だいぶ遅れて申し訳ありません。
とりあえず昨日は戦いの事もあって時間も遅かったので林藤さんに帰ってきたと報告だけしてお開きとなった。詳しい話は次の日と伝えたのだが小南が喚いて煩く、レイジがなだめてくれたおかげでどうにか解放された。私は寝なくても平気だけど君たちは違うでしょうに。
と言う訳で、今日はこの玉狛支部のまだ、遊真とすらちゃんと話して無いし、遊真の友達兼仲間である子も全員集まってるから色々と話を聞きたい所だ。
「初めましての子も居るからちゃんと自己紹介しようかな。私は空閑悠菜、旧ボーダー時代の人間で、ここのボス世代の直接の後輩にあたり、そこにいる遊真の義姉でもある。改めてよろしくね」
「えっと、それじゃ先に玉狛のメンバーから行くね。オペレーターの
「
「
「えっと、
なるほど、私にとっての新顔が宇佐美、烏丸で、玉狛にとっても新人なのが遊真、三雲、雨取の3人と言う事か。今いない人もいるみたいだけど、クローニンとゆりの2人らしいから問題は無い。そして、自己紹介を終えた面々は目の前の光景を観察するかのようにじっと見ている。
[久しいな。遊真のお守りはどうだ?]
[返すようで悪いが悠菜はどうだ?]
[相変わらず、無茶を通してばかりだ。まあ、好き勝手やってるがな]
[そうか、遊真は環境の変化が著しいが、楽しそうにしている]
「白いレプリカ!?」
「レプリカさんが2人!?」
「ふむ、レプリカにも兄弟がいたのか?」
「トリオン兵に兄弟なんてある訳ないでしょ」
「えっ、小南先輩知らないんですか?トリオン兵は同型の両親から生まれて増えるから、同じ形のトリオン兵は全部親戚同士なんですよ」
「うそ!?って事はあたしはトリオン兵の家族を殺しまくってるの!?」
「嘘に決まってんだろ。訓練で作ってるトリオン兵があるんだから気づけ」
まあ、傍から見ると異様にシュールな光景だし、注目するのもしょうがない。遊真も流石にレプリカの事は覚えていなかったようで、冗談を言っている。それにしてもどっちもレプリカだとややこしいから黒レプリカ、白レプリカとそれぞれ呼ぶことに決めた。
「遊真も忘れてるみたいだから説明すると、レプリカを基にして私が作ったのよ。良い名前が思いつかなかったから、名前を同じにしちゃってるんだけど、黒い方とか白い方で伝わるし、何なら私や遊真の名前を前に出しても良いかな」
「白いレプリカ、黒いレプリカ」
「遊真くんのレプリカ、悠菜さんのレプリカって事かな」
「そんな感じで良いと思うよ。さて、本題に入ろうか、遊真」
「ん、何?」
「何があったのか教えてくれる?」
「了解」
遊真の口から語られた内容には呆れる部分もあれば、叱りつけたい内容もあった。遊真の増長と慢心、遊真の身体についてと義父さんの黒トリガー化、こっちに来てからの騒動と友達である三雲君とチームメイトになる雨取ちゃんについてなど、全部を聞いた。
「こんな所かな」
「そう、色々と言いたい事もあるけど遊真、ちょっとこっちに来なさい」
「ん」
私は近づいて来た遊真をそれが当たり前であるかのように抱きしめた。周りに他の皆が居る事を気にすることなく遊真を腕の中に閉じ込めた。
「大変なんて一言じゃ表せないだろうけど、よく頑張った。遊真が生きてて私は嬉しいよ」
「んん、なんか懐かしい気が」
「小さい頃にも抱きしめたことがあるからね」
その場から動く事は無く全員が黙って見守ってくれていた。時間にして1分も経っていないだろうが、私は時が止まったかのように長く感じた。だが、離れてからが問題で、自己紹介も終わって、次はどうするのかと、誰が次の話題を切り出すのかと考えていると迅が口を開いた。
「まあ、そんな経緯があってメガネくん、千佳ちゃん、遊真の3人を鍛えて貰ってる最中ってわけ、それで悠菜姉さんにも色々と協力して欲しいんだけど」
「姉さん?」
「あー、小南や迅は昔からお前の姉さん、悠菜さんを慕っててな。2人は悠菜さんの事を姉さん呼びしているんだ。他にも悠菜さんを慕っている人はいたんだが、特に迅は悠菜さんに懐いてて、悠菜さんも弟の様に扱ってたからな。実質、初めて紹介してきた時の迅の嘘は間違ってないかもな」
「ほほー、義姉さんの弟分って事は確かにおれにとっては兄みたいなもんか」
迅の呼び方が普通に姉さん呼びなのは玉狛で一緒にいるうちにどうせボロを出すし、旧ボーダーメンバーは全員知っているので伝わるのは時間の問題と開き直っただけだ。ちなみに、本部の方でも昨日会った太刀川って言う人が泣き虫って情報と一緒に広めているらしい。会う人会う人にからかわれる未来が見えたそうだ。
「可愛い義弟とその仲間のためだし、手伝いは構わないよ。それとは別に目的が敵わなかった遊真に朗報があるよ」
「なに?」
「まず1つ目は遊真の身体はどうにか出来るよ」
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SIDE:三雲
改めて空閑の義姉さんとお話をして、最終的に訓練とかの手伝いをしてくれることになったのを喜んでいたのだが、驚くどころではない話が飛び込んで来た。
「おれの保存されてる身体、結構ボロボロだし、それに身体はトリガーの中だよ?」
「前提として、私は自分の事もあってトリガーやトリオンの医療研究を進めてるし、黒トリガーについても多く研究してるの。そのかいもあってそのままの状態でも身体の治療は出来ると確信してる。それと封じてるとはいえそれだけ考えて、動けてるなら元の身体の方もトリオンで補う事で全然延命が可能だよ」
「トリオンで失われた身体を取り戻す事が出来るんですか!?」
家族2人の会話に割り込むのはどうかと思ったが、内容が内容なだけに聞かずにはいられなかった。それが本当なら遊真の時間の問題は解消される。
「可能だよ。そうじゃなきゃ、私は
「嘘は言ってないね」
「えっ!?」
そこから先は悠菜さんの身体についての話をざっとではあるが語ってくれた。旧ボーダー時代からの人たちは知っていたようだが、僕と僕の他に初めて聞いた人は一様に驚いていた。トリオンによって身体自体が変質するなんて……
「そうおかしな話でもないよ。私の例はかなり特殊ではあるけどね。分かりやすいのがサイドエフェクトかな?あれだってトリオンが身体に与えている影響の1つだからね。トリオンって言うのはあらゆる国で研究されてるけど、まだまだ謎も多いし、それだけに危険も多い。サイドエフェクトが出るほどにトリオンがある人と言うのは、ええっと、怖がらせるつもりは無いけど医療上の観点から言えば
「了解」
「わ、分かりました」
「分かった」
思いがけない話の広がり方と少し専門的な内容も含まれているためついて行くのがやっとだが、遊真が死ぬ事が無くなると言うのは凄く喜ばしい事だ。しかし、トリオンには良い点ばかりではないと言うのは少し恐ろしい。千佳に何も無いと良いんだが……
「と言う訳で遊真は時間がある今のうちに緊急手術です。とは言ってもその話が本当なら遊真の身体は取り出せないから、生活は今まで通りトリオン体だね」
「どうして?」
「遊真の身体はトリガー内部に封印されてるの。外から内部に干渉出来ても取り出そうとなると話は違ってくる。普通のトリガーはトリオン体と肉体を交替させてるけど、義父さんが作ったブラックトリガーは遊真の身体の保存に力を注いでる。取り出す事が考えられてないだろうって予測ね。まあ、詳しくは解析してみないと分からないけど、たぶんあってるはずよ」
段々と理解できる内容が減ってきたが、悠菜さんが凄い技術を持っているという事は分かった。だけど、身体を直してトリオン体で過ごすって事は、トリガー内の身体はゆっくりと時が流れてると聞いたし、普通の人よりかなり長生きになってしまうんじゃないだろうか?疑問を口にするとすぐに答えが返ってきた。
「なるほどねぇ。内部の時間操作までなってると取り出すのは難しいね。それと三雲君の想像通り、直したら平気で数百年くらい生きれるだろうね。治療が万全なら実質的な不老不死かな。
「そうですか、優菜さんと同じって、ええ!?」
「嘘じゃないけど、おれそんな長生きするつもりはないよ」
「私は満足するまで生きたら死ぬつもりだけど、遊真は大丈夫よ。時間はかかるけどそのうち身体を取り出すから、人よりそこそこ長い気だけど200年生きるかどうかよ」
「うーん、それなら良いか」
非現実的な方向性でスケールの大きい話に目が回りそうになる。とりあえずは遊真が死ぬ事が無くなった事を素直に喜んでおこう。それ以上の事は悠菜さんに任せた方が良さそうだ。
「まあ、身体についてはこれ位で次は2つ目」
「うんうん」
遊真はわざとらしく指をたてて伝える悠菜さんの話を真剣に聞いている。次はどんな話題が飛び込んでくるのかと考えていたら、メテオラを喰らったかのような衝撃の話だった。
「今はまだ出来ないけど、黒トリガーの人間化は理論上可能だよ」
その話を聞いて遊真が驚くのは分かっていたが、迅さんもかなり食い気味に悠菜さんに確認していた。
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SIDE:悠菜
「エルガテスやトロポイなどのトリオン兵を見るに、トリオン体で思考することは不可能じゃない。黒トリガー内に意識が存在するかどうかと言う点においてはアフトクラトルのトリガー
「そっか、うん、ありがとう悠姉」
どうやら遊真の私の呼び方は悠姉に決まったようだ。迅と小南が悠菜姉さん呼びで、他は悠菜さん呼びが基本かな。さて、これから遊真と黒トリガーの検査とサイドエフェクト持ちの検査も行わないといけない訳だけど、今すぐやらないといけない事では無いし、とりあえずはやりますか。
「さて、今日は時間もあるけど一戦やる?あ、千佳ちゃんはまだ練習中らしいから、基本的には観戦ね。まずは1対1で行こうと思うんだけど」
「はいはい、あたしが行くわ。強くなった所を悠菜姉さんに見てもらうんだから」
「それなら小南、迅、俺、最後が烏丸、その後で遊真と修で良いか?」
「そうっすね。噂に聞いてるので胸を借りるつもりで一戦やりたいですが、まずは昔なじみの皆さんからやってください」
「風刃なしのガチでどこまで行けるかねぇ、これ」
「おれは黒トリガー使って良いのかな?」
「なんか僕もやる流れになってる……」
「修くん、頑張って」
修君だけは不安そうな雰囲気が出てるね。今のボーダーの枠組みにおけるB級に上がったのも最近だと聞くし、自信が無いのもしょうがないと思うけどね。ずっと戦ってた人たちと比べれば弱いのはしょうがないし、あまり動ける方にも見えないし、だけどまあ……それでも戦えるようになりたいんなら変わらないとね。
訓練室に入りトリガーの準備を行う。周囲の環境は操作せず無機質な部屋の状態だが模擬戦なので構わないだろう。小南は既にトリオン体に換装して獲物を手にしていた。二刀流のあれは何だろうか、ブレードなのは分かるが形が普通の剣とはかけ離れているように見えるが、なんでも双月と言うトリガーらしい。
「それは斧?鉈?」
「武器の定義なんて知らないからあたしもわかんないけど、こうすると」
両手に持っている武器を繋げると1つの大きな斧になった。なるほど、本部とは規格が違うと言う説明には納得がいく。見た目的に威力重視か、豪快な小南らしい戦い方だ。
「斧になるの。悠菜姉さんに小細工は通じないからね。最初っから全力で叩き切るまでよ」
「ブレードにはブレードで相手をしようか、トリガー
私が起動したのはボーダーの弧月と同じく刀をイメージして作られたこれは見た目だけでなく、構造などからして日本刀を真似して作った。造形にとにかく拘り、刀身の美しさにまで力を入れた逸品で、特別な機能が無い分、切れ味、耐久、軽さ、全てが高水準。
弧月と比べると少し長く、攻撃力、耐久力も高め、軽さにおいても少し長く、一回り大きいにも関わらずほぼ同じであるためこちらの方が優れていると言える。取り回しは利きにくいが慣れれば結構使い勝手が良く、気に入っている。
「私はこの『正宗』一本でいくよ。小南は他のトリガーも好きに使って良いよ」
「言われなくても使うわよ!そうじゃないと絶対勝てないもん。って『正宗』?」
「そっ、名刀正宗と城戸さんの名前をかけた遊びで作ったんだけど、出来上がると思ってたより性能が良くてね。愛用してるトリガーだよ。長いけれど慣れれば」
私は地面を蹴ると一気に近づいて小南に正宗を振り落とした。小南は慌てて双月の刃を落ちてくる正宗に合わせて受け止めた。ギリギリと刃同士が音を上げているが、こちらが上から振り落としている関係上、どうしても向こうの方が辛いはずだ。
「これ位の動きは出来るしね」
「っく!?衝撃が重い!!」
「切れ味が良いからね。上手く振れば抵抗も無くして勢いをそのまま伝えられる。このトリガーの特徴で凄いのは無駄が無い洗練さだよ」
このままだと不味いと感じたのか咄嗟に双月を薙ぎ払う様に動かして受け止めていた正宗を弾いて距離を取ってきた。離れたままだとどうしようもないので距離を詰めようとするが、何やら弾丸が飛んでくる。あのトリオン量、ただの弾丸じゃないな。
ボーダーのトリガーについては軽く調べてるし、聴いてもいるので予想は出来た。軌道に変化が無くて特殊な玉となれば炸裂弾、メテオラだろう。ブレードしかない私は正しく対処するなら着弾点を見極めてその場から逃げるべきだろうが、今持ってるのは丈夫で小さめの人間の背丈位はある長物だ。全ての弾道を見極めて、切っ先でなぞるように振るい、届く前に一斉に起爆させた。
「嘘でしょ!?」
「含まれてるトリオン量を
私との距離を離したいのであればもっとトリオンを込めるべきでしたね。放つ際に咄嗟に普段から使ってる量に設定してしまったんでしょう。爆発による煙で視界が塞がってますが、私の眼には関係ない。正宗を鞘に仕舞いこみ、煙の動きでこちらの居場所がバレないように大きく動きながらも一気に近づく。そして双月を構えて待ち構えている小南に狙いを絞り、抜き出す勢いのまま斬り伏せる。
「使用者の技量に左右されるけど使いこなせば、斬れない物は無い!!」
「あっ……」
小南が構えていた双月ごと居合の要領でトリオン体を逆袈裟斬りにする事で勝負は着いた。小南と私の戦いは私の完勝と言う結果で幕を引いた。
「あーもう!!負けたー」
悔しさを隠すことなく、ぐぬぬぬと唸っている。感情表現が激しいけど、裏表がないあたりが小南の長所ですね。
「シールドも無ければ、遮蔽物も無いからメテオラで一帯を爆破されれば私も危なかったかな」
「そんなので勝っても嬉しくないし、負けてたじゃなくて危ないって、防ぐ手段あるの悠菜姉さん?」
「トリオンを可視化出来る私だから出来ることですが、爆発を斬ってしまえばなんとかなったかと。それに放たれる前に正宗を投げる事で暴発させるとかも考えられますかね。小南も頑張れば両方出来ると思いますよ」
そう伝えると小南には「出来るかー!!」と叫ばれましたが出来ない事を私は言わないんですけどね。文句を言いながらも戦い自体は楽しめたのか機嫌自体は良いみたいだった。さて次は迅が相手ですか普通なら厄介なサイドエフェクトですが私には問題無いですね。
「
「そうでしょうね。私だってトリオンの見えない世界は考え付きませんし」
そう、私には迅のサイドエフェクトである未来視は効きませんので普通に私が有利になります。なのでルールは先ほどと変わらず私は正宗一本で相手をします。迅のサイドエフェクトは『目の前の人間の未来が見える』と言う能力です。会ったことが無い人間の未来が見えなかったりすることなどから相手の何かを捉えてそこから数ある可能性を読み取ってる物だと考えられます。
そして、その何かと言うのはサイドエフェクトがトリオン由来の物であると言う観点から考えるに相手のトリオンに関係するものだと考えられます。自身や周囲のトリオンを操作できる私はそれを迅に届かないようにする事で未来を視えなくしている。
「視えない中でどれだけ動けるようになったか、見せてもらいますよ」
「視えなくても読み合いで勝ってみせるよ」
こちらが使うのは特別な機能は無いが、向こうのスコーピオンは自由自在に形状を変化させる。攻撃のバリエーションが多く、まだ慣れてない私では分からない攻撃手段も多い。しかし、トリオンの動きである程度は読み取れるのとかなり軽いからとにかく脆いので打ち合いになれば確実に勝てる。
だがそんなことは小南との戦いを見ていた迅も分かっているのでとにかく近づかせないように手を変えつつ、手数を増やして対応してくる。そして、エスクードと言う身を守る障壁を作り出すトリガーを上手く使って少しずつ自分の戦いやすいフィールドを作り出している。私はエスクードごと纏めて斬ろうと振るうが、斬り終わった際にはそこに迅の姿は無い。
「逃げ足だけは上達したみたいって挑発しても良いけど、判断力と機動力は上がってるみたいだね」
「判断を間違える訳にはいかないし、早く動かないと何にも間に合わないからね」
皮肉気味に笑う彼は昔と比べて強くなった。自分がどうすれば良いのか考えて自分の判断でちゃんと動いていけるこの子は強い。さて、このまま戦闘を続けて行けば集中力が乱れて詰められるか、トリオン切れで迅の負けが濃厚だ。
しかし、そんな結果じゃ詰まらないだろうから戦場での戦い方を教えてあげよう。私はそこら中にあるエスクードを迅との攻防を繰り返しながら手ごろな大きさに斬って行く、そして足元に転がってる欠片を蹴り上げて迅に向けて飛ばした。
「うおっ!?」
迅は避けたりスコーピオンで弾いたりしているが、防御用のトリガーの欠片のため脆いスコーピオンでは咄嗟に斬る事は叶わない。その隙を見て詰め寄ろうとすると慌てて迅は下がりながらエスクードを生成するがそれも作戦の内、私は生成されたばかりのエスクードを斬ると同時に蹴とばし、それが迅に命中したのを確認することも無く、一気に詰め寄った。
「がっ、嘘でしょ!?」
「目的を果たすために敵はどんな手でも使います。私はトリガーはこれ一本と言いましたが他の物を利用しないとは言ってませんよ?」
飛んできたエスクードの破片にぶち当たって姿勢が崩れた所を真っ二つにされた迅のトリオン体が崩れた。迅の負けもこれで確定したわけだが、悔しそうな感じは無いようだ。
「ああ、やっぱり負けたか」
「負けるのが当たり前みたいな言い草ですね?読み合いで勝ってみせると言ってましたけど?」
「いや、嘘ってわけじゃないけど、自分を奮い立たせるための言葉としての意味合いが強いかな」
こうなるのが分かってたらトリガーの構成を考えてたと言う迅。近接だからしょうがないとは思うがあまり攻撃範囲は広くないし、全体的に相性が悪かった気もするので、迅のいう事は間違っていない。しかし、サイドエフェクトの事もあり、受けに回りがちな姿勢をどうにかしていければとも感じた。
「それじゃ俺も胸を借りさせてもらいます」
「レイジは多彩かつ奇抜な戦い方だからね。だけど得意な分野に合わせて上げる『
「『
「そう、これは身体能力の強化に全てをつぎ込んだトリガー、攻撃や防御用にトリオン体も強化されてるけど、まあ普通に攻撃した方が強いわね」
これは騙し討ちみたいな面もあるので、きちんとよーいドンで始める事にした。向こうで待ってるオペレーターの栞さんの開始の合図と共に私はレイジに接近し、貫手でトリオン供給器官を貫いた。
「なっ!?」
「簡単な機構だけどそれ故に使いこなせれば強力になる。相当体を動かすイメージが出来るか、機械を操作するかのように動くかのどちらかが出来ないと使いこなすのは無理だけどね」
騙し討ちで申し訳ないと言い、もう一度だけ手合わせをする事にした。もちろん、今回は速攻は無しの方向である程度、攻防に応じるつもりだ。スタートの合図と共にレイジはメテオラとハウンドを放った。メテオラは動きの制限でハウンドが一応の攻撃だろう。
「だけど、甘い!!」
私は追ってくるハウンドを拳と蹴りで弾く事で対処する。トリオン体の強化もされてると言った通り、下手なシールドよりは硬いのでこれ位なら問題なく防げる。レイガストを盾モードで広く展開し、もう片方でハウンドを撃ち続ける。
素早く動く私の居場所を正確に把握するためと言う側面もあるのだろう。シールドを広く広げてるのは一瞬でも割れたと認識したところに攻撃を仕掛けるか、搦手で動きを封じるかと言ったところでしょう。では罠と分かった上で回り込んでシールドごと攻撃するつもりで拳撃を放つ。
「『スラスター
腕がシールドに触れた瞬間にそのまま私を吹き飛ばすつもりでスラスターを発動させた。割れた個所を塞ぎ、私を逃がさないように盾は動いている。力は強いが勢いもないのでこれを壊すのは難しいな。私はその勢いのまま壁際へと飛ばされた。
そこに急所を目掛けてアステロイドの攻撃が飛んでくる。範囲攻撃が出来るメテオラで無いのは私を拘束しているレイガストを解除してしまわないようにだろう。だが、スラスターの勢いがなくなった以上はレイガスト事逃げれば良い、レイガストを引き抜き走り出そうとすると糸に足が取られた。引きちぎる事は出来たが少し遅れたためアステロイドが私の身体に迫る。
私はそれを左手にくっついたままのレイガストを利用して捌き、殆ど無傷で受けきった。私がレイガストを引き抜いた時点でレイガストを消して、メテオラを放っていれば結果は変わってたかもしれないな。そう思いながら、次に放たれた攻撃が届く前に蹴りで頭を吹き飛ばし、ゲームセットです。
「わざと罠にかかって貰っておいてこのざまか」
「いえ、こちらも負けると思わされましたよ」
「そう言ってもらえると助かるが、やっぱりまだまだ精進が足らんか……」
本当にあと一歩と思わせるほどの戦いを見せたレイジに賞賛の声が控室の面々からかけられていた。その間に準備してやってきたのは私にとっては新顔である烏丸京介君だ。京介君は尖った戦い方をするが、メインは弧月だろうからまた正宗を取り出す。
「最初から全力で行きます『ガイスト起動』」
「面白い機能ですね。トリオン体の方をいじりますか……」
振りかぶられた弧月の一撃を正宗で受けましたが、はっきり言ってぎりぎりですね。太刀筋に合わせられてなければ折られていたかもしれない。それぐらいに強力で鋭い一撃を繰り出してきました。先ほどの私の『超人化』ほどでは無いですが、かなりの速さでこちらを攻めてくる。ここまで受けに回るのは初めてでしょうか、これはかなり近界民の思想に近いトリガーです。
「なるほど、敵を切り裂くための太刀筋をしっかり考えていますね」
「ええ、諸刃の剣である以上、戦いに時間をかけるわけにはいきませんから」
それでいて喋る余裕も残している中々の逸材ですね。そしてこの未完成のトリガーを完成に持って行く事が出来ればそれは素晴らしい事でしょう。研究者としてはそちらにどうしても気が散ってしまいがちです。
「なるほど」
効率的な動き、私を相手にする際に調整した動きの癖、仕留める事を意識してるためか、どうしても続けて闘っていると読みやすい部分はある。刃を受け止めると同時に、腕を蹴り上げて追撃を阻止し、今度はこちらから斬りかかるが、動きの速さでどうにかカバーしている。力の上昇により、弾き飛ばせなかったのが痛いですね。ですが……
「時間切れです」
「そうですね」
『ガイスト』の時間制限が来てしまった。本来の戦いであればこの時点で緊急脱出機能が発動するので京介君も負けとなった。しかし、戦闘時間中ずっと攻め続けていたと言う点で彼も評価された。さて、次はようやく義弟の番である。
「本当に黒トリガーで良いの悠姉?」
「うん、その代わり私は『正宗』ともう一個使うからね『種子島』」
正宗の安定性と比べてこちらは尖ったトリガーではあるが、この二つを使えば大抵の相手なら遠近どちらも対応できる。スタートの合図と共に、遊真は遠距離攻撃をまず仕掛けてくる。『
「うおっ!!」
「よく避けましたね」
『種子島』はチャージしなければ打てない代わりに、威力、射程、弾速、軽さにおいては他の追随を許さない狙撃手用のトリガーだ。今も一面を覆うほどの極大の砲撃が放たれた。チャージ速度の改良は進められているが、20~30秒は最低でも必要、安定させようと思うともっと必要になるからまだまだ未完成とも言える。
「『
避けた所に近づき、正宗で斬りかかるがスッと避けられる。そのうえで鎖が真っすぐ飛んできたので切り落として様子を見る。すると今度は先ほどと違い『
私は体に当てる訳にはいかないので全て正宗で受けきってから、正宗を一度決してもう一度起動することで重石を無効化した。その間に『
来てくれるなら丁度良いと拳の来る位置に刺さる様に正宗を置くと慌てて軌道をずらした。すかさず斬りつけるが『
その後も攻防を繰り返していると、距離を取ろうと『
「うーん、攻撃手段はこっちが勝ってるし、あれは連続して撃てないのは見抜けていたが勝てなかった」
「素の能力が高めだからね。レプリカの補佐ありなら負けてたよ」
そう、今回は遊真自身の力を見るためにレプリカの補佐が無かったので完全に力を出せていなかったのだ。それでもノーマルトリガー2つで完封されたと言う点は反省しているようだ。さて、それじゃあ、最後だ。
「よろしくね。修くん」
「本当にお手柔らかにお願いします!!」
分かり切った結果ではあるが、私が勝った。光るものがあるかと言われれば微妙ではあったが、攻撃の素直さから考えるに人柄は良さそうである。うーん、こういったタイプは知識を蓄えて反復練習あるのみだろう。まあ、これで一通り戦ったし、今日はおしまいにして、次の時にでも検査とトリガーの話などをしていこう。
いやぁ、他の作品に時間を取られていたのと、私は新成人の新社会人でございまして、火曜から就職先の研修が始まり、その前にも健康診断やらなんやらで忙しくて執筆に時間が取れませんでした。まだ、仕事にも慣れていないので時間が取りずらいですが、少しずつ書いて行くので首を長くして、温かい目で見守ってください。
次で検査したり、トリガー関連の話をして、本部にもう一回ぐらい顔出ししたり、誰かしらと関わったりする話を書きたいね。その後で正式入隊日かな。
まあ、こんなところでさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。