絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア 作:ひよっこ召喚士
「轟は個性把握テストでも3位だったし、障子も8位と上の方だ。それに加えて轟は攻撃、障子は索敵とバランスも良いし、勝てるのか?」
「いや、耳郎はテストと個性の相性が悪かっただけで、今回はどうなるか分からんでしょ」
「耳郎も索敵は出来るだろ?」
「それに心操は個性もよく分からないし、テストでも5位と二人に負けてないよ」
「接近戦になると流石にヴィランチームが不利じゃないか?」
「障子君の個性も目に見える分、分かりやすいが強力だ」
皆が画面を見ながら試合の展開を情報を元に予測する。先ほどの1戦目を見て、次は自分たちだと息巻いており、学べるもの、活かせるものが無いかと必死なのだ。出来ることを全て知っている訳では無いので各々が訓練参加者の強みと弱みを上げて、どのような作戦で動いて行くのが良いか意見を言い合う場になっているが十分だろう。
次に戦うのは轟、障子のペアと耳郎、心操のペアだ。轟は推薦入試組でその個性もかなり強力で、それを扱う技術も中々のものだった。障子も個性把握テストでは20人中8位とクラス内では上の方で油断はできない。耳郎は17位と下の方だがこの前聞いた個性ならこの訓練では非常に役に立つだろう。
「山稜さんは心操くんの個性って知ってるの?」
「山稜さんはどっちが勝つと思う?」
山稜に話を聞きにくるのは当たり前だろう。同じ中学出身で同棲するだけの仲である山稜が心操の個性を知らないわけがなく、現状誰よりも強く、賢いのは彼女なのだから。
「あいつの個性は訓練が終わったらあいつが教えてくれるさ、勝敗に関しては」
もったいぶる様に、全員の視線が集まったのを感じてから声に出す。
「心操達が勝つだろうね」
一息で言い切り、断言した。首席であり、テストでも訓練でも圧勝して見せた山稜の言葉を誰も疑う事はしないがそう言わせるだけの何かを心操は持っていると考え全員がモニターに映る心操の様子を見始めた。
「心操、作戦はどうする」
心操と耳郎は今回、ヴィランチームとして轟、障子のふたりを迎え撃たなければならない立場である。準備が出来る分のアドヴァンテージを生かせるかで勝敗も変わる。
「核の場所は分かりやすいけど屋上で良い、耳郎は何が出来る?」
「ウチはこのプラグを指して攻撃や小さい音を聞いての索敵かな。伸ばせる距離は大体6メートルぐらい」
そう言ってプラグになっている耳たぶを目の前で伸ばして実演して見せた。心操としてはどうやって向こうの動きを把握しようかと考えていたので耳郎の個性は嬉しい。
「なるほどね。このルールなら山稜ほどでは無いが俺の個性さえ使えれば勝てる、が確実に勝つために手を、いや耳を貸してくれ」
「へぇ、断言するって事はそれだけ自信のある個性なんだね。それで何をすればいい?」
「あいつらは忍び込むにはあまり向いてはいないから揃って戦いを挑んでくると予想してるが、確実に個性を使うために始まって少ししたら音を拾って相手の動きを探って欲しい」
「分かった」
いよいよ始まろうとしているので別室で様子を確認している面々はヒーロ―チームが映し出されている画面を見ている。
「索敵は任された。必用なら捕縛も」
「向こうは個性をあまり見せてない気を引き締めよう」
真面目で少し口調が硬い障子と感情をあまり表に出さない轟は作戦を決めてからは口数も少なく、訓練に集中している。
『ヒーローチーム、スタート』
二人にオールマイトの合図が届き、決めておいた通りにまず轟が大きく仕掛けた。
「な、ビルが凍った」
「ケ、ケロ。この部屋まで冷気が」
「カメラもいくつか凍って見えないな」
氷の力を用いて突入する前にビルを丸ごと氷で覆って見せた。ヴィランチームの様子を写すモニターを見て見るといきなりの氷に驚いてはいたが凍らされること無く、やり過ごしたようだ。ビル全体を襲う寒さには参っているようだが戦闘不能には程遠い。
小さいビルとは言え少し探索に時間が掛かる。ヒーローチームはいつヴィランが仕掛けてくるか分からないので常に警戒しながらの行動となる。中々襲ってこない相手に気を張り続けていたせいかヒーローチームの二人には少し焦りも見えた。
しかし、その後も何も起きることは無く、轟と障子は屋上にたどり着いた。屋上の扉を開けると目の前に張りぼての爆弾が置かれている。確実に罠だと分かり、二人は近づいて良いものかと悩んで動きが止まっている。そこを狙う様に心操が動いた。
「よう。ヒーロー?」
「「心操!?」」
二人は扉の上に隠れていた心操に声を掛けられ、その名を呼んで戦闘態勢に入る。モニターの前の面々もようやく戦いが始まるとモニターを見つめるが、その期待は裏切られた。
「心操の勝ちだな」
『タイムアップ!!ヴィランチームの勝利だ』
「「え?」」
轟と障子はオールマイトの終了の声が掛けられて唖然としていた。自分たちは心操と向かい合っていてその後は、と考えたところでその後の記憶ははっきりしない。だが、前後から考えて心操に何かされたのは確実だろう。その答えを知るためにも部屋に戻る事にした。
「はい、お疲れ様!早速講評を始めようと思うが、まず心操少年が何をしたのか分かるかな」
予想なら何人かがしていたが確実にこれだろうと言った意見は出ていなかった。オールマイトも事前に生徒の個性を知らされてるからすぐに何をしたのか分かったが、あれも初見殺しな個性だろう。誰も率先して手を挙げないので先ほど意見を言った八百万が手をあげた。
「たぶんですが、精神操作系の個性では無いでしょうか?」
「正解だ。発動条件を知らなければ避けようがない強力な個性だ。心操少年、何をしたのか詳しい説明をしてもらっても良いかな?」
その答えを聞いてオールマイトは正解だと答え、続きはその個性の持ち主である心操に詳細を話すように促した。
「俺の個性は『洗脳』だ。普通に会話する分には問題ないが個性を使おうとして話しかけ、それに相手が反応を返すと操れる。だから今回は絶対に反応を返す、二人が驚きそうな状況を作って待ってたわけだ。ちなみにマイクや拡声機を使うと操れないな」
「『洗脳』ですか……」
「それだけ聞くと、ねぇ」
やはり『洗脳』というのはあまりヒーローらしくない響きだろう。どうしても悪用の仕方の方が先に思い浮かんでしまう。
「ああどちらかというとヴィラン向きの個性だな。昔から言われてるし、俺もそうだと思ってるから別にどうでも良いよ」
「ん、個性が『洗脳』だとするとテストで見せた動きや力はどうやってるの?」
「なあ、なあ、何処まで操れるんだ?何が出来る?」
確かに心操は個性把握テストにおいて5位と言う記録を出せるだけの力があった。動き方は訓練でもどうにかなるが、あれだけの結果を出す力が引き締まってるとはいえ常識的な体つきにあるとは思えない。そして峰田の明らかに邪な質問は全員が無視をした。
「ああ、あれは自分を『洗脳』したんだ。『洗脳』と言うより『催眠術』に近い使い方だな。まあ『洗脳』も『催眠術』も基本は『暗示』と考えて個性を伸ばした結果だ」
「なるほど、自分を強いと思いこませたと言う訳か」
「簡単に言えばだな。本当に強くなった訳じゃなくて体のリミッターを外して無茶をしているだけだな。多少の強化はあるだろうが元の身体が増強系とは比べるまでも無く弱いからな。持久力の方も疲れていないと体に誤認識させてるわけだから。やり続けると限界をとっくに超えているはずだった体だからな……ぶっ倒れるだけで済めば良い方だ」
「個性把握テストの日、私が『プリズム』で心操を囲ってたの見た人いるでしょ。あれ回復エネルギーを貯めこんだ物なんだけど、それでもすぐには回復できないほどにあの日の心操は無理をしてた。たぶん軽い攻撃で死にかねないぐらいにね」
だから早く帰って休むように追い立てたんだよと付け加える。心操はあの時は除籍が掛かってたからなと苦笑いで答える。ちぐはぐな姿に違和感を覚えている人もいたがそれほど無茶な事をやっていたとは思っていなかったようで驚いていた。
「『暗示』は色々と応用が利くし、味方の補助も出来る。ちゃんと使えばどんな個性でも役に立つって事だ」
「リミッター解除、五感の強化、疲労誤認、後は勉強でも役に立つよ」
具体的な例を心操の次に『洗脳』の個性に詳しい山稜が付け加える。
「それって『頭が良い』って『暗示』したら頭が良くなるの?!」
まさかとは思うが、もしそれが可能ならあやかりたいと学力がギリギリの連中の目が輝いた。
「頭が良くなるわけでは無い。簡単に言えば苦手意識を無くして集中できるようになる。覚えやすさにも多少影響が出てるはずだ。普通に勉強するより数倍効率は良いとは思うが、勉強しなくて良い訳じゃないからな」
『暗示』の個性による勉強というのはスピードラーニングの上位互換に近い、確実に集中でき、苦手意識は無くなり、個性の特徴的に一度は必ず頭に入るのだから。テスト前日の一夜漬けとかにも効果を発揮するだろうがそれは言わないで置く。真面目に普段から勉強することに越したことは無い。
否定されてすぐはそんな美味い話は無いかと落ち込みかけていたが、心操の話を聞く限りそれだけでも十分凄いんじゃねえか、と再び目を輝かせた。あまり勉強に苦労していない面々も確実な効率アップと言うのは興味深かった。
「入試の学力テストでも使ったね。緊張は無くなるし、ど忘れも予防できるからね」
「ずっりぃ、それありかよ」
「『暗示』付の勉強会開いて欲しいな」
色々な使い方とそれによる利点などを話していくことで最初と比べて『洗脳』という個性に対する思想、凝り固まった印象はだいぶ薄れたと見て良いだろう。
「それで女子とか操れるのか?」
約一名の色馬鹿を除いて、最初から最後まで自分の考えを通す姿には一周回って感心してしまいそうになるが、峰田の行動と質問には男女の殆どが呆れた目を向けている。
「峰田、お前なぁ」
「しょうがないだろ。俺の欲しかった個性ランキングで『透視』の次に欲しいのが『
堂々としすぎているのも考え物だが、ここまで開き直られると無視し続けるのも面倒になってくるので、非常に嫌そうに答える。
「出来る出来ないで言えば、たぶん峰田が考えているであろう事も可能だろう。山稜との訓練で個性の威力や操作性はかなり上がったからな」
意識レベルの調整や細かい命令の可否、洗脳度合いの強化に伴う洗脳の強度、様々な部分を山稜と出会ってからの3年間で鍛えた。『洗脳』という文字だけ見たら凶悪な個性を育てるのに協力する変わり者が居なければここまでの事は出来なかっただろう。
「おおーっ!!」
「が、ヒーローとして望まれない個性の使い方をするつもりは無い」
峰田の眼を見つめて睨みつけて牽制する。というより、お前もヒーローを目指しているはずだよな?と言った懐疑的な視線も混ざっている。
「それ以上詰まらない話をしてくるなら、まずお前がそう言う事を考えられない様にしてやろうか?」
「ひっ!?ゆ、許してください」
はっきりとした脅しだが、周囲(特に女子)に迷惑を掛けてばかりいる色欲モンスターがこの世から無くなるのであれば別に良いんじゃないかと思う者も一定数いた。しかし『洗脳』と『暗示』を組み合わせれば真面目に
峰田も一時的ではあるだろうが落ち着き、怒りのこもった視線に怯えていたことから同じような事で心操を煩わせることは無いだろう。ようやく話が一段落着いたところでオールマイトが話を講評へと戻す。
「さて、今回のMVPは心操少年だな。自分の個性を確実に作用させるために核までも囮にするという危なげな作戦ではあったが、確かに効果的ではあった。核のすぐそばで見守り続けているとも言えるしね。それと轟少年と障子少年の動きを確認し続けた耳郎少女も仲間を信頼して自分の役割を落ち着いてこなしていた。とても素晴らしかったよ」
「「ありがとうございます」」
「轟少年はビルを巻き込んだ攻撃は避けにくく、寒さで相手の行動を阻害する事も可能だが長い捜索活動では相棒である障子少年はもちろん、自分にも多少影響は出てしまうからね。迎え撃つ側ならそれでもいいかもしれないけど、相手が見えていないのに全体へ攻撃したのは相手へ警戒させてしまうから気を付けようね。そして障子少年は常に周囲を警戒していたけど警戒しすぎで緊張していたのと、相手の動きや音に注意してたからこそ問いかけに反応しちゃったのもあるかな。後は罠を疑いすぎて動けなくなっちゃってたのも痛いね。見つけた瞬間に飛び込むというのも危機感が薄いと判断されるけど、疑心暗鬼に陥るのは良くないね」
「「はい」」
「両チームとも自分の個性を生かした立ち回りを意識できていたから、戦術はこれから学んでいくしか無いけど、全体的に個性を使いこなしてい行ける様に練習する事と工夫を増やしていく事でも選択肢は増えるからね。
オールマイトからの評価はそれほど悪くは無かったがそれでも警戒していたのに、いや警戒していたからこそ相手の罠にまんまと嵌まってしまった轟と障子は悔しそうな表情を浮かべていた。そして山稜は心操の勝利は疑っていなかったがきちんと勝ったのを見て満足していた。
続けて行われる3戦目は峰田、瀬呂のヒーローチームと八百万、尾白のヴィランチームの戦いになるのだが、これはヴィランチームの方が最初から優位な展開を取れるだろう。
「八百万の『創造』は規格外な個性だよね。罠でも武器でも限界はあるけど自由に作れるんだから」
「それに尾白君の『尻尾』も目立ちはしないけど器用に動かすことが出来て、攻撃にも防御にも転用できる。純粋な近接戦ならそうそう負けないんじゃないか」
「瀬呂のテープも準備が出来れば十分厄介なんだろうが、今回はヒーロー側だしな。テープを利用した高速移動は凄いが室内だと動きが制限されるだろ。元々対人戦も得意では無いし」
「峰田の個性もな。あれも対人戦向きではないし、もぎもぎって言ったっけ?あれをくっつけて動きを封じることが出来れば核を狙いやすくなるだろうけど、投げられたそれに当たってくれるような相手じゃないだろ」
「チームの役割が逆だったら丁度良いバランスだったかもね」
「峰田もやる気を出していた。二人の個性は工夫次第で出来ることも多いだろ」
「あの二人の動きはトリッキーだからね。作戦次第で可能性だけなら十分あるでしょ」
「しかし、瀬呂も峰田も個性の容量があるからな。その点は八百万も一緒だが尾白は体力の心配位だろ?」
「やっぱ、不利そうだね」
八百万が何を作るのかにもよるが山稜もこの対戦カードはちょっと厳しい物があると感じている。個性把握テストの順位でもヒーローチームはヴィランチームに負けている。これを覆して結果を残せるのか、まもなく始まる。
『ヒーローチーム、スタート』
「突出せず、必ずツーマンセルで動くぞ」
「おう、俺だって出来る所を見せてやる!!」
入り口に入ると、プチって音と共に何かが降ってくる気配がした。瀬呂は峰田を抱えるとテープを射出、巻き取りを瞬時に行いその場から離れた。
「確保テープの複製か!!」
「入り口にワイヤートラップって、八百万の奴本気で仕留めに来てねえか?!」
「そりゃ本気にもなるだろ」
幸い瀬呂の活躍により二人に確保テープが張られることは無かったが、ビル全体が罠だらけに改造されているのは間違いないだろう。峰田も咄嗟に動けるようにもぎもぎを用意しておく。階段や角を曲がる時も周囲と足元、頭上と確認しつつ慎重に進む。
ビル内の扉は全て閉じられており、いくつかダミーも混ぜられている。偽物の扉と言うのも探索としては面倒だが、本物の扉には殆ど罠が仕掛けられている。全部じゃないのは油断を誘うためか、『創造』に必用なエネルギーの節約なのかは分からない。
「やっぱり核は上か?」
「上に行くほど罠は増えてるけど、1戦目と2戦目が上に置いてたから裏をかいてくる可能性もあるが結局は探さないといけないことに変わりはないだろ」
「そうだな。それよりも八百万も尾白も姿が見えねぇのはおかしくねぇ?」
峰田の素朴な疑問に上で待ち構えている可能性を考えたが、あれだけ罠を張っておいて最後が普通の防衛というのはいささか中途半端、工夫が足りない様に感じる。とは言えこれまでに見た部屋には二人は居なかった。違和感はあるが時間も限られている。先に一番上を確認しておきたいのもある。
「上の階は此処よりももっと罠があり、屋上にあいつらが隠れてるとすればこのまま突っ込むのは不味い。特にテープを巻かれればそれで終わりだ」
「俺はお前ほど早くは動けねえし、マジでギリギリだしな」
「もぎもぎ少し貸せ、くっつくからそのまま持ってて」
複数のもぎもぎの周りに粘着面を外側にしてテープをグルグルと巻く、攻撃を防ぐようなことは出来ないがテープの罠であればこれで防ぐことも出来るだろう。もぎもぎの部分であれば攻撃を受けても大丈夫かもしれないが過信は出来ないし、尾白なら盾ごと吹き飛ばしかねない。
それに加えて峰田の背中にテープをくっつけておく、テープは自身の移動にも必要なので切りはなした物を使っているので引っ張って救出するときは自力となるが、何もないよりは良いだろう。
「危ないと思ったらテープを引くが、出来る限り自力で何とかしてくれ」
「分かった。気づけなかったときは頼んだ」
小細工でしか無いがしないよりはましと割り切って上に進む。盾を構えた峰田が前を進み、引いたほうが良いと判断したらテープを引いて峰田を回収、進んだ方が良い時は腕のテープを射出・巻き取りを素早く行い罠を切り抜ける。地面に置いたもぎもぎを使って撥ねる事で峰田が自力で罠を避けたり、いやらしいが単純な罠のためもぎもぎを使って誤作動させたりと疲れるが何とか進めている。
「この階にも居ないのか」
「やっぱ屋上か?」
屋上よりも狭い室内の方が八百万も武器を使っての攻撃を当てやすいし、こちらの行動の阻害もしやすい。罠と合わせられれば攻略は不可能に近い。これまで邪魔がないから罠を切り抜けられてきた様な物だ。何もしかけてないのには何か理由があるはずだ。
「芦戸・麗日ペアがやったみたいに窓から出て上へ行くのもありか?」
「麗日の無重力はばれにくいが、テープが巻き付いたらすぐばれかねないだろ」
「正面から行くのとどっちが良いかだね」
どちらも何とも言えないという事でいっそのこと二手に別れて屋上へ行くのもアリでは無いかという意見が出た。階段での罠の対処は峰田一人でも盾と合わせれば出来るので、峰田が階段で瀬呂が外からテープで外から上がる。通信機で合図をしたら同時に屋上へ入る。
「「3、2、1、GO」」
屋上へ上がると、核は無いが尾白が堂々と中央に立っていた。核が無い事に悲観したが予想していなかったわけでは無い。八百万が個性で核を隠せる物を作ったんだろう。それが分かれば無駄に尾白の相手をしている訳にもいかないので帰ろうとするが……峰田の後ろが何かで塞がれ、階段は使えなくなった。
「うおっ!?八百万の仕業か?!」
「峰田、こい!!」
「素直に逃がすわけないだろ」
峰田を抱えてビルの側面からテープで逃げようと思ったが尾白がそれを許してくれない。尾白の攻撃はもちろんだが周囲には少ないが罠らしきものがあり、不用意に動くわけにもいかない。
「じゃあ、倒してから行くだけだ」
「やってやらぁ」
もぎもぎを投げ、テープを設置し、相手の動きを制限できる自分たちの戦いやすいフィールドを作ろうとするが元々ある罠や尾白の邪魔により上手くいかない。直接相手を狙ってもかわされるので個性の限界を考えると動くに動けない。
尾白は無理に倒そうとする必要はなく、対峙し続けることで屋上に二人を足踏みさせておくだけでいいのだ。深追いして動きを封じられない様に一定の距離を保って二人の動きに注視している。
峰田は尾白に目掛けてもう一度もぎもぎを投げつけるが、さらりと尾白はそれをかわす。そのかわした先にテープを伸ばす、それもかわして反撃に入ろうとした時、瀬呂がテープを回収するのではなく、巻き取りに合わせて急接近する。尾白はそれに合わせて咄嗟に尻尾で反撃を行うが瀬呂はそれを先ほどまで峰田が持っていた盾で受ける。
「ぐっ、痛いねぇ。けどこれで尻尾は動かせなくなったんじゃないかな」
尻尾の先にはもぎもぎとテープで作られた盾が引っ付いており、攻撃を行うわけにはいかない状態になっている。瀬呂の方は攻撃が完璧でなかった事に加えてもぎもぎが意外と衝撃を吸収してくれたようで直撃を受けたが戦闘不能にはなっていない。
普段から使っている尻尾が使えないというのは考えるよりは辛い物となるだろう。尾白にとっては尻尾は合って当たり前の物で、無意識に使いそうになるのを止めて行動しようとすると少しだが行動に遅れが出る。
後は体勢を崩させることが出来ればその時点でアウトだ。素直に手を着いてもそこを捕捉され、うっかり尻尾を地面につければそこから動けなくなる。少しの戦闘の後で尾白に確保テープが巻かれた。
「よし、時間が無い急いで降りるぞ」
「大丈夫なのは分かってるが、怖えぇ」
手すりにテープをくっつけてからビルの側面を急いで降りる。先ほど内側から開けた窓は閉じられており、屋上の階段が使えなくなっている以上はしょうがないと思い窓を破って入る。
尾白が捕まったことは八百万にも伝わっている。となると疲れているとはいえ2対1の戦闘をするとは思えないので何処かに核と一緒に隠れているのだろう。
「ダミーが多すぎるし、罠が復活してるね」
ダミーが多すぎる事に加えて、尾白と戦っている間に手が込んだものは無いがいくつか罠が追加されている。ビルに入る所と復活した罠に気を取られて残り時間は既に1分を切ったところだ。運よく核を見つける事が出来ない限り勝てそうにない。それでもあきらめずに二人で探索を続けたが核も八百万も見つからなかった。
「はい、という事でヴィランチームの勝利だったが、今回のMVPは誰か分かるかな?」
誰も手をあげない様子なので仕方が無いと山稜が手をあげる。
「MVPは八百万さんですね。制限はあるようですが何でも作れる個性を最大限に活用して、ヒーローにプレッシャーを与えてました。罠があるというだけで神経を使いますし、偽物を混ぜる事で個性の節約と相手に頭を使わせてます。違和感を持たれない様に核を隠すスペースの張りぼてを全ての階に作った点も凄いですね」
何かがおかしいと瀬呂も感じていたが、下の階と同じだったために気付けなかったのだ。今までの戦闘も見ていたがカメラ越しの情報と実際に見た情報だとやはり後者の方が頭に残りやすいのだろう。
「うんうん。八百万女子が居なければ成り立たない作戦だったからね。自身を活かすというのは何をするにしても重要となってくる。自分はこれが出来ますってはっきり言えるぐらいの能力があればヒーローとしての宣伝にもなる。自分は何が出来るのか、その中でも自分にしか出来ない事を探す事は大事だよ」
「「「「はい」」」」
「尾白少年も時間稼ぎに主軸を置いて、戦闘を長引かせるように動けていたね。尻尾と言う自分のアドバンテージを活かした戦い方も中々のものだった。最後の反撃で分かっていると思うけど、尻尾が使えなくなった時の事も想定して訓練していけば更によくなると思う。堅実な戦い方だからこそ崩された時の対策が大事になる。次の一手を常に考えることは作戦を考えるうえでも必要な力だからね」
「尻尾が無くても……個性に頼らない戦い方か」
出来る所を伸ばすのも大事であるが、出来ない所のカバーが出来れば隙が無くなる。完璧な人間などいる訳も無いが出来ない事をそのままというのはかっこ悪いだろう?とオールマイトは続ける。
「次にヒーローチームだけど。お互いの個性を理解したうえで出来ることを模索し続ける姿勢が実に良いね。一人ではできない事は多いけど、二人だからこそ出来る事も多い。不利だと分かっているからこそどうにかしようと工夫を続けていた。峰田少年も瀬呂少年も個性の限界があるから、余計に考えて行動しないといけなかった。そんな状況で尾白少年を確保出来たのは二人の頑張りの証明だよ。仕方がないとはいえ窓を蹴り破ったのは減点だけれども現場では一二を争う事態と言うのは少なくない。今回の様に時間制限だったり、人命が危ぶまれる時も立ち止まってはいけない。判断力と言う点では高評価でもある」
間に合わなかったの言葉で済ませられない職業である。ヒーローとして今何をしなくてはならないのか、優先順位を決めて行動できるのは強みとなる。
直接的な戦闘が得意なのが少ないという少々珍しい組み合わせでの戦闘だったが、だからこそ考える事の重要性を知ることが出来ただろう。