絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア 作:ひよっこ召喚士
「「「個性把握テスト!?」」」
訳もわからず渡された体育着に着替えてグラウンドへ出たがそこで何でもないかのように聞かされたのは今から個性把握テストを行うという事。基本は青色で首から胸にかけてU、お腹から足にかけてAを彷彿とさせる白いラインが入っている。正直制服と比べても微妙なデザインだと私は思った。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「あの~、新入生代表の挨拶考えてきたんですけど」
いきなりの発言に集められた生徒たちはざわめく。
「ヒーローになるならそんな悠長な行事なんて時間の無駄だよ」
だがきっぱりとぶった切られてしまった。いや、確かにヒーローに特別必要ないのかもしれないけど、そこまで入学式に思い入れも無いけども、いきなりすぎるんじゃありませんかねぇ。
「雄英は自由な校風が売り文句だ。当然、それは先生側にも適用される。覚えておく事だな」
それから話される個性把握テストの内容。ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横飛び、上体起こし、長座体前屈。この八種で個性ありきで測定していくという。中学校でも行って来た体力テストの個性使用版という訳だ。
「国は未だ画一的な記録をとって平均を作り続けている、合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だな。そんじゃ試しだ……首席入学の山稜。個性を使って円の中から投げてみろ」
「……はい」
先ほど不満げな顔をしていたのを見られていたからか、それとも元々1位にやらせるつもりだったのかは定かでは無いがいきなり順位付きで名指し指名とか朝から精神的に疲れそうでいやだ。呼ばれてるのに出ない訳にもいかないので前で話している先生の隣まで進んでいく、心操を除いたクラスの全員からの視線を感じる。
「あの小さい子が首席!?」「女子に負けていたということか」
「山稜さんが首席!?」「あぁ!?あのチビ女が首席だぁ!!」
視線だけじゃ無かったようであちこちで驚く声や私の考察をしようとする声が聞こえる。この個性社会で強さの前に性別など関係ないだろうに、男だ、女だと口に出すのは浅はかだろう。そして爆豪とやらのチビと言う発言は苛つくな。やり易いようにあえてこうしてるんだよ私は。
「細かいルールなどは?」
「円から出なければ何をしても良い。最悪投げる必要性も無い。遠くにそれを飛ばせ」
そう言われるといくつかの方法を思いつく、ならばどの方法を使えば一番良い記録を安定して出すことが出来るのかに重点を置いて考えよう。手本として指名されたのに記録がしょぼいというのは恥ずかしいので無しだ。バリアに包んで運ぶのも考えたがそのためだけに広域認識用のバリアを展開するのは少し手間だし、どうせなら見栄えとかも気にしたい。
「『プリズム』」
まずはボールを
当たり前だが物理的に干渉できるタイプのバリアなので急速に回りだしたバリアに吸い込まれるように空気の流れが発生し、決して弱くない風が吹き始めた。このままボールを入れても下手なピッチングマシーンより飛ぶだろうがそれでもまだ速さが足りない。
速さを上げようと思えば回転速度を上げるか加速距離を長くすれば良い。二つに割ったバリアをホイールの前と後ろにセットしてボールを放り投げる。吸い込まれたボールはバリアホイールの回転エネルギーから運動エネルギーを得て、物凄い速度で発射されるかと全員が思った。
「え!?」
「何あれ?」
「ボールが元の位置に戻ってる?」
これによりバリアの回転速度と空気抵抗の問題もあるので限界はあるが加速距離を無視してボールを包んでいるバリアに運動エネルギーを加えられる。既に常人の目はもちろん、生半可なヒーローでは追うことが出来ない速度に達している。運動エネルギーは十分溜まった。私は準備は出来たとばかりに声を上げつつ、前方のバリアに反応があった瞬間にバリアを解除する。
「発射!!」
その瞬間、空気を切り裂くような音と共に打ち出されたバリアが飛んでいき、あっという間に学校の敷地内を飛び越して私の認識外の位置になったことでボールを覆っていたバリアが解かれて、バリアによって抑えられていたボールへ掛かっていた運動エネルギーも解放される。バリアを基点としてもう一度射出されたそれは空の彼方へと消えていった。
「計測不能、記録無限だな」
「「「無限!!??」」」
目の前で行われていた行動に全員が注目していただけあって相澤先生が手元の液晶に打ち込んだ∞という記録に対してクラスのほぼ全員が驚きの声を上げた。しばらくして落ち着くと生徒たちからは歓声と共に楽しげな声が聞こえる。皆、個性を使用しても良い体力テストなど経験が無かったので個性を思いっきり使える事に『面白そう!』と声を上げた。
「面白い、か……これからの三年間でそんな腹づもりでいく気なら、そうだな。こうしようか。トータル成績最下位の生徒は見込みなしと判断して除籍処分にしてやろうか」
『ッ!?』
髪を掻き上げ、ニヤリと笑いながら相澤先生は凄む。生徒たちは慌てて反論するが、一切寄せ付けない。自然災害、大事故、身勝手な敵、いつどこからくるか分からない厄災、日本は理不尽にまみれている、と彼は言う。
「そういう理不尽を、覆していくのがヒーローだ。さあ、最初の試練だ。Plus Ultraの精神で全力で乗り越えて来い」
(心操、流石にまずそう?)
(いや、一芸に秀でた者も多いが全体を通せばビリにはならんだろう。一応リミットは全開で行く)
(酷使しすぎて体を壊さないでよ)
相澤先生の感じからして余計なお喋りはよろしくないと考え、頭の向きや視線を変えずに小声で話す。強力な個性だがあまり派手とは言えない心操の個性では厳しいかとも思ったが、本当に全力でやるとの宣言を聞き、安心すると共に呆れと苦言を返しておく。
そして
第一種目 50m走
出席番号順に二人ずつ走っていくことになったが私の番までで一番早かったのが
「0秒63」
「「「0秒台!!?」」」
「山稜、50mはこれでいいが持久走の方はワープ系の技は使うな」
「はい」
先生から言葉が掛けられた時はビクッとしたがこれで良かったらしい。飯田天哉以外には爆豪の4秒51、青山優雅の5秒51、蛙吹梅雨の5秒58とかが早い方で、心操は6秒台だったのがまあまあだろう。最初に話した緑谷は7秒02と無個性の平均よりは早い程度だった。
第二種目 握力
「『シュリンクラッシュ』」
握力と言って良いのか分からないが握る手に合わせてバリアを展開し、縮小させる。仮想ヴィランであるロボットが壊れたのに握力計が壊れないわけがない。
「測定不能、無限だ」
「また無限だと!?」
「あれ握っては無いよな」
「握力では無いがありみたいだな」
八百万《やおよろず》という女子生徒の万力の創造よりはましだと思うんだけどな。向こうは1.2tと数値での記録が出てるから私の方が上ではあるが少し納得いかない。他に高い記録だったのは
第三種目 立ち幅跳び
要するに足が地面に付かなければ良い訳なのだから簡単な話だ。自分自身を中心にバリアを展開して飛ぶ。落ちることは無いが周囲にバリアを展開して無いので移動手段としては走った方が早いぐらいだがこの種目にはぴったりだ。蛙の個性の子がジャンプ力では群を抜いていた。心操もクラスの中では半分より上の記録だ。緑谷は普通に跳んでいたが、あいつの能力は何なんだろう。
「無限だ」
「あいつ何個、無限取る気だ」
「ここまでくるとレベルからして違う感じだな」
第四種目 持久走
先ほど相澤先生にワープは禁止と言われたので別の手段をとるしかない。というより元々ワープは持久力を測るという目的に合っていないのでやるつもりは無かった。まあ、どっちにしろ私の移動方法的には結局持久力は関係無いのだが、要は長距離を移動し続けられるかという事を測れればいいのだ。
全員で臨む種目なので周りへの配慮などもした方が良いだろう。記録には関係なくともそう言ったところを評価に入れている可能性はある。入試でレスキューポイントなんかがある位だ普段の学校生活でも素行は重要視されるだろう。
スタートと共に全員が走り出す、エンジンの個性を持つ飯田は瞬発力では負けることがあるが持久力と言う面では非常に強い、そしてさりげなくバイクを造って周回する気満々の八百万にはむしろ関心するばかりだ。私はローラースケートの様に靴の裏にバリアを固定して回転させる。
「速い!?」
「何であの速度で体勢が崩れないんだ?」
もちろん自分の身体もバリアで固定してますからね。そうじゃなきゃ加速した瞬間に体が後ろに持って行かれるし、バランスが取れても風で目がやられちゃうよ。私の個性は疲労は溜まるがどちらかというと精神を使う物なので意識さえしっかりしてれば速度でも負けることは無い。限界はあるが体力とは直接的に関係が無いのがこの個性の強い所だ。スピードが落ちることは無くそのまま完走した。
1位が私で2位が飯田3位が八百万だ。心操は全力疾走で走り切った結果5位であった。汗がだらだらで呼吸や鼓動は激しかったが倒れることなく平然と次の種目の準備をしている姿は何人かが不審に思っている様だった。
第五種目 反復横跳び
ローラでの横移動と超絶単距離ワープの合わせ技で1位をもぎ取ることが出来た。もぎ取ると言えば3位で悔しがっていたエロチビ、じゃなくて
第六種目 上体起こし
バリアでサポートも考えたがあまり上手くいく気がしなかったので普通にやった。足を抑える役は心操に頼んで交替で記録を取った。昔から鍛えている分で二人ともクラス平均より上には行けた。
第七種目 長座体前屈
いやまあ。身体は柔らかいのよ結構。でもねえ身長とか腕の長さとかがあるせいで殆どぴったりガラケー並みに身体を折りたためているのに㎝に直すとどうしてもしょぼい。
「体格って評価の計算に入れてますか?」
「……考慮はしている」
最終種目 ハンドボール投げ
私は見本を見せた時の記録で良いとのことで他の人のチャレンジを見守る事にした。……八百万、大砲って、いやバイクも中々だったけど。兵器を簡単に作れるって考えるとテロリストに狙われそうだな。爆豪、死ねって、掛け声からして完全にアウトだよ。
おっと心操も全部終わったか、身体強化やハンドボール投げに流用できる個性の人たち以外の普通に投げるしかない人たちの中では一番上の記録を取れていた。とりあえず体力回復用のバリアに突っ込んで休ませる。他の人たちが終わるまでの間だけでも休まないよりましなはずだ。
次は……緑谷か、此処で記録を出せないと、いや出せたとしても厳しい事になっているはずだ。緑谷もそれを理解しているのか何やら覚悟を決めたような目でボールを持った腕を大きく振りかぶって投げた。だが記録は46mとなった。
「な、確かに使おうって。」
「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよお前のような奴も入学できてしまう。」
相澤先生の方を向くとその髪は逆立ち首に巻いていた布は空中に浮いていた。普段は布に隠れていたのか首には黄色いゴーグルがかけられている。緑谷と相澤先生の話を聞く限り緑谷は個性を使おうとして先生に邪魔をされた様だ。
「個性を消した?あのゴーグル、そうか!を見ただけで人の個性を抹消する個性。抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!」
「イレイザー?俺知らない。」
「聞いたことあるわ、アングラ系ヒーローよ。」
アングラ系と言うのは仕事に差し支えると言ってメディアへの露出を本人が嫌っているため世間にはあまり知られていない。アンダーグラウンド系ヒーローの事だ。見た感じ視界に収めることで個性の発動を抑えると言ったところだろう。この個性社会においては絶対的な強さを持つ強個性の一つだろう。
「見たとこ、個性が制御できないんだろ?また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」
「そ、そんなつもりは!」
反論しようとした緑谷だったが布が勝手に伸びてきて相澤先生のすぐ前まで引き寄せられる。
「以前一人のヒーローが大災害の中千人を救った。同じ蛮勇でもお前のは一人を助けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久。お前の力じゃヒーローにはなれないよ」
「お前の個性は戻した。ボール投げは二回だ、とっとと済ませな。」
相澤先生の言葉が効いたのか緑谷は下を向いたまま再び円の中へと入った。なるほど緑谷は個性を使えなかったのか、代償が必要となる個性なら使いどころを考えるのは当然だ。となると緑谷が一番記録を取れると考えたのがハンドボール投げなのだろう。
緑谷は遠目から見ても焦っているように見えた。しかし、相澤先生の言葉を受けどうすれば良いのかを必死に考えている。あれは、緑谷の眼は決して諦めていない。緑谷は一呼吸置くとボールを握りしめて思い切り放った。
「先生・・・まだ、動けます」
「こいつ……!」
記録は705.3m。右手の人差し指が大きく腫れ上がって目に涙を溜めながらも気丈に宣言する緑谷。その言葉の通り、行動不能になるほどの怪我では無い。その姿を見た相澤先生は思わず声が漏れた様な見方によっては楽しそうな表情を一瞬見せていた。
「700mを超えた!?」
「やっとヒーローらしい記録出たよぉ!」
「指が腫れ上がっているぞ。入試の件と言い、おかしな個性だ。」
「スマートじゃないね。」
各々が緑谷の記録について話している中、一人だけ違う視線を向ける奴がいた。
「どう言うことだ。こらぁ!訳を言え!デクてめぇ!」
両手から個性による爆発を起こしながら緑谷へと突っ込んでいく爆豪。その姿は訳を聞く前に爆破されてしまいそうな勢いがあった。しかしどこからか飛んできた布が頭を体を締め付けて爆豪の動きを封じた。
「んだ、この布。硬ぇ・・・」
「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器だ。ったく、何度も何度も個性使わすなよ。俺はドライアイなんだ!」
(((個性すごいのに勿体ない!)))
見たものの個性を消すと言うのは目を開いてずっと見続けていなければならない。瞬きをすれば解除されてしまう。ドライアイである相澤だが本当にもったいないと言う言葉が的確だ。色々とあったがようやく個性把握テストは終了を迎えた。
「ちなみに、除籍はウソな」
その言葉に殆どの生徒が固まった。相澤先生の言葉を飲み込めていない様だ。
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「はああぁぁぁぁぁ!!!」」」
「虚偽ってつまり、嘘ってことですか!? メッチャ頑張ったのにぃ!」
「騙されたぁ……!」
「当たり前でしょう……初日に除籍なんてあり得ませんわ」
どうだろうな、と。何人かは苦笑している。私も相澤先生が嘘を吐いている様には見えなかった。もちろんプロヒーローであり、人生の先輩でもある先生の技術が嘘だと気付かせなかったというのも考えられるが、本気を出させるなら本当に除籍者を出した方が今後のやる気も上がるだろう。そちらの方が合理的だと私は思った。
表示された順位を見ると、私は1位で心操は5位だった。ちなみに除籍されてたかもしれないのは緑谷だ。私と心操はヒーロとしての適性を見ていたと予測しているのでお互い本気で取り組んだのには間違いは無いと考えている。
場所は変わって、A組教室。解散、と言われたもののもちろんそのまま解散するわけがなく、着替え終わった数人は現状でクラス一のイレギュラーである私を囲むように群がっていた。
「首席の話も聞きたいけど」
「それよりもひとつ聞きたい事があるんですけど」
「山稜さんって」
「「「一体どんな個性なんですか!?」」」
いやまあ、あれだけハチャメチャな結果を出して入れば気になるのも当たり前かそれに首席入学者と言う先生によってばらされた肩書も相まって、周りに集まっているのは女子だが男女関係なく私の声に耳を傾けようとしている。
「どの種目においても半透明の物体、バリアの様な物を生成してから挑んでいたことから発動型の個性だと考えて良いと思うし、増強系の個性でないのは見れば分かる。あの物体の汎用性の高さに注目するべきだと思うけど、先に周辺に大きいバリアを展開していたことからバリアの展開するための条件や操作しやすい条件などがあると考えて良い。後は同じに見えるだけでその性質が微妙に違って見えたことからそれぞれ別々に展開して制御しているとすればかなりの頭を使わないといけないはず、それに消費エネルギーや移動距離が分からないけど瞬間的な移動、ワープが可能と言うのは現場に駆け付けないといけないヒーローにはかなり優位だし……」
「今日で一番イキイキしてないかい?」
緑谷、餅つけ。じゃ無いや、落ち着け。流石にこちらに顔を向けてブツブツ呟いているのは怖いぞ。私の個性については教えてやっても良いからその不気味な行動は止めてくれ。何処を見ているのか分からない目でどうやってノートに書いてるんだ。飯田の言う通りイキイキしてはいるのだろうが周りの目を気にしようか。そしてどこからそのノートを取り出した。お前はまともな方だと思ってたんだぞ緑谷。
「教える分には全然良いよ。私の個性は『プリズム』って言うんだ」
「プリズム?」
「って何?」
「理科の実験で見たことがあるけど、アレの事?」
「それで合ってるよ。ほら光を通すと色が分かれる奴あるでしょ。私の能力はそれと全く一緒ってわけじゃないんだけど他に言い表せる言葉が無かったのと、語呂が気に入ったからってのもあるかな」
その他にも個性の名称から能力の推測がしにくいというのは一つのアドヴァンテージになりえる。『プリズム』だけを聞いて詳しい能力が分かるやつがいるのならそれはもうそいつの個性だろう。まあ思惑通り誰も個性と能力が結びついていないようだ。
「聞き出すようで申し訳ないんですがそれでは一体どの様な個性なのですか?」
「母親の個性が『結界』で父親の個性が『エネルギー操作』だったんだけど、二つの個性が混ざって、少し変異したのが私の個性なんだけど」
それから私の個性でできる事を一つずつ紙に書きだすように伝えていった。バリアの様な物を認識した場所に展開できる。今後それを『プリズム』と言い表して説明する。認識できる限りプリズムの操作は自由。プリズムを通して情報の入手が出来る。プリズムを通してエネルギーや対象物の操作も可能。エネルギーを別のエネルギーにしたり保存は出来る。普段から周囲の余分なエネルギーを収集して貯めている。体力も使うがどちらかというと精神エネルギーを消耗する。というより体力の消費は貯めたエネルギーで賄えるから考慮しなくていい。
「私の個性はエネルギーの吸収も反射も結構自由だからプリズムを展開さえしていれば負けることはない。完全防御を可能とした個性だよ。一番の天敵となると相澤先生になるんじゃないかな。あ、後エネルギーじゃない普通の物もプリズムに入れて保存出来るよ」
プリズムに収納して、別の場所に置いておいて必要な時にプリズムを引き寄せたり、収納した物をそのまま収縮させて懐に仕舞いこんだりしている。食料や道具、衣服、本、ゲーム、筆記用具、教材、大抵のものは持っている。遭難してもしばらくは暮らせる。まあ、プリズムからプリズムへの移動が可能なので遭難しても一瞬で家に帰れるので遭難することはそもそも無いだろう。
「物騒な使い方となるとプリズムは普通の手段ではまず壊れないから、ぶつけて攻撃しても良いし、プリズムに入れて押しつぶすことも出来ちゃう。受けた攻撃をそのまま返すだけでも十分かもね」
「……いやぁ、それはチートや。ちょっとずるすぎない?」
「ケロ、攻撃が絶対通らないってのが本当なら勝ち目は無いわね」
「多彩な能力を使いこなすのには何より頭も使うでしょう。応用できる分だけ咄嗟に何をどう使うかの判断を要しますが、個性把握テストでは何れも種目にあった使い方をしてました。その技量は純粋に尊敬出来ます」
実を言うとデメリットもかなり多いから完全防御は言い過ぎだし、失敗すれば負担や疲労も一気に返ってくるからそう簡単な話では無いが、大抵の攻撃が無効化できるのは本当だ。まあ、自分から弱点を教える訳も無いので信じてくれたのであればそのままでいいだろう。
「私の事だけじゃなくて、他の人たちの事も教えて欲しいな。後、個性だけじゃなくて自己紹介もちゃんとしよ」
とりあえず心操はしんどそうにしていたので回復用プリズムに突っ込んだまま大人しくさせている。その後、残った面々の名前と、出身、個性などについて紹介し合う。これから一緒に過ごしていくのだから情報交換はしておくべきだ。そして自分の事を聞いた後だからか、殆どの人が能力に着いて色々と話してくれた。結果的に色々と知れて、その上で仲良くなれたのだから嬉しい事だ。
私はもう少し話して親睦を深めようと思うが、自己紹介は終えてる。心操は家に帰した方が良いだろう。既に限界を超えて動いている。回復用プリズムのおかげでぶっ倒れない程度には回復しているが自身の個性を解いた瞬間に全身が痛みに襲われるだろう。話をしていた面々に「ちょっと、すまん」と断って心操の場所へ向かう。
「心操、私はもうちょい話してから帰るから先に帰って休め、荷物は預かる」
「あぁ、そうだな。そうしとく、悪いな。何かやっとく事はあるか?」
「休めと言ってんだよ。まったく、風呂にお湯だけ張っといてくれ」
短いやり取りで心操を教室から追い出して、さて話を再開させようとすると物凄い笑顔なのだが何故か恐ろしく感じる表情で取り囲まれた。遠巻きに観察している男性陣も興味深そうにこちらの様子を見ている事から助けを求めることは出来ないと諦めた。
「今のやり取り、なんですか!!??」
あっ、気になります?
「え、何付き合ってんの?って言うより結婚してるの?」
してません。まだ学生なのに結婚してる奴はいないでしょう。
「同棲してるんですか?!」
それに関しては、はいなんですが
「あの、答えるんで喋らせてください」
物凄い勢いで捲くし立てられた。その結果私と心操の関係について洗いざらい吐かなければいけなかった。いや、話して困る事は無いけどさ、そんなに気になる。あ、はい。気になるんですね。分かりました。
「心操とは中学1年の2学期で出会ったんだけど、心操がヒーロー目指してる話を聞いて、お互い相談するようになって、私の家、両親がヒーロだから訓練とか一緒にやるようになって、2年の時には家族ぐるみの付き合いになってて、二人とも雄英に合格してお祝いしたり、これからについて両方の家族も交えて話し合ったんだけど、雄英に通うにあたって近くに家を借りた方が楽だろうって話が出た時に広めの家を借りて二人で住めばという話が出て、今に至ります。あと、別に付き合ってるわけでは無いです」
嘘は付いてない。詳しく話していない部分はあるが大筋は本当に話したまんまなのでそれで納得してください。お願いします。
「あれで付き合ってないって嘘でしょ!?」
「夫婦に近いやり取りでしたよ」
「ケロ、正直信じられないわね」
そんなことを言われましても、どうしようもないです。
「ちくしょう。女子と同棲とか勝ち組かよ、あの野郎」
「漫画かよ。在り得ねえぇ」
在り得るんですよ。そして本音が駄々洩れすぎて女子からは冷たい視線が男子からも呆れの視線が飛んでいるのに気づいたほうが良いぞ峰田と
最後にどっと疲れたな。えっ話し合いの続きはって?私の話題で吹っ飛んだよ。ちくしょう。