受け取った書類の情報によるとあの日あの場所のあの時間をもってボーダーに所属している事になっている。多少強引なやり方ではあったがこれで私も遊真も大手を振ってボーダー内を歩けるはずだ。
「……にしても
あれらは『星』を形作っているが、その星に住む命は何処から来たのか、そもそも『母トリガー』はどこから生まれていつから存在するのか、何故使える者が限られているのか、疑問を上げればその限りは無い。『神』が居なくとも生み出される力は膨大である。
「永久機関と変わらない代物…いや、そんな事を言えばトリオン自体の解明の話になるか」
トリオンと言うエネルギーで文明を築くことが出来ることが論点だ。基本的には人から生み出されるそれを思えば人自体が永久機関とも言えてしまう。玄界以外の国々がトリオンに偏ってしまうのもしょうがないだろう。
「っと、ここがランク戦室か」
[有吾の構想通りか?]
「忘れられてないようで嬉しいかな」
ボーダーを自由に歩けるようになったら直接ここは見ておきたいと思っていた。義父さんが考えていたランク戦システム、仲間同士で高め合っていくこのシステムは確かにボーダーに存在している。
「おや、初めて見る顔の子がいるぞ」
「ん…?あっ!あいつは、迅の姉貴じゃねえか!!」
「えっ、あの人がそうなのか!?」
「うそだろ、おいおい……」
聞こえてきた声は人の多いこの場の喧噪によってよほど耳が良い人間以外には聞こえなかったようだが、私はその声とちらりと見たその顔で誰なのかがすぐに分かった。
「この前ぶりですね。太刀川さん。そして、出水さんに、米屋さんですね。対面では初めましてですね」
「あの妨害してくれたのがあんたなのか、あん時は何も出来なかったし、うちのオペレーターも悔しがってたよ」
「嵐山さんが言うには俺の釣りを読んだのあんたらしいな。おかげで完封されたよ」
あれだけ勝手な事をしたと言うのに嫌悪感なくこうして友好的に接して来てくれる辺りが少し不思議ではあるが、そう言う人間なのだろうと思って私も口を開く。
「あの時は申し訳ありません。義弟を守るのに必要だったので」
「家族は大切だからな。あの時は敵同士だったんだからしょうがねえよ」
「まあ、槍馬鹿は単純すぎる気もするが、大体はその通りだな」
そう言って私のやった事を許したとは少し違うが、そう言う物だと納得してくれたのは有り難いが、目の前で槍馬鹿、弾馬鹿と口喧嘩をされても困るんだけどな。
「あんたボーダーに入ったんだろ。戦えるって話だし、一戦やろうぜ」
「……ああ!あの時は言ってませんでしたか、私はS級隊員として入隊しましたのでランク戦に参加は出来ませんよ」
「ええー、良いから戦おうぜ。ポイントのやり取りの無いモードなら戦う分には誰とでも出来るからよ。トリガー持ってきてくれよ」
「そう言う事なら戦う分には良いですが、私個人のトリガーだと目立つのでボーダーのトリガーを用意してからにしましょう」
そう伝えると絶対だからなと念押しをされ、他の2人にも俺もお願いしますと勝手に予約を追加された。まあ、別に問題は無いので了承し、彼らと別れてその場を離れた。
「妙に疲れたね」
[独特な感性の者ばかりだな]
「でも楽しそうな場ではある。迅が遊真に進めたのがなんとなく分かったかな?」
全てがああいった人間と言う訳では決してないだろう。組織と言うのは得てして良い面と悪い面があるものだ。始めの内に出会った彼らが良い面だったと思っておいた方が良いだろう。色々とやるべきことも控えているから思考を隅にやりながらボーダーを後にしようと思ったが、一人の隊員が目に入って気になった。
「あのトリオン体、医療用かな?」
[構想的には近い物だろうな]
トリオン体を医療目的、生活の補助に用いたりする研究はどうやらボーダー内でも行われているようで、その隊員のトリオン体は活動を助けるような機構が多少組み込まれている。物珍しさにじっと見ていると向こうに気付かれてしまったようでその隊員は近づいてきた。
「私に何か用ですか?初めてお会いしたと思いますが…」
「初めましてであってますよ。私が今のボーダーに入ったのはつい最近ですから。まずはぶしつけな視線を向けて、すみません」
「いえ、見かけたことの無い方がこちらを見ていて少し気になっただけですから、頭を下げて頂かなくても……それにしても
「ああ、私は旧ボーダー時代の人間だからそのような言い回しになったのよ」
幸い見ていたことは責められる事無く、話をする良い機会を得られた。サイドエフェクト事を知ってるかと訊くと肯定の意が返って来たので私がトリオンを知覚出来ることを伝え、研究者として医療目的のトリオン体が珍しくつい視線を送ってしまったと伝える。
「サイドエフェクトの事は分からないけど、見るだけで分かる物なの?」
「いや、私が特殊なだけね。さっきも言ったけど改めて謝罪するわ。私は空閑悠菜、よろしく」
「ええ、私は
それから話せない事は除いて私がどんなことをしていたのか、どういった研究をしているのか、自身がS級隊員である事などを話した。S級隊員であるという事を伝えると興味深そうな感情と微かな不安が感じられた。S級隊員ってどんな扱い何だろうか……誰かに聞くか、迅に問いただすのもありか。
「サイドエフェクト持ちは集めてもらうつもりだったけど、上層部には貴女の身体についても関わらせてもらうように伝えるつもりよ」
「色々と研究してるとはさっき聞いたけど、私の身体についても何か出来るの?」
「私の一番の研究はトリオンの医療研究だから、むしろ専門分野になる。」
「そうなのね。じゃあ、楽しみに待ってるわ」
その後も些細な世間話を続けてから連絡先を交換して玲とも別れた。今日出会った人間は色々と個性の強い者が多かったが最終的には来て良かったと思えた。まあ、明日には遊真の治療、そしてサイドエフェクト持ちの検査をやってしまう予定なのだから今日はこれ位にして帰るとしよう。
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前々から玉狛支部の方には連絡して置いたし、ボロボロの遊真とサイドエフェクト持ちの迅、雨取、そして陽太郎の4人の検査を行う準備もだいぶ整っている。元々最低限の設備が整っている拠点と船を繋げることで十分な技術的な環境が用意できている。
「とりあえず、スキャンするからそこに立ってて」
順番に異常が無いか確認していく、いや遊真に関しては異常がある前提ですがね。ふむふむ、トリガー内の身体の破損は酷いけど脳は大部分が残ってるようだからトリオンで十分補える。と言うかそうでなければ流石に黒トリガーとは言え延命は出来ない。
「簡易的な検査はこれで大丈夫。遊真の手術は最後の予定だから、黒トリガーの解析とトリオンで補うパーツの作成用に精密検査をするから、奥の検査室で待ってて、後は頼んだよレプリカ」
「分かった。それじゃ行って来る」
[了解だ。検査データはモニターに随時転送する]
他の3人は迅はやはり目と脳に少し反応がある。酷使しすぎているからか、全体的にダメージも見られるが、それ以上に常人より機能が高くなっているようにも見える。しかし、このペースであればトリオンや身体の成長も打ち止めが近い迅では機能不全に陥る方が早い。
「目を使いすぎだね。トリオンに浸食される心配はなさそうだけど、この調子で使っていれば失明してもおかしくないよ。と言うかその未来も見えてるんでしょう、迅?」
思ってたより深刻な内容に他の検査者や付き添いの人物が驚きと確認の視線を迅に送る。今までで一番へたくそな苦笑いを浮かべた迅は正直に答えた。
「姉さんの言う通りで、見えてるんだよね。まあ、無理をしなければそれなりに持つから大丈夫。それとトリオン体での視覚補助もあるしね」
「それでも生身の失明を防ぐにこしたことは無いでしょうに、まったく。機能回復と疲労回復には専用の目薬を用意しましょう。それとダメージを減らせないかそのサングラスに細工をします。それとトリオン体も少しいじった方が良さそうです」
それだけでも数年単位で伸ばせるだろう。迅は私からの提案に素直に頷いたので話はおしまい、後は目と脳に絞って精密検査を行おう。ダメージを減らすパターンはいくつか考えているが、どれが合うのか試作で良いから今度試させる必要もあるな。
さて次に陽太郎だ。サイドエフェクトは動物との意思疎通、情報を処理して暗号を解読するかのように理解しているのか、精神感応の様に相手とリンクするような物なのか、他にも色々と考えられるが、全体的に脳の、特に着目するならば感情を司る部分に発達が見られるぐらいで問題は無い。
トリオンが高く、成長が著しいために問題になってないだけかもしれないけど特別な配慮は要らなそうだ。むしろしっかりと教育を施せば賢くなるし、多角的に物事を捉えることが出来るようになる。血筋の面もあるかもしれないが幼さを除けば結構優秀なようだ。
「陽太郎は特別問題は無いな。全体的に脳の発達が良いから、賢くなるかもね」
「ふふん、さすがおれの凄さが目立ってしまったようだ」
「そのためにはちゃんと勉強する必要はあるから頑張ろうね」
「うっ!?」
最後が雨取だが、最初の迅が少し深刻だった為に緊張していたが陽太郎の結果を聴いて落ち着いているみたいだ。じっとこちらを見ており、見つめ返しても目を逸らさなかった。結構強い子の様だ。
私ほどでは無いがトリオンが飛びぬけて高いな。サイドエフェクトが敵の感知に気配を消す……暗殺者にでも成れそうだな。比較的燃費が悪い『
トリオンの量的に何かしらあってもおかしくないと予想していたがこちらは何も無かった。敵感知の影響か微妙に感覚が鋭敏になっているようで、本人がのんびりした性格だから目立ってないが反射速度は悪くないみたいだ。
「特別いう事は無いかな。しいて言えば敵感知の影響で感覚が鋭敏になってるけど、誤差にギリギリ収まらない程度だね。それと自覚は無いかもしれないけど反射も悪くないみたいだね。スナイパーを目指すなら判断力や速射技術に役立つかもね」
「ありがとうございます!!」
うーん、やはりトリオン自体の影響はある観たいだけど体と密接な物の方が表立って影響が出やすいのかもしれない。精神は測りにくいと言う点もあるので陽太郎に関しては第二次性徴まで定期健診を行っておこうかな。
「それじゃわざわざ来てもらってありがとうね。迅と遊真はそれぞれ精密検査と手術が終わったら玉狛に行くから、用事とかなければそこで待ってて」
「分かりました」
「うむ、帰るぞ。そろそろおやつの時間だ」
片手間で見送る形になってしまい遊真のデータの方は……うん、予想の範囲内だね。肉体を直ぐに取り出すのは出来そうにないけど治療は直ぐに出来そうだ。脳も殆ど無事だから、神経の方を代用して繋げて、目の方はトリオン体の視覚情報伝達をそのまま利用できる。右手と左手も流用できる。腹の方は胃に大腸、それと腎臓が片方か……問題は無いな。検査を終えた遊真が待ってる部屋へ向かう。
「おっ、悠姉、みんなのは終わったの?」
「迅以外は問題無しって結果だったわ。さてそれじゃ今日の本題であるあなたの手術をするわ」
「分かった。けど俺ってどうするの?治療する身体はこれの中だけど」
「トリオン体とのリンクが変に影響しないようにトリオン体はそのままにリンクだけ切断する。身体の方はトリガー自体が封印しているからそのまますぐに手術に入れる感じね」
「ふうん、てっきり手術の様子をトリオン体で眺められるのかと思ってた」
将来的には意識をトリオン体に移して肉体を手術するなんて言う技術も出来るかもしれないけど、今の段階と言うより遊真の場合は止めた方が良いだろう。遊真に機器の隣に寝てもらって黒トリガーを機械のセットする。
「それじゃ、目が覚めたら治ってるから、安心して眠りなさい」
「お願いするよ、悠姉」
可愛い義弟の頼みとなればしっかりやらなければ、遊真の意識のリンクを切断、トリオン体の負荷が切れる。肉体に異常なし、遊真の固有トリオンの波長を設定、肉体の補助パーツ作成、再生手術開始。
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SIDE:遊真
目を開けると手術前に見た部屋の中だった。指にはちゃんと黒トリガーが嵌められており、レプリカと悠姉の姿が見えた。
「ん?終わったのか?」
「無事にね。リンクを再接続した途端に目覚めるとは、普通の手術とはやっぱり違うのね。変な所は無い?」
「うん、動かした感じもおかしくは無いよ」
「そう、これが手術の結果のまとめ。一応目を通しておいて」
渡されたデータは俺の身体に着いてと黒トリガーについて纏められていた。肉体の補修は完璧、外に取り出したら定期的に検査は必要、現段階では黒トリガーの保護によってそこまで心配は要らない。今は取り出せないけど、黒トリガーを解除、要するに親父を解放できれば俺の身体も外に出せる。
「事前の説明通りかな」
「そう言う事ね。それじゃ玉狛に帰りましょう。迅は検査とトリオン体の調整がさっき終わったばかりですぐ外で待ってるわ」
「ん、迅さんも結構掛かったんだ。平気なの?」
「未来視からの保護の特定に手間取っただけで問題は無いから心配無用よ」
うむ、なら良かった。それなら修と千佳に報告したいし帰るとしよう。少し疲れた顔の迅さんと一緒に玉狛に戻った。修と千佳に顔を見せると手術の結果を訊かれ、成功したと伝えると俺以上に喜んでいた。お祝いとして支部長が夕飯をご馳走にするように言ってくれた。色々と美味い物が喰えたし、雰囲気も楽しかった。
チラッとしか書いてませんが、千佳ちゃんのサイドエフェクトを始めてみた時は本当に暗殺者みたいだなと思いましたね。冷酷な千佳ちゃんみたいな二次創作あれば面白そう。友達が攫われて、お兄さんも居なくなって壊れちゃった感じ……うわぁ、自分で言ってて書きたくなってきた。
(ちなみに、ワールドトリガーの二次創作のネタは今のも含めると後3つある。いつか全部書きたい)
次から本編に入りつつ、悠菜による影響を与えて行こう。
そしてアンケートの投票を終了しました。
(57) 遊真、千佳の2人ともB級になる。
(16) 遊真だけがB級になる。
(4) 千佳だけがB級になる。
(11) 遊真、千佳の2人ともB級にはならない。
正直予想とは違っていましたね。原作と変わるのを嫌がる人も中にはいるのでいってもトントンぐらいかと思ったんですけどね。アンケートやってみて良かったです。
B級にしちゃいましょうかね。うん、決定。
その方が部隊として仕事に出れるからランク戦前に他の部隊と関わりが持てるから話を膨らましやすそうです。
それではいつもの再撮でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
正式入隊後の展開について意見調査
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遊真、千佳の2人ともB級になる。
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遊真だけがB級になる。
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千佳だけがB級になる。
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遊真、千佳の2人ともB級にはならない。