絶対守護 ヒーロー嫌いのヒーローアカデミア   作:ひよっこ召喚士

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06 戦闘訓練 4戦目 5戦目

 4戦目は蛙水、常闇ペアVS上鳴、青山ペアである。上鳴は狙った場所への攻撃こそできないが、電撃は準備が無ければ防ぎようのない攻撃だ。青山のレーザーも断続的で直線にしか放てないがその威力は非常に強力である。だが、この二人の個性では素直に迎え撃つことしか出来ない。

 

 蛙水の個性は『蛙』、蛙っぽいことが出来るという割とアバウトな個性である。その中でも脚力と長い舌を用いた攻撃には目を見張るものがある。今回はヒーローとしてどの様に立ち回るのかに注目が集まる。

 

 常闇は黒影(ダークシャドウ)という伸縮自在の影の様なモンスターを操作しての戦闘で、特徴としてはモンスター自身に知性があり、会話することも可能な点だ。攻防一体で隙が出来にくい、強力な個性だ。

 

「特にビルの中だと上鳴は攻撃しにくいだろ」

「下手をしなくても青山を巻き込むからな」

「核の近くでの放電もアウトでしょう」

「かといって青山君は部屋の中で待ち構えるより、細長い廊下とかを利用した方が戦いやすいはず、レーザーを生かすのであれば、その速さと威力を最大限に発揮できる環境が必要だ。コスチュームの仕組みを見る限りレーザーを折り曲げる事は可能みたいだけど、直線的という弱点は直らない。となると弱点をカバーするならば攻撃の数を増やすのが手っ取り早い」

「でも青山は1秒以上射出できないから結局隙は生まれるんじゃねぇ」

 

 今回は連携が取りにくい組み合わせを考えるにヴィラン側が少し不利なのではという意見が多い。それでも3戦目の峰田・瀬呂ペアの様に何かを見せてくれることに期待しながら始まった試合を見守った。

 

 

『ヒーローチーム、スタート』

 

「頼むぞ、黒影」

〈はっ、任せとけ〉

 

 

 始まると同時に常闇は黒影をビルの中に放った。素早いスピードでビルの中を駆け巡る黒影は十数秒で探索を終わらせて見せた。これまでワンフロアの探索は数十秒、妨害があれば1分以上かから場合もあったが、観戦している面々も感心している者が多い。

 

 

「なるほど。意思を持った個性が直に見た情報を頼りに出来るというのは捜索系では強みになるな」

「その分、常闇自体が無防備になるがそこはチームである蛙水がカバーに入るか」

二つの意味(仲間と個性)で一人では無い事を上手く使っている」

 

 その後も入り口で立ち止まって入るものの、周囲を警戒しながら黒影が他の階の探索を終えるのを待つ。すると3階で核を見つけたという情報と共に黒影が帰って来た。

 

「敵は?」

〈核までの道を塞ぐように青山が立ってたぜ〉

「ケロ、上鳴ちゃんは居なかったのね」

〈ああ、一人しか見えなかったな。もう一度行くか?〉

「いや、探索の後に居場所を変えられたら無意味。二人は何処に居るか分からない前提で動く」

 

 核とその周辺に関して、変わることの無い確定した情報を元に作戦を詰めてから行動に移していく。

 

 

「常闇君が青山君と接敵したぞ」

「レーザーは速いが避けれてる。いや、ちょっと危ないな」

「黒影って奴、レーザーを避けてるな」

「影の特性から考えると光が苦手なのか?」

 

 黒影を身に纏う深淵闇駆(ブラックアンク)という技を用いて身体の駆動をサポートしているのだが、レーザーによって発生する光の影響を受けてしまっている。当たらなければ日光下と変わらない程度の動きは出来ているが、一度掠った時に大きく動きの勢いが削がれている。

 

 迂闊に近づけない状態の中でどうにか影を伸ばして攻撃を仕掛けるが、距離が空いていれば流石に避けられる。黒影は避けられ先に合った窓を破るだけで終わった。少しずつレーザーで削っていけば青山に勝ちが見えるかと思われたが、常闇はその場から離れる。

 

「なっ、逃げるとはヒーローらしくないねぇ」

「負けた訳でもないのに恥じる必要が何処にある。戦略的撤退だ」

 

 青山は追うか、見逃すかで悩んだが核から離れる訳にもいかないのでそのまま常闇を逃した。常闇は相性を再確認すると、やはり厳しいと感じる。となると出し抜いて核に触れるか蛙水に捕まえてもらうかをした方が良い。しかし、核の周辺を青山に任せるのは理解できるのだが

 

「上鳴が核より下の階に陣取っていなかったのが不穏だ」

 

 ビルと言うフィールドの関係上、基本的には下から上への探索が行われる。となると核にたどり着く前に邪魔をするのであれば2階の何処かに潜んでいると踏んでいたのだが、見つからなかった。

 

 準備が終わっていないのか、それとも奇襲を仕掛けるタイミングを計っているのか、蛙水の方を探している可能性もある。そんなことを考えていると別行動中の蛙水から通信が入った。

 

『上鳴ちゃん、屋上の瓦礫の中から金属を含んだ物を取り出してたみたい』

「金属……攻撃の仕掛けか」

 

 鉄骨や手すりなどは勿論、扉の手すりや蝶番などにも金属はある。電熱を用いれば金属部分を取り出す事も出来るだろう。金属は電気の通り道としては最適であり、完璧では無いだろうが攻撃に指向性を持たせられるのであれば十分使える。

 

「移動済みか?」

『核の上の階に今設置してるわ』

「すぐに向かう。準備をしておいて欲しい」

『けろ、分かったわ。常闇ちゃんも気を付けて』

 

 上の階に上がるとせっせと仕掛けの準備をしている上鳴と目が合い、あちらこちらに置かれた金属には目もくれず、黒影を身に纏ったまま突っ込む。

 

「無差別放電130万V」

「悪いがそもそも俺に電気は通らない」

「電気だけが目的じゃねえよ!!」

「な、ぐっ?!」

 

 上鳴によって周囲に設置された金属へ電気が迸る。そして大量の電気を帯びた一部の金属が磁力を持って、他の金属と引き合い、金属を含んだ瓦礫が宙を飛び交った。その隙に黒影を潜り抜けて直接電気を流し込むと常闇に掴みかかるが、大きく飛びのいて避ける。

 

「悪いが、負ける訳にはいかないんでな」

「ちっ、黒影って奴を纏ってる所為か?」

 

 黒影を纏っていた事でそれなりの加速度で瓦礫がぶつかったにも拘らず、それほどダメージは入っていなかった。元々ある程度当たれば良いなと言う大まかな配置で置かれていたのもあり、最初の瓦礫以外は綺麗に当たる事は無かった。

 

 一度限りの変わり手で、最初のチャンスを逃した時点で上鳴の勝つ道筋は途絶えた。上鳴は万が一の際を考えて核の付近でも電撃を扱うための避雷針の用意の他にも通信で常闇が一人で青山と戦っていると聞いたときから蛙水の捜索も行っていたのだがそれも見つけられることは無かった。

 

 既に負けは見えているが、少しでも時間を稼がなくてはならないと距離を取りながら何とか常闇の攻撃を避けるが、1分後に黒影に掴まって身動きが取れない状態にされた。確保テープを巻きつけられ、上鳴は脱落となった。

 

 

「負けたか、ちくしょう悔しい」

「横から瓦礫が叩きつけられたのには驚いた」

「へへ、電気が効かない相手にどうにか一撃いれようと俺にしては頭を使って頑張ったんだぜ」

 

 訓練の設定上からして不利だった上鳴がどうにか貢献しようと頑張った結果である。勝てこそしなかったがよく思考して訓練に望み、予測できない形で(新しい方法を生み出し)一撃を入れたというので訓練の成果としては十分だろう。常闇は蛙水に上鳴を倒した事を伝えると、また青山が守っている核の前に向かう

 

「上鳴君は倒されっちゃたんだってね」

「次はお前だ」

 

 青山は常闇を牽制し続ける。そうしなければ核まで一気に駆け抜けられてしまうので、断続的なレーダーを数打ちゃ当たるという風に狙いも考えずに通路を埋めるために繰り返す。

 

「蛙水ちゃんは何処に行ったのかな?」

「気になるのなら探しに行ったらどうだ?」

 

 この場に()()()()()()蛙水が何かしようとしている事は誰が考えても分かる。始めから一度も姿を確認できていないのだから警戒は強い。ちらりと常闇が攻撃で割った窓の方を見て見るが、侵入しようとしている姿は見えない。

 

「窓の外が気になるのか?」

「いや、僕の思い違いだったみたいだよ」

 

 戦闘の途中で核から大きく離れる訳にもいかなかったので本当にちらっと見るだけで済ませてしまった。そのせいで青山が違和感に気付くことは無かった。

 

「ケロ、核確保したわよ」

「えっ?!」

 

 

 いつの間にか核の傍に立っていた蛙水の姿に青山は驚いた。本当に何時近づかれたのかが分からなかったので困惑していたが、オールマイトの終了の合図が響いて我に返ると部屋へと戻る。

 

 

 

「さて、今回も見どころの多い一戦だったね。まずは勝ったヒーローチームの常闇少年と蛙水少女から講評をしていこうと思うが、青山少年は最後に蛙水少女が何をしたのか分かったかね」

 

「全然ですね」

 

「画面での確認だと更に分かりにくかっただろうが、分かった子はいるかな?」

 

 オールマイトの声掛けに八百万が手をあげた。

 

「予想ですが保護色ではないでしょうか?」

「ケロ、正解よ」

 

 蛙水は体ビルや風景と同じ色にすることで見つかりにくい状態を作り出していたのだ。最初から保護色を全開で使い、ビルの外側に張り付いて青山や上鳴の情報をリアルタイムで伝えていたのだ。青山が窓を覗いたときは焦ったが、一瞬だったため気づけなかったのだ。

 

「今回のMVPは蛙水少女かな。核を確保できた功績もそうだけど、全体的に索敵もこなして常闇少年が戦える状況を作っていたのもポイントだ。見つからない事で相手は緊張し、味方は戦いやすくなる」

 

「常闇少年は負けない立ち回りを意識して距離を取りがちだった点と個性に頼りがちだった点を考えると少し減点だね。もちろん、上鳴少年を倒したり、青山少年の意識を逸らした点は良かったよ。判断力に優れているようだから、自分の力をもっと上げられれば正面から戦っても苦戦することも無かったと思うよ」

 

「上鳴少年は核の周囲で攻撃できないという弱点が痛かったね。それを解消する準備もしていたけど、常闇少年の影には電気は通らないと全体的に相性が悪い試合だったね。そんな中で工夫を凝らして2段構えの仕掛けによる不意打ちを作り出したのは素晴らしいかった。電気は対策をされやすいから電気を利用した何かを考えるのは非常に有効だよ」

 

「青山少年は自分の個性を生かすための場所をしっかりと考えられていた。常闇少年の個性の特性をすぐに理解し、光を消さない様にレーザーを撃ち続けていた。威力が高いし通路が狭いから適当に撃っても問題は無かったけど狙いを素早く正確に定められるようになればもっと良くなるよ」

 

 勝利したヒーローチームはもちろん。工夫しにくい個性を発展させるか、活かせる場所を作るかとそれぞれ違う方法でカバーしたヴィランチームの評価もそれほど悪くは無かった。これで後は最後の二組となった。

 

「緑谷、切島ペアと爆豪、飯田ペアか」

「緑谷はあの0ポイントヴィランを倒したパワーがあるし、切島も純粋な防御力と攻撃力は高い」

「爆豪の爆発もやべえだろ。それに飯田のスピードも」

「だけどあの様子じゃあな」

 

 一同は、二つの画面に映る、言い争う二人を眺めていた。爆豪もこれまでの戦いを見て、思う所はあったようだがそれ以上に許せない何かがあるのか、作戦の相談もせず独断専行を宣言する。一方で緑谷と切島の方は何の問題も無く意見を交換し、作戦を練っている。

 

「爆豪相手に言い争い出来る飯田に俺尊敬するわ」

「怒りの所為か普段より酷い面だな」

 

 そのまま碌に準備も出来ないままにヒーローチームのスタートの時間はやって来た。それと同時に言い争いから逃れ、宣言通り飛び出していった。そうなると止めようにも間に合わないのは分かっているので、飯田は核を守るために部屋に残るしか選択肢がない。

 

「訓練の意味を理解したうえでああするって事は何かあるんだろうが」

「ケロ、飯田ちゃんからしたらたまったもんじゃないわね」

 

 緑谷は爆音を轟かせながら近づいてくる爆豪に直ぐに気づき、元々爆豪は一人で突っ込んでくるだろうと予測していたため、迎え撃つのに途惑うことは無かった。

 

「クソデク、テメェ避けんじゃねえ」

「今までずっと見てきたんだ。かっちゃんの動きは分かるよ」

 

 そう言って攻撃を避けると爆豪の腕を掴んで叩きつける様に投げる。綺麗に決まったかと思うがすぐに爆破の勢いを利用して起き上がって殴りかかってくる。

 

「無個性じゃなかったのか!?ゴラァア!!」

「!」

「今までずっと隠してやがったのか、テメェ!!」

「隠してたわけじゃない、けどこれが今の僕だ」

「ふざけんな!榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

「させるか、烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!!」

 

 殴った反動で飛び上がるとそのまま空中で爆破を連続で発生させて錐揉み回転しながら突っ込んでくるが、そこに硬化した切島が割り込んで邪魔をする。そのせいで十分に勢いが出せない状態で技を出す事になる。

 

「クソガアァァ!!」

「スマッシュ」

 

 スロースターターなことを考えれば勢いが殺せれば爆発の威力は指一本のダメージだけでも吹き飛ばせるだろう。そう踏んで放った一撃は苦し紛れに放った爆発を飲み込んで爆豪を壁に叩きつけた。

 

「テープ巻いたぜ」

 

 切島が起き上がる前に素早く確保テープを巻いて爆豪は確保となった。納得がいかない顔で緑谷を睨みつけているが、ここで殴りかかろうとしない所を見るにまだ理性はあるようだ。緑谷と切島は飯田がいるであろう核の場所へ向かった。

 

「来たのかヒーロー。核には触れさせないぞ」

 

 爆豪の所為で一人で緑谷たちを相手しなければいけない飯田、しかし自分のヴィランとしての役回りを演じながら二人相手に全力で挑もうとしてくる。

 

「同情はするが、加減はしないぞ」

「元よりそんな必要はない。レシプロバースト!!」

 

 核のある部屋を守るために飯田は入り口を死守するしか方法は無く、二人がかりで向かわれれば長くは持たないと判断し、最初に1人を捕まえるつもりで超過速状態で突っ込む。

 

 いきなりの急加速に驚いたのに加え、飯田は切島が狭い入り口を通る瞬間、避けにくい状態を狙った。だが事前に硬化していたためダメージは最小限で済んだ。

 

烈怒交吽咤(レッドカウンター)!!」

 

 そのまま硬化した拳で殴って飯田を吹き飛ばしている間に緑谷が核に触れ5戦目も終了となった。飯田も受け身は取っていたようで衝撃はあったがダメージはそれほどでもないようだ。しかし、一泡吹かすことも出来ず、結果を残せなかった事には落ち込んでいるようだ。

 

 

「はい、じゃあ最後の講評に入ろうか」

 

「MVPは緑谷少年だね。事前に相手が取ってくるであろう行動に対して迎え撃つ手を事前に考えられていた。個性による反動や破壊を極力減らせるように立ち回れていたしね。切島少年も戦いに割って入る勇気とタイミングはばっちり。最後の飯田君へのカウンターも流れる様に動けていた」

 

「対してヴィランチームだけれども、爆豪少年は仲間相手に非協力的、独断専行が目立つのは大幅に減点になるだろうね。やる気や気合といった物は大切だが感情的になりすぎてはいけない。飯田少年は自分にできる事を精一杯やれていたよ」

 

「これは訓練だったけれど、実際にはもっと危険で悪質な事件も多い。今回の訓練に臨んだ事で何か掴めた、気付けたことがあるようなら嬉しいし、それが何であれより経験を積んで自分が目指すヒーローへ近づけられるよう頑張って欲しい」

 

 そう言って戦闘訓練は締められた。自分の個性の使い方と協力、戦略などについて学べたものが多い授業となった。全員がクラスで訓練の反省会を行う事になったが爆豪は舌打ちを一つすると一人で帰って行った。

 

「ん、緑谷どこに行くんだ。反省会お前は絶対来ると思ったけど」

「あっ、山稜さん。ちょっと行かないといけない所があって、遅れて行くよ」

 

 個性の使用で指を壊していたので保健室かとも山稜は思ったが向かっている先は爆豪が去って行った方向だと気付いてなるほどと心の中で納得して送り出す。

 

「色々と事情があるのかね」

 

 どこも大変なのに変わりないのかもな、と呟くとクラスメートが待っている教室へと戻った。

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