜いた有望な選手にClapHands!!』
「だが、つくづく運は悪いようだな。逃げた先でまた敵に会うとはな」
『おおっと?!エリア縮小時の移動で運を使い果たしたのか?ってくらいの不運だぜ!!上鳴と爆豪がここで衝突だ!!』
それなりに広いとはいえ、1つのエリアに残った選手が集まるのだ。最後のエリアになるし、戦いも続くとは予想していたが、流石に笑えない状況に上鳴は悪態をつく。
「移動先でお前に会うって俺も運がねぇな」
「うるせぇ、ただでさえいらついてんだ。とっとと死ねや!!」
疲労困憊な上鳴とイラつきからか多少本調子ではない爆豪。それでも、環境による悪影響がなく、身体の温まっている爆豪が優勢である。
ハザードエリアではない住宅街、無駄な破壊行為は出来ないが、的確に上鳴の移動先を爆破して潰し、動きを制限する。
「冷拳だったら……いや、轟と違って周囲を冷やすまではならないか、爆発に晒されれば流石に壊れるだろうしな。っと!」
「ゴチャゴチャ喋って余裕だなぁ?!『
「家を燃やさずに囲うってお前のその器用さはなんなんだよ!!『雷鉄蛇』!!」
火を起こして上鳴を逃さない様に囲い込む、そしてここぞとばかりに爆発を連続で撃ち込みダメージを与える。上鳴は焦りながらも熱に耐性のある熱拳を盾にして被害を少しでも防ぐ。
そして炎で見えにくい中でなんとか雷鉄蛇を伸ばして家の屋根に引っ掛けると引き戻す勢いで飛び上がり、包囲網から抜け出す。
「逃がすかよ『爆速ターボ』!!」
「させるか!『
追い撃ちをかけるべく爆発で飛んでくる爆豪に対し、放電を行うことで接近を防ぐ。爆豪は素早く空中で爆発の方向を変えて対応するが、電撃も急に方向を変えたことにより被弾して爆破を撒き散らしながら地面に落ちた。
「チッ、何か仕込んでんな。『
食らった際に電撃が流れていた方向に爆破を放つと、崩れた壁から明らかに人工的な機構が組み込まれた銃弾がぽろりと落ち、そのまま音をたてて転がった。おそらく、爆破の音に紛れてこっそり撃ち込んでいたのだろうと当たりをつける。
「避雷針代わりか?小手先の技ばかりでひよってんのか?!」
「見抜くのが早えんだよ……誘爆してもあんなもんか、大技の時にでも狙ったほうが良かったな。プロテクターも爆破には意味なしか……」
両腕の耐性は強いが身体全部が同じだけ強いというわけではないと踏んでの自爆を文字通り狙ったが効果は薄く。狙いこそ気付かれてはいないようだが、タネが割れた攻撃はもう喰らわないだろう。
防御として服の下に貼り付けてあるプロテクター、電気を流して身体と反発させることで衝撃から身を守る構造になっているが、直接的な攻撃ではないのであまり意味をなしていない。現状での利点は吹っ飛んだ際に地面と擦れなくて済むくらいだ。
「せめてもう一泡吹かせねぇとな!!『
バッテリーに含まれる電気を全て取り込むとアシストバレットの避雷針弾と放電弾を爆豪のそばに撃ち込みながら突っ込む。
見かけだけで何用の弾なのかまではわからないが仕掛けてきたものをそのまま見逃すわけがなく、爆破で効果の及ばない範囲まで弾く。
それだけではないだろうと未だに距離を詰めてくる上鳴を見据えて爆破を繰り返す。いくつか被弾しながらも近づく上鳴を見据える。
「『局所帯電・
「チッ、『
服の下に隠して纏っていたプロテクターに無理やり電流を流すと服を突き破って金属製の小さな板を爆豪へと飛ばす。上鳴に向かっていた爆破は壁に遮られ、そのまま爆豪へと迫る。
爆豪はやはり何かを仕込んでいたかと舌打ちをしながらただの爆破では反らせないとすぐに判断して、板の角に向けて貫通性の高い、高威力の爆破を行い板の角度を変えて少しの移動でやり過ごす。
「『局所帯電・
「『爆速ターボ・クラスターショット』!!」
全ての電気を右腕に流し込んで放電しながら殴りかかる上鳴に対し、爆豪は直感的に上鳴に腕を向けながら爆破を行い後ろに下がりダメージを抑える。
そして、そのまま後方で爆破を行い、再度上鳴に向けて飛ぶ勢いで接近すると衝撃をそのままに両腕での爆破を叩き込んだ。
「はぁ、はぁ、やっぱり強すぎるぜ……」
「当たり前だろうが…クソっ」
相手の攻撃を全て防いだは良いが、その判断の速さが攻撃を喰らったら不味いと直感的に危機を感じたが故にである事に苛立ちがマシながらその場を離れた。
「勝負を急いだともとられかねないが、既にボロボロだった上鳴が勝てるとしたら速攻で仕掛けるしかなかった。判断は間違ってない」
遠巻きにちまちまと攻撃していれば最初にやられた様に逃げ場を封じられて遠距離から完封される可能性が高かった。
「だがあの場面では何も考えずに放電する方が強かったかもしれないな。周りに仲間がもういないのだからあれだけ近づけば指向性を持たせなくてもそうそう逃げ切れん」
『んー、爆豪の急加速もあるが範囲次第ではあり得るか。考えて行動したのが裏目に出たか?』
「考えるのは悪くない。工夫を凝らして打つ手を増やすのは当然の努力でもある。だが新しい手が最善でなければ、今までのやり方が悪かった訳ではない。手が多くて考えすぎたのと、共闘が長くて咄嗟に全体攻撃を思い出せなかったんだろう」
近くに仲間がいる状態でも戦える様になったのは成長だ。後は技を的確に選んでいけばもっと伸びる。
『まぁ、普段遣いしてるわけでもないアイテムまで上手く使って戦い抜いたが、判断力では爆豪の方が一枚上手だったってことだな』
「アイテムか……サポート科の発目、問題もよく起こすときくが技術力では他の生徒と比べて頭一個分飛び出ているな。正式に採用するには粗があるが、上鳴のアイテムは体育祭後にでも調整すれば職場体験には使えそうだな」
『外に依頼しても良いがあれだけ完成してるならその場で試しながら改良すりゃ十分使えるだろ!!今年の1年は本当にレベルが高ぇな!!』
先にエリアへ移動した上鳴を追いかけていた轟、爆発音に気づいてはいたが、上鳴が倒されているかまでは分からず、エリア内でどこに向かおうか悩んでいると、衝撃に襲われてバランスを整えながら近くの建物に着地する。
「今のは……緑谷、お前か……」
着地したのは住宅地のマンション群の一つであり、同じ様なマンションの屋上にクラスメイトの姿を見つけ、淡々と構える。
「轟くん、空から来るなんて大胆だね」
「時間が無かったからな。お前は自分から仕掛ける様なタイプには思わなかったけどな」
「ははは、僕も色々と思うところがあってね。ビクビクしてるだけで終わるわけにはいかないんだ。轟くんだって変わったんじゃない?」
「……そうかもな」
教室での和やかな会話とは程遠く、両者ともに相手の一挙一動に注目し、目を細めている。それでもなんとなく楽しく思えてしまうのか互いに笑みを浮かべている。
「お前にも負けない」
「ここまで来たんだ。僕も負けない!!」
仕掛けたのは殆ど同時だった。先程まで炎を使っていて身体が温まっていたのか、轟は氷を伸ばして攻撃する。
「『デラウェアスマッシュ』!!」
力を込めたデコピンで伸びてくる氷を根本の方まで破壊し、そのまま連続で放って轟に逆に仕掛ける。
「『熱演』」
氷で武器を形作る氷現と炎で動物を形を作る炎劇を同時に扱うと氷の武器と炎の動物で交互に攻撃していく。
「『ニューハンプシャースマッシュ』!!」
身体を弱らせずに行える多角的な攻撃だが攻撃の勢いを利用した急加速で振り切り、難なく避ける緑谷。しっかりと形がある氷と違い、形を真似ているだけの炎はその際に生じた風圧でいくつかかき消されてしまっていた。
「知ってるやつ相手にはあまり意味がないか」
細かい操作が出来る様になったが、炎を自由自在に操る個性という訳でもなく、形を作ってるのは意表を突くという意味が強く、炎で攻撃するだけなら纏めてぶつけたほうが威力も安定性も高い。
氷はその点、形によっては強度が変わり、用途によって使う形を変えることで最適な答えを導くことを出来る。空気による減衰も少ないので単発の遠距離攻撃なら氷の方が適している。
「『炎翼』『抱擁』」
「うわぁ!?『デトロイトスマッシュ』!!」
だが熱の広がりというのは馬鹿にできず、大きな炎をぶつけるのはそれだけで強力な攻撃となる。炎の翼の火力を高めると左右から挟み込むように動かす。
生半可な攻撃では防げないと感じた緑谷は片方の翼を壊すことに集中し、拳圧で逃げ場を作る。しかし、火の粉が少し身体に飛び、ただでさえ動いて汗をかいてるところに全身が炙られるかのような熱が加わり苦い顔をする。
「『フルカウル』『ニューハンプシャースマッシュ』」
「すぐに近づいてくるか……『
「ッ!?逃げっ、いや『フルカウル・オーバードライブ10』『デラウェアスマッシュ』!!」
「くっ、冷気が」
弾かれた際に自身が喰らう可能性がある近くでは炎は使わないだろうと考え迫った緑屋に対し、炎を使って身体が暖まっていたので迫ってくる緑谷を自分ごと凍らせようとした轟。
焦って逃げようとした緑谷であったが咄嗟に限界を超えた威力を指に込めて放つことで氷を壊し、冷気と衝撃によって生じた風を轟にぶつける事に成功する。しかし、使った指はもうこの後は使えないのが目に見えて分かるくらいボロボロに折れ曲がっていた。
身体が冷え切って凍結能力が下がり、動きが鈍くなる轟。万全な状態に戻るために炎を使いたいが、ついてまわる緑谷が邪魔でそのままでは使えない。
「仕方ない『膨冷熱波』!!」
「くっ!?」
緑谷への攻撃ではなく、周りの空気を暖める事で風を起こし距離を取りつつ、自身の身体を少しずつ暖める。
「『炎塊・渦流』!!」
緑谷が大勢を崩している隙きに炎を貯めると熱を流すように緑谷に向けて放つ。
「もう一度指を犠牲にすれば……いや、それだと戦い続けても意味がない。なにか…なにか…あれだ!!」
緑谷は炎の渦から猛スピードで逃げていくとマンションの屋上に設置されている設備を手に取って投げつけた。次の瞬間、設備は爆発し、物凄い勢いで蒸気を発生させ、炎と設備は跡形もなく消えてしまった。
「水蒸気爆発…なわけがないか……熱された水が膨張して破裂したのか」
緑谷が投げたのは屋上に設置されていた水を溜め込むタンクで、一気に熱された事で内部の水が膨張、タンクを破壊して周囲に降り注いだのだ。
蒸発した水で視界はかなり白く染まっており、互いに姿は見えなくなっている。蒸気ならばと凍らし直して炙り出そうと冷気を伝わらせていく。
塊のまま凍るわけがなく、凍った部分から雹の様になって落ちていく。蒸気の全てが下へ落ちていき視界が晴れてもその場に緑谷の姿は見つからなかった。
「逃げたのか?いや、潜んでるだけか?」
先程の出会った際の意気込みからして戦いから逃げるような真似をするのか?と疑問が湧く。優勝を狙うという意味なら分からなくはないが、別に緑谷が特別不利な状況でなかった故にそれも否定する。
「『フルカウル・オーバードライブ・スマッシュ』!!」
「『穿天氷壁』!!グッ…アァ!?」
自身の立っている建物からピシリと音が聞こえ、咄嗟に氷壁で攻撃を防ごうとしたが、割られた氷と共に吹き飛ばされる轟。
炎を出して姿勢を制御しようとするも、壁に叩きつけられる方が早く、そのまま意識をおとした。
「っとと、キャッチ?!」
壁に軽く埋もれている轟であったが炎の噴出自体は間に合っていたようで受け身は取れており、気を失っているだけのようだ。
落ちる前に緑谷がその身体を抱きとめて静かに地面に降ろした事で二人の戦いの決着は着いた。
「焦凍?!なにをやっているんだ!!」
会場の中で倒された事による心配ではなく、負けたことを責める様な声が歓声にかき消されながら叫ぶ。
「そもそも、あの相手……スマッシュなどと叫んでオールマイトのファンか?なぜそんな奴に負ける」
自分の息子がオールマイトのファンに負けたという事実が苛立たせる。しかし、そんな中でも力量は見ていたようだ。
「オールマイトと同質の個性か…自傷するなどと中途半端だが、あれは本当にそれだけか?まさか、アイツの隠し子……いや流石に立場を考えるだろう。となれば弟子などでも作っていたのか?急に教員などになったのもそのせいか」
轟を倒して安心していたが体育祭は終わっておらず、まだ選手が残っている。気を抜くことはなく、立ち上がろうと手足に力を込めているとすぐ近くの地面が弾けた。
「かっちゃん……」
「クソデクが、んな呼び方すんじゃねえ!!」
苛立ちを隠さずに両手から爆発を放ったかと思うと、緑谷と爆豪を追っていたであろうカメラ付きドローンが煙を上げながら落ちてきた。
「何してるの?!それ学校のだよ!?」
「んなことどうでも良いんだよ!!貰った個性だの何だの言い訳して、戦闘訓練に、USJ、ここでも結果を見せて、俺を馬鹿にしてんのか?」
「そんな、馬鹿になんて……」
「なら、なんで何も言わねぇ!!やり返す事もしねぇ!!俺なんて関係ねぇのか?眼中にないってのか?!クソデクが調子にのってんじゃねぇ!!」
怒りをぶつける様に爆発を繰り返す爆豪、これまでの山稜との戦いでの苛つきはもちろん、入学してからの不安と焦燥感も合わせて、心操による揺さぶりによって表面化してしまっている。
自然と見送ってしまった心操の事は忘れ、上鳴と戦い少しだけ自信を回復させたが最後の行動で自分の負けを認めてしまったかのようで精神が不安定に傾いた。
それでもドローンを壊してから会話に入っている当たりの頭の回りは残っているようで、緑谷の話せない事情を本当だと思っているからの行動だろう。
「チビ女も倒す!!お前も倒す!!そうじゃねえと、オレは…オレは…認められねぇんだよ!!『貫通弾』!!」
「かっちゃん?!『デラウェアスマッシュ』!!」
どこかいつもと違うようにも見える爆豪の様子に驚きながらも攻撃に反応する緑谷。そのまま、誰の目にも触れられナチ戦いが始まってしまった。
観客には映している映像が途切れたのは戦闘に巻き込まれた事による影響だと伝えたが、一部のヒーローたちは疑問に思っているようだ。放送スイッチを一度オフにしてイレイザーとマイクの二人は素早く状況を確認している。
『おいおい、いきなりドローンを破壊しやがったぜ爆豪?!どういうことだ?!』
「一気に心拍やらが乱れた……おそらく心操に何か掛けられてたんだろう。精神状態が不安定になってる。無事なドローンを回せ、場合によっては強制リタイアだ。緑谷もそうだが爆豪自身も危険だ」
精神状態が荒れたままにしていればどういう症状が残るかわかったものじゃない。傷にでもなれば、ヒーローを目指す以前の問題である。
『その心操も中々にえぐい状況だけどな』
「あぁ、同じ中学で家族ぐるみの付き合いがある。今は同棲中であり、仲は良好のはずだがな」
『それにしては容赦のない殴り合いだな。何度血を吐いてんだ心操?山稜もどうなってんのか分かんねぇがダメージを受けてる』
「心操は無茶のしすぎだ。個性を除けば身体は普通の人間と一緒だ。痛みや疲労という警告を無視して動いてんだ。勝っても負けても病院送りだ。山稜についてはUSJのときと同じで防げでない攻撃がそのまま流れてる。心操は共に訓練した時間が長い。山稜の個性に詳しいなら弱点や抜け道を知っててもおかしくない」
全国で賑わいを見せるほどの大イベントである雄英体育祭、1年のレベルが高いのもそうだが、ここに来て問題も多くなってきた事にため息を吐くイレイザー。
「あいつら全員ら終わったら面談と反省文だ」
どちらも身体を鍛えてはいるが、やはり女性である山稜よりは心操の方が筋肉がついており、力も強い。そこに個性によって限界を取っ払っているとなると普通の殴り合いではまず山稜が勝つことはない。
それ故にタネが割れない限りは絶対の防御を誇る『プリズム』を山稜は展開する。それでも心操はダメージを入れるのだから山稜からしてみればたまったものじゃない。
エネルギー消失に対しては二重三重に同じ所を攻撃することでプリズムを消し去り、対物理のプリズムに対しては攻撃先を増やすことで一点に必要な消費エネルギーを増やさせ、消耗させてり、必要なエネルギーを分散させたのを読んで一点突破に切り替える。
消失のプリズムを生み出すにも消耗はある。生み出す数を渋って殴り負ければダメージを負う。
吸収のプリズムは他のエネルギーが尽きると物理防御の性能も落ちる。周囲に流そうにも多方面に展開すると今のエネルギー量では流す前に個々のプリズムに限界がきて押し負ける。
移動などに使うプリズムは防御性能がないので狙われると一気にダメージを負う可能性がある。
透明化などの細かい操作はこの状況下では無駄でしかなく、ただただ疲労が増すだけである。
後は読み合いと泥沼の殴り合いである。心操はどのプリズムにどれだけのエネルギーを割いているのか、展開したプリズムの種類はどっちなのかを読み取り。山稜はどこに攻撃を繰り出すのか、どのタイミングで力を込めるのかを読み取る。
山稜が返ってくるダメージでやられるのが先か、心操がこれまでの無茶も含めて倒れるのが先か。
「俺は、『強い』!!」
「私は、負けない!!」
最後は意地の張り合いのような叫びと共に動き出した。心操の最後の自己暗示に呼応する様にプリズムを張った。心操の振り上げた拳はプリズムに触れることは無かった。
「はっ!!」
プリズムをすり抜けた事で、見せかけだけのプリズムだと判断し、即座に山稜本人を狙おうと切り替えたが次の瞬間には腕を取られてカウンターの一撃をくらって立ち上がれずに崩れた。
「探知か?」
「守りを捨てるとは思わなかった?」
「負けか……」
「うぅん、私ももう限界……」
声も掠れながらも疑問を口に出す心操に答えながら山稜もダメージが大きかったようでその場に倒れ込んだ。互いに指一本動かす事も出来ずに救助を待つばかりとなった。
『心操と山稜、まさかの共にダウン!!』
「これで残ってるのは現在戦ってる緑谷と爆豪だな」
『雄英体育祭、1年の部、長引いたが後はこの戦いを見守るだけだ!!いったい勝利の女神はどちらに微笑むのか!』
爆発と拳圧が吹き荒れ、エリアの一角は少しずつ崩れ落ち、ボロボロになっている。
「避けんじゃねぇ!!」
「無茶言わないでよ?!」
本格的に鍛えた時間はヒーロー科の中では最も短いであろう緑谷はクラスメイトと比べると体つきは良くなってるとはいえ自身のパワーに負ける程度には貧弱である。爆発など正面から喰らえばすぐにアウトだ。
爆発そのものも危険だが、それによって飛び散る瓦礫や視界を妨げる砂埃も動きを阻害する。逃げ場が少なくなっていく中でフルカウルの身体能力で飛び跳ねてどうにか足場を確保し、距離をとる。
「『爆速ターボ・クラスターショット』」
崩れて中の通路が見えるようになってしまった建物を足場に上へ上へと逃げていると、粉塵を掻き分ける様に爆豪が迫ってくる。腕を伸ばせば届く距離に来ると腕の向きを反転させ、両手を用いて特大の爆発を放った。
「『ニューハンプシャースマッシュ』!!」
力を込めて相殺するには間に合わないと直撃をさけるために拳圧と爆風を利用して大きく距離をとる。熱が全身を遅い、肌が焼けるような思いをしながらもどうにか逃げ切る緑谷。
「明らかに様子がおかしい……心操くんと戦ってなにか暗示を受けたのかな?」
暗示の怖いところは洗脳と違って外からの刺激だけでは簡単に解けないという点だ。刺激も効果がないわけではないが、かけられた本人が気付くか、意識を失いでもしないと完全には解けない。
その場にいない緑谷ではどのような暗示がかけられたのか分からない以上は不安定な爆豪と会話して気付かせるか、戦って倒すしかない。
「かっちゃんがなにか悩んでる?あのかっちゃんが……」
緑谷の中では爆豪勝己の存在はとても大きい、ヒーローとしての印象ではオールマイトがそうだが、身近なすごい存在としては一番だろう。
そんな爆豪でも敵わないものがいるという事は雄英高校に入ってから見てきた。それでも爆豪が悩んでいるなんて事は信じられなかった。
「でも僕がやるしかない!!」
そう意気込んだ瞬間、物凄い轟音と共に足場も壁も天井も全てが崩れて吹き飛び、緑谷もそのまま落ちていった。
イライラする。頭に血がのぼり、身体が熱くなっているが個性の回りが早いからそれは構わねぇ。爆発をぶつけたが手応えが薄い、煙に紛れて逃げたのは分かっている。
「『攻城砲』!!」
建物ごと吹き飛ばせば確実に当たる。戦闘訓練と違って、渋る理由がねぇんだ。
「『デトロイトスマッシュ』!!」
チビ女を倒すために用意していた技の1つが直撃じゃねぇとはいえ、なんでくらっといて堪えてねぇんだよ。
「お前がなんで立ち上がれるんだよ……お前は、弱くて、何もできねぇデクのはずだろ……そうじゃねえと俺は何だったんだよ……」
こっちに向かってくるアイツを爆破する。避けるのは分かってる。それでも繰り返す、当たってもあいつはこちらに向かってくる。なんで笑ってんだよ……
「かっちゃんの爆破はすごいね。一気に吹き飛ばされちゃったよ」
じゃあなんでヘラヘラ笑ってんだよ。遠回しに俺の爆破なんて大したことがねぇって言いたいのかよ。ふざけんじゃねぇ。
「俺の攻撃を受けて笑ってんじゃねえ。その余裕面を壊してやる!!」
「余裕なんてないよ!服もボロボロ、熱風で火傷も多いし、体中が痛いよ」
痛いんなら、辛いんなら、なんでそんなに
「えっと、それは、楽しいからかな?」
俺を馬鹿にして楽しいのか、そうかよ。それが仕返しか?そうだよな。いつも内心で俺を馬鹿にしてたんだろ。
「違うよ。かっちゃんと、あのかっちゃんと戦えるのが楽しいんだよ!!」
アァ!?何を言ってんだこいつ。戦うのが楽しい?痛みつけられて楽しいってふざけてんのか。
「僕は昔からかっちゃんを見てた。かっちゃんはすごいよ。誰よりも強くて、かっこよくて、敵わないと思ってた。うぅん、今でも勝てないんじゃないかって思ってるんだ。そんなかっちゃんと僕なんかが戦える。同じ場所に立てるのが嬉しいんだよ!!」
「…………舐めた事、言ってんじゃねぇぞ!!クソナードがぁ!!」
頭がガンガンしやがる。デクの言葉が頭の中で響いていた。分かってたことだろうが……クソっ、俺らしくもねぇ。声真似やろう後でぶっ殺す。
「そうだ。お前が俺に勝てる訳がねぇんだよ!!」
「かっちゃんはすごい!!だから…だから僕は今、ここで全力で戦ってるんだ!!」
こいつの事情なんてどうでも良いんだよ。殺して殺してぶっ殺して、俺が勝つ!!
「『フルカウル・オーバードライブ』『デラウェア・デトロイト・スマッシュ』!!」
「んなもん当たってやるか!!『爆速ターボ・クラスター』!!」
攻撃を見切って爆破を叩き込む。デクは空中に放り出されて、体勢を立て直そうとしてる。
「もういっちょ吹き飛びやがれ!!『
「『デトロイトスマッシュ』!!」
拳圧での移動もそこそこだが、地上と比べれば遅え。途中で攻勢に移ったが、爆破の推進力がある俺の方が速い。
「はっ、オールマイトのとは迫力が桁違いだ。出直してこい!!『榴弾砲着弾《ハウザーインパクト》』!!」
地上から空に打ち上げ、立て直そうとしている所を投げ飛ばし、最後に胴体に一撃を決めた。
「はぁ、はぁ、クソっ。気絶してねぇのかよ」
「…は、はは、かっちゃんはやっぱりすごいね」
そう言い残すとクソナードはエリア外に身体を倒した。気絶させてエリア外まで吹き飛ばす気だったが、ギリギリで耐えやがって。
「チッ、回収班はどこだ。手間かけさせやがって」
雄英体育祭1年 優勝者 爆豪勝己
という事で勝者は爆豪でした。いゃあ〜初期の予定と全く違うな〜なんでこうなったんだろう?オリ主の山稜か、急成長した緑谷が勝つ予定の旧プロットが手元にあるぞ?
まぁ、元から書いてるうちに変更しまくって遅れた作品だったけど、書き始めの頃と比べると全体的にボロボロな気がします。
チート過ぎる的なコメントを見て、手直ししたのが始まりだけど、整合性がないんだよな山稜の個性。
最後の戦いもイレギュラー同士を潰させて省いて、原作にいるキャラで終わらせた感が強い。八百万は元から残った組と戦えばすぐやられそうと考えてたのであれは規定の路線です。
他の個性対決はまぁ、中二臭い技名は置いといてもそれなりに考えてたし、発目のサポートアイテムなんかもチートじみてたけどまだ許容範囲内だと思ってる。
正直手直ししたいと思う自分がいるけどスマホでそんな事やってたら終わる前に寿命がくるね。いつかの後書きで悪夢までは、書きたいとかほざいてたけど、現状だと難しいかな。
とりあえず、近いうちに表彰式は上げると思います。今後はなぁ。どうしようかなぁ。オリ主のオリジン的な話もまだかけてないけど、一旦終わらせようかな。
最初から作り直すか、今のを修正するかはわからないけど続きを書くにしても手直しは必須。となると時間と設備を用意するためにもいったん区切りにしようかな。
というわけで、中途半端な所で終わりになりますが、次でいったん終わりです。
といった唐突な打ち切り宣言。
そしていつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。